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やってはいけない偏頗弁済(偏ぱ弁済)~その2 免責不許可事由との関係

2023-05-30

偏頗弁済のリスク

別のコラムでお話したとおり、偏頗弁済とは、自己破産手続で問題となる偏った弁済、不公平な弁済のことをいいます。

偏頗弁済が行われた場合、弁済をした申立人・破産者との関係では、免責不許可事由に該当する可能性があります。

つまり、偏頗弁済をすると借金が0にならないおそれがあります。

また、弁済を受けた債権者との関係では、破産管財人によって債権者が受領した弁済金の返還を求められる可能性があります(このような場合を、破産管財人による「否認権の行使」といいます)。

今回のコラムでは、どのような弁済が、免責不許可事由としての「偏頗弁済」に該当するのかについて、具体的にお話をしたいと思います。

なお、破産管財人に関する詳しいご説明については、こちらのページをご覧ください。

また、否認権行使の対象となる偏頗弁済については、こちらのページ(現在執筆中・次々回掲載予定)をご覧ください。

免責不許可事由に該当する偏頗弁済とは、どのような弁済のことか?

偏頗弁済とは、冒頭で述べたとおり、自己破産手続で問題となる偏った弁済、不公平な弁済のことです。

しかし、全ての偏った弁済、不公平な弁済が免責不許可事由に該当するわけではありません。

また、免責不許可事由との関係では、「弁済」だけではなく、「担保」の提供も免責不許可事由に該当する可能性があります。

そこで、以下では、より正確性を期すために、「偏頗行為」という名称を用いることにします。

免責不許可事由に該当する「偏頗行為」は、①から③の全てを満たすものに限られます。

① 「当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、」

② 担保を提供したり、債務を消滅させたりする行為であり、

③ 「債務者の義務に属」しないもの、または「その方法若しくは時期が債務者の義務に属しないもの」

「特別の利益を与える目的」、「他の債権者を害する目的」で行われる偏頗行為

免責不許可事由としての偏頗行為は、当該債権者に「特別の利益を与える目的」で行われる場合に限られます。

「特別の利益」とは、他の債権者との公平性を害する偏った利益のことです。

また、「特別の」と評価されるだけの大きな利益を指します。

「特別の利益を与える『目的』」は、単にそのようなことを認識しているというだけでは足りません。

より積極的に、当該債権者に特別の利益を与えることを目指して弁済等をするという意識が必要だと解されています。

また、「他の債権者を害する目的」とは、破産手続における債権者の満足を積極的に低下させようとする害意がある場合をいうとされています。

たとえば、従前から不仲であった債権者がいて、その債権者への配当を減少させる目的で、他の一部の債権者に対してだけ弁済をしてしまうような場合が該当すると思われます。

担保を提供したり、債務を消滅させたりする行為

担保を提供する場合も、免責不許可事由としての偏頗行為に該当する場合があります。

ここで言う担保の提供には、保証人、連帯保証人といった人的な担保と、抵当権、質権といった物的な担保の両方が含まれます。

債務を消滅させる行為の典型は、弁済です。

単純な「弁済」だけではなく、本来の目的物に代えて他の物で弁済をする「代物弁済」も、免責不許可事由における偏頗行為の対象に含まれます。

代物弁済の具体例としては、1000万円の借入金に対して、現金ではなく、在庫商品を譲渡したり、不動産を譲渡したりして返済をすることが考えられます。

このほか、弁済期が到来していない相手方の債権と、こちらが相手方に対して持っている債権とを相殺するという合意をする場合も、免責不許可事由で問題となる偏頗行為に含まれます。

「債務者の義務に属」しないもの、または「その方法若しくは時期が債務者の義務に属しないもの」

まずは、弁済などの債務を消滅させる行為について考えてみましょう。

弁済などの債務を消滅させる行為について「時期が債務者の義務に属しないもの」とは、簡単に言えば、弁済期が到来していないのに、支払いをしてしまう場合です。

債権者Aへの弁済期が5月31日、債権者Bへの弁済期が5月15日であるとしましょう。

債権者Bへ払ってしまうと債権者Aへの支払いができなくなってしまう。

債権者Aにはお世話になったから債権者Aには支払いをしたい。

そうだ、5月14日に債権者Aへ支払いをしてしまおう。

このようなケースが「時期が債務者の義務に属しないもの」に該当すると考えられます。

債務の消滅行為について、「その方法」「が債務者の義務に属しないもの」に該当する場合というのは、少し想像が難しいのですが、たとえば、お金で支払いをするという約束だったものを、在庫商品を譲渡して弁済をするというような場合があり得ると思われます。

次に、担保の提供行為についてです。

担保の提供に関して「債務者の義務に属」しないものとは、担保を提供するという約束が無かったのに、担保を提供してしまう場合のことをいいます。

担保の提供が破産者の義務に属すると認められるためには、破産者と債権者との間に、担保を提供するという特約が存在する必要があります。

お金を借りている、買掛金があるというだけでは、当然に担保を提供する義務があるとは認められません。

定められた期間よりも前に担保を提供する場合は、「時期が債務者の義務に属しないもの」に該当すると考えられます。

また、連帯保証人を付けるという約束だったのに、不動産に抵当権を設定するといったような場合は、「その方法」「が債務者の義務に属しないもの」に該当すると言えるでしょう。

不公平な弁済をしてしまったと思ったら弁護士に事情を説明しましょう

これまでお話ししてきたように、不公平な弁済は、免責不許可事由に該当する可能性がありますが、全ての不公平な弁済が免責不許可事由に該当するわけではありません。

不公平な弁済はしないことが一番ですが、自己破産を申し立てるにあたって、特定の債権者にだけ迷惑を掛けないようにするために弁済をしてしまった、という心当たりがある場合には、速やかに弁護士に相談をしましょう。

そして、自己破産手続を申し立てる前に、そのような弁済が免責不許可事由に該当しないかどうか弁護士からアドバイスを受け、場合によっては、事後的な是正措置をとることが免責決定を得るうえで重要です。

最近読んだ本~「優駿」

2023-05-20

先輩弁護士からのプレゼント

こんにちは。静岡の弁護士の石川です。

今回は、私が最近読んだ本として、宮本輝さん作の小説、「優駿」を紹介します。

こちらの本は、私が大変お世話になっている先輩の弁護士からいただいたものです。

なぜ先輩がこの本をプレゼントしてくれたかというと、私が競馬好きであるからです。

私の競馬好きの話については、このブログの後半に書きます。

さて、この「優駿」という本は、一頭のサラブレッドと、そのサラブレッドを巡る人間の人生について書かれた本です。

この本で私が感じたことは、登場人物たちの不安と困難です。

常に不安、ずーっと不安。一つ困難を乗り越えても、また困難。

きっと、物語の続きも不安と困難。

人生は困難の連続で、ずっと不安。

それと対置される「祈り」。

その中での、希望や光。

そんな印象を受けました。

私がいただいたのは文庫本で、合計700ページを超える長編ですが、さらりと読めてしまう口当たりの良い文章です。

「優駿」の第一章が初公開されたのは、1982年ということで(私もまだ生まれていません)、グレード制が導入されていなかったり、ダービー出走の馬齢が4歳であったり、NHK杯がダービーのトライアルとして位置付けられていたりと、現在とは違う設定ではありますが、とても面白い本です。

競馬好きの方には、是非お薦めの一冊です。

私が競馬を始めたきっかけ

私が競馬好きであることは、静岡の弁護士の一部の間ではよく知られています。

私が競馬好きになったきっかけは、中学1年のころに買ったプレイステーションの「ダービースタリオン」でした。

当時、全く競馬を知らなかったのですが、育成系のゲームが好きであったことからダービースタリオンを始め、すぐに本物の競馬を見てみたくなりました。

当時は、今、ウマ娘で人気を博しているスペシャルウィークやサイレンススズカが現役で走っていた時代でした。

サイレンススズカ、グラスワンダー、エルコンドルパサーが出走した毎日王冠を実際に見に行きましたが、史上最高のGⅡレースと言っても過言ではないでしょう。

今でも私が一番好きな馬~オルフェーブル

あまり馬券は買いませんが、大人になってからも競馬のテレビ中継はほぼ毎週見ています。

子どもが生まれる前は、ときどき競馬場にも行っていました。

私が一番好きな馬はオルフェーブルです。

オルフェーブルが出たレースの中でも一番好きなレースは、負けてしまいましたが、阪神大賞典です。

あんなレース見たことないです。

これからもきっとあんなレースを見ることはないのだろうと思います。

でも、あのレースが、もっとも、暴れん坊将軍たるオルフェーブルらしいレースだったように思います。

オルフェーブルが1回目の凱旋門賞に負けたときは、本当にショック過ぎて、競馬を見るのが嫌になり、2、3か月競馬を見ない時期もありました。

サトノダイヤモンドと凱旋門賞

最近と言うほど最近でもないのですが、最近好きだった馬はサトノダイヤモンドです。

きさらぎ賞までの3戦の勝ちっぷりから、無敗の3冠を期待したのですが、現実はそううまくはいきませんね。

皐月賞、日本ダービーは、本当に残念でした。

サトノダイヤモンドが出走した日本ダービーは、指定席の抽選に当選するという幸運に恵まれ、現地で観戦していたのですが、本当に、わずかな差でした。

しかし、その後、菊花賞、有馬記念を連勝、天皇賞春は3着に敗れたものの、個人的に凱旋門賞への期待が高まっていました。

この年の初夏、私は離婚し、フリーな時間が大幅に増えたことと、若干の破れかぶれ感から、サトノダイヤモンドが出走する凱旋門賞を観戦しに行くことを決めました。

当時、このことを裁判官に言ったことがありましたが、「そんな道楽をして・・・」と言われました。

凱旋門賞でも、ツアー会社を通じて、追加料金3万円を支払って指定席をとりました。

しかし、凱旋門賞の指定席は、そこら辺の公園にあるベンチと同等の木製の長椅子で(下の写真の左下に移っている長椅子です)、最初その「指定席」を見たときは、何かの間違いじゃないかと思いました。

凱旋門賞当日は、シャンパンを飲んでいたところを世界的ニュース専門チャンネルCNNにキャプチャーされたり、話しかけてきた現地の若者に「いくら賭けたんだい?」と聞かれ、「7ユーロ(≒1000円)」と言ったら鼻で笑われたり、たくさんの日本の芸能人さんがいたりして、とても楽しかったです。

前哨戦のフォア賞の結果から、嫌な予感はしていたのですが、結果は大変残念でした。

近年でもっとも期待した凱旋門賞は、昨年のタイトルホルダーが出走した凱旋門賞でした。

昨年のタイトルホルダーの凱旋門賞を見た後も、しばらく競馬を見る気が無くなってしまったのですが、凱旋門賞ってどうなんでしょうね。

別の星の競馬のような感じがします。

日本馬に凱旋門賞を勝って欲しいという気持ちはもちろんありますが、凱旋門賞じゃなくてもいいんじゃないか、という気もしています。

とは言いつつ、私が見たときの凱旋門賞はシャンティイだったので、いつかはロンシャンの凱旋門賞を見に行きたいと思っています。

静岡空港発の九州旅行2

2023-05-10

静岡から吉野ヶ里遺跡へ

前回のブログでは、時系列に逆らって、熊本にいる同期の弁護士に会う話を先に紹介しました。

今回は、九州旅行の1日目と2日目についてお話します。

朝7時30分発の便で静岡空港から福岡空港へ。

静岡空港を離陸してしばらくすると、左側座席の窓から富士山を眺めることができます。

冬などの空気が澄んでいる時期に見たら、さぞかしきれいなことでしょう。

福岡空港近くでレンタカーを借り、まずは佐賀県の吉野ヶ里遺跡へ。

吉野ヶ里遺跡は小学生のころから教科書で聞いていた名前で、いつか行ってみたいと思っていました。

静岡にも同じ弥生時代の遺跡で、登呂遺跡という遺跡があります。

吉野ヶ里遺跡も静岡の登呂遺跡と同じくらいの所用時間を見ておけば良いだろうと思っていたら、とんでもない間違いでした。

歩いても歩いても、物見櫓にたどり着かない・・・。

それもそのはず、吉野ヶ里遺跡は横幅で言えば登呂遺跡の2倍、縦で言えば登呂遺跡の6倍!

全然規模が違いました・・・。

5年ほど前には、弁護士会の人権大会に青森県に行った際、三内丸山遺跡に行きました。

しかし、三内丸山遺跡と比べても、吉野ヶ里遺跡は3倍の長さがあるようです。

所要時間1時間くらいを見込んでいましたが、早足で歩いても2時間以上かかりました。

しかも、甕棺の発掘状況の展示までで断念し、上半分はほぼ端折っています。

広すぎる吉野ヶ里遺跡・・・。

吉野ヶ里遺跡では、甕棺の発掘状況が発掘当時の状況のまま保管されている展示がとても面白かったです。

吉野ヶ里遺跡には、ムラやクニの考え方があり、2000年以上も昔の時代から、位の上の人が住む地域と、位が下の人が住む地域が分かれていたそうです。

そのような昔から、既に貧富、階級の差があったことが、改めて考えてみると、新鮮かつとても大きな驚きでした。

平和公園と原爆資料館へ

吉野ヶ里遺跡に思いのほか時間がかかったため、昼食をとることを断念して車で長崎へ。

長崎1日目は、浦上天主堂、平和公園、原爆資料館。

浦上天主堂も、2日目の大浦天主堂も、ステンドグラスがとてもきれいでした。

建物内の写真を撮ることができず、残念です。

原爆資料館でもっとも印象的だったのは、入ってすぐの部屋で何カ所か写真のスライドを流していた箇所でした(後に同じ写真も展示されていました)。

その中の1枚に、母子が丸焼けになって亡くなっている写真がありました。

自分自身が小さな子どもを持ったためということが大きいのかもしれませんが、うちの子どもと変わらないくらいの年齢であろう子が焼け焦げて死んでいる写真はとても印象的でした。

夕方になり、レンタカーを返し、ようやく旅行初日の1食目。

一人で旅行をすると、食事はだいたいこんな感じになります。

長崎と言えば、ちゃんぽんです。

1日目の夕食は江山楼でいただきました。

2日目の昼食には、四海樓のちゃんぽんをいただいたのですが、私は、江山楼のちゃんぽんの方が好きでした。

スープがとてもおいしくて飲み干してしまいました。

その後、海沿いを歩いて、長崎駅へ。

長崎はとてもきれいな街でした。

他にあまり港町を知らないからかもしれませんが、静岡の清水に雰囲気が似ていると思いました。

長崎駅では、地酒をいただきました。

お土産コーナーには無く、とても残念だったのですが、杵の川の本醸造が思いのほか甘く(完全主観)、飲みやすくておいしかったです。

他に六十餘洲もいただきました。

ごちそうさまでした。

軍艦島と長崎観光

長崎2日目は、午前中に軍艦島へ。

長崎の港から45分ほど船に乗り、軍艦島へ向かいました。

現在は、限られた地点でしか見学ができないそうですが、それでも廃墟となった島の姿は、迫力がありました。

大正3年(1914年)に建てられたという日本最古の鉄筋コンクリート造の集合住宅(下の写真・右側の建物)は、ボロボロになりながらも、よく倒壊しないものだなと感心しました。

骨太なコンクリート柱が、イトーヨーカドー静岡店の立体駐車場を彷彿とさせました(笑)

午後は、四海樓でチャンポンを食べ、グラバー園、大浦天主堂、オランダ坂、出島をひたすら歩きました。

長崎は坂の街と聞いていましたが、なるほどその通りでした。

出島も、小学校の教科書にも載っている超有名スポットですが、午後は3、4時間歩きっぱなしで疲れてしまって、建物内まで見学する元気がありませんでした。

それでも長い橋を渡って、かつては島だった出島に入るときは、ここがあの出島かと感慨深いものがありました。

西九州新幹線と九州新幹線

長崎から、同期の弁護士がいる熊本までは、新幹線と電車を乗り継いで向かいました。

長崎駅から武雄温泉駅まで西九州新幹線かもめ。

武雄温泉駅から新鳥栖まで特急リレーつばめ。

新鳥栖から熊本駅までまで九州新幹線つばめ。

この3つの列車の中では、九州新幹線つばめが一番すてきな列車でした。

座席の背もたれが木でできていたり、ブラインドが竹でできていたり、「和」の雰囲気でした。

もう一度ゆっくり乗ってみたい新幹線です。

久しぶりの2泊3日の旅行でリフレッシュさせてもらいました。

連休明けも、一つ一つの業務に、迅速かつ適切に対応していきたいと思います。

静岡空港発の九州旅行

2023-04-30

静岡から九州へ

こんにちは。静岡の弁護士の石川です。

今回は最近した旅行について書かせてください。

妻が2泊3日で子どもたちと実家に帰るということで、旅行に行かせてもらいました。

もともと私は旅行が大好きでしたが、子どもたちが生まれてからはあまり旅行に行けていませんでした。

2泊3日の貴重なお休み。

せっかくなので今まで行ったことがない県にしようと思いました。

これまで行ったことがなかった県は、新潟、和歌山、福岡を除く九州。

今回はその中で、静岡空港から福岡空港に飛び、その後、佐賀、長崎、熊本の3県を巡ることにしました。

ネットでは、国内線はフライトの1時間前に空港に来てくださいと書かれていたので、フライトの1時間前に静岡空港に行ったのですが、まさかの閉鎖中。

便が少ないから、夜間は閉めているようでした・・・。

しかし、空港がオープンしてから搭乗口までは15分くらいで行けました。

静岡空港の国内線は大変スムーズです。

同期の弁護士と8年ぶりの再開

順序が逆ですが、先に熊本の話を。

熊本には、京大ロースクール時代の同級生で、司法修習も同期の(≒同じ年に司法試験に受かった)弁護士がいます。

彼は京大(学部)から京大(ロースクール)に進学し、自分は東北大(学部)から京大(ロースクール)に進学したのですが、ロースクール1年目の後期に、彼から、彼が所属していた勉強会に誘ってもらいました。

その勉強会では、週に1、2度集まって司法試験に向けた答案練習をし、相互に採点する(コメントを書く)などしていました。

自分がもともと参加していた勉強会は、訳あって1年目の夏休みに空中分解。

彼から誘ってもらって参加した勉強会には、自分を含めて6人が参加していました。

その6人は、見事全員が新司法試験に一発合格!

彼にその勉強会に誘ってもらえなければ、弁護士としての今の自分はいなかったかもしれません。

本当に彼には感謝しています。

今回、そんな彼と再会したのは、その勉強会に所属していた友だちの結婚式以来8年ぶり。

しかし、見た目も雰囲気も変わらず。

相変わらず裏表の無い、さわやかな彼で、とても楽しい時間を過ごすことができました。

お互い来年度には40歳になり、弁護士としては職歴は13年あります。

しかし、彼は若く見られるようで(実際、38歳で弁護士歴13年は、その意味では若いと思いますが)、時々お客さんから、司法試験に受かりたての弁護士だと思われるそうです。

「あるある」です。

私もまだまだ若いつもりで、弁護士としては「若手」のような感覚があるのですが、すでに「中堅」と言える時期に来ているのだなぁと時々思います。

弁護士としての仕事も15年の節目が近づいてきますが、お互い健康に気を付け、家族とともに、楽しい人生を過ごせればと思います。

破産事件における静岡地裁との運用の違い

彼とはお互いの子どもの話をしたり、今度彼が建てる家や自分が一昨年建てた家の話をしたり、仕事の話をしたりしました。

仕事に関しては、彼と自分とは扱っている業務が似ていました(破産管財、交通事故など)。

他の県の弁護士と話をする機会はあまり多く無いのですが、特に、破産管財事件について、静岡以外の他の裁判所の取扱いを聞ける機会は非常に貴重です。

静岡地裁のやり方との対比を含め、破産管財事件の進め方について話ができたことはとても有意義でした。

静岡地裁と熊本地裁とで、破産管財手続において一部取扱いが異なるものがあり、その中には破産手続における配当や弁済に影響が大きいものもあったため、取扱いに差異があるという話はとても面白かったです。

また、静岡では、温暖な気候のためか、全国的に見て訴訟における和解率が高いと言われています。

それに対して、熊本は、「肥後もっこす」のようで、一度訴訟を始めたら、お互いになかなか折れないそうです。

これもまた、興味深い話でした。

最終日は熊本観光

最終日は、彼に車を出してもらい、熊本観光をさせてもらいました。

熊本城と阿蘇周辺です。

熊本城は、本当に雄壮、重厚で、まさに鉄壁という雰囲気の見惚れるお城でした。

しかし、石垣が崩れるなどところどころに熊本地震の傷痕がありました。

また、阿蘇へ向かう際も、山々に土砂崩れの痕がありました。

熊本地震からは7年が経ちますが、まだまだ熊本は復興の途中であると思いました。

しかし、その一方で、修復された熊本城の堂々とした居住まいからは、熊本の方々の不屈の力強さを感じました。

熊本城は、やはり熊本の人たちにとって、とても大切なシンボルなのでしょう。

静岡でも、私が小学生だったころから大きな地震が来ると言われ続けています。

そのような大きな地震が来たとき、静岡は、立ち上がり、立ち直ることができるのだろうかということは時々頭をよぎります。

ただ今は、今できることをしておこうと思いました。

楽しかった熊本!!

熊本では、彼のおかげで大変楽しい時間を過ごすことができました。

彼から、今年、実務に入って10年目の会(コロナの影響で延期されていました)が、熱海で開かれるとの情報を得ました。

熊本から熱海に行くのはとても大変だと思いますが、熱海に来てくれたら、今度は静岡で歓待しますよ!!

絶対にしてはいけない偏頗弁済(偏ぱ弁済)

2023-04-20

偏頗弁済(偏ぱ弁済)とは

皆さんは、偏頗弁済(偏ぱ弁済)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
非常に読みにくい漢字ですが、「へんぱべんさい」と読みます。

「偏頗」の「偏」という漢字は、送り仮名の「り」をつけて、「偏り」(かたより)と読みます。
「偏頗」の「頗」は、「かたよる・公平でない」という意味がある漢字のようです。
私も今回、このブログを書くにあたって「頗」の意味を調べて初めて知りました。

このように、偏頗弁済(偏ぱ弁済)とは、偏った弁済、不公平な弁済という意味です。
そして、偏頗弁済という言葉は、自己破産手続の中で行われた偏った弁済、不公平な弁済に対して使われる言葉です。

偏頗弁済が、どのように偏った弁済であるのか、どのような意味で不公平な弁済のことをいうのかと言うと、大まかに言えば、自己破産手続が開始されている場合に、破産手続が開始される前から持っていた財産で、一部の債権者に対してだけ弁済をすること、あるいは、自己破産手続の開始前に、一部の債権者に対してだけ弁済をしてしまっていたことを意味します。

「偏頗弁済」は、個人の自己破産手続においても、法人(会社)の自己破産手続においても、たびたび問題となる行為です。

例えば、個人の自己破産の場合、弁護士に自己破産手続を依頼している中で、お金を貸してくれていた親戚には迷惑は掛けられない、ということで、他の債権者には弁済をすることができない状況であるのに、こっそり親戚から借りたお金だけ返してしまうといったことが考えられます。

会社の自己破産の場合には、弁護士に自己破産手続を依頼している中で、他の債権者には全般的に支払いができないものの、長年良くしてもらった取引先に支払いをしないとその取引先も破産してしまう可能性があると思い、その取引先にだけ弁済をしてしまうといったことが考えられます。

破産者の多くは、親戚や取引先に迷惑を掛けたくないから、という気持ちで、偏頗弁済を行ってしまいます。
そのような弁済行為は、心情としては理解できるのですが、自己破産を申し立てた後、大きな問題となってしまうことがあります。

偏頗弁済は、なぜいけないのか?

一般的な語感からしても、偏った弁済、不公平な弁済が、推奨されないものであることはお察しいただけるかと思いますが、偏頗弁済がなぜいけないのか、ということについて、まずは、理屈の面からご説明いたします。

自己破産手続を申し立てるに際しては、破産法の規定に則って申立てをする必要があります。

そして、破産法第1条は、破産法の目的について、「債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との権利関係を適切に調整する」こと、「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る」こと、と定めています。

つまり、自己破産手続は、利害関係人の利害を適切に調整し、債務者の財産を適正かつ公平に清算することを目的としています。

そのため、利害関係人の利害を適切に調整したり、債務者(申立人・破産者)の財産を公平に分配したりすることに反するような偏頗弁済は、自己破産手続(破産法)の目的に反するため、問題になるのです。

偏頗弁済をすると、どうなるのか

偏頗弁済がされた場合、弁済を行った申立人・破産者側と、弁済を受けた債権者側の双方に対して、望ましくない効果が発生する可能性があります。

まずは、偏頗弁済をした場合、申立人・破産者との関係です。

偏頗弁済をした場合、弁済をした申立人・破産者の自己破産手続において、当該偏頗弁済は免責不許可事由に該当する可能性があります。

偏頗弁済をすると、免責を受けられない(借金が0にならない)可能性があるという重大な効果が発生するおそれがあります(免責不許可事由についての詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください)。

ただし、全ての偏った弁済、不公平な弁済が免責不許可事由に該当するわけではありません。
詳しくは、こちらのページをご覧ください(現在執筆中・次々回掲載予定)。

次に、偏頗弁済を受けた場合、債権者との関係です。

偏頗弁済を受けた債権者は、弁済をした申立人・破産者の自己破産手続において選任された破産管財人から、申立人・破産者から受け取った弁済金を返還しなさい、と求められる可能性があります。

このような破産管財人の請求を「否認権の行使」といいます。

破産管財人に関する詳しいご説明はこちらのページをご覧ください。

ただし、破産管財人による「否認権の行使」も、全ての偏った弁済、不公平な弁済が対象となるわけではありません。
詳しくは、こちらのページをご覧ください(現在執筆中)。

偏頗弁済のまとめ

偏頗弁済が行われた場合、申立人・破産者との関係では、免責不許可事由に該当する可能性があり、弁済を受領した債権者においても、その返還を求められる可能性があります。

特に、破産者においては、免責不許可事由に該当するような偏頗弁済を行ってしまった場合、借金が0にならない可能性があります。

偏頗弁済は、申立人・破産者が、義理や人情などから、良かれと思って行うことが多いのですが、そのために非常に大きなしっぺ返しを受けてしまう可能性があります。

このような偏頗弁済は、絶対にしてはいけません。

仮に自己破産手続を弁護士に相談した時点で、既に不公平な弁済をしてしまっている場合には、弁護士に対して不公平な弁済をしてしまった事実をしっかりと話しておくべきです。

そして、自己破産を申し立てる前に、不公平な弁済に関して、できる限りの是正措置を行っておくべきです(弁護士とともに、債権者に事情を話し、弁済金の返還を求めることが考えられます)。

とても大事な自己破産と免責不許可事由の話3~「虚偽の説明」など

2023-04-10

「免責不許可事由」が存在することによるデメリット

自己破産を申し立てる最大の目的は、破産の申立時までに負っていた借金を0にすることです。

借金を0にしてもらうことを裁判所に認めてもらうことを「免責」、「免責許可」、「免責決定」などと言います。

免責不許可事由とは、破産法で規定されている免責が認められない事由のことです。

免責不許可事由が存在すると、自己破産を申し立てても、借金が0にならない可能性があります。

つまり、免責不許事由の最大のデメリットは、破産を申し立てても、借金が無くならない可能性があるということです。

また、免責不許可事由が存在する場合、破産管財人が選任される可能性があり、そのために自己破産を申し立てるために必要となる費用が増えてしまう可能性もあります。

静岡地裁の場合、少なくとも20万円程度の予納金が必要となる場合が多いと考えられます。

詳しくは、こちらのページをご覧ください。

このように、免責不許可事由があるかどうかということは、自己破産の申立てに大きな影響を及ぼします。

今回の記事は、そのような免責不許可事由の具体的内容を紹介する第3弾です。

どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その4 虚偽の説明

前回の記事では、2つの免責不許可事由を紹介しました。

1つは、申立人が前回免責を得てから7年以内にもう一度自己破産(免責)を申し立てるという場合です。

詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください。

もう1つは、浪費や賭博などにより借金をしてしまったという場合です。

免責不許可事由としての「浪費」や「賭博」に関する詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください。

浪費や賭博によって借金を作り、自己破産まで至ってしまった場合、もしかすると、そのような人の中には、裁判所から、自己破産に至った原因について調査があった際、免責を得られないことを心配して、「借金をした理由については黙っておこう。」と思う人がいるかもしれません。

また、「借金は生活費が足りなかったことにしておこう。」と考え、浪費や賭博とは別の理由により、借金をしたと説明をしようと考える人もいるかもしれません。

しかし、破産法においては、「破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと」は、免責不許可事由に該当するとされています。

「虚偽の説明」とは、わざと事実と異なる説明をする場合だけでなく、当然説明すべき事項について積極的に説明しないことも含まれると解釈されています。

裁判所が行う調査の中には、破産者の財産や破産者が負った借金に関する事項、破産の申立てに至った経緯など、破産手続全般に及びます。

また、裁判所は、破産手続開始の原因となる事実については、裁判所書記官を通じて調査をすることもあります。

免責が認められなかった裁判例~賭博が原因で借金をしたことを説明しなかったケース

自己破産に関する裁判例の中には、破産申立てに至った経緯や理由の中に、賭博によって多額の借金をした事実があったにも関わらず、これを隠して、「ギャンブルは全くやらない」旨の虚偽の報告書を裁判所に提出したことが虚偽の陳述に当たるなどとして、免責が認められなかったケースもあります。

このように、浪費や賭博があり、そのために大きな借金をしてしまった場合や、浪費や賭博のために財産を消費して、そのために借金をしたり、借金が返せなくなってしまったりしたという事情がある場合には、裁判所に対して、そのことをきちんと説明する必要があります(説明しない場合、免責されない可能性があります)。

そのため、自己破産の申立てをする準備の段階から、申立てを依頼する弁護士に対して、借金をしてしまった理由を正直にお話しすることは、とても大切です。

なお、一般的な感覚からして、浪費や賭博に当たる行為があったと考えられる場合でも、必ずしも、自己破産の免責不許可事由としての「浪費」や「賭博」に該当するとは限りません。

どのような場合に免責不許可事由としての「浪費」や「賭博」に該当してしまうのかについては、こちらのページをご覧ください。

破産管財人による調査にも協力しましょう

破産手続開始決定後、裁判所によって、破産管財人という申立てを依頼した弁護士とは別の弁護士が選任されることがあります(破産管財人に関する詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください)。

裁判所は、破産管財人を通じて、調査を行うこともできます。

そのため、破産管財人が行う調査に対して、あえて虚偽の説明をしたり、説明すべき事由に対して自ら積極的に説明しなかったりした場合も、免責不許可事由に該当する可能性があります。

破産管財人から説明を求められた場合にも、きちんと対応することが大切です。

とても大事な自己破産と免責不許可事由の話2~「浪費」など

2023-03-31

自己破産手続における「免責不許可事由」についてのおさらい

別の記事で、自己破産の最大の目的は借金を0にすること(裁判官に「免責」を許可してもらうこと)であり、免責不許可事由とは、免責が認められない場合として法律で定められている事由であることをお話ししました。

さらに別の記事では、免責不許可事由が存在すると考えられる場合には、破産管財人の選任が必要となる可能性があり、そのために、自己破産を申し立てるための費用が増大してしまう可能性があることについてお話ししました(静岡地裁への破産申立てでは、少なくとも20万円程度予納金が増額されることを念頭に置く必要があります)。

今回は、そのような免責不許可事由の具体的内容を紹介する第2弾です。

今回ご紹介する免責不許可事由は、自己破産の申立てを行う際、よく問題となる事由であり、とても重要です。

どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その2 以前破産したことがある場合に要注意の免責不許可事由

以前自己破産をしたことがある人が、前回の免責許可決定の確定日から7年以内に自己破産の申立て(免責許可の申立て)をした場合、免責不許可事由に該当します。

裁判所によって免責許可決定が出されると、裁判所から免責許可が出されたということが官報に掲載されます。

官報とは、国が発行する情報誌のことです。

官報に関する詳しいご案内は、こちらの記事をご覧ください。

債権者において、債務者の免責許可に不服がある場合、官報に、免責が許可されたことが掲載されてから2週間以内に、当該免責許可決定に対する不服申立てを行うことができます。

免責許可が官報に掲載されてから不服申立てがされずに2週間が経過すれば、免責許可は確定となります。

この免責許可の確定日から7年以内に自己破産を申し立てた場合、免責不許可事由に該当してしまいます。

また、以前自己破産をしたことがある場合だけではなく、以下の場合も免責不許可事由に該当します。

① 給与所得者等再生手続による再生計画を遂行したが、再生計画の認可確定日から7年以内に自己破産を申し立てた場合

② 民事再生法におけるいわゆるハードシップ免責を受けたが、再生計画の認可確定日から7年以内に自己破産を申し立てた場合

以前に自己破産をしたことがある場合、給与所得者等再生を行ったことがある場合、小規模個人再生でハードシップ免責を受けたことがある場合、新たに自己破産を申し立てるまでの期間については、よく注意する必要があります。

どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その3の1 浪費

収入や資産とのバランスを失した浪費によって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりして、破産に至った場合、当該「浪費」行為は免責不許可事由に該当します。

一般的に、「浪費」というと、高価なブランドもののバックなどを買うこと、あるいは、お金をかけた旅行に行くことなどを想像されるのではないでしょうか。

確かにそのような場合が「浪費」に該当することもありますが、自己破産における免責不許可事由としての「浪費」は、単に、高価なブランドもののバックを買ったことが「浪費」に該当するというわけではありません。

当該行為が「浪費」にあたるかどうかは、申立人の財産、収入、社会的地位、生活環境と対比して、浪費にあたると思われる行為が、使途、目的、動機、金額、時期、生活環境等を総合的に考慮して判断されます。

また、「浪費」が免責不許可事由に該当するかどうかの判断にあたっては、申立人の財産が著しく減少したこと、または、過大な債務を負担したことと「浪費」との間に、相当因果関係が認められる必要があるとされています。

免責不許可事由としての「浪費」に該当するかどうかは、評価を伴う法的な概念であると言えます。

どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その3の2 賭博

賭博その他の射幸行為(この記事では一括して「賭博」といいます)によって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりして、破産に至った場合、当該「浪費」行為は免責不許可事由に該当します。

「賭博」というと、競馬、競輪、賭け麻雀などを想像されると思いますが、FXや仮想通貨の取引も「その他の射幸行為」に含まれます。

「賭博」についても、単純に賭け事等をすること自体が免責不許可事由としての「賭博」に該当するわけではありません。

自分の資力(収入、資産の状況)や、判断能力を超える取引をしたことによって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりした場合に、免責不許可事由としての「賭博」に当たるとされています。

免責不許可事由としての「賭博」に該当するかどうかについても、申立人の収入、資産の状況や職業、知識などを総合的に考慮して判断されます。

また、「浪費」の場合と同様に、「賭博」が免責不許可事由に該当するかどうかの判断にあたっても、申立人の財産が著しく減少したこと、または、過大な債務を負担したことと「賭博」との間に、相当因果関係が認められる必要があるとされています。

さらに、「賭博」と、著しい財産減少や過大な債務負担との間に相当因果関係がある場合であっても、「賭博」はその一因に過ぎず、著しい財産減少や過大な債務負担について他に主要な原因がある場合には、その主要な原因をもとに免責不許可事由の有無を判断するべきであるとされています。

なお、既に弁済期にある債務について一般的、継続的に支払いができなくなっている状態(このような状態のことを「支払不能」といいます)にある者が、賭博行為を行っても、それによって新たに著しい財産減少や過大な債務負担を生じない限り、当該行為は、免責不許可事由に該当しないとされています。

浪費や賭博についてのまとめ

これまでお話ししたように、浪費や賭博などの免責不許可事由があると思われても、その行為が、直ちに免責不許可事由に該当するとは限りません。

そのような行為があると思われる場合には、自己破産の相談時に、弁護士に対して、当該行為についてしっかりと話をしておくことが大切です。

気を付けたい!!自己破産手続の費用を左右する「破産管財人」

2023-03-25

破産管財人とは

みなさんは、「破産管財人」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

「破産管財人」とは、破産手続において、裁判所によって選任される弁護士のことです。

破産手続とは、破産した人の財産を現金化して、法律によって定められた優先順位にしたがって、債権者に現金化した財産を分配する手続です。

破産管財人は、破産した人の財産を管理し、現金化し、分配する手続を取り仕切る弁護士です。

破産管財人は、会社の自己破産の場合にはほぼ必ず選任されます。

他方で、個人(自然人)の自己破産の場合には、選任される場合と、選任されない場合があります。

破産管財人が選任されるとお金がかかります!

弁護士に自己破産手続の申立てを依頼する場合、当然のことながら、申立てを依頼するための弁護士費用がかかります。

破産管財人は、申立人が希望してようといまいと、裁判所が必要と判断をすれば、裁判所が選任します。

破産管財人は、裁判所が当該破産手続のために選任する弁護士であり、その弁護士に無料で仕事をしてもらうわけにはいきません。

そのため、破産管財人が選任される場合、破産管財人に仕事をしてもらうための費用が、申立てのための費用とは別に必要となります。

つまり、破産管財人が選任される自己破産事件では、自己破産手続の申立てを依頼する弁護士費用とは別に、破産管財人のための費用が必要になるということです。

破産管財人が選任される場合に必要となる費用の目安

静岡で、個人が自己破産をする場合、破産管財人が選任されるケースでは、破産管財人のための費用として最低でも20万円程度を見ておく必要があります。

破産管財人の選任が必要と思われる場合、自己破産をするためには、申立てを依頼する費用とは別に、破産管財人のための費用を用意する必要があります。

破産管財人の費用は法テラスの立替対象外です。

別の記事で、法テラスを利用して自己破産手続を申し立てる場合のことについてご説明申し上げました。

自己破産を申し立てるために依頼する弁護士の費用は、法テラスを利用することができます。

しかし、生活保護を受給している場合を除き、破産管財人のための費用は、申立人が自分で用意する必要があります。

法テラスを利用する場合でも、破産管財人が選ばれる可能性がある場合には、申立人が自分で破産管財人の費用を工面する必要があります。

破産管財人が選任されるケース1~免責不許可事由があると考えられる場合

これまでお話ししてきたように、破産管財人が選任される場合、申立てを依頼するための弁護士費用とは別に、破産管財人に仕事をしてもらうための費用(最低でも20万円程度)が必要となります。

それでは、どのような場合に、破産管財人が選任されることになるのでしょうか。

あくまで、私個人の経験に基づく、静岡で自己破産を申し立てる場合という前提ですが、破産管財人が必要となる場合の1つ目のパターンは、申立人に免責不許可事由が存在すると考えられる場合です(免責不許可事由についての詳しい内容は、こちらのページをご覧ください)。

免責不許可事由が存在すると考えられる場合、破産管財人は、申立人に免責不許可事由が存在するかどうかを調査したり、免責不許可事由の内容や程度を調査したり、免責不許可事由が存在したとしても、裁量的に免責を認めるべきかどうかについて意見を述べたりします。

このような手続を取るために、破産管財人が選任される場合があります。

したがって、申立人に免責不許可事由が存在すると考えられる場合には、破産管財人の報酬を用意できるかどうかについても検討する必要があります。

破産管財人が選任されるケース2~申立人が個人事業を営んでいた場合、法人代表者である場合

申立人が個人事業を営んでいた場合、申立人の財産状況を明らかにするため、管財人の調査が必要とされることがあります。

申立人が個人事業を廃止してから2年以内に破産を申し立てる場合には、破産管財人が選任される可能性があると考えられます。

また、申立人が法人の代表者である場合、法人の財産と個人の財産が混同していないかを調査するため、破産管財人が選任されます。

破産管財人が選任されるケース3~財産状況等に疑義がある場合、否認対象行為があると考えられる場合

申立人の財産状況に疑義がある場合(たとえば、通帳上不明瞭な多額の入出金がある場合など)や、破産に至る経緯に疑義がある場合(たとえば、申立人が事業を営まない個人であるにもかかわらず、あまりに多額の負債がある場合など)には、それらの疑問点を解明するため、破産管財人が選任され、破産管財人による調査が行われることがあります。

また、申立人に偏頗弁済などの否認対象行為があると考えられる場合にも、破産管財人が選任されることがあります。

自己破産の申立てにあたって注意すべきこと

自己破産の申立てにあたり、破産管財人が選任される可能性がある場合、申立てを依頼する弁護士費用とは別に費用がかかる可能性があります。

破産管財人が選任される可能性があるかどうかは、申立ての準備段階である程度予測をすることができます。

後になって、「破産管財人の費用が必要になりました!」ということの無いよう、自己破産申立てにあたっては、申立てを依頼する弁護士には、破産に至る経緯や財産状況について正直に話をするべきでしょう。

また、自己破産の申立ては、聴取りをしっかり行ってくれる弁護士に依頼するべきと言えます。

とても大事な自己破産と免責不許可事由の話1

2023-03-10

自己破産の最大の目的は免責許可を得ること

個人が自己破産をする場合、その最大の目的は、自己破産の申立てをしたときまでに負っていた借金を支払わなくても良くすることです。

裁判所によって、自己破産の申立てをしたときまでに負っていた借金を支払わなくてもいいですよ、と認めてもらうことを「免責」あるいは「免責許可」といいます。

自己破産を申し立てる最大の目的、目標は、裁判所から免責許可を得ることです。

「免責不許可事由」をご存じでしょうか

免責不許可事由という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

免責不許可事由とは、法律によって、「こういう場合は、免責を認めることはできません」ということで定められている事由のことです。

免責不許可事由は、破産法252条に定められています。

破産法252条1項は、「裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。」と定めています。

つまり、法律上、「次の各号に掲げる事由」=免責不許可事由が存在しない場合には、「免責許可の決定をする」=借金を0にするという定め方になっています。

免責不許可事由が無ければ免責許可が降りるということです。

これからの数回のコラムでは、自己破産を申し立てるにあたって、とても大事な免責不許可事由についてお話をします。

どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その1 虚偽の債権者名簿の提出

それでは、どのような場合が、免責不許可事由とされているのでしょうか。

破産法252条1項は、免責不許可事由として、大きく分けて11個の事由を規定しています。

分かりやすいものから見ていきましょう。

第7号は、虚偽の債権者名簿を提出したことを免責不許可事由としています。

裁判所が免責を許可するかどうかを決定するためには、債権者の氏名や債権額の全てを知ることが不可欠です。

そのため、自己破産の申立てにあたり、申立人は、債権者名簿(あるいは「債権者一覧表」)を裁判所に提出する必要があります。

それでは、「虚偽の」債権者名簿とは、どのような債権者名簿のことを言うのでしょうか。

ここでいう「虚偽」とは、債権者の氏名、名称や負債の額、負債の発生原因(たとえば、借入れなのか、割賦払いなのか、損害賠償債務なのかなどといったこと)について、事実に反する記載をすることや記載すべき債権者名や負債の内容を記載しないことを言うと解釈されています。

もっとも、免責不許可事由が認められた場合、免責許可が降りない可能性があるという強い効力が生じます。

そのため、虚偽の債権者名簿を提出したかどうかということについては、限定的に判断されています。

具体的には、破産者が、破産手続の遂行を妨害したり、債権者を害する目的をもって、意図的に事実に反する記載をしたり、債権者名簿に記載すべき事項についてあえて記載しなかったりした場合に限られるものと考えられています。

たとえば、十年以上前に借入れをした債権者がいて、その債権者のことを忘れていたため、債権者名簿に記載しなかったという場合、確かに、提出された債権者名簿には、記載されるべき債権者の記載が無いということにはなりますが、免責不許可事由としての「虚偽の債権者名簿を提出したこと」には、該当しないのではないかと考えられます。

ただし、このような限定的な解釈を前提とした場合であっても、実際に、特定の債権者をことさら債権者名簿に記載しなかったということで免責不許可とされたケースもあるようですので、注意が必要です。

親戚や友人に迷惑を掛けたくないから、債権者一覧表に記載しない、は絶対ダメ

自己破産申立てのご依頼やご相談を受けた際に、あまり多くはありませんが、依頼者様や相談者様から、「実は親戚や友人からお金を借りているのですが、裁判所から通知が行くと恥ずかしいので、債権者名簿に、親戚や友人を書きたくないのですが・・・」といったお話をいただくことがあります。

また、「親戚や友人には迷惑を掛けられない。彼らにはお金を返したいので、その人たちについては、債権者名簿に書かないでもらえないでしょうか・・・」といったお話をいただくことがあります。

しかし、このようなお申し出のもと、親戚や友人を債権者として、債権者名簿に記載しないことは、これまで述べてきたように、破産法252条1項7号の免責不許可事由に該当する可能性があります。

したがって、親戚や友人からお金を借りていることを知っているのに、それらの人をあえて債権者として債権者名簿に記載しなかった場合、免責許可を受けられなくなってしまう可能性があります。

そのため、親戚や友人に迷惑を掛けたくないから、債権者一覧表に記載しない、ということは絶対にいけません。

実際、先ほどお話ししたようなお申し出を受けたケースでは、いずれの場合でも、依頼者様や相談者様に対しては、免責不許可事由について十分ご説明申し上げ、ご納得いただいた上で、親戚や友人の方についても、債権者一覧表へ記載をしております。

自己破産の一番の目的は、今ある借金を支払わなくても良くする(免責許可を得る)ことですから、この目的に反する行為は絶対にするべきではありません。

法テラスを利用した自己破産について

2023-03-02

法テラスをご存じですか

法テラスとは、日本司法支援センターの愛称です。

日本司法支援センターは、国が総合法律支援法に基づいて設立した法人で、弁護士等による法的なサービスをより身近に受けられるようにすること等を目的としています。

法テラスは、弁護士を紹介したり、弁護士費用を依頼者に代わって立て替えて支払ったりしてくれたりするところというイメージで良いと思います。

自己破産を申し立てるという場面で言えば、自己破産をするために必要な弁護士費用を法テラスが依頼者に代わって弁護士に支払い、依頼者は、法テラスが立て替えて支払った弁護士費用を分割で法テラスに返済していくという仕組みを取っています。

法テラスは誰でも利用できますか

法テラスは誰でも利用できるわけではありません。

まず、会社や法人は法テラスを利用することはできません。

また、自然人(個人)の場合でも、法テラスを利用するためには、法テラスが定める「資力基準」を満たす必要があります。

法テラスが定める「資力基準」には、「収入基準」と「資産基準」があります。

「収入基準」については、たとえば、静岡県にお住まいの単身者の場合、月額の手取り給与額から家賃(ただし、4万1000円が上限)を控除した残金が18万2000円以下であることが必要です。

次に、「資産基準」については、単身者の場合、現金、預貯金、有価証券及び自宅不動産以外の不動産の合計金額が、原則として180万円以下であることが必要です。

以上の「収入基準」と「資産基準」の双方を満たす場合には、法テラスを利用することができます。

静岡県在住の単身者以外の資力基準については、こちらのページをご覧ください。

法テラスを利用した場合、自己破産の弁護士費用はどうなるのか

法テラスを利用して自己破産手続を行う場合、自己破産の申立てを依頼する弁護士が誰であるかを問わず、また、当該弁護士が当該弁護士の事務所においてどのような報酬基準を設定しているかにかかわらず、法テラスが設定した報酬基準が適用されます。

債権者の数が5人以下の場合、実費を含め、15万5000円となります(報酬金は発生しません)。

依頼人は、この15万5000円を、月々5000円、7000円、1万円などの分割払いにより、法テラスに弁護士費用を支払っていきます。

自己破産手続を取られる方は、通常まとまったお金がないことが多いと思いますので、法テラスを利用して自己破産手続を弁護士に依頼することは、非常に有益だと思われます。

法テラス静岡のページではありませんが、法テラスを利用して自己破産手続を申し立てる場合の弁護士費用に関しては、こちらのページが参考になります。

法テラスでは立て替えられない費用があります!! その1~官報公告費用

自己破産をするに際して、法テラスを利用する場合でも、法テラスは全ての費用を立て替えてくれるわけではありません。

自己破産をするにあたって、裁判所に予納金を納める必要がありますが、法テラスは裁判所への予納金は立て替えてくれません。

裁判所への予納金は、大きく分けて2つの場面で必要となります。

予納金が必要となる1つ目の場面は、官報公告費用です。

自己破産をすると、官報という国の広報誌に名前等を掲載しなければなりません。

官報へ名前等を掲載するための費用は、自己破産を申し立てた人が支払う必要がありますが、この費用を法テラスで立て替えて支払ってもらうことはできません。

静岡地方裁判所での自己破産事件の場合、現在では、1万2000円ほどの予納金を用意する必要があります。

官報に関する具体的な説明は、こちらの記事をご覧ください。

法テラスでは立て替えられない費用があります!! その2~管財人報酬

自己破産事件において予納金が必要となる場面のその2は、自己破産事件において、裁判所によって破産管財人という弁護士が選任される場合です。

破産管財人とは、平たく言ってしまうと、破産事件を取り仕切る立場にある弁護士で、自己破産の申立てを依頼する弁護士とは別の弁護士が選任されます(破産管財人に関する詳しいご説明は、こちらの記事をご覧ください)。

破産管財人に無料で仕事をしてもらうわけにはいかないので、破産管財人に対する報酬金を予納金として、予め裁判所に納める必要があります。

静岡地方裁判所への破産申立事件では、破産管財人に対する報酬金(予納金)としては、少なくとも20万円程度を想定しておく必要があります。

予納金としての20万円は、法テラスの立替払いの対象となりませんので、申立人は、自分で20万円を用意しなければなりません。

そのため、破産管財人の選任が必要となることが予測される場合、予納金20万円を計画的に積み立てておくことも、自己破産申立ての重要な準備の一つとなります。

裁判所への予納金が法テラスによって立て替えられる場合

原則として、自己破産事件において、裁判所への予納金は法テラスの立替払いの対象外です(自己破産の申立人が自ら用意する必要があります)。

ただし、生活保護を受給されている方の場合、裁判所への予納金を含め、自己破産手続の申立てに必要となる予納金についても、法テラスによる立替払いを受けることが可能です。

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