むち打ちになってしまった

1 むち打ち(頸椎捻挫)とは

むち打ちとは、交通事故によって、首が鞭のようにしなり、首に不自然な力が加わることにより発生するもので、痛みなどの症状を伴います。

医師が作成する診断書では「頸椎捻挫」、「頸部捻挫」、傷性頚部症候群」などと記載されます。

むち打ちとなってしまった場合、3か月程度で快方に向かうケースが多いようですが、3か月を超えて長期間痛みが残存するというケースもあります。

また、治療を継続したものの、最終的に、頸椎捻挫を原因とする痛みが残ったということで、後遺障害認定(後遺障害等級14級9号の「局部に神経症状を残すもの」等)を受けるケースもあります。

2 むち打ち(頸椎捻挫)の場合によくあるご相談~接骨院や整骨院の利用

(1)接骨院や整骨院の利用開始にあたって

交通事故により、むち打ち(頸椎捻挫)となってしまった場合、まずは整形外科での診察を受けていただきたいと思いますが、その後、接骨院や整骨院を利用したいと考えられる方も多いと思います。

接骨院や整骨院については、利用を開始する前に予め相手方保険会社に対して、利用したい接骨院や整骨院を伝えておく必要があります。

相手方保険会社に連絡をせずに利用を開始した場合、接骨院や整骨院での施術費の全部または一部が支払われないリスクがあるからです。

交通事故に基づく損害賠償請求において支払われる「治療費」は、当該事故と因果関係があるものに限られます。

そのため、相手方保険会社と接骨院や整骨院との間で、交通事故によって生じた怪我の範囲について認識が食い違っていると、施術費のうちの一部が、当該交通事故とは関係がなく、過剰に行われた施術に対する費用であるとして、相手方保険会社から支払われないことになるというおそれがあります。

たとえば、交通事故で頸椎捻挫を負った人が整骨院に行ってみたら、足も良くないと言われたので、首と足の施術をしてもらったが、保険会社からは、足は交通事故と関係が無いので施術費は支払いませんと言われてしまうようなケースです。

このようなことにならないよう、接骨院や整骨院の利用を開始するにあたっては、予め相手方保険会社に、治療を受ける接骨院や整骨院の名称、連絡先を伝えておく必要があります。

(2)接骨院や整骨院と整形外科医等との関係

接骨院や整骨院を利用される場合でも、整形外科等の医療機関に定期的に受診することが必要です。

医師による「症状固定」の判断が重要であることは先ほど述べました。

賠償の対象となる「治療費」の期間を決定づける「症状固定」は、医師が判断するものであり、接骨院や整骨院の柔道整復師が判断するものではありません。

そのため、接骨院や整骨院の利用を開始した後も、定期的に医師の診察を受ける必要があり、その際には、医師に対して、ご自身の症状を適切に伝えていただく必要があります。

(3)接骨院や整骨院の治療費の打切り

保険会社によっては、頸椎捻挫(むち打ち症)に対する治療期間に関して、交通事故日から3か月や6か月といった内部的な基準を設け、当該基準にしたがって、治療費の支払いを打ち切ると連絡してくることがあります。

特に、接骨院や整骨院での治療、施術に関しては、一定期間での打切りを宣告されることが多いと思われます。

弁護士を代理人として選任しておくことにより、相手方保険会社から治療打切りの話が出た場合に、治療費の支払い期間を延長してもらうよう交渉したりすることが考えられます。

被害者側においてもっとも望ましいケースは、医師が接骨院や整骨院による施術について肯定的に評価しており、医師から、接骨院や整骨院での治療継続の必要性を肯定してもらえることですが、これは、主治医の判断によるところ(ケースバイケース)です。

治療費の支払い打切りについては、弁護士が交渉したとしても延長が認められないこともありますが、その場合には、相手方保険会社によって治療費の支払いが打ち切られた後に被害者が治療を続けた場合、支払いを打ち切られた後の治療費はどのような扱いとなるのかについて、弁護士からご説明いたします。

3 「症状固定」による治療打切り

(1)「症状固定」とは

残念ながら現代の医学では治療を続けたとしてもこれ以上お怪我の状態が良くならないという状態のことを「症状固定」と言います。

交通事故によってお怪我を負われた場合、お怪我が完治して治療終了となるか、「症状固定」の状態に至るか、いずれかによって治療は終了します。

(2)「症状固定」時期を判断するのは医師

むち打ちの症状(頸椎捻挫)を負われた方も、「症状固定」の段階に至れば、治療は終了となります。   

事故によって負った怪我が症状固定の状態にあるかどうかを決めるのは医師であり、相手方保険会社ではありません。

そのため、適切な期間治療を受けるためには、医師において適切な時期に「症状固定」と判断してもらう必要があります。

(3)医師から適切な時期に「症状固定」の判断を得るためには

医師に適切な時期に「症状固定」と判断してもらうためには、症状固定前(治療中)における医師との診察時において、被害者から医師に対して、怪我の症状等についてどのようなことを伝えるべきかということが大切になってきます。

症状固定前から弁護士に相談しておくことで、治療中に、医師に対して、どのようなことを話しておくべきかということについてもアドバイスを得ることができます。

他方で、症状固定後から弁護士にご相談いただく場合、医師による「症状固定」の判断を覆すことは非常に困難です。

そのため、適切な期間治療を受け、適正な慰謝料金額を得るためには、症状固定前から弁護士に相談しておくことが有益です。

(4)症状固定後の治療費

交通事故に基づく損害賠償請求においては、当然のことながら、「治療費」も相手方保険会社への請求の対象となります。

しかし、請求が認められる「治療費」は、原則として症状固定時までに支出された治療費です。

たとえば、交通事故によりむち打ち症となり、治療を続けたものの完治せず、「症状固定」の状態に至った後も、なお痛みがあったために、後遺障害等級14級の「局部に神経症状を残すもの」という後遺障害の残存が認められたという場合でも、症状固定後の治療費は、賠償の対象にはなりません。

一旦「症状固定」の判断が出ると、その後の治療費は、原則として、賠償の対象にはならないのです(ただし、後遺障害の内容や程度によっては、例外的に将来治療費が認められるケースもあります)。

そのため、適切な時期に「症状固定」の判断を得ることが重要です。

(5)症状固定後も治療を継続する場合

「症状固定」後も、お痛み等があり、治療を続けたいという場合には、「症状固定」後の治療費が自己負担になる(相手方から支払ってもらえない)可能性が高いという前提で、治療を続けていただくことになります。

裁判を起こした場合、医師の判断に基づく「症状固定」の時期が不適当であるということを主張し、「症状固定」の時期そのものを争うということができないわけではありませんが、治療の初期から継続的に診察を続けてきた医師の判断を覆すということは難しい場合がほとんどです。

4 症状固定後~後遺障害の申請

(1)むち打ち(頸椎捻挫)に関連する後遺障害

むち打ち(頸椎捻挫)について治療を続けたものの、完治せず、「症状固定」となった時点でも、まだお痛みが残っている場合、後遺障害認定を受けるべく、後遺障害に関する申請をするかどうかを検討することになります。

むち打ち(頸椎捻挫)と関連する後遺障害としては、後遺障害等級12級の「局部に頑固な神経症状を残すもの」と後遺障害等級14級の「局部に神経症状を残すもの」があります。

(2)後遺障害等級14級9号「局部に神経症状を残すもの」

自賠責の実務においては、「局部に神経症状を残すもの」とは、「障害の存在が医学的に説明可能なもの」をいうとされています。

「医学的に説明可能」とは、当該症状が当該事故によって身体に生じた異常によって発生していると説明可能なものをいうとされており、被害者の自覚症状のみでは14級9号には該当しないと判断されてしまうことが多いと言われています。

(3)後遺障害等級12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」

自賠責の実務においては、「局部に頑固な神経症状を残すもの」とは、「障害の存在が他覚的に証明できるもの」をいうとされています。

12級13号には「頑固な」という文言が付いていますが、14級9号の「局部に神経症状を残すもの」との違いは、痛みの程度にあるわけではなく、症状が他覚的に証明可能かどうかという点にあります。

他覚的に証明されるか否かは、種々の検査結果をもとに判断されます。

(4)後遺障害認定の申請にあたって

後遺障害は、申請すれば必ず認められるというものではありません。

後遺障害に該当しない(非該当)という判断が出された場合、後遺障害の申請のために取得した後遺障害診断書の取得費用等が自己負担となってしまうことがあります。

そこで、後遺障害の認定を受けるべく申請をするかどうか、弁護士に相談をすることが大切です。

また、後遺障害認定の申請にあたっては、後遺障害診断書に十分な内容が記載されているかどうかが重要です。

後遺障害診断書の記載内容によっては、後遺障害診断書を再度取得したり、医師に加筆を求めたりする必要がある場合もあります。

12級13号の「局部に頑固な神経症状を残すもの」はもちろん、14級9号の「局部に神経症状を残すもの」においても、レントゲンやMRIといった画像所見、また、スパーリングテスト・ジャクソンテスト、徒手筋力テスト(MMT)といった神経学的検査の結果が重要となります。

神経学的検査の結果は、それらの検査が実施されていれば、後遺障害診断書に記載されていることが通常と思われます。

後遺障害認定の申請を出す前には、後遺障害診断書をご持参のうえ、弁護士と相談することをお勧めします。

後遺障害が認められた場合の慰謝料に関するご案内は、こちらのページをご覧ください。

後遺障害が認められた場合の逸失利益に関するご案内は、こちらのページをご覧ください。

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