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弁護士石川、2026年前半戦を振り返る                                                        

2026-06-30

静岡県外への出張が多かった前半戦

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

2026年も早くも半年が過ぎました。

今年の夏は、昨年に比べると、今のところかなり過ごしやすいように感じます。

今年の前半戦は、静岡県外への出張が非常に多かったです。

昨年の県外出張は1年間で3回だったように思いますが、今年は既に10回県外出張に行っています。

弁護士業界全体としては、今年の5月から、弁護士は訴訟提起をオンラインで行うことが義務付けられる、という大転換点を迎えました(他にも以前のブログで連載をしたように、今年の4月から、離婚後の共同親権制度という、家族法分野における極めて大きな制度変更もありました)。

弁護士のオンライン訴訟提起の義務化から1か月が経ちました。

幸いにしてと言うか何と言うか、今のところ、私が担当している事件で、オンラインで訴訟を提起したことはなく、また、私が、オンラインで訴訟提起された方(被告)の代理人になったこともありません。

早く一件目の事件を経験したいと思っていますが、早くも名古屋の方では、近いうちに次世代のオンライン訴訟システムの運用が始まるようです。

裁判のオンライン化というか、リモートワーク化というか、そういった傾向は今後もますます進んでいくと思いますが、今年の前半はとにかく出張が多かったです。

弁護士人生16年の中でもダントツに県外出張の多い6か月でした。

さて、10回の県外出張のうち、西日本の某駅に出向いた際のことです。

某駅の中のセブンイレブンで見つけてしまいました。

出たーーーー!! 有頂天エイリアンズ!!!

昔のブログでも書いたのですが、ホントに越冬したのかと思いました。

うれしくて2本買いました。

有頂天エイリアンズが売っていたことにびっくりして、翌日、事務所で、事務員さんに「静岡でも売ってます?」と聞きました。

事務員さんからは、「売ってますよ」という回答だったのですが、その日から2か月以上経った現在でも、静岡で有頂天エイリアンズを売っているセブンイレブンを発見することはできていません。

ちなみに、新幹線を乗り換えた際に、売っているならば買い足そうと思い、チェックした他の2駅のセブンイレブンでも、有頂天エイリアンズは売っていませんでした。

私が買った有頂天エイリアンズは、文字どおり「越冬」していたのでしょうか・・・。

静岡でも販売は「再開」されるのでしょうか。

久しぶりに飲んでもやっぱりおいしかった有頂天エイリアンズ。

これだけで、この出張に来て良かったと思いました。

2本じゃなくて10本くらい買っておけば良かったと思っています。

アメリカからのお客様 Welcome back!!

さて、昨年の夏、我が家は初めてホームステイのホストファミリーとなりました。

その際、我が家に来てくれたのが、ハワイ出身のJ君でした(有頂天エイリアンズのリンク先に掲載されている写真のマカダミアナッツはJ君のお土産です)。

その彼が何と! 今回はご家族とともに来日され、私の家族と一緒に夕ご飯を食べてくれました。

↑ 今回たくさんいただいたお土産の一つ。NYのお土産のようです。

とても優しそうで、実直そうなご両親と聡明な妹さんで、なるほど彼の素晴らしい性格は、ご両親から受け継ぎ、ご家族の中で醸成されたものなのだなと思いました。

2週間を我が家で過ごしたJくんが家族を連れて再び来日してくれたことが、とてもうれしかったです。

今年もいよいよ来週の日曜日から、Jくんと同じ大学の学生さんを2週間受け入れる予定です。

今年はどんな子が来るのかなぁ。楽しみにしています。

来年度の予習 ~弁護士会の某役職に就くことになりそうです

私があと半年何も不祥事を起こさず過ごした場合、私は、来年度に、静岡県弁護士会のある役職に就くことになりそうです。

その役職では、色々な行事や催し物(飲み会を含む)の司会進行を務めることが多くあります。

その予習ということで、今年度から、これまであまり参加してこなかった行事や催し物になるべく参加をするようにしています。

その結果、端的に言って、飲み会が増えました。

月に1回くらいのペースで、当該役職の人が司会をしなければならない飲み会があります。

また、私が来年就くことになりそうな役職は、催し物の司会だけでなく、行事で挨拶をする場面が多くあります。

私は面白いことが言えないので、次年度の役職が始まるまでに、スピーチの本的なものを買って、挨拶の勉強をしておきたいです。

今年の2月からゴールデンウィーク明けくらいまではものすごくヒマで、あまりにヒマでオンライン英会話をやっていた開業初年度を思い出したのですが、最近は忙しく、なかなかスピーチの本を買って勉強というところまで手が回りません。

7月中旬以降は少し余裕をもって仕事ができそうな感じがするので、それくらいからは勉強を始めたいと思います。

個人再生手続について ~その2 「住宅資金特別条項」

2026-06-20

個人再生手続の最大の特徴は自宅を残せるという選択肢があること

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申立てとともに、個人再生を注力分野の一つとしております。

前回のブログから、シリーズで個人再生手続についてお話をしています。

自己破産をした場合、破産をした時に所有していた自宅は、基本的には破産手続の中で売却され、破産者(申立人)は自宅から出て行かなければなりません。

仮に破産手続の中で売却されなかったとしても、多くの場合、自宅の土地建物に金融機関の抵当権が付いている(自宅が住宅ローンの担保に入っている)と考えられます。
このため、破産手続の中で自宅が売却されなかった場合も、早晩自宅は競売に掛けられて売却されてしまい、その場合には、やはり自宅から出て行かなければなりません。

これに対し、個人再生手続では、「住宅資金特別条項」と呼ばれる手続を取ることで、個人再生手続によって借金を圧縮しても、自宅を手放さなくて済む可能性があります。

個人再生手続は、今ある借金をそのまま支払い続けることはできないが、自宅があるため、破産は避けたいという方にとってメリットの大きい手続と言えます。

なお、住宅資金特別条項は、個人再生手続における特則的な手続ですが、住宅ローン以外に債務が無い(住宅ローンの支払いだけ遅れてしまっている)という人でも、個人再生手続を申し立てたうえ、住宅資金特別条項の適用を求めることは可能です。

住宅資金特別条項を設定した場合の支払い

個人再生手続は、今ある負債を圧縮し、圧縮した負債を3年から5年かけて分割で支払っていくという手続です。

もっとも、住宅資金特別条項を使用した場合の住宅ローンの支払いについては、元金はもちろん、利息も遅延損害金も圧縮されません。

住宅資金特別条項を使用した場合、それまで支払っていた住宅ローンについては、圧縮されず、従前の約定どおりに支払っていく必要があります。

個人再生手続を利用して住宅を残すという手続を取る場合、①住宅ローンを従前と同様に支払い、②圧縮されたその他の債務を支払い、かつ、③通常の生活をしていく、ということになります。

①から③について支払いの目処が立たない場合、住宅資金特別条項を用いることはできません。

住宅資金特別条項を使用して住宅を残すためには、申立前の段階で、①から③のすべてを支払っていくことができるか、よく検討する必要があります。

住宅資金特別条項には、いくつか条件があり、条件の詳しい内容について、次回以降のブログでお話しします。

なお、個人再生手続においては、前回のブログでお話ししたように、手続を申し立ててから、圧縮された負債の第1回目の支払いが始まるまでには、半年以上の期間がかかるものと思われます。

しかし、住宅資金特別条項を使用する場合、通常は、個人再生手続の申立てと同時に、住宅ローンについては、裁判所による再生計画の認可決定を待たず、これまでどおり支払うことを許可してください、という申立てを行い、手続の進行状況に関係なく、従前どおり住宅ローンを支払っていくことになります。

住宅ローンの支払いが遅れていても要件を満たせば住宅資金特別条項は使用できます

既に住宅ローンの支払いが遅れているという場合でも、要件を満たせば、住宅資金特別条項を使用することは可能です。

住宅ローンの支払いに遅れが生じている場合、再生計画の認可決定の確定時までに弁済期が到来する住宅ローンの元金、利息、既に遅れている住宅ローンの元金、利息、遅延損害金を他の一般債権の弁済期間と同様に原則3年以内で分割弁済することになります。

このような内容を含む再生計画が裁判所に認可されれば、住宅資金特別条項の適用を受けることができます。

また、遅滞分について個人再生の申立前に住宅ローン会社と協議をし、遅滞分についてリスケジューリングをした上でその返済方法に基づいて返済が完了していれば、再生計画案の提出時には、住宅ローンについては遅滞が無いものとして扱われます。

ただし、保証会社が保証債務を履行してから6か月経過した後に個人再生手続を申し立てても住宅資金特別条項を使用することはできません。

住宅資金特別条項を使用することを検討しているものの、既に住宅ローンの滞納が始まっているという場合には、早急にご相談いただく必要があります。

個人再生手続について ~その1 個人再生手続の概要

2026-06-11

個人再生は借金を圧縮して支払っていく手続です

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申立てとともに、個人再生の申立てを注力分野の一つとしております。

そこで、今回からは個人再生手続についてシリーズでお話をしていきます。

近時、破産手続に関するブログを連続して書いてきましたが、自己破産をした場合、破産手続が開始された時点で存在した借金や未払金は、基本的には支払う必要はありません(ただし、税金や養育費など、破産をしても支払義務を免れない債務もあります)。

これに対して、個人再生手続は、裁判所の許可(認可)のもと、借金や未払金を圧縮し、圧縮された債務を3年から5年かけて支払っていくという手続です。

たとえば、300万円の債務がある場合、最大で100万円まで圧縮が可能です。

1000万円の債務がある場合、最大で200万円まで圧縮が可能です。

このように圧縮された債務を3年から5年かけて支払っていくのが個人再生という手続です。

個人再生手続の中には、小規模個人再生と呼ばれる手続と給与所得者再生と呼ばれる手続の2種類がありますが、特に断りがない限り、本シリーズでは、「個人再生」と言うときには、小規模個人再生を指しています。

個人再生手続の中では、現在存在する負債をこれだけ圧縮してください、それをこのようなスケジュールで支払っていきます、という計画書を裁判所に提出する必要があります。

このような計画書を「再生計画」といい、裁判所が再生計画を認可することで、それまであった負債が再生計画の内容にしたがって圧縮されることになります。

個人再生手続を行うことができる要件

どのような場合でも個人再生手続が使えるわけではありません。

まず、住宅ローン以外の負債の金額が5000万円を超える場合、個人再生手続は利用できません。

次に、将来的に継続的にまたは反復的に収入を得る見込みがなければ、個人再生手続は利用できません。

先ほど、個人再生手続では、3年から5年かけて圧縮した負債を支払っていくとお話ししましたが、少なくとも3か月に1回以上は、弁済をしなければなりません(3年後に一括弁済などという支払方法は認められていません)。

このような弁済方法を取るため、将来的に継続的にまたは反復して収入を得られること、が個人再生手続の利用要件になっているのです。

給与所得者であれば、給与明細を提出することにより、この要件は比較的容易にクリアできると思われます。

小規模個人再生手続に要する期間

個人の方の自己破産申立ての場合、当事務所においては、申立ての準備に通常2か月ほどの時間をいただきます。申し立てた自己破産手続が管財事件とならない場合、通常、申立後3か月程度後に免責許可が出て終了となります。

個人再生手続を申し立てる場合、当事務所においては、申立ての準備に2~3か月ほどの時間をいただきます。

上記のとおり、自己破産の場合には、申立後免責許可が降りるまでは3か月程度ですが、小規模個人再生手続の場合、破産手続に比べて裁判所が行う審査や決定の回数が多く、また、その間に債権者から債権額を提出してもらったり、異議がある場合には申し出てもらったり、再生計画に対する意見を申し出てもらったりするなど、債権者に対する手続保障があるため、破産手続に比して時間がかかります。

手続が極めてスムースに進んだとしても、申立てをしてから再生計画が認可されるまでには5か月から半年程度時間がかかります。

再生計画にしたがった弁済(圧縮された債務の支払い)は、再生計画が裁判所によって認可された後に始まります。

通常、再生計画に基づく弁済の第1回は、再生計画の認可決定が確定した日の属する月の翌月となります。

そして、再生計画は、裁判所の認可後、官報で公告され(官報とは国が発行する新聞のようなものです)、官報公告後2週間以内に異議が出されなければ確定となります。

ざっくり言って、認可後1月ほどで再生計画の認可は確定します。

このように、実際に再生計画にしたがった弁済が始まるのは、個人再生手続を申し立ててから半年以上後となることが通常であると思われます。

ただし、個人再生を申し立てる際には、最終案ではないものの再生計画の案を裁判所に提出し、再生計画が認可された暁には、1月あたりこの程度の金額を支払っていきます、ということを裁判所に説明します。

裁判所は、最終的な再生計画案を提出する時期までの間(開始決定後おおむね3か月間)、再生計画案がきちんと履行できるかどうかをチェックするため、申立人に対して、上記の1月あたりの金額を積立てさせることが通常だと思います。

自己破産手続で免責不許可事由(賭博)があっても免責を得るために必要なこと

2026-05-29

自己破産手続の免責不許可事由とは

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申立てを注力分野の一つとしております。

自己破産手続により負債を0にしてもらうことを「免責」といいますが、法律上、破産をしても負債を0にすることはできないとされている事情のことを「免責不許可事由」と言います。

免責不許可事由がある場合、自己破産をしても当然には負債は0になりません。

裁判所に対して、確かに免責不許可事由はあるけれど、こういう事情があるので、今回は裁量的に免責を許可してください、ということを理解してもらい、裁量的に免責を許可してもらう必要があります。

実際には、以前のブログでお話ししたように、免責不許可事由がある自己破産申立てでは破産管財人が選任されることが通常であるため、破産者は破産管財人に対して、上記のようなアピールをして、裁判所に報告をしてもらう必要があります。

今回のブログでは、免責不許可事由がある場合であっても、裁量的に免責を得る方法についてお話ししたいと思います。

「賭博」は免責不許可事由です

免責不許可事由は、破産法252条1項に11個の項目が規定されています。

その中で、個人が自己破産を申し立てる際に最も問題となりやすいのが、第4項の「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」だと思います。

「浪費又は賭博」に関する免責不許可事由についての詳しい説明は、以前公開したこちらのブログをご覧いただきたいのですが、要するに、自分の収入や資産に照らして過大な金額を浪費によって消費したり、賭博で散財したりして、破産申立てに至ったという場合です。

収入の範囲内、資産を食いつぶさないような形での賭博であれば、免責不許可事由には該当しないと考えられます。

免責不許可事由で問題となる「賭博」とは何か?

「賭博」という字面からすると、裏カジノや賭けマージャンなど、違法な賭け事というイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、免責不許可事由で問題となる「賭博その他の射幸行為」には、パチンコ、競馬、競輪、競艇など合法なものも含まれます。

また、「射幸行為」とは、偶然による結果によって大きな利益を得ようとする行為を言いますが、最近では、Fx、仮想通貨、株取引で大損した結果破産に至ったという場合も、「賭博」と同様に免責不許可事由に該当すると考えられます。

「賭博」の免責不許可事由に該当する場合でも免責を得る方法

冒頭にお話ししましたが、免責不許可事由がある場合には、確かに免責不許可事由があるけれど、こういう事情があるので、今回は免責を認めてください、ということを裁判所に理解してもらう必要があります。

アピールすべき観点は、いくつもあると思いますが、「賭博」の免責不許可事由がある中で裁量的な免責を得るためにまず行うべきことは、「賭博」を止めることです。

確かに以前には「賭博」にはまり、借金を増やしてしまいましたが、今は「賭博」を止めており、今後も「賭博」には手を出しません、という姿勢が最も重要です。

逆に、「賭博」により借金を作って、自己破産申立てまで至ったのに、まだ「賭博」をしています、という人に裁量的な免責を認めがたいことは、容易に想像がつくかと思います。

「『賭博』を止める」ことは、免責を得る上で非常に重要だと思います。

他方で、「『賭博』を止める」ことは免責を得るために重要ですが、これだけでは、免責を得るのに物足りないように思います。

肝心なことは、同じ失敗(「賭博」によって自己破産に至ったこと)を二度と繰り返さないことであり、そのような事情を裁判所に分かってもらうことです。

「賭博」の免責不許可事由がある案件に関わる場合、以下のような事項を実践することにより、免責を得やすくなると思いますし、何より、破産者自身の今後の生活にとってもプラスになる(ギャンブルにより二度と失敗しない)と思います。

  • どうしてギャンブルを繰り返してしまうのかを考えるため、ギャンブル依存症に関する書籍を複数読んでもらい、自身と似たところがあるかどうか、ある場合にはどのようにすればよいのかを考え、考えを紙でまとめてもらう。
  • ギャンブル依存症という自覚がある方には、自助グループ(GA ギャンブラーズ・アノニマス)の集まりに参加し、その感想を紙にしてまとめてもらう。

「賭博」の免責不許可事由がある場合でも、上記のような事項を実践することにより、裁量的な免責を得ることは可能であると思います。

最後に、当事務所にあるギャンブル依存症に関する書籍の写真を掲載いたします。

個人的には田辺等さんの「ギャンブル依存症」がおすすめです。

当事務所に破産申立てをご依頼の際、ご希望があれば、各書籍をお貸しいたします。

借金を整理し、人生を再スタートするお手伝いができればと思います。

個人事業主の自己破産申立てについて

2026-05-19

個人事業主の自己破産申立ては原則として20万円以上の予納金が必要となります

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申立てを注力分野の一つとしております。

今回は、個人事業主が自己破産を申し立てる場合の留意点などについてお話をします。

前回までのブログで、自己破産手続には、3つの種類があるということ、手続の種類によって、破産手続に要する費用が変わってくることについてお話ししました。

静岡地方裁判所で個人事業主が自己破産の申立てをする場合、原則として、当該申立ては、「管財事件」として処理されます。

また、過去2年以内に個人事業を営んでいた方が自己破産申立てをする場合も「管財事件」として処理されます。

以下、過去2年以内に個人事業をしていた方と現在個人事業をしている方を合わせて「個人事業主等」と言います。

個人事業主等が破産をする場合には、原則として、裁判所に対して少なくとも20万円の予納金を納める必要があります。

この点が、個人事業主が自己破産を申し立てようとする場合の最も重要な点と言っても良いかもしれません。

何しろ予納金が用意できないと、破産手続が進みません。

このお金を用意できる目処が立っているかどうか、個人事業主の自己破産申立てにおいては、この点が極めて重要です。

個人事業主が自己破産をする場合に必要な資料~確定申告書の写し

個人事業主以外の方が自己破産をする場合に必要となる資料については、以前別のシリーズでお話ししました(個人が自己破産をする場合の必要書類については、こちらの記事をご参照ください)。

このブログでは、個人事業主が自己破産する場合に、個人事業主以外の方が自己破産する場合に必要となる書類にプラスして必要となる書類について説明します。

静岡地方裁判所において個人事業主が自己破産を申し立てる場合、直近2年分の確定申告の資料を提出する必要があります。

個人事業主は、その名のとおり、事業をしている人です。

破産手続の中では、事業に関連する設備、備品、在庫商品や原材料など、現金化して債権者に分配する財産が無いかどうかの確認を行う必要があります。

このため、直近2年分の確定申告の資料が必要となります。

個人事業主が破産をする際に特に説明をする必要がある事項~「減価償却費の計算」

確定申告の資料の中でも、個人事業主の自己破産申立てにあたり、私が特に重要と考えているのが、「減価償却費の計算」の箇所です。

「減価償却費の計算」には、事業で使用している(あるいは、使用していた)様々な資産が計上されます。

帳簿上計上されているものの、実際には既に廃棄してしまったもの、資金繰りに困って売却してしまったもの、計上されているものの換価価値の無いものなど様々な物があると思います。

それらの計上資産について、一つずつ、現存しているのかいないのか、現存していないとすれば、なぜ現存していないのかを裁判所に対して説明する必要があります。

資産を売却したのだとすれば、いつ誰に売却したのか、廃棄したのだとすれば、いつ廃棄したのか、それらの資料は現存するのかを確認していく必要があります。

また、資産が現存している場合、その資産を現時点で売却した場合、どれくらいの価値が見込まれるのか、という見積りを取得する必要もあるかもしれません。

個人事業主等が自己破産をする場合には、破産を申し立てるにあたり、これらの事項について説明をし、資料を用意しておく必要があります。

これらの説明がない状態で申立てをしたとしても、書類を裁判所に出した時点で、裁判所から説明を求められ、その回答をしなければ手続が進まないと思われます。

また、仮に裁判所から求められなくても、破産管財人からお尋ねがあることは必定であると思われます。

通帳の入出金記録も重要

個人事業主等の場合、事業を営んだことのない個人に比べて、通帳の入出金記録は膨大なものとなることが多いと思います。

個人事業主等の自己破産申立てでは、現金化して分けられる財産があるのか無いのか、回収未了の売掛金が無いかどうかを明らかにすべく、通帳の入出金履歴について、これはどういった出金、これはどういった入金という説明をする必要性も、個人事業主以外の方の破産申立ての場合と比べて高いと言えます。

個人の自己破産手続に関する破産手続の種類のお話 その3 ~手続の振り分け等について

2026-05-09

自己破産はどの種類の手続になるかによって必要な費用が変わります

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申立てを注力分野の一つとしております。

これまでのブログで、個人の方が自己破産をした場合の破産手続には、3つの種類があるということ、手続の種類によって、自己破産をするために必要な金額が変わってくるということをお話ししました。

前回までのブログをまとめますと、自己破産を申し立てる場合、裁判所に対して、官報公告費用や、所定の印紙代、郵便切手代を納める必要がありますが(概ね2万円程度です)、破産手続において破産管財人が選任される場合には(「管財事件」の場合には)、これらの費用に加えて、破産管財人のための費用を納める必要があります。

管財事件のうち、破産開始決定後、概ね3か月程度後にある1回目の債権者集会までに、財産の処分が完了すると見込まれる場合には少額管財事件となり、20万円の予納金を納める必要があります。

それ以外の、財産の換価に更に時間を要すると見込まれる事件の場合には、「通常管財事件」となり、さらに高額な予納金を納める必要が出てきます(感覚的には50~80万円ほどです)。

「同時廃止」事件と「管財事件」の振り分けについて

破産管財人が選任されない「同時廃止」事件と、上記2つの「管財事件」とは、どのように選別されるのでしょうか。

静岡地方裁判所に自己破産を申し立てる場合、次のようなケースでは、破産手続を「同時廃止」で進めることはできないとされています(「少額管財事件」か「通常管財事件」になります)。

①過去2年以内に個人事業を営まれていた方

②会社の代表取締役、取締役で、会社も同時に破産を申し立てる場合

③免責不許可事由がある方

④33万円以上の現金を有している場合、現金以外で1つあたり20万円を超える財産を有している場合、または、保有する財産が99万円を超える場合

※ 不動産をお持ちの方の場合、その不動産が明らかに経済的価値のない場合(たとえば、売却困難な山林、原野、農地)、または、不動産に抵当権が設定されており、同抵当権の被担保債務が売却価格を相当程度上回ると考えられる場合でない限り、原則として「管財事件」となります。

⑤申立書や申立書添付の財産目録には記載されていないものの、相当の価値がある財産があると疑われる場合も「管財事件」となることがあります。
たとえば、預貯金口座の通帳等から、継続的に多額の保険料が引き落とされているものの、当該保険について、申立書等に記載がない場合は⑤に該当すると考えられます。
同様に、預貯金等の取引履歴から、株取引、Fx、仮想通貨の取引がされており、相当程度の資産が存在することが疑われる場合も⑤に該当すると考えられます。

破産手続の目的が、破産者の財産を現金化して分配するものであるということは本ブログシリーズの1回目に申し上げました。

先に挙げた①、②、⑤の場合に破産管財人が選任されるのは、破産者の財産の中に現金化して債権者に分けられるものが無いかどうか、中立公正な破産管財人という立場の者がチェックをする必要があるという趣旨によるものと思われます。

また、③については、免責不許可事由があったとしても、破産管財人が調査を行い、裁量的に免責を認めるべき事情があるのであれば、免責が許可される可能性があるため、破産管財人にその調査をさせる趣旨によるものと思われます。

④については、保有財産の状況からして、破産手続費用を支払うことができないとは言えないということで、同時廃止にはならず、管財事件として取り扱うという趣旨であると思われます。

「管財事件」として申し立てるべきものを「同時廃止」事件として申し立ててしまった場合

「管財事件」として申し立てることが相当である破産事件を、「同時廃止」事件として申し立ててしまった場合、基本的に裁判所は、当該事件を「同時廃止」事件としては扱わないと考えられます。

申立後、裁判所から、当該事件は「管財事件」として扱うことが相当であるため、追加で予納金を準備するように指導され、予納金の確保ができない限り手続は進められないということになるでしょう。

このような場合、申立人(破産者)は予期せぬ出費を強いられることになり、手続の進行としても、当初から「管財事件」を想定して準備がされていた場合と比べ、遅延することが予想されます。

そのような事態に陥らないよう、当該事件が「管財事件」として処理されるべきものであるのか、「同時廃止」事件として処理されるべきものであるのかの見極めは重要であると言えます。

個人の自己破産手続に関する破産手続の種類のお話 その2 ~「管財事件」について

2026-04-29

破産事件における「管財事件」とは

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申し立てを注力分野の一つとしております。

前回のブログでは、個人の方が自己破産をした場合の破産手続には3つの種類があるということ、及び、その一つである「同時廃止」手続についてお話ししました。

今回は、残りの2つの手続についてお話をします。

まずは、「管財事件」のご説明です。

破産手続における「管財事件」では、裁判所が、破産管財人という役割の人を選任します。

破産管財人は、弁護士が選任されることが通例で、破産の申立てを依頼した弁護士とは別の弁護士が選ばれます。

前回のブログで、破産手続とは、破産者の財産を現金化して債権者に平等に分配する手続であると申し上げました。

破産管財人は、この「破産者の財産を現金化して債権者に平等に分配する手続」を取り仕切る者です。

先ほどお話ししましたように、破産管財人には、基本的には弁護士が選任されます(少なくとも私は弁護士でない者が破産管財人に選任された事例を知りません)。

破産管財人として選任された弁護士に、無料で、財産の現金化、分配手続をしてもらうわけにはいきません。

そのため、破産管財人が選ばれる破産手続(「管財事件」)においては、申立人(破産者)は裁判所に対して、破産管財人に仕事をしてもらうための費用(破産管財人の報酬)を納めなければなりません。

このように、破産管財人が選任される破産手続(「管財事件」)では、そうでない手続(「同時廃止」)と異なり、破産手続に必要となる費用が増えることになります。

破産事件における「少額管財事件」(「小規模管財事件」)とは

破産手続には3種類の手続があり、その一つが「同時廃止」手続でした。

残りの2つは「管財事件」ですが、「管財事件」は、「通常管財事件」と「少額管財事件」に区分されます。

この3つの手続のいずれにおいても、破産を申し立てる際には、官報公告費用や、所定の印紙代、郵便切手代を納める必要があります(概ね2万円程度です。「官報」に関するご説明はこちらをご覧ください)。

他方で、先ほどお話ししましたように、破産管財人が選任される事件では、上記の費用に加えて、裁判所に予納金を納める必要があります。

「少額管財事件」の何が「少額」かと言いますと、裁判所に納める予納金が「少額」なのです。

ただし、その予納金は、社会一般の「少額」という感覚からは解離していると思われ、静岡地方裁判所の場合、20万円程度は納める必要があります。

それでも、「通常管財事件」では、静岡地方裁判所の場合、80万円程度の予納金を納める必要がありますので、「通常管財事件」と比べれば、確かに「少額」ではあります。

「少額管財事件」となるか、「通常管財事件」となるかの区分けは、破産管財人がどれほどの業務を行わなければならないか、ということがポイントです。

先ほど、少額管財事件であれば、裁判所に納める費用は20万円となり、通常管財事件の場合は、それよりも相当高額であること、それらの費用は、破産管財人の報酬金の趣旨を含むものであるとお話ししました。

つまり、破産管財人の業務が多くなることが見込まれる場合には、それなりの費用を納めなければならず、通常管財事件となります。

逆に、破産管財人の業務が少なくて済むことが見込まれるのであれば、比較的低額な予納金で済む「少額管財事件」として扱われる、ということになります。

より具体的には、少額管財事件として扱われるためには、1回目の債権者集会(破産手続の開始決定日から概ね3か月後に開かれます)までに、破産者の全ての財産について、現金化が終了しているか、明らかに売れないだろうということで破産財団から放棄されるか、自由財産の拡張によって破産者が引き続き保有することが認められるか、いずれかの処分が見込まれることが必要です。

このように、破産事件の内容として、比較的小規模である事件を「少額管財事件」として扱うため、「少額管財事件」は、「小規模管財事件」とも呼ばれています。

少額管財事件の予納金はいつまでに用意しておく必要があるか?

裁判所への予納金(少額管財事件の場合には20万円)は、基本的には裁判所に破産を申し立てる時までに用意しておく必要があります。

理屈上は、裁判所が破産手続の開始決定を出し、破産管財人が選任され、同人に予納金を振り込む時までに、ということにはなりますが、申立時に用意ができておらず、かつ、その目処も立っていないということになりますと、破産手続を進められません。

そのため、私としては、保険の解約返戻金が、申立日の数日後に入金されることが確実であるなどというような例外的ケースを除き、原則的に申立時までに予納金を用意しておく必要があると考えています。

個人の自己破産手続に関する破産手続の種類のお話 その1 ~「同時廃止」手続について

2026-04-20

破産手続には大きく分けて3つの種類があります

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申し立てを注力分野の一つとしております。

今回から3回にわたり、個人の方が自己破産をした場合の手続の種類についてお話ししたいと思います。

自己破産をした場合、裁判所が破産手続の開始決定を行い、破産手続が進行していくことになりますが、破産手続の種類は1つだけではありません。

大きく分けると3つの種類があると言えます。

そして、どの種類の破産手続になるかによって、破産手続に必要となる費用が増えたり、破産手続が始まってから終わるまでの期間が長かったり、短かったりします。

そのため、自己破産を申し立てるにあたって、申立人の破産手続が、3種類ある破産手続の中のどの種類に当たるのかを見通すことは大変重要です。

同時廃止手続

手続の1つ目は、「同時廃止」と呼ばれる手続です。

通常、裁判所に自己破産を申し立てた場合、裁判所は、申立ての際に提出された書類について審査をします。

そして、提出された書類の内容から、裁判所が破産手続を開始しても問題がないと考えた場合、裁判所は、破産手続の開始決定を出します。

本来、破産手続とは、裁判所による管理監督の下、破産者(申立人)の財産を現金化し、債権者に平等に分配する手続を言います。

破産手続が開始されたものの、債権者に分けられるほどの財産が存在しない(正確には、債権者に財産を分けるための手続を進められるだけの財産が存在しない)ということになりますと、裁判所は、破産手続を「廃止」(終了)させます。

「同時廃止」の自己破産事件とは、破産手続を進められるだけの財産が破産者に存在しないことが明らかであるため、破産手続を開始すると同時に、破産手続を「廃止」する(終了させる)というものです。

破産手続が始まった瞬間に終わるというイメージです。

個人の方の場合、お金が無いので破産をする、ということが通常だと思います。
私がこれまでに個人の方からご依頼をいただいた自己破産申立事件の9割近くは「同時廃止」手続です。

個人の借金を0にする手続は「免責手続」といいます

ところで、個人の方が自己破産を申し立てる目的は、借金を0にすることですが、借金を0にすること自体は、理屈上、破産手続とは別の「免責手続」という手続により行われます。

そのため、破産手続が、上記のように開始と同時に廃止された場合(「同時廃止」手続)であっても、破産手続に引き続いて、破産者の借金を0にするかどうかという「免責手続」が続きます。

同時廃止手続の場合、理屈上、破産手続は、手続の開始と同時に終わってしまうのですが、その後に行われる「免責手続」を経て、晴れて借金は0になるということになります。

静岡地方裁判所における「同時廃止」手続の場合、開始決定後おおむね2か月から2か月半ほどで、免責を許可するかどうかを決める日が設定されます。

コロナ前は、その設定された日に、裁判所に赴き、裁判官から、申立書に記載された事実に間違いはないか、破産に至った原因についてどう思っているか、反省すべき点はないか、今後の生活についてどう考えているか、二度と破産しないようにするためにはどのような点に気を付けなければならないか、などの質問があり、破産者が質問に回答するという手続を経ることが通常でした。

しかし、コロナ後は、少なくとも私の知る限り、静岡地方裁判所においては、同時廃止の手続で、破産者が裁判所に赴くということは無く、上記のような問答の代わりに、破産に至ったことに関する反省文を提出し、免責の可否について裁判所の判断を待つ、という運用になっています。

「同時廃止」手続の特徴

「同時廃止」手続は、3種類ある破産手続の中で、もっともシンプルで、通常、破産手続が開始されてから免責許可が降りるまでの期間が短いものです。

このため、破産を申し立てる人にとっても、最も負担の少ない手続と言えます。

「同時廃止」とならない破産手続のことを「管財事件」と呼びますが、「管財事件」となった場合の破産手続や、どのような場合に「管財事件」となるのかということにつきましては、次回以降のブログにてご説明いたします。

当事務所では、自己破産事件を注力分野の一つとしております。

個人の自己破産、会社の自己破産を問わず、借入れ、負債の整理を検討されている方は、是非一度当事務所にご相談ください。

財産分与、婚姻費用、養育費に関連する情報開示命令

2026-04-10

相手方の財産が分からないと適切な財産分与はできません

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

我が国においては、本年4月1日より、家族法に関する改正民法が施行され、その中の一つとして、財産分与、婚姻費用、養育費等に関連する情報開示命令制度が設けられました。

今回のブログでは、同制度についてご説明いたします。

財産分与は、基本的に婚姻中の夫婦が婚姻後に積み上げてきた財産を、離婚時において半分ずつに分けるという制度です。

もっとざっくり言ってしまえば、夫婦が婚姻後に取得し、現在も残っている財産を足して2で割るという制度です。

財産分与を行うためには、大前提として、夫婦それぞれがどのような財産を持っているのかを明らかにする必要があります。

しかしながら、現実には、配偶者の持っている財産が不明であったり、○○銀行の預金口座を持っているということは知っていても支店が不明であったり、具体的な預金残高が不明であったりすることがあります。

このような場合、夫婦全体の正確な財産の金額を算定することができず、本来もらえるはずの分与額よりも財産分与の金額が少なくなってしまうということが起こり得ます。

相手方の収入が分からないと適切な婚姻費用、養育費の支払いを受けられません

婚姻費用や養育費の月額を決める場面では、裁判所の公式ホームページに掲載されている婚姻費用算定表、養育費算定表に基づいて金額が決定されることが多いといえます。

そして、これらの表に基づいて婚姻費用や養育費の月額を決める場合、金額算定の基礎となるのは、当事者(夫婦、あるいは父母)の収入です。

この場面でも、相手方当事者の収入を知らない、あるいは、その収入を証明できる資料(源泉徴収票、課税証明書、給与明細など)が無いために、相手方に関して適切な収入金額を把握、証明できず、その結果、適切な婚姻費用や養育費の支払いを受けられないということが起こり得ました。

改正民法により新設された情報開示制度

令和8年4月1日施行の改正民法により、財産分与、婚姻費用、養育費に関する調停、審判、あるいは離婚訴訟において、当事者からの申立てまたは裁判所による職権に基づき、当事者に対し、収入ないし資産に関する情報を開示するよう命じることができるという制度が始まります(以下「情報開示命令」といいます)。

同命令に対し、正当な理由なく情報を開示しなかったり、虚偽の情報を開示したりした当事者は、10万円以下の過料に処せられる可能性があります。

なお、情報開示命令では、第三者についての情報を当事者に開示するよう求めることができるようです。

たとえば、養育費の支払いを求める調停において、支払義務者が再婚していたような場合、再婚相手の収入資料についても開示を求めることができると、ある種の解説書には記載があります。

しかし、当該再婚相手の同意なく同人の収入資料を提出することには抵抗があるでしょうし、当該再婚相手が資料の提出に同意しなかったような場合には、やはり本制度によっても開示はできないという結論になってしまうのではないと思います。

情報開示命令の有用性について

改正民法施行前においても、文書送付嘱託、文書提出命令といった制度によって、当事者の収入あるいは財産に関する資料の開示を求めるという方法は存在しました。

しかし、これらの制度を使って、たとえば金融機関に相手方の預金口座の残高や入出金履歴の開示を求めても、金融機関が、相手方の同意が存在しないことを理由として開示を拒否するということが通例であったように思います。

そもそも論として、紛争の相手方に財産資料等の開示を求めても開示されないので、金融機関等の第三者に、預金残高等の開示を求めていたというのが実情であったと思います。

今回の民法改正で、紛争の相手方に対して、過料の制裁をもって財産開示を迫るという制度ができましたが、過料というのは、罰金とは異なり、処せられても前科はつきません。

たとえば財産分与の場面で、相手方が知らない資産が1000万円存在したとした場合、開示すれば財産分与額が500万円増え、開示しなければ10万円の過料の制裁を受ける可能性があるとします。

そういった場面で、果たして情報開示命令によってどれほどの当事者が当該情報を開示しようという気になるのか、疑問なしとは言えませんが、このような制度ができた以上、必要な場面では活用したいと思います。

「法定養育費」など養育費に関する民法改正について

2026-03-31

「法定養育費」制度の新設

皆様、こんにちは。 静岡で弁護士をしております石川アトムです。
いよいよ明日令和8年4月1日より、家族法に関する改正民法が施行されます。


改正民法においては、「法定養育費」と呼ばれる制度が新設されました。
今回のブログでは、同制度についてご説明いたします。

まず、とても大事なことですが、法定養育費制度の適用があるのは、改正民法の施行後、つまり、令和8年4月1日以降に離婚をした父母間の子に限られます。

法定養育費は、養育費について取り決めをすることなく父母が離婚した場合に、離婚のときから引き続き子の監護を主として行う父母から、他方の父母に対して法務省令が定める金額(子1人あたり1月あたり2万円)を請求できることとした制度です。

請求の終期は、父母が協議により養育費の分担について定めをした日、養育費の分担についての審判が確定した日、子が成年(18歳)に達した日のいずれか早い日とされています。

法定養育費を請求できる者は「父母の一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うもの」です。
ここでいう「監護」は現実的に子を監護している者をいい、その者が親権や監護権を有しているかどうかは問題とならないとされています。

子が複数おり、子が父、母のそれぞれと生活しているという場合、父母はお互いに自身が監護する子について法定養育費を請求することができます。

他方で、子が離婚直後は母と生活していたものの、後に父と暮らすようになったという場合、父は「離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うもの」とは言えないため、母に対して法定養育費を請求することはできません(父母の協議により養育費の金額を定める必要があります)。
その一方で、母は、離婚時から子が父と暮らすようになった時点までの法定養育費(過去分)を請求することができます。

法定養育費は遡って請求することが可能です

法定養育費の支払期は、毎月末日とされています。

これまで実務上、養育費の請求権は、原則として権利者が義務者に対して請求した時点で発生するものと考えられてきました。

逆に言いますと、請求時よりも前に「発生」していた養育費を、請求時にさかのぼって請求することは認められていませんでした。

これに対して、法定養育費制度の施行後は、法定養育費の発生要件を満たせば、離婚時から請求時までは法定養育費の請求が可能となりました。

また、請求時以降の養育費は、これまでと同様に、その後に調停ないし審判等により定められた金額の養育費を請求することができます。

法定養育費を請求される側になったら?

改正民法では、法定養育費の支払義務者が、支払能力を欠くためにその支払をすることができないこと、またはその支払をすることによって生活が著しく窮迫することを証明したときは、法定養育費の全部または一部の支払いを拒むことができるとされています。

また、家庭裁判所が養育費を定める審判を行う場合、養育費の変更の審判を行う場合、法定養育費の支払義務者の支払能力を考慮して、法定養育費の支払義務の全部または一部を免除することなどが可能とされています。

なお、支払義務者が法定養育費の減免や支払猶予を求めるためには、養育費を定めることを求める(あるいは、その増減を求める)調停または審判を提起し、その中で法定養育費の減免等を主張する必要があると解されています。

養育費に関する先取特権

先取特権(「サキドリトッケン」と読みます)という制度を聞いたことがあるという方は少ないと思います。

これまでは、相手方が任意に養育費を支払わない場合、調停または審判を経た後、それらを基礎として預金口座や給与債権などを差し押さえるという手続を取る必要がありました。

つまり、養育費の未払いに関して差押えをしようとした場合、強制執行認諾文言付きの公正証書によって養育費の取り決めをした場合でなければ、差押えに先立って、まず調停を成立させるか、確定した審判を得る必要がありました。
しかし、それらの手続きには少なくとも数か月を要することが通常でした。

このように、従前、養育費の支払権利者が相手方の財産を差し押さえようとしたときには、相当な手間と期間が必要となっていたのですが、「先取特権」は、このような調停、審判手続を経ることなく、直ちに相手方の資産を差し押さえることができるという権利です。

改正民法の施行後は、法定養育費には全額先取特権が付されています。
また、当事者間で作成した合意書や念書などの内容のうち養育費に関する部分は、先取特権の対象となります。

先取特権を行使して、差押え等ができる金額は、子1人につき1月あたり8万円とされています。

このように、改正民法の施行後は、養育費の請求に関して先取特権が利用できることにより、従来よりは、養育費を現実的に回収するということが容易になるものと思われます。

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