絶対にしてはいけない偏頗弁済(偏ぱ弁済)

偏頗弁済(偏ぱ弁済)とは

皆さんは、偏頗弁済(偏ぱ弁済)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
非常に読みにくい漢字ですが、「へんぱべんさい」と読みます。

「偏頗」の「偏」という漢字は、送り仮名の「り」をつけて、「偏り」(かたより)と読みます。
「偏頗」の「頗」は、「かたよる・公平でない」という意味がある漢字のようです。
私も今回、このブログを書くにあたって「頗」の意味を調べて初めて知りました。

このように、偏頗弁済(偏ぱ弁済)とは、偏った弁済、不公平な弁済という意味です。
そして、偏頗弁済という言葉は、自己破産手続の中で行われた偏った弁済、不公平な弁済に対して使われる言葉です。

偏頗弁済が、どのように偏った弁済であるのか、どのような意味で不公平な弁済のことをいうのかと言うと、大まかに言えば、自己破産手続が開始されている場合に、破産手続が開始される前から持っていた財産で、一部の債権者に対してだけ弁済をすること、あるいは、自己破産手続の開始前に、一部の債権者に対してだけ弁済をしてしまっていたことを意味します。

「偏頗弁済」は、個人の自己破産手続においても、法人(会社)の自己破産手続においても、たびたび問題となる行為です。

例えば、個人の自己破産の場合、弁護士に自己破産手続を依頼している中で、お金を貸してくれていた親戚には迷惑は掛けられない、ということで、他の債権者には弁済をすることができない状況であるのに、こっそり親戚から借りたお金だけ返してしまうといったことが考えられます。

会社の自己破産の場合には、弁護士に自己破産手続を依頼している中で、他の債権者には全般的に支払いができないものの、長年良くしてもらった取引先に支払いをしないとその取引先も破産してしまう可能性があると思い、その取引先にだけ弁済をしてしまうといったことが考えられます。

破産者の多くは、親戚や取引先に迷惑を掛けたくないから、という気持ちで、偏頗弁済を行ってしまいます。
そのような弁済行為は、心情としては理解できるのですが、自己破産を申し立てた後、大きな問題となってしまうことがあります。

偏頗弁済は、なぜいけないのか?

一般的な語感からしても、偏った弁済、不公平な弁済が、推奨されないものであることはお察しいただけるかと思いますが、偏頗弁済がなぜいけないのか、ということについて、まずは、理屈の面からご説明いたします。

自己破産手続を申し立てるに際しては、破産法の規定に則って申立てをする必要があります。

そして、破産法第1条は、破産法の目的について、「債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との権利関係を適切に調整する」こと、「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る」こと、と定めています。

つまり、自己破産手続は、利害関係人の利害を適切に調整し、債務者の財産を適正かつ公平に清算することを目的としています。

そのため、利害関係人の利害を適切に調整したり、債務者(申立人・破産者)の財産を公平に分配したりすることに反するような偏頗弁済は、自己破産手続(破産法)の目的に反するため、問題になるのです。

偏頗弁済をすると、どうなるのか

偏頗弁済がされた場合、弁済を行った申立人・破産者側と、弁済を受けた債権者側の双方に対して、望ましくない効果が発生する可能性があります。

まずは、偏頗弁済をした場合、申立人・破産者との関係です。

偏頗弁済をした場合、弁済をした申立人・破産者の自己破産手続において、当該偏頗弁済は免責不許可事由に該当する可能性があります。

偏頗弁済をすると、免責を受けられない(借金が0にならない)可能性があるという重大な効果が発生するおそれがあります(免責不許可事由についての詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください)。

ただし、全ての偏った弁済、不公平な弁済が免責不許可事由に該当するわけではありません。
詳しくは、こちらのページをご覧ください(現在執筆中・次々回掲載予定)。

次に、偏頗弁済を受けた場合、債権者との関係です。

偏頗弁済を受けた債権者は、弁済をした申立人・破産者の自己破産手続において選任された破産管財人から、申立人・破産者から受け取った弁済金を返還しなさい、と求められる可能性があります。

このような破産管財人の請求を「否認権の行使」といいます。

破産管財人に関する詳しいご説明はこちらのページをご覧ください。

ただし、破産管財人による「否認権の行使」も、全ての偏った弁済、不公平な弁済が対象となるわけではありません。
詳しくは、こちらのページをご覧ください(現在執筆中)。

偏頗弁済のまとめ

偏頗弁済が行われた場合、申立人・破産者との関係では、免責不許可事由に該当する可能性があり、弁済を受領した債権者においても、その返還を求められる可能性があります。

特に、破産者においては、免責不許可事由に該当するような偏頗弁済を行ってしまった場合、借金が0にならない可能性があります。

偏頗弁済は、申立人・破産者が、義理や人情などから、良かれと思って行うことが多いのですが、そのために非常に大きなしっぺ返しを受けてしまう可能性があります。

このような偏頗弁済は、絶対にしてはいけません。

仮に自己破産手続を弁護士に相談した時点で、既に不公平な弁済をしてしまっている場合には、弁護士に対して不公平な弁済をしてしまった事実をしっかりと話しておくべきです。

そして、自己破産を申し立てる前に、不公平な弁済に関して、できる限りの是正措置を行っておくべきです(弁護士とともに、債権者に事情を話し、弁済金の返還を求めることが考えられます)。

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