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自己破産手続で免責不許可事由(賭博)があっても免責を得るために必要なこと  その1

2026-05-29

自己破産手続の免責不許可事由とは

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申立てを注力分野の一つとしております。

自己破産手続により負債を0にしてもらうことを「免責」といいますが、法律上、破産をしても負債を0にすることはできないとされている事情のことを「免責不許可事由」と言います。

免責不許可事由がある場合、自己破産をしても当然には負債は0になりません。

裁判所に対して、確かに免責不許可事由はあるけれど、こういう事情があるので、今回は裁量的に免責を許可してください、ということを理解してもらい、裁量的に免責を許可してもらう必要があります。

実際には、以前のブログでお話ししたように、免責不許可事由がある自己破産申立てでは破産管財人が選任されることが通常であるため、破産者は破産管財人に対して、上記のようなアピールをして、裁判所に報告をしてもらう必要があります。

今回のブログでは、免責不許可事由がある場合であっても、裁量的に免責を得る方法についてお話ししたいと思います。

「賭博」は免責不許可事由です

免責不許可事由は、破産法252条1項に11個の項目が規定されています。

その中で、個人が自己破産を申し立てる際に最も問題となりやすいのが、第4項の「浪費又は賭博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。」だと思います。

「浪費又は賭博」に関する免責不許可事由についての詳しい説明は、以前公開したこちらのブログをご覧いただきたいのですが、要するに、自分の収入や資産に照らして過大な金額を浪費によって消費したり、賭博で散財したりして、破産申立てに至ったという場合です。

収入の範囲内、資産を食いつぶさないような形での賭博であれば、免責不許可事由には該当しないと考えられます。

免責不許可事由で問題となる「賭博」とは何か?

「賭博」という字面からすると、裏カジノや賭けマージャンなど、違法な賭け事というイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、免責不許可事由で問題となる「賭博その他の射幸行為」には、パチンコ、競馬、競輪、競艇など合法なものも含まれます。

また、「射幸行為」とは、偶然による結果によって大きな利益を得ようとする行為を言いますが、最近では、Fx、仮想通貨、株取引で大損した結果破産に至ったという場合も、「賭博」と同様に免責不許可事由に該当すると考えられます。

「賭博」の免責不許可事由に該当する場合でも免責を得る方法

冒頭にお話ししましたが、免責不許可事由がある場合には、確かに免責不許可事由があるけれど、こういう事情があるので、今回は免責を認めてください、ということを裁判所に理解してもらう必要があります。

アピールすべき観点は、いくつもあると思いますが、「賭博」の免責不許可事由がある中で裁量的な免責を得るためにまず行うべきことは、「賭博」を止めることです。

確かに以前には「賭博」にはまり、借金を増やしてしまいましたが、今は「賭博」を止めており、今後も「賭博」には手を出しません、という姿勢が最も重要です。

逆に、「賭博」により借金を作って、自己破産申立てまで至ったのに、まだ「賭博」をしています、という人に裁量的な免責を認めがたいことは、容易に想像がつくかと思います。

「『賭博』を止める」ことは、免責を得る上で非常に重要だと思います。

他方で、「『賭博』を止める」ことは免責を得るために重要ですが、これだけでは、免責を得るのに物足りないように思います。

肝心なことは、同じ失敗(「賭博」によって自己破産に至ったこと)を二度と繰り返さないことであり、そのような事情を裁判所に分かってもらうことです。

「賭博」の免責不許可事由がある案件に関わる場合、以下のような事項を実践することにより、免責を得やすくなると思いますし、何より、破産者自身の今後の生活にとってもプラスになる(ギャンブルにより二度と失敗しない)と思います。

  • どうしてギャンブルを繰り返してしまうのかを考えるため、ギャンブル依存症に関する書籍を複数読んでもらい、自身と似たところがあるかどうか、ある場合にはどのようにすればよいのかを考え、考えを紙でまとめてもらう。
  • ギャンブル依存症という自覚がある方には、自助グループ(GA ギャンブラーズ・アノニマス)の集まりに参加し、その感想を紙にしてまとめてもらう。

「賭博」の免責不許可事由がある場合でも、上記のような事項を実践することにより、裁量的な免責を得ることは可能であると思います。

最後に、当事務所にあるギャンブル依存症に関する書籍の写真を掲載いたします。

個人的には田辺等さんの「ギャンブル依存症」がおすすめです。

当事務所に破産申立てをご依頼の際、ご希望があれば、各書籍をお貸しいたします。

借金を整理し、人生を再スタートするお手伝いができればと思います。

個人事業主の自己破産申立てについて

2026-05-19

個人事業主の自己破産申立ては原則として20万円以上の予納金が必要となります

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申立てを注力分野の一つとしております。

今回は、個人事業主が自己破産を申し立てる場合の留意点などについてお話をします。

前回までのブログで、自己破産手続には、3つの種類があるということ、手続の種類によって、破産手続に要する費用が変わってくることについてお話ししました。

静岡地方裁判所で個人事業主が自己破産の申立てをする場合、原則として、当該申立ては、「管財事件」として処理されます。

また、過去2年以内に個人事業を営んでいた方が自己破産申立てをする場合も「管財事件」として処理されます。

以下、過去2年以内に個人事業をしていた方と現在個人事業をしている方を合わせて「個人事業主等」と言います。

個人事業主等が破産をする場合には、原則として、裁判所に対して少なくとも20万円の予納金を納める必要があります。

この点が、個人事業主が自己破産を申し立てようとする場合の最も重要な点と言っても良いかもしれません。

何しろ予納金が用意できないと、破産手続が進みません。

このお金を用意できる目処が立っているかどうか、個人事業主の自己破産申立てにおいては、この点が極めて重要です。

個人事業主が自己破産をする場合に必要な資料~確定申告書の写し

個人事業主以外の方が自己破産をする場合に必要となる資料については、以前別のシリーズでお話ししました(個人が自己破産をする場合の必要書類については、こちらの記事をご参照ください)。

このブログでは、個人事業主が自己破産する場合に、個人事業主以外の方が自己破産する場合に必要となる書類にプラスして必要となる書類について説明します。

静岡地方裁判所において個人事業主が自己破産を申し立てる場合、直近2年分の確定申告の資料を提出する必要があります。

個人事業主は、その名のとおり、事業をしている人です。

破産手続の中では、事業に関連する設備、備品、在庫商品や原材料など、現金化して債権者に分配する財産が無いかどうかの確認を行う必要があります。

このため、直近2年分の確定申告の資料が必要となります。

個人事業主が破産をする際に特に説明をする必要がある事項~「減価償却費の計算」

確定申告の資料の中でも、個人事業主の自己破産申立てにあたり、私が特に重要と考えているのが、「減価償却費の計算」の箇所です。

「減価償却費の計算」には、事業で使用している(あるいは、使用していた)様々な資産が計上されます。

帳簿上計上されているものの、実際には既に廃棄してしまったもの、資金繰りに困って売却してしまったもの、計上されているものの換価価値の無いものなど様々な物があると思います。

それらの計上資産について、一つずつ、現存しているのかいないのか、現存していないとすれば、なぜ現存していないのかを裁判所に対して説明する必要があります。

資産を売却したのだとすれば、いつ誰に売却したのか、廃棄したのだとすれば、いつ廃棄したのか、それらの資料は現存するのかを確認していく必要があります。

また、資産が現存している場合、その資産を現時点で売却した場合、どれくらいの価値が見込まれるのか、という見積りを取得する必要もあるかもしれません。

個人事業主等が自己破産をする場合には、破産を申し立てるにあたり、これらの事項について説明をし、資料を用意しておく必要があります。

これらの説明がない状態で申立てをしたとしても、書類を裁判所に出した時点で、裁判所から説明を求められ、その回答をしなければ手続が進まないと思われます。

また、仮に裁判所から求められなくても、破産管財人からお尋ねがあることは必定であると思われます。

通帳の入出金記録も重要

個人事業主等の場合、事業を営んだことのない個人に比べて、通帳の入出金記録は膨大なものとなることが多いと思います。

個人事業主等の自己破産申立てでは、現金化して分けられる財産があるのか無いのか、回収未了の売掛金が無いかどうかを明らかにすべく、通帳の入出金履歴について、これはどういった出金、これはどういった入金という説明をする必要性も、個人事業主以外の方の破産申立ての場合と比べて高いと言えます。

個人の自己破産手続に関する破産手続の種類のお話 その3 ~手続の振り分け等について

2026-05-09

自己破産はどの種類の手続になるかによって必要な費用が変わります

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申立てを注力分野の一つとしております。

これまでのブログで、個人の方が自己破産をした場合の破産手続には、3つの種類があるということ、手続の種類によって、自己破産をするために必要な金額が変わってくるということをお話ししました。

前回までのブログをまとめますと、自己破産を申し立てる場合、裁判所に対して、官報公告費用や、所定の印紙代、郵便切手代を納める必要がありますが(概ね2万円程度です)、破産手続において破産管財人が選任される場合には(「管財事件」の場合には)、これらの費用に加えて、破産管財人のための費用を納める必要があります。

管財事件のうち、破産開始決定後、概ね3か月程度後にある1回目の債権者集会までに、財産の処分が完了すると見込まれる場合には少額管財事件となり、20万円の予納金を納める必要があります。

それ以外の、財産の換価に更に時間を要すると見込まれる事件の場合には、「通常管財事件」となり、さらに高額な予納金を納める必要が出てきます(感覚的には50~80万円ほどです)。

「同時廃止」事件と「管財事件」の振り分けについて

破産管財人が選任されない「同時廃止」事件と、上記2つの「管財事件」とは、どのように選別されるのでしょうか。

静岡地方裁判所に自己破産を申し立てる場合、次のようなケースでは、破産手続を「同時廃止」で進めることはできないとされています(「少額管財事件」か「通常管財事件」になります)。

①過去2年以内に個人事業を営まれていた方

②会社の代表取締役、取締役で、会社も同時に破産を申し立てる場合

③免責不許可事由がある方

④33万円以上の現金を有している場合、現金以外で1つあたり20万円を超える財産を有している場合、または、保有する財産が99万円を超える場合

※ 不動産をお持ちの方の場合、その不動産が明らかに経済的価値のない場合(たとえば、売却困難な山林、原野、農地)、または、不動産に抵当権が設定されており、同抵当権の被担保債務が売却価格を相当程度上回ると考えられる場合でない限り、原則として「管財事件」となります。

⑤申立書や申立書添付の財産目録には記載されていないものの、相当の価値がある財産があると疑われる場合も「管財事件」となることがあります。
たとえば、預貯金口座の通帳等から、継続的に多額の保険料が引き落とされているものの、当該保険について、申立書等に記載がない場合は⑤に該当すると考えられます。
同様に、預貯金等の取引履歴から、株取引、Fx、仮想通貨の取引がされており、相当程度の資産が存在することが疑われる場合も⑤に該当すると考えられます。

破産手続の目的が、破産者の財産を現金化して分配するものであるということは本ブログシリーズの1回目に申し上げました。

先に挙げた①、②、⑤の場合に破産管財人が選任されるのは、破産者の財産の中に現金化して債権者に分けられるものが無いかどうか、中立公正な破産管財人という立場の者がチェックをする必要があるという趣旨によるものと思われます。

また、③については、免責不許可事由があったとしても、破産管財人が調査を行い、裁量的に免責を認めるべき事情があるのであれば、免責が許可される可能性があるため、破産管財人にその調査をさせる趣旨によるものと思われます。

④については、保有財産の状況からして、破産手続費用を支払うことができないとは言えないということで、同時廃止にはならず、管財事件として取り扱うという趣旨であると思われます。

「管財事件」として申し立てるべきものを「同時廃止」事件として申し立ててしまった場合

「管財事件」として申し立てることが相当である破産事件を、「同時廃止」事件として申し立ててしまった場合、基本的に裁判所は、当該事件を「同時廃止」事件としては扱わないと考えられます。

申立後、裁判所から、当該事件は「管財事件」として扱うことが相当であるため、追加で予納金を準備するように指導され、予納金の確保ができない限り手続は進められないということになるでしょう。

このような場合、申立人(破産者)は予期せぬ出費を強いられることになり、手続の進行としても、当初から「管財事件」を想定して準備がされていた場合と比べ、遅延することが予想されます。

そのような事態に陥らないよう、当該事件が「管財事件」として処理されるべきものであるのか、「同時廃止」事件として処理されるべきものであるのかの見極めは重要であると言えます。

個人の自己破産手続に関する破産手続の種類のお話 その2 ~「管財事件」について

2026-04-29

破産事件における「管財事件」とは

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申し立てを注力分野の一つとしております。

前回のブログでは、個人の方が自己破産をした場合の破産手続には3つの種類があるということ、及び、その一つである「同時廃止」手続についてお話ししました。

今回は、残りの2つの手続についてお話をします。

まずは、「管財事件」のご説明です。

破産手続における「管財事件」では、裁判所が、破産管財人という役割の人を選任します。

破産管財人は、弁護士が選任されることが通例で、破産の申立てを依頼した弁護士とは別の弁護士が選ばれます。

前回のブログで、破産手続とは、破産者の財産を現金化して債権者に平等に分配する手続であると申し上げました。

破産管財人は、この「破産者の財産を現金化して債権者に平等に分配する手続」を取り仕切る者です。

先ほどお話ししましたように、破産管財人には、基本的には弁護士が選任されます(少なくとも私は弁護士でない者が破産管財人に選任された事例を知りません)。

破産管財人として選任された弁護士に、無料で、財産の現金化、分配手続をしてもらうわけにはいきません。

そのため、破産管財人が選ばれる破産手続(「管財事件」)においては、申立人(破産者)は裁判所に対して、破産管財人に仕事をしてもらうための費用(破産管財人の報酬)を納めなければなりません。

このように、破産管財人が選任される破産手続(「管財事件」)では、そうでない手続(「同時廃止」)と異なり、破産手続に必要となる費用が増えることになります。

破産事件における「少額管財事件」(「小規模管財事件」)とは

破産手続には3種類の手続があり、その一つが「同時廃止」手続でした。

残りの2つは「管財事件」ですが、「管財事件」は、「通常管財事件」と「少額管財事件」に区分されます。

この3つの手続のいずれにおいても、破産を申し立てる際には、官報公告費用や、所定の印紙代、郵便切手代を納める必要があります(概ね2万円程度です。「官報」に関するご説明はこちらをご覧ください)。

他方で、先ほどお話ししましたように、破産管財人が選任される事件では、上記の費用に加えて、裁判所に予納金を納める必要があります。

「少額管財事件」の何が「少額」かと言いますと、裁判所に納める予納金が「少額」なのです。

ただし、その予納金は、社会一般の「少額」という感覚からは解離していると思われ、静岡地方裁判所の場合、20万円程度は納める必要があります。

それでも、「通常管財事件」では、静岡地方裁判所の場合、80万円程度の予納金を納める必要がありますので、「通常管財事件」と比べれば、確かに「少額」ではあります。

「少額管財事件」となるか、「通常管財事件」となるかの区分けは、破産管財人がどれほどの業務を行わなければならないか、ということがポイントです。

先ほど、少額管財事件であれば、裁判所に納める費用は20万円となり、通常管財事件の場合は、それよりも相当高額であること、それらの費用は、破産管財人の報酬金の趣旨を含むものであるとお話ししました。

つまり、破産管財人の業務が多くなることが見込まれる場合には、それなりの費用を納めなければならず、通常管財事件となります。

逆に、破産管財人の業務が少なくて済むことが見込まれるのであれば、比較的低額な予納金で済む「少額管財事件」として扱われる、ということになります。

より具体的には、少額管財事件として扱われるためには、1回目の債権者集会(破産手続の開始決定日から概ね3か月後に開かれます)までに、破産者の全ての財産について、現金化が終了しているか、明らかに売れないだろうということで破産財団から放棄されるか、自由財産の拡張によって破産者が引き続き保有することが認められるか、いずれかの処分が見込まれることが必要です。

このように、破産事件の内容として、比較的小規模である事件を「少額管財事件」として扱うため、「少額管財事件」は、「小規模管財事件」とも呼ばれています。

少額管財事件の予納金はいつまでに用意しておく必要があるか?

裁判所への予納金(少額管財事件の場合には20万円)は、基本的には裁判所に破産を申し立てる時までに用意しておく必要があります。

理屈上は、裁判所が破産手続の開始決定を出し、破産管財人が選任され、同人に予納金を振り込む時までに、ということにはなりますが、申立時に用意ができておらず、かつ、その目処も立っていないということになりますと、破産手続を進められません。

そのため、私としては、保険の解約返戻金が、申立日の数日後に入金されることが確実であるなどというような例外的ケースを除き、原則的に申立時までに予納金を用意しておく必要があると考えています。

個人の自己破産手続に関する破産手続の種類のお話 その1 ~「同時廃止」手続について

2026-04-20

破産手続には大きく分けて3つの種類があります

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申し立てを注力分野の一つとしております。

今回から3回にわたり、個人の方が自己破産をした場合の手続の種類についてお話ししたいと思います。

自己破産をした場合、裁判所が破産手続の開始決定を行い、破産手続が進行していくことになりますが、破産手続の種類は1つだけではありません。

大きく分けると3つの種類があると言えます。

そして、どの種類の破産手続になるかによって、破産手続に必要となる費用が増えたり、破産手続が始まってから終わるまでの期間が長かったり、短かったりします。

そのため、自己破産を申し立てるにあたって、申立人の破産手続が、3種類ある破産手続の中のどの種類に当たるのかを見通すことは大変重要です。

同時廃止手続

手続の1つ目は、「同時廃止」と呼ばれる手続です。

通常、裁判所に自己破産を申し立てた場合、裁判所は、申立ての際に提出された書類について審査をします。

そして、提出された書類の内容から、裁判所が破産手続を開始しても問題がないと考えた場合、裁判所は、破産手続の開始決定を出します。

本来、破産手続とは、裁判所による管理監督の下、破産者(申立人)の財産を現金化し、債権者に平等に分配する手続を言います。

破産手続が開始されたものの、債権者に分けられるほどの財産が存在しない(正確には、債権者に財産を分けるための手続を進められるだけの財産が存在しない)ということになりますと、裁判所は、破産手続を「廃止」(終了)させます。

「同時廃止」の自己破産事件とは、破産手続を進められるだけの財産が破産者に存在しないことが明らかであるため、破産手続を開始すると同時に、破産手続を「廃止」する(終了させる)というものです。

破産手続が始まった瞬間に終わるというイメージです。

個人の方の場合、お金が無いので破産をする、ということが通常だと思います。
私がこれまでに個人の方からご依頼をいただいた自己破産申立事件の9割近くは「同時廃止」手続です。

個人の借金を0にする手続は「免責手続」といいます

ところで、個人の方が自己破産を申し立てる目的は、借金を0にすることですが、借金を0にすること自体は、理屈上、破産手続とは別の「免責手続」という手続により行われます。

そのため、破産手続が、上記のように開始と同時に廃止された場合(「同時廃止」手続)であっても、破産手続に引き続いて、破産者の借金を0にするかどうかという「免責手続」が続きます。

同時廃止手続の場合、理屈上、破産手続は、手続の開始と同時に終わってしまうのですが、その後に行われる「免責手続」を経て、晴れて借金は0になるということになります。

静岡地方裁判所における「同時廃止」手続の場合、開始決定後おおむね2か月から2か月半ほどで、免責を許可するかどうかを決める日が設定されます。

コロナ前は、その設定された日に、裁判所に赴き、裁判官から、申立書に記載された事実に間違いはないか、破産に至った原因についてどう思っているか、反省すべき点はないか、今後の生活についてどう考えているか、二度と破産しないようにするためにはどのような点に気を付けなければならないか、などの質問があり、破産者が質問に回答するという手続を経ることが通常でした。

しかし、コロナ後は、少なくとも私の知る限り、静岡地方裁判所においては、同時廃止の手続で、破産者が裁判所に赴くということは無く、上記のような問答の代わりに、破産に至ったことに関する反省文を提出し、免責の可否について裁判所の判断を待つ、という運用になっています。

「同時廃止」手続の特徴

「同時廃止」手続は、3種類ある破産手続の中で、もっともシンプルで、通常、破産手続が開始されてから免責許可が降りるまでの期間が短いものです。

このため、破産を申し立てる人にとっても、最も負担の少ない手続と言えます。

「同時廃止」とならない破産手続のことを「管財事件」と呼びますが、「管財事件」となった場合の破産手続や、どのような場合に「管財事件」となるのかということにつきましては、次回以降のブログにてご説明いたします。

当事務所では、自己破産事件を注力分野の一つとしております。

個人の自己破産、会社の自己破産を問わず、借入れ、負債の整理を検討されている方は、是非一度当事務所にご相談ください。

個人の自己破産申立てのための準備~番外編 自己破産手続と自宅などの所有不動産について2

2025-08-30

自己破産における自宅の処分

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

来週から9月に入りますが、残暑が厳しく続いております。皆様、いかがお過ごしでしょうか。

前回のブログでは、個人の方を対象とした自己破産申立ての準備に関するブログの番外編として、自宅などの不動産をお持ちの方に関して、自己破産をした場合、お持ちの不動産がどうなるのか、というお話をしました。

前回のブログでは、自己破産をしたとしても、その不動産に住み続けることができる場合(ご親族や知人が不動産を買い取ってくれたり、残ローンを支払ってくれたりする場合)があることについてお話をしました。

今回は、親族や知人による不動産の買取りや残ローンの支払いが困難である場合についてお話をします。

自己破産をしたら、いつまでに自宅を出て行かなければならないのか

どなたかがご自宅を買い取ってくれる、あるいは、ご自宅に設定されている抵当権に関する負債を支払ってくれるということでもない限り、基本的には、ご自宅は破産手続の中で売却処分されます。

破産手続の中でご自宅が売却された場合、当然のことながら、破産者はご自宅から出て行かなければなりません。

問題となるのは、いつまで自宅にいて良いのか、ということです。

このことについて明確な答えはありません。

しかし、遅くとも破産手続が開始された時点で、申立人(破産者)が所有している財産の管理処分権限は破産管財人が有することになり、観念的には開始決定が出された時点から、破産管財人はご自宅の売却処分に向けて動き出すことになります。

そのため、私としては、遅くとも破産手続が開始された時点までにはご自宅から退去していただくべきだと考えています。

当事務所の場合、ご相談をいただいてから破産手続を申し立てるまで、概ね2月程度のお時間をいただいています。

破産手続を申し立ててから破産手続の開始決定が出るまでの期間を2週間程度と見積りますと、ご相談をいただいた時点で自己破産を申し立てることを決意されている方の場合には、ご相談のときから概ね2か月から3か月後にはご自宅を出ていただくという腹づもりでいていただきたいと思います。

もちろん、様々なご事情により、上記のような期間のうちにご自宅を出て、別の場所へ引越しをするということが困難な方もいらっしゃると思います。

ご自宅をお持ちの方で、ご自宅を去らなければならない公算が高い方については、破産申立ての準備中に、ご自宅に関する対応についてご相談させていただければと思います。

破産をしても不動産が戻ってくるケース~破産管財人による破産財団からの放棄

前回のブログでお話ししたように、お手持ちの不動産は、原則的には、破産手続の中で現金化され、その現金が破産債権者に対して分配されることになります。

しかし、不動産の中には、破産手続においても現金化できない、つまり、売れない不動産というものも存在します。

典型的には、山林、原野の類ですが、田畑についても買い手が見つからず、現金化できないということもあります。

売れない不動産については、最終的に、破産管財人が売却を断念することがあります。

この場合、売れなかった不動産は、破産手続の中で現金化して債権者に分けるべく構成されている財産の集まり(「破産財団」といいます)から、放棄され(分離され)、破産者のもとに返ってくることになります。

このようなケースは、山林、原野、田畑に限らず、居住用の不動産、つまりご自宅についても起こり得ます。

たとえば、老朽化が著しく建物の解体費用が土地の値段を上回る、崖の直下などマイナス面が大きい、共有物件で他の共有者が売却に反対している、等々の理由によって、破産手続の中で売却ができないということがあります。

このような場合、それまで住んでいた不動産が、破産手続が終わっても売られずに、また破産者のもとに返ってくるということになります。

ただし、その場合でも、ご自宅に抵当権が付いていれば、抵当権が付いたままのご自宅が返ってくるということに注意が必要です。

つまり、破産手続が終わって、ご自宅が再び破産者の管理下に置かれることになったとしても(またご自宅に住めるようになったとしても)、債権者が競売を申立て、結局競売により売却されてしまうということが考えられます。

当事務所では、法人、個人を問わず、自己破産手続の申立てを多く取り扱っております。

ご自宅などの不動産をお持ちで自己破産をお考えの場合には、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

個人の自己破産申立てのための準備~番外編 自己破産手続と自宅などの所有不動産について1

2025-08-20

自己破産をした場合の懸念~不動産をお持ちの場合

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

今回は、個人の方を対象とした自己破産申立ての準備に関するブログの第7弾ですが、番外編の位置付けです。

自己破産を申し立てる際、不動産をお持ちの方、特に自宅をお持ちの方においては、破産をしたら自宅はどうなってしまうのか、いつまで住むことができるのか、ということが最大の関心事になると思います。

そこで今回は、自宅不動産を所有している場合についてお話ししていきます。

自己破産をした場合の自宅の行く末について

当事務所のブログでたびたびお話をしているように、破産手続そのものは、借金を0にする手続ではなく、破産者が所有している財産を現金化し、債権者に分配することを本質としています。

そのため、自己破産を申し立てた場合、基本的には、自宅は売却処分となります。

この場合、破産手続が始まった後、破産管財人という別の弁護士が裁判所によって選任されます(破産管財人に関するご説明はこちらのページをご覧ください)。

破産管財人は、銀行などの抵当権者と話をし合いをしながら不動産の買い手を探し、最終的には裁判所の許可と、抵当権者の同意のもと不動産を売却することになります。

抵当権者である金融機関が売却にOKを出してくれないと、不動産を第三者に売却することは事実上不可能です。

抵当権が付いている不動産は、売却して所有者が変わったとしても(名義が買主に移転したとしても)、抵当権が付いたままでは、その後に不動産が競売にかけられ、落札者が代金を支払った場合、買主は所有権を失うことになります。

このような事情があるため、買主が「安心して」不動産の所有権を取得するためには、売買時に、不動産に設定されている抵当権を金融機関に外してもらう必要があります。

そのため、不動産を誰にいくらで売るかということについては、抵当権者である金融機関の同意を得る必要があるのです。

自己破産をしても自宅を出て行かなくても良いケース

自宅不動産をお持ちの方が自己破産をする場合、もっとも気になる点が、自宅を出て行かなければならないのか、ということでしょう。

自宅を出て行かなくても済むケースとしては、ご親族、知人の方が、自宅不動産を丸々買い取ってくれるというケース、あるいは、自宅不動産に付いている抵当権によって担保されている債務を全額を弁済してくれるというケースがあります。

ごくごく稀にですが、このようなケースもあります。

ただし、このようなケースでも、いくつかの注意点があります。

前回のブログでお話をしたように、不動産の価値には幅があります。

ある不動産会社が、この土地建物は1200万円が妥当だという査定書を出したとしても、別の不動産会社は1500万円が妥当だという価値判断をするかもしれません。

不動産をお持ちの状態で自己破産をする場合には、自己破産の申立てにあたって不動産会社の査定書を添付する必要があります。

しかし、破産手続が開始された後に選任された破産管財人が、申立ての段階で取得した査定書よりも、高額な査定書を取得するということもあります。

このような場合、破産管財人は、自身が取得したより高額な査定書の金額でなければ売却しない、という判断をするかもしれません。

あるいは、申立人(破産者)の親族や知人が出せる金額以上の金額で買取りを希望する人が出てくるかもしれません。

破産管財人としては、できる限り高く不動産を売るように努めますので、これらのケースでは、申立人の親族や知人が不動産の買取りを希望したとしても、同人らへの売却は実現しない可能性があります。

また、別のケースとして、たとえば、複数の不動産会社の査定を取得したところ、最高額でも1000万円という評価であったのに、抵当権者である金融機関が(様々な事情により)どうしても1500万円でなければ売却に同意しない、ということもあり得ます。

さらにまた別のケースとしては、自宅不動産が既に競売にかけられてしまっているようなケース、つまり借入れに関する問題が発生してから、かなり長い期間が経過してしまっているようなケースでは、自宅不動産を競売以外の方法で売却することについて、金融機関が難色を示すこともあります。

当事務所では、会社、個人を問わず自己破産申立事件を多数扱っており、また、裁判所から破産管財人に選任され、破産事件を取り仕切ることも多くあります。

自宅不動産をお持ちの方で、自己破産の申立てを検討されている方は、当事務所に是非一度ご相談ください。

個人の自己破産申立てのための準備~その6 不動産について

2025-08-09

自己破産の申立てにおいて必要となる書類~不動産をお持ちの場合

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

8月に入り、先日静岡市では、最高気温41.4度を記録しました。

あの日は凄まじい暑さで、エアコンを付けていても、窓際の私の席は暑さで気持ち悪くなってきそうなぐらいでした。

あの日が今夏の暑さのピークであると信じたいですが、皆様も何卒ご自愛ください。

さて、今回からまたしばらく、ブログの内容は、個人の方を対象とした自己破産申立てに関するものとなります。

今回はその第6弾、不動産に関するお話です。

不動産をお持ちの方の場合、アパートマンションなどを居住用に賃借されている方の場合と、場合を分けてお話をしていきたいと思います。

まずは不動産をお持ちの方についてです。

不動産を所有されている場合、多くの場合、その不動産は、居住用、つまり、ご自宅をお持ちだということになろうかと思います。

そして、多くの場合、ご自宅の住宅ローンは支払いが継続中で、ご自宅には金融機関の抵当権が設定されていると思われます。

このような不動産をお持ちの場合、以下のような書類をご準備いただく必要があります。

① 不動産の全部事項証明書(いわゆる「登記簿」、「不動産登記」のことです)

不動産の全部事項証明書は、法務局で取得可能です。

② 不動産の固定資産評価証明書

お持ちの不動産すべてについて取得してください。

市役所、区役所で取得が可能です。

田畑、山林などを含め、お手持ちの不動産が5つ以上あるという場合には、固定資産評価証明書とともに、市役所、区役所で「名寄帳(なよせちょう)」を取得してきてください。

③ 不動産会社による評価書、査定書

固定資産評価証明書は、一定程度、対象となる土地建物の資産価値を反映しています。

しかし、固定資産評価証明書に記載された「価値」は、市場価値とは乖離している場合があります。

また、不動産という財産自体、その価値が一義的に定まるものではなく、価値には一定の幅があります。

誰が見ても、この土地の価値は1234万5678円以外ありえない、というようには決まらないということです。

後のブログでもお話ししますが、破産をした場合、基本的に、ご自宅は売却処分をしなければなりません(そして、売却によって増えた財産は、破産手続の中で債権者へ分配していく必要があります)。

裁判所、あるいは、破産管財人としては、ご自宅がどの程度の金額で売却できるのかを予測する必要があります。

そのため、固定資産評価証明書に加え、実際の市場価格により近いと考えられる、不動産会社の評価書、あるいは査定書を提出する必要があります。

お知り合いに不動産会社にお勤めの方がいて、その人に依頼できるようであれば、その人に査定書を出してもらってください。

不動産会社にツテがない、という場合には、当職宛てご相談ください。

④ 住宅ローンの残高が分かる資料

お手持ちの不動産に抵当権が設定されている場合、当該抵当権のもととなっている負債が今いくら残っているのか分かる資料をご用意ください。

典型的には住宅ローンの月々の返済表です。

タイトルでは「住宅ローンの残高が分かる資料」と書きましたが、住宅ローン以外でも、事業の借入れのために、ご自宅を担保に入れていることがあるかもしれません。

そのような場合には、当該事業の借入れの残高がいくら残っているかが分かる資料が必要です。

山林や田畑など売却することが困難と思われる不動産をお持ちの方

ご相談者様によっては、山林や田畑など、売却が困難と思われる不動産をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

基本的には、そのようなケースでも、上記の①、②、④の資料はご用意いただく必要があります(④は担保に入っていなければご不要です)。

他方で、特に山林などでは、裁判所から、③不動産会社の評価書、査定書の提出までは強いて求められないという傾向があるように思います。

ただし、用意できた方が良いと思いますし、農地でも転用が容易と思われるものや、山林であっても途方もない大きさのものであれば、破産手続の中で売却できる可能性がありますので(相応の財産的価値もあると思いますので)、評価書、査定書の提出も必要になってくるのかな、と思います。

それほど土地の数が多いのでもなければ、ご自宅(等)の評価書を取得する際、合わせて不動産会社に山林等の査定をお願いするのがベストだと思います。

アパート、マンションなど不動産を借りていらっしゃる方

アパートやマンションなど、賃貸物件にお住まいの方は、不動産の賃貸借契約書をご持参ください。

アパートやマンションなど、賃貸物件にお住まいの方から、「破産をしたら、アパートを出て行かなければなりませんか」というご質問をいただくことがあります。

破産をしたからといって、借りているアパート、マンションから当然に出て行かなければならないということにはなりません。

ただし、破産をする際に、アパート、マンションの賃料を何か月も滞納しているという場合には、そのことを理由として出て行かなければならない、という可能性はあります。

感覚的な話で申し訳ないのですが、5か月以上賃料を滞納している場合には、大家さんからの解約が認められやすいのではないかと思っています。

個人の自己破産申立てのための準備~その5 またまた通帳に関するお話3

2025-06-30

自己破産申立ての準備における通帳の重要性~破産者の財産把握の観点から

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

明日から7月ということで、暑い季節になってきました。

今週の静岡は雨模様ですが、今年の夏は、例年より梅雨明けが早くなるかもしれないようです。

皆様、熱中症に気を付けつつ、お過ごしいただければと思います。

さて、個人の方を対象とした自己破産申立ての準備に関するブログの第5弾です。

過去2回のブログでは、いずれも預金口座の通帳に焦点を当てたお話をしてきました。

今回は、その通帳のお話の第3弾です。

自己破産手続の準備において、通帳が持つ意味は非常に大きいのです。

破産手続というのは、本来、破産者(依頼者)が持っている財産を現金化して、債権者に平等に分配する手続です。

個人の自己破産申立ての場合、多くのケースでは、分配できるほどの財産がないため、破産手続は、始まると同時に終了という形を取ります(「同時廃止」(どうじはいし)といいます)。

しかし、本来、破産手続は、破産者の財産を分ける手続であり、破産手続が始まった後に、破産者の財産が現金化され、分配されていきます。

破産手続が同時廃止により終了するかどうかは、自己破産を裁判所に申し立てる時点である程度予想が付きますが、裁判所による審査を経た後に正式決定されます。

また、個人の自己破産の場合、自己破産が可能であるのは、申立人(依頼者)が、これからも継続的に債務を弁済することができません、という状態にあることが言える場合です。

これからも継続的に債務を弁済することができない状態にあるかどうかの判断にあたっては、申立人の資産状況が重要です。

これらの観点から、裁判所に自己破産を申し立てるにあたっては、申立人の資産について、可能な限り正確な情報を裁判所に提供する必要があります。

この観点からも通帳は非常に重要です。

自己破産にあたって裁判所に報告する必要がある資産の内容

破産手続を申し立てる際には、裁判所に対して、可能な限り正確に、申立人の資産状況を報告する必要があります。

裁判所に報告すべき「資産」は、基本的には申立人が保有している資産のすべてということになりますが、もう少し具体的に言いますと、少なくとも以下のようなものについては裁判所にその存在を報告する必要があると考えられます。

  • 現金
  • 不動産(土地建物、その不動産に価値があっても無くても、です)
  • 預貯金(通帳や入出金明細を2年分ご用意いただきたいということについては以前のブログで申し上げたとおりです)
  • 保険(生命保険、医療保険(共済も含みます)、個人年金、自動車保険、火災保険・地震保険、家財保険、ペット保険など)
  • 自動車
  • 株式、仮想通貨、Fx、社債

通帳から読み取れる資産の内容

申立人(依頼者・相談者)がどのような資産をお持ちであるのかは、申立人ご自身が一番よくお分かりだと思いますので、まずは、申立人から、お持ちの資産について聴取をします。

ただ、ご自身の資産であっても、うっかり伝え忘れたり、計上漏れしたりするということは間々あります。

通帳から読み取れる資産として、最も顕著なものは、おそらく保険であろうと思います。

通帳から、「○○保険」の引落しがあれば、申立人がその保険に加入していることが強く推認できます。

また、現在はその保険に加入していないとしても、直近1年以内にその保険を解約していたとすれば、解約時に保険金の戻りがあったかどうか(解約返戻金(かいやくへんれいきん)が発生したかどうか)を裁判所に報告する必要があります。

また、最近の自己破産申立てで比較的多く見かけるのは、通帳から、ネットの証券会社の引落しや、仮想通貨やFxを取り扱う会社の名前での引落しです。

仮想通貨やFxを取り扱う会社の引落しに関しては、現在の残高は0円であること(投入した金額は全て損してしまった)が多いように思いますが、通帳上、仮想通貨やFxの入出金があれば、その残高があるのかどうか、あるのであればいくらあるのかが、破産手続上当然に問題になってきます。

仮想通貨やFxで損をした金額によっては、射幸行為として、免責不許可事由(破産を申し立てても負債を0にするべきではないとして法律上定められている事情)への該当性も問題になってきます(免責不許可事由については、こちらの記事をご覧ください)。

このように、通帳の記載は、自己破産を申し立てる際に、申立人がどのような資産をお持ちであるのかについて、裁判所に可能な限り正確な情報を提供する、という観点から非常に重要です。

当事務所では、自己破産の申立てにあたり、通帳上の記載について、かなり細かく聴き取りを行っていますが、興味本位で聴き取りをしているわけではなく、上記のような目的のため聴き取りを行っているのです。

個人の自己破産申立てについて~その4 通帳に関するお話2

2025-06-19

自己破産申立てのための準備~通帳の一括記帳にご注意ください

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

6月も後半に差し掛かっていますが、一昨日静岡市では最高気温37℃超えとなりました。

昨年は7月の上旬に、静岡市で40℃を記録した日がありました。

今年も同じように暑くなるのでしょうか・・・。

皆様、熱中症にお気を付けいただければと思います。

さて、今回は、個人の方を対象とした自己破産申立ての準備に関するブログの第4弾です。

前回のブログでは、冒頭で、通帳についてのお話を始めておきながら通帳レス口座のお話から裁判手続のオンライン化の話へと脱線してしまいました。

今回は再び通帳のお話です。

前回のブログで、お持ちいただきたい通帳について、2年分をお願いします、というお話をしました。

2年分の通帳をお持ちいただくに際してご注意いただきたいことがあります。

通帳を長い間記帳していないと、その期間に記帳されるはずであった個々の入出金が、「入金○件 ××円 出金○件 ××円」などというように、一括して記帳されてしまい、個々の入出金の内容が記載されないことがあります。

自己破産の申立予定日から2年以内に、通帳にこのような状態の記載がある場合(一括記帳のページがある場合)、一括記帳されている期間の入出金履歴を、銀行の窓口で発行していただく必要があります。

自己破産申立てにおける通帳の重要性

さて、これまでくどくどと、2年分の通帳を持って来てください、というお話を繰り返してきました。

これほどくどくどと、2年分の通帳を持って来てください、と言うのには、もちろんちゃんとした理由があります。

個人の方にとって、自己破産申立ての手続というのは、今抱えている借金を今後も継続的に支払っていけないこと(「支払不能」といいます)が明らかであるので、その支払いを免除してください、という申請をする手続です。

個人の場合には、会社の破産申立ての場合と異なって、「債務超過」=負債の金額が資産の金額を上回っている状態であることを理由として破産を申し立てることは認められていません。

したがって、自己破産をするためには、まず、今抱えている借金をこれからも支払っていくことは不可能です、ということを裁判所に分かってもらう必要があります。

そのために、通帳の入出金というのは非常に有用です。

もちろん、1月あたりの家計の収入と支出の状況を説明する書類(1か月単位の家計簿のようなもの)と組み合わせて、ということになりますが、通帳上、相当多額な給与が振り込まれていることが明らかである場合、そもそもこの人は、破産申立てを行うための条件である「支払不能」に当たるのか、という疑念を生じさせるでしょう。

通帳の重要性~生活実態との関係

先にもご紹介したとおり、静岡地方裁判所へ自己破産を申し立てるにあたっては、申立人(相談者)の家計全体の収入と、支出の状況を1月ごと記載した書類(私はこの書類のことを「家計収支表」と呼んでいます)を2か月分出す必要があります。

なお、またしても余談ですが、個人再生を申し立てる場合には、3か月分の家計収支表を提出する必要があります。

個人再生手続において、自己破産よりも長期間の家計収支表の提出が求められるのは、個人再生手続においては、3年から5年という長期間にわたって、認可された再生計画を履行することができるかどうか、という判断を行うためと考えられます。

話を元に戻しますが、破産手続を申し立てるに当たっては、裁判所に2か月分の家計収支表を提出する必要があります。

その家計収支表には、1月単位で、世帯構成員の各収入金額と、世帯全体の支出を記載します。

支出には、住居費(住宅ローン、アパート賃料等)、水道光熱費、食費、電話料金などなど、様々な項目があります。

当事務所では、家計収支表は、まず依頼者に記載してもらいますが、裁判所に提出する際には、必ず弁護士(私)が内容をチェックします。

ここで大変役に立つのが通帳です。

家計収支表のお給料の金額や住宅ローンの金額が、実際の収支と異なっていたり(その多くは、家計収支表では数字が丸められている場合です)、通帳上出金が確認できるウォーターサーバーや有料テレビ契約の支出が家計収支表に記載されていなかったり、そういったことを通帳から確認することができます。

このように、通帳は、より正確な家計収支表を作成するうえでかかせないアイテムです。

個人的な感覚ですが、ウォーターサーバーの支出記入漏れというのは、結構多いように思います。

また、私は現時点では飲料水に特段のこだわりは無いのですが、意外と多くの方がウォーターサーバーをレンタルされているんだなぁと驚いています。

またまた余談で恐縮なのですが、私が弁護士を始めたころ(15年前)は、依頼者の通帳に、WOWOWやスカパーの引落しが記載されているということがそれなりの頻度でありました。

しかし最近は、そういった有料放送の引落しを見る頻度が減り、他方で、Netflixであったり、Amazonプライムであったり、そういったインターネットを利用した配信サービスの契約を見ることが多くなりました。

破産手続にも、時代の移り変わりが現れているんだなぁと思いました。

当事務所では、お借り入れ、負債に関するご相談は初回無料で承っております。

また、法テラスを利用して自己破産を申し立てることも可能です。 借金の支払いでお困りの方、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

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