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財産分与、婚姻費用、養育費に関連する情報開示命令

2026-04-10

相手方の財産が分からないと適切な財産分与はできません

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

我が国においては、本年4月1日より、家族法に関する改正民法が施行され、その中の一つとして、財産分与、婚姻費用、養育費等に関連する情報開示命令制度が設けられました。

今回のブログでは、同制度についてご説明いたします。

財産分与は、基本的に婚姻中の夫婦が婚姻後に積み上げてきた財産を、離婚時において半分ずつに分けるという制度です。

もっとざっくり言ってしまえば、夫婦が婚姻後に取得し、現在も残っている財産を足して2で割るという制度です。

財産分与を行うためには、大前提として、夫婦それぞれがどのような財産を持っているのかを明らかにする必要があります。

しかしながら、現実には、配偶者の持っている財産が不明であったり、○○銀行の預金口座を持っているということは知っていても支店が不明であったり、具体的な預金残高が不明であったりすることがあります。

このような場合、夫婦全体の正確な財産の金額を算定することができず、本来もらえるはずの分与額よりも財産分与の金額が少なくなってしまうということが起こり得ます。

相手方の収入が分からないと適切な婚姻費用、養育費の支払いを受けられません

婚姻費用や養育費の月額を決める場面では、裁判所の公式ホームページに掲載されている婚姻費用算定表、養育費算定表に基づいて金額が決定されることが多いといえます。

そして、これらの表に基づいて婚姻費用や養育費の月額を決める場合、金額算定の基礎となるのは、当事者(夫婦、あるいは父母)の収入です。

この場面でも、相手方当事者の収入を知らない、あるいは、その収入を証明できる資料(源泉徴収票、課税証明書、給与明細など)が無いために、相手方に関して適切な収入金額を把握、証明できず、その結果、適切な婚姻費用や養育費の支払いを受けられないということが起こり得ました。

改正民法により新設された情報開示制度

令和8年4月1日施行の改正民法により、財産分与、婚姻費用、養育費に関する調停、審判、あるいは離婚訴訟において、当事者からの申立てまたは裁判所による職権に基づき、当事者に対し、収入ないし資産に関する情報を開示するよう命じることができるという制度が始まります(以下「情報開示命令」といいます)。

同命令に対し、正当な理由なく情報を開示しなかったり、虚偽の情報を開示したりした当事者は、10万円以下の過料に処せられる可能性があります。

なお、情報開示命令では、第三者についての情報を当事者に開示するよう求めることができるようです。

たとえば、養育費の支払いを求める調停において、支払義務者が再婚していたような場合、再婚相手の収入資料についても開示を求めることができると、ある種の解説書には記載があります。

しかし、当該再婚相手の同意なく同人の収入資料を提出することには抵抗があるでしょうし、当該再婚相手が資料の提出に同意しなかったような場合には、やはり本制度によっても開示はできないという結論になってしまうのではないと思います。

情報開示命令の有用性について

改正民法施行前においても、文書送付嘱託、文書提出命令といった制度によって、当事者の収入あるいは財産に関する資料の開示を求めるという方法は存在しました。

しかし、これらの制度を使って、たとえば金融機関に相手方の預金口座の残高や入出金履歴の開示を求めても、金融機関が、相手方の同意が存在しないことを理由として開示を拒否するということが通例であったように思います。

そもそも論として、紛争の相手方に財産資料等の開示を求めても開示されないので、金融機関等の第三者に、預金残高等の開示を求めていたというのが実情であったと思います。

今回の民法改正で、紛争の相手方に対して、過料の制裁をもって財産開示を迫るという制度ができましたが、過料というのは、罰金とは異なり、処せられても前科はつきません。

たとえば財産分与の場面で、相手方が知らない資産が1000万円存在したとした場合、開示すれば財産分与額が500万円増え、開示しなければ10万円の過料の制裁を受ける可能性があるとします。

そういった場面で、果たして情報開示命令によってどれほどの当事者が当該情報を開示しようという気になるのか、疑問なしとは言えませんが、このような制度ができた以上、必要な場面では活用したいと思います。

「法定養育費」など養育費に関する民法改正について

2026-03-31

「法定養育費」制度の新設

皆様、こんにちは。 静岡で弁護士をしております石川アトムです。
いよいよ明日令和8年4月1日より、家族法に関する改正民法が施行されます。


改正民法においては、「法定養育費」と呼ばれる制度が新設されました。
今回のブログでは、同制度についてご説明いたします。

まず、とても大事なことですが、法定養育費制度の適用があるのは、改正民法の施行後、つまり、令和8年4月1日以降に離婚をした父母間の子に限られます。

法定養育費は、養育費について取り決めをすることなく父母が離婚した場合に、離婚のときから引き続き子の監護を主として行う父母から、他方の父母に対して法務省令が定める金額(子1人あたり1月あたり2万円)を請求できることとした制度です。

請求の終期は、父母が協議により養育費の分担について定めをした日、養育費の分担についての審判が確定した日、子が成年(18歳)に達した日のいずれか早い日とされています。

法定養育費を請求できる者は「父母の一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うもの」です。
ここでいう「監護」は現実的に子を監護している者をいい、その者が親権や監護権を有しているかどうかは問題とならないとされています。

子が複数おり、子が父、母のそれぞれと生活しているという場合、父母はお互いに自身が監護する子について法定養育費を請求することができます。

他方で、子が離婚直後は母と生活していたものの、後に父と暮らすようになったという場合、父は「離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うもの」とは言えないため、母に対して法定養育費を請求することはできません(父母の協議により養育費の金額を定める必要があります)。
その一方で、母は、離婚時から子が父と暮らすようになった時点までの法定養育費(過去分)を請求することができます。

法定養育費は遡って請求することが可能です

法定養育費の支払期は、毎月末日とされています。

これまで実務上、養育費の請求権は、原則として権利者が義務者に対して請求した時点で発生するものと考えられてきました。

逆に言いますと、請求時よりも前に「発生」していた養育費を、請求時にさかのぼって請求することは認められていませんでした。

これに対して、法定養育費制度の施行後は、法定養育費の発生要件を満たせば、離婚時から請求時までは法定養育費の請求が可能となりました。

また、請求時以降の養育費は、これまでと同様に、その後に調停ないし審判等により定められた金額の養育費を請求することができます。

法定養育費を請求される側になったら?

改正民法では、法定養育費の支払義務者が、支払能力を欠くためにその支払をすることができないこと、またはその支払をすることによって生活が著しく窮迫することを証明したときは、法定養育費の全部または一部の支払いを拒むことができるとされています。

また、家庭裁判所が養育費を定める審判を行う場合、養育費の変更の審判を行う場合、法定養育費の支払義務者の支払能力を考慮して、法定養育費の支払義務の全部または一部を免除することなどが可能とされています。

なお、支払義務者が法定養育費の減免や支払猶予を求めるためには、養育費を定めることを求める(あるいは、その増減を求める)調停または審判を提起し、その中で法定養育費の減免等を主張する必要があると解されています。

養育費に関する先取特権

先取特権(「サキドリトッケン」と読みます)という制度を聞いたことがあるという方は少ないと思います。

これまでは、相手方が任意に養育費を支払わない場合、調停または審判を経た後、それらを基礎として預金口座や給与債権などを差し押さえるという手続を取る必要がありました。

つまり、養育費の未払いに関して差押えをしようとした場合、強制執行認諾文言付きの公正証書によって養育費の取り決めをした場合でなければ、差押えに先立って、まず調停を成立させるか、確定した審判を得る必要がありました。
しかし、それらの手続きには少なくとも数か月を要することが通常でした。

このように、従前、養育費の支払権利者が相手方の財産を差し押さえようとしたときには、相当な手間と期間が必要となっていたのですが、「先取特権」は、このような調停、審判手続を経ることなく、直ちに相手方の資産を差し押さえることができるという権利です。

改正民法の施行後は、法定養育費には全額先取特権が付されています。
また、当事者間で作成した合意書や念書などの内容のうち養育費に関する部分は、先取特権の対象となります。

先取特権を行使して、差押え等ができる金額は、子1人につき1月あたり8万円とされています。

このように、改正民法の施行後は、養育費の請求に関して先取特権が利用できることにより、従来よりは、養育費を現実的に回収するということが容易になるものと思われます。

「面会交流」から「親子交流」へ ~その2・父母以外のものと「子」との交流

2026-03-24

父母以外の者と「子」との交流

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

我が国においては、令和8年4月1日より、家族法に関する改正民法が施行され、これまで「面会交流」と呼ばれてきた父母と子との交流(「親子交流」)についても、いくつかの改正条項が施行されることになります。

これまで「親子交流」は、(改正前民法においては「面会交流」と呼ばれていましたが)文字どおり「親子」による交流を対象としており、祖父母には、彼らと孫とが交流することを申し立てる権利がありませんでした。

改正前民法を判断の対象とした令和3年3月29日最高裁判所第一小法廷決定は、「父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、家庭裁判所に対し、子の監護に関する処分として上記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である」として、祖母は孫との面会交流を求める審判を申し立てることはできないと判断していたのです。

今回の法改正は、この最高裁判所の判断を立法によって修正するものです。

令和8年4月から施行される改正民法においては、一定の条件がクリアできれば、祖父母等にも「子」と面会することを求めることができるようになりました。

父母以外で「子」との交流を求めることができる者の範囲

「子」との交流を求めることができる者の範囲について、改正民法は、子の直系尊属(例:祖父母)及び兄弟姉妹以外の者については、過去に当該子を監護していた者に限る、としています。

直系尊属、兄弟姉妹以外の者(例:叔父、叔母)が「子」との面会を求めようとした場合、その者は、「過去に当該子を監護していた」という要件を満たす必要があります。

「過去に当該子を監護していた」と言えるためには、「子」と同居するなど、生活の本拠が同じであり、相当程度の期間にわたる監護実績が必要と考えられています。

原則は「親」による申立て(他の親族による交流の申立ては例外的な場合にのみ認められる)

親以外の者が「子」との交流を求めることができるのは、「他に適当な方法がないとき」に限られています。

「他に適当な方法がないとき」とは、父母の一方が亡くなったり、行方不明になったりして、父母の間で親子交流について協議をしたり、父母の一方が親子交流の申立てをすることができないような状態にあるときに限定されていると解釈されています。

父母が健在である場合などは、原則として父母以外の第三者による申立ては認められません。

逆に、父母は、自身と子との親子交流とは別に、「子」にとっての祖父母など、他の親族と自身の子との交流を求める審判等を申し立てることは可能です。

父母のいずれか一方が亡くなっている場合など、「他に適当な方法がないとき」には、直系尊属、兄弟姉妹、その他過去に子を監護していた親族(例:叔父、叔母)は、「子」との交流を求める調停、審判を申し立てることができることになります。

父母以外の第三者に「子」との交流が認められるための要件

父母以外の第三者と「子」との交流が認められるためには、先に述べた「当該親族と子との交流についての定めをするため他に適当な方法がない」という要件以外に、当該第三者との交流が「子の利益のために特に必要があると認められるとき」という要件を満たす必要があります。

「子の利益のため特に必要があると認められる」場合とは、子と、当該親族との間に親子関係に準ずるような親密な関係性があることが必要であると解されています。

そして、そのような関係性の存在を基礎付けるための事情として、当該親族が相当程度「子」と同居して監護に関わってきたことなどについて具体的な事情が必要であると考えられています。

ただし、「子の利益のため特に必要があると認めるとき」という要件は、あくまでも父母の協議が調わない場合に裁判所が判断(審判)をする際の要件です。

当事者間で協議がまとまり、調停が成立する場面でこの要件を満たさなければならないというものではありません。

このように改正民法が施行されることによって、父母以外の親族にも一定の場合に、子との交流を求める申立てが可能となりました。
しかし、父母以外の親族が申立てをできる場合は例外的なものとされており、依然として父母以外の親族が「子」との交流を求めるハードルは高いといえます。

別居中の親子の交流について ~その1・「面会交流」から「親子交流」へ

2026-03-11

「面会交流」は、なぜ「親子交流」という名前に変わるのか

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

我が国においては、令和8年4月1日より、離婚後の「共同親権」制度がスタートします。

これまで全10回にわたって「共同親権」に関するブログを掲載して参りましたが、離婚後の共同親権」制度の開始と同時に、これまで「面会交流」と呼ばれてきた別居中の父母と子との交流に関する規定についても、いくつかの改正を見ることになります。

これまで「面会交流」と呼ばれてきた制度は、今後は「親子交流」という名称で呼ばれることになると言われています。

「面会交流」は、離婚前で子と別居中、あるいは、離婚後の親子間において、(基本的には)定期的に、別居親と子が食事をしたり、出かけたりするなどして交流をする制度を言います。

親子の交流の仕方には、先に述べたような(一緒に食事をする、出かけるというような)「直接的な」交流以外にも、特に子どもが乳幼児である場合などには、直接的な交流に代えて、またはそれと並行して、写真のやり取りをするなど、「間接的な」交流が実施されることがあります。

また、近時ではビデオ通話を利用した交流なども実施されており、現在では、必ずしも親子が直接会うという「面会」のみが交流の形ではなくなっています。

このような事情を理由の一つとして、これまで「面会交流」と呼ばれてきた制度は、今後「親子交流」という呼称に変更されることになりました。

親子交流の試行的実施

改正前民法においても、実務上、親子交流(面会交流)に関する調停成立、審判前に、事実調査の一環として、試行的に親子交流が実施されていましたが、今回の民法改正により、試行的な親子交流について明文の規定が設けられました。

改正民法では、試行的な親子交流を実施する要件として、①子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がないこと、②事実の調査のため必要があると認めるときであること、という2つの要件が設定されています。

②の要件については、調停成立(父母間の合意形成)や審判(裁判官による判断)に必要かどうかという点から検討されますが、調停手続の中で明らかとなった親子交流に関する課題を解決したり、新たな課題を把握して父母間で共有したり、課題の解決に向けた父母の主体的な取組みを支援したりするためなど、広く事実の調査のために必要があると認められるときであれば、この要件を満たすものと考えられています。

具体的なケースとして、別居親と子との間で相当期間にわたって親子交流が実施されていない場合、お互いに相手方が親子交流における約束を守るか不安である場合などが考えられます。

なお、試行的面会交流の実施回数について明文上の制限はありません。
一つの調停、審判の手続内で複数回実施される場合もあると考えられます。

施行的な親子交流の実施方法

試行的な親子交流の実施にあたっては、裁判所は、交流の方法、日時、場所、家庭裁判所調査官やその他の者を立ち会わせるかどうかを決めることができることになっています。

交流の方法については、直接会うという方法だけではなく、ビデオ通話や電話による交流、写真や動画の送付、別居親から子への手紙の送付といった様々な方法が考えられるとされています。

裁判所は、試行的親子交流の実施にあたり、「子の心身に有害な影響を及ぼす言動を禁止することその他適当と認める条件」を付すことができるとされています。

たとえば、父母双方に対して、他方親やその親族に対する誹謗中傷を行わない、他方親の生活状況や居所を尋ねない、子を介した伝言をしない、といった条件が考えられます。

また、別居親に対しては、子に対して自身と生活するよう誘う行為をしない、同居親に対しては、親子交流実施後にその内容等について詳細を問うような質問をしない、などという条件が考えられます。

これらの条件について違反があった場合、違反の事実は、最終的な判断において、違反者に不利益に評価される可能性があります。

なお、離婚訴訟手続に関しても、試行的な親子交流を行う規定が新設されました。
しかし、離婚訴訟においては家庭裁判所調査官が期日に立ち会うことができず、試行的親子交流に関する調整活動が困難であると思われることから、実際上、試行的親子交流の実施を希望する場合には、離婚訴訟と並行して、別途親子交流の調停を申し立てる必要があると考えられています。

離婚前別居中の親子の交流に関する規定の明文化

改正前民法においては、離婚後の面会交流についての規定は存在したものの、離婚前別居中の親子に関する面会の規定は存在しませんでした。

今回の改正では、離婚前別居中の親子に関する面会交流の規定が新設されましたが、基本的には、従前の実務の取扱いを明文化したものです。

離婚後の「共同親権」制度10~「共同親権」と再婚相手との養子縁組

2026-03-02

離婚後の「共同親権」下にある子を養子縁組するためには、原則として元配偶者(別居親)の承諾が必要です

皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。

今回は離婚後の「共同親権」に関するブログの第10弾で、「共同親権」に関するブログとしては最終回となります。

来月からいよいよ離婚後の「共同親権」の制度がスタートし、18歳未満の子がいる父母が離婚する場合、父母は、離婚後も「共同親権」とするのか、父母いずれかの単独親権とするのかという選択を迫られることになります。

離婚後も子が父母双方との関わりを持ちつつ成長していくということは、子の成長にとってプラスの側面があるでしょう(もちろんDVなどの事情により、すべてのケースがそうでないことは、改正法においても想定しているところです(必要的単独親権事由))。

他方で、離婚後においても「共同親権」とすることを選択した場合、15歳未満の子を再婚相手と養子縁組させようとした場合、大きな困難を伴うことが予想されます。

ここでは例として、離婚後も「共同親権」となっており、子と同居している親を母親、別居している親を父親とし、母親が再婚するという場面を考えてみます。

「共同親権」下の子を再婚相手と養子縁組させようとした場合、子が15歳未満である場合、親権者が子に代わって養子縁組を承諾する必要があります。

このような親権者による承諾を「代諾」(だいだく)と呼びます。

改正民法施行前は、離婚後は父母いずれかの単独親権のみでしたので、離婚後に単独親権者となった母親が単独で養子縁組を代諾すれば足りました。

しかし、「共同親権」下の子(15歳未満)について、子が再婚相手と養子縁組をするためには、母親は父親と「共同」で再婚相手との養子縁組を代諾する必要があります。

つまり、再婚相手との養子縁組を成立させるためには、子の父親(元配偶者で、別居親である共同親権者)に、再婚相手と自身の子が養子縁組することに同意してもらう必要があります。

私としては、この時点で、主として感情的な問題から、養子縁組に同意してくれる元配偶者がどれだけいるのか、という懸念を有していますが、さらに深刻な問題として、次に述べるような事情があります。

離婚後「共同親権」状態で養子縁組をすると、他方親(元配偶者)は親権を失います

改正民法818条3項は、子が養子であるときの親権者を、養親及び養親の配偶者たる子の父母であると定めています。

これは、離婚後に「共同親権」の状態で養子縁組をした場合、養親となった者(再婚相手が想定される)の配偶者でない親(つまり、元配偶者ないし別居親たる親権者)は、共同親権者でなくなる=親権を失うということを意味しています。

先にお話ししたように、15歳未満の「共同親権」下の子について、再婚相手と養子縁組を行うためには、元配偶者の承諾が必要となります。

しかし、元配偶者が、再婚相手との養子縁組を承諾した場合、元配偶者は、自身が有していた共同親権を失ってしまうことになります。

このような場面で、どれほどの元配偶者が、再婚相手との養子縁組を行うことに同意してくれるのでしょうか。

養子縁組の代諾に関する親権行使者の指定は極めてハードルが高い

離婚後の「共同親権」下において、父母の意見が対立した場合の解決方法として、どちらの親が、その事柄について親権を行使するのかを裁判所に決めてもらう親権行使者の指定という制度があることは以前のブログでご説明申し上げました。

養子縁組に関する代諾についても、他方親(元配偶者)が養子縁組に同意してくれない場合、「親権行使者の指定」という手続を使うことができます。

ただし、養子縁組の代諾について「親権行使者の指定」を求める場合、その他の「親権行使者の指定」の場合よりも要件が加重されています。

一般的な「親権行使者の指定」の場合は「子の利益のため必要がある」ことが要件ですが、養子縁組の代諾に関する「親権行使者の指定」の場合は、「子の利益のため特に必要である」ことが要件とされています。

これは、子の利益のため、他方親の親権を失わせてもなお、養子縁組を成立させる必要があるのか、という観点から、別居親の親権を維持することについて子の利益の観点から問題があると言えない場合には、養子縁組の代諾に関する親権行使者を指定することは認められないと考えられているためです。

このように、養子縁組の代諾に関する「親権行使者の指定」は極めてハードルが高いといえます。

一般的に、共同親権を有している他方親(元配偶者)が自身の親権を喪失するとしてもなお、再婚相手と子との養子縁組に同意してくれるケースは僅少と思われます。

そうしますと、離婚時に「共同親権」となった場合、その後同居親が再婚して、再婚相手と子(15歳未満)とを養子縁組させることはかなり難しいのではないかと考えられます。

特にお子さんの年齢が低い場合、「共同親権」とするかどうかを決める際、この点の考慮は不可欠であろうと思います。

離婚後の「共同親権」制度9~「監護」の分掌について

2026-02-19

監護の分掌~父母間で子に対する「監護」を分けること

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

我が国においては、令和8年4月1日より、離婚後の「共同親権」制度がスタートします。

以前「共同親権」に関するブログを第8弾まで掲載してきましたが、今回はその第9弾となります。

第8弾のブログでは、親権の一部を構成する「監護権」についてお話をしました。

監護権は、親権の一部である子に対する「身上監護」を行う権限と言えます。

第8弾のブログでお話ししたように、「監護権」は父母のいずれか一方に帰属させることもできますが、本ブログで紹介するように、「監護権」を父母の間で分担させるということもできるようになりました。

「監護権」を分担する方法には2種類あり、期間的な分担と、事項的な分担があります。

期間的な「監護」の分掌(ぶんしょう)

期間的な監護の分掌は、父母が一定の期間ごとに子を交替交替で監護するというものです。

たとえば、奇数月は父親が子どもと暮らし、子どもの面倒を看る、偶数月は母親が子どもと暮らし、子どもの面倒を看るというような場合が考えられます。

このような期間の分掌が実現した場合、対象期間中は父母の一方が監護教育に関する日常的な行為を単独で行うことができます。他方で、対象期間後にも影響を及ぼすような重大な行為(たとえば、子どもの心身に重大な影響を及ぼす医療行為の実施など)については、対象期間中であっても他方親と共同で行う必要があります。

なお、期間の分掌を行った場合には、養育費や婚姻費用を支払う側の父母も子の監護をすることになります。そのため、期間の分掌を行うことにより、支払われるべき養育費や婚姻費用の金額が影響を受ける(金額が下がる)場合もあると考えられています。

期間的な監護の分掌の考慮要素

このような期間的な「監護」の分掌が認められるためには、父母のいずれにおいても監護能力や監護者としての適格性が認められる必要があります。さらに、現実問題として交替監護を行うことが可能かどうか、父母において緊密に、かつ、継続的に協力し合うことが可能かどうか、交替監護が子どもに大きな負担とならないかどうかといったことも検討されます。

より具体的には、父母間の住居の距離、移動時間、子の年齢、心身の状況、子の学校や習い事の状況、子の年齢、発達に応じた子の意向、父母の協力可能性、父母と子の関係性、現在の監護状況などの事情が考慮されて判断されます。

期間的な「監護」の分掌が認められるためには、父母が子の監護について緊密に協力し合える関係を安定して継続できることが不可欠です。父母間の協力のレベルは、「共同親権」が認められるレベルよりも高いものが必要となると考えられています。

事項的な「監護」の分掌

事項的な「監護」の分掌は、子の教育に関する監護は父親、子の医療に関する監護は母親、というように、一定の事項に関する「監護」を父母のいずれか一方に委ねるものです。

事項的な「監護」の分掌が行われると、当該事項については、監護権を有する親が単独で監護を実施することができ、他方親はこれを妨げてはならないと考えられます。

事項的な「監護」の分掌は、特定の事項に関する親権行使者の指定と重なる部分がありますが、一般的には、特定の事項に関する「監護」の分掌の方が、特定の事項に関する親権行使者の指定よりも広く、抽象的な内容を対象としていると思われます。

たとえば、「子の教育」に関する監護の分掌と、子の中学進学に関する親権行使者の指定では、監護の分掌の方が広い事項を対象としています。

他方で、監護の分掌が認められた場合、当該事項について分掌を認められた親の監護を、他方親は妨げてはならないと解され、分掌を認められた親に強い権限が付されることになります。

そのため、監護の分掌が申し立てられた場合、裁判所においては、当該事項全般について監護の分掌を認める必要があるのか、特定の事項に関する親権行使者の指定では足りないのか、という点を検討することになり、場合によっては、後者の申立てへの変更を促される場合もあると考えられます。

事項的な監護の分掌の考慮要素

事項的な監護の分掌が認められるかどうかについては、当該事項についての父母間における従前の役割分担の状況、父母間の協議の状況、子の年齢、発達特性、心身の状況、父母と子との関係、子の意向を総合考慮して、父母のどちらの方が子の利益にかなう監護権の行使ができるか、という観点から判断がされるようです。

事項的な監護の分掌の場合には、期間の分掌ほどの父母間における緊密な協力関係は必要とされないものの、少なくとも共同親権とする際に求められるのと同程度以上の協力関係が必要となると考えられています。

離婚後の「共同親権」制度8~「監護者」について

2025-12-30

「共同親権」施行後の「監護者」について

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

「共同親権」に関するブログの第8弾です。

今回は「監護者」、「監護権」についてお話しします。

親権の中には、子の財産を管理する財産管理権(民法824条)と、子の日常的な世話や教育に関する身上監護権(民法820条)があります。

「監護権」は、親権の一部を構成する「身上監護」を行う単独で行う権限と言えます。

改正民法において、「監護者」は、単独で、子の監護教育、居所の指定・変更などを行うことができ、監護者の行為について、監護者でない親権者は、その監護行為を妨げてはならないと規定されています(改正民法824条の3)。

改正前民法においても、監護権の具体的な内容として、子の居所指定権(民法822条)と職業許可権(民法823条)が定められており、実務上「監護者」という概念は存在していました。

また、家事事件としても、「子の監護者を定める審判」などという手続がありました。

しかし、改正前民法の世界では、「監護者」は、今後離婚をすることになる夫婦間において、離婚が成立するまでの間、父母のうちのどちらが子どもと生活し、どちらが子どもの面倒を看るか、というような場面で用いられることが多かったと思います。

改正民法施行後は、離婚後における「監護者」という立場がより問題となるように思われます。

監護者の指定

先ほどお話ししたように、監護者となった父母の一方は、単独で子の監護教育、居所の指定・変更などができます。

平たく言えば、「共同親権」下であっても、単独で、子どもとどこで暮らすかということを決められるなど、かなり強い権限を持つことになります(他方で、日常的な身上監護に属する行為については、共同親権者がそれぞれ単独で行うことができます)。

改正前民法下においても、親権者は母でもいいが、監護権は父が欲しい、その意味で子の監護権を獲得したいというご相談を父側からいただくことがありました。

このようなご相談に対しては、監護権者と(単独)親権者が分かれるということは通常想定しがたい(そのため、親権者は母で、監護権者は父ということは、基本的には認められないと考えられる)と説明してきました。

改正民法においては、「共同親権」が認められており、「共同親権」は、父母が子に対する親権行使を行うに際して協力していくことが可能だと判断される場合であり、そのような状況下で、父母(共同親権者)の一方が「監護者」と指定される事案は多くないと考えられます。

「子の居所」に関する「親権行使者の指定」と「監護者の指定」

本シリーズの前半の方で「親権行使者の指定」という制度を紹介しました。

改正前民法の世界では、親権者が定まれば、子どもがどちらの親とどこで暮らすかということは自動的に決めることができました(単独親権者となった親が決めることができるためです)。

しかし、改正民法施行後は、離婚後においても「共同親権」という状況が生まれますので、「共同親権」となった場合で、子どもがどちらの親と暮らすか、どこで暮らすか、ということについて父母間に意見の対立がある場合、別途、子の居所について、「親権行使者の指定」を行う場面が増えるのではないか、とお話ししました。

ところで、子の居所を父母のどちらが決めるのか、という問題については、「親権行使者の指定」だけでなく、「監護者の指定」によっても解決が可能です。

しかしながら、「監護者の指定」は、子の居所の指定だけなく、監護全般について、父母の一方に、他の父母に優先する権限が与える制度です。

そのため、「監護者の指定」が認められる場合というのは、「親権行使者の指定」が認められる場合よりも相当ハードルは高いと考えられています。

そうなりますと、やはり、子の居所について父母間で対立がある場合には、子の居所を定めることについての「親権行使者の指定」が多用されることになるのではないか、と個人的には考えています。

監護者の指定の考慮要素

父母のいずれを監護者として指定するか、ということについては、改正前民法における「監護者の指定」事件と同様の考慮要素に基づいて判断されるようです。

つまり、①これまでの監護の状況、②父母における監護体制、③父母と子の関係性、④他方の親と子との関係に対する姿勢、などの要素に基づいて判断されると考えられます。

離婚後の「共同親権」制度7 ~親権者の変更

2025-12-19

親権者の変更に関して「子の利益のために必要がある場合」

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

今回は「共同親権」に関するブログの第7弾です。

今回もこれまでと同様に、離婚後における共同親権を「共同親権」あるいは「『共同親権』制度」といい、改正民法施行後における親権者の変更についてお話ししたいと思います。

前回のブログでは、「親権者の変更」が認められるのは、裁判所が、親権者を変更することが「子の利益のために必要がある」と認めた場合であることをお話しました。

それでは具体的にどういった場合が「子の利益のために必要がある」と認められるのでしょうか。

改正法案の策定過程では、同居親が子育てに無関心、同居親が親権行使に支障を来たすほどの精神疾患がある場合などが挙げられていました。

また、書籍によっては、同居親と子との関係が必ずしも良好でないために、別居親が親権者としてその養育に関与することによって子の精神的な安定が得られるケースや、同居親による子の養育に不安があるが、児童相談所の一時保護の対象となるまではいえないケースなどが「子の利益のために必要がある場合」として挙げられていました。

しかし、同居親が「子育てに無関心」、「親権行使に支障を来たすほどの精神疾患がある場合」、「子との関係が必ずしも良好でない」という状況であったにもかかわらず、当該同居親が親権者になったのだとすれば、(特に改正民法の施行後に当該同居親が単独親権者となった場合)他方親に共同親権を得させるべきケースが現実的にどれほどあるのか、個人的にはかなり疑問です。

どのような場合に「子の利益のために必要がある」と認められるのかについても、改正民法施行後の事例の集積を待つしかないと思います。

親権者の変更~変更前の親権者が当事者の協議により定められた場合

変更前の親権者が、当事者間の協議により決定されたものである場合(協議離婚の場合)には、親権変更の場面において、「協議の経過」、「その後の事情の変更」、「その他の事情」を考慮して、親権の変更が「子の利益のために必要がある」と言えるかどうかが検討されます。

考慮要素としての「協議の経過」と「その後の事情の変更」は、検討順序や軽重に決まりがあるわけではなく、事案によってということになります。

たとえば、DV被害者が離婚を急ぐあまり、真意に反して共同親権に同意してしまった場合には、事後的に親権者変更の申立てを行うことが考えられます。

この場合には、どうして共同親権とすることになったのか、という「協議の経過」が考慮されます。

「協議の経過」において、DV等により当事者間の対当性を欠く状態において、「協議」により親権者が決定されたと認められる場合には、「その後の事情の変更」の有無はあまり重視されず、親権者を定める際の判断枠組に即して親権者の変更について判断をすると考える見解もあります。

他方で、「協議の経過」に特に問題がない事案では、「その後の事情の変更」が考慮要素として重要になってきます。

親権者の変更は父母間の協議のみでは行えません

父母の双方が共同親権へ変更することについて合意をしているとしても、父母間の協議のみで共同親権へ変更することはできず、家庭裁判所の調停を経る必要があります(改正民法819条6項)。

父母と子の関係、父母相互の関係、そのような合意に至った経緯などについて、調停を通じて裁判所が父母の考え方などを聴き取り、子の利益のため親権者を変更する必要があるかどうかを検討します。

子の利益に反する事情があると裁判所が認めた場合、合意は不相当として、親権者を変更する調停は不成立により終了となります。

改正民法施行後に「共同親権」とする旨の合意は有効か?

令和8年4月には「共同親権」制度がスタートします。

制度開始前に、制度開始後には「共同親権」とすることを父母間で合意し、改正民法の施行を待たずに離婚をするという方もいるかもしれません。

しかし、「共同親権」について、上記のような合意をしたとしても、改正民法の施行後当然に「共同親権」に変更できるものではありません。

この場合でも、改めて親権者の変更を求める調停手続を行い、その中で、父母が「共同親権」について合意をするか、家庭裁判所の審判により「共同親権」を定めてもらう必要があります。

制度開始前に離婚をされる場合には、この点に注意が必要です。

制度開始後に、他方親が「共同親権」とする合意を撤回した場合には、従前「共同親権」とする旨の合意があったという事実よりも、離婚後の父母と子の関係、父母間の関係から、従前の単独親権を「共同親権」とすることが「子の利益のために必要がある」と言えるか、という観点が重視されるべきであると考えられています。

また、仮に離婚時において改正民法が適用されていれば「共同親権」が選択されたか、という観点ではなく、離婚後の父母と子の関係、父母間の関係から、従前の単独親権を「共同親権」とすることが子の利益のために必要と言えるか、という観点が重要であるようです。

離婚後の「共同親権」制度6 「共同親権」と「単独親権」の決め方 その2 

2025-11-29

「共同親権」に関する静岡家庭裁判所との意見交換会でパネリストをしてきました

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

「共同親権」に関するブログの第6弾です。

先日、静岡家庭裁判所との間で、「共同親権」に関する意見交換会があり、静岡県弁護士会側のパネリストとして登壇して参りました。

「何とか無事乗り切った(汗)」という感じでした。

今回のブログもこれまでと同様に、離婚後の共同親権を「共同親権」あるいは「『共同親権』制度」といい、改正民法施行後の「親権者」が決定される場面についてお話ししたいと思います。

必ず単独親権となる場合~必要的単独親権事由

共同親権となるのか、単独親権となるのか、については、前回のブログでお話ししたような考慮要素によって決定されます。

しかし、改正民法上、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」には、必ず単独親権としなければならないとされています(改正民法819条7項後段)。

改正民法は、このような場合の具体例として以下の2点を挙げています。

1つ目は、「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすと認められる場合」です。

父母のいずれかから子どもに対する虐待があったり、父母のいずれかに親権喪失事由・親権停止事由があったりするような場合が想定されています。

必ず単独親権となる2つ目の場合は、「父母の一方が他方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがある場合など、協議が調わなかった理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められる場合」です。

「暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動」の中には、身体的な暴力だけではなく、精神的、経済的、性的なDVも含まれると考えられています。

また、過去に虐待やDVがあったという事実は、今後の虐待やDVの「おそれ」を肯定させる方向で考慮される(重視される)と考えられています。

DVがある家庭では、この規定により単独親権になると考えられます。

条文上は、DVの被害者たる親を単独親権者とすべきとはされていません。

しかし、DVがあるようなケースでは、DVの加害者側の親が単独親権者となる場合は少ないと考えられる、という見解があります。

また、本項では、「協議が調わなかった理由」も考慮要素として挙げられています。

父母の一方または双方が虚言や重大な約束違反を繰り返す、他方の親の人格を否定する言動を執拗に繰り返す、濫訴的な裁判手続の申立てを繰り返すというような事情についても、共同親権が否定される事由として考慮されるようです。

必ず単独親権としなければならない事情は、上記の2つのみではなく、上記2つは、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」の例示であると考えられています。

上記の2つ以外に、どのような場合に必ず単独親権としなければならないのか、ということについては、書籍や文献上、必ずしも明らかではなく、改正民法施行後における事例の集積を待ちたいと思います。

単独親権から「共同親権」への変更

改正民法が施行される以前には、父母が離婚した場合、そのいずれか一方が親権者になっていました。

それでは、改正民法の施行前に決定された父母の単独親権を、改正民法の施行後に、「共同親権」へ変更することを求めることは可能なのでしょうか。

結論から言うと、制度的には「共同親権」へ変更を求めることは可能です。

ただし、「共同親権」へ変更するためには、裁判所によって親権者の変更を認めてもらう必要があります。

単独親権者から非親権者へ親権者を変更する場合も、単独親権から「共同親権」へ変更する場合も、裁判所が親権者の変更を認めるのは、「子の利益のため必要があると認めるとき」です。

改正民法が施行された(法律的に「共同親権」の選択が可能となった)という事実それ自体から、従前の単独親権が当然に「共同親権」へ変更されるべきである、ということではありません。

改正民法が施行されたとしても、裁判所が当該事案について「子の利益のため必要があると認め」なければ、「共同親権」への変更は不可能です。

裁判所が「共同親権」への変更を認める場合

前回のブログでお話した親権者を決める際の考慮要素は、親権者を変更する際にも考慮されます。

親権者を変更する場面においても、父母と子の関係、父と母との関係、その他一切の事情を考慮して親権者を変更するかどうかが判断される、ということです。

今回のブログの冒頭では、親権者を指定する際に、このような事情がある場合には必ず単独親権としなければならないという事情(たとえば、父母の一方が子どもを虐待している場合など)があることをお話ししました。

親権者変更の場面においても、そのような事情がある場合には、必ず単独親権となります。

なお、単独親権から「共同親権」への変更を求める場面についてですが、法務省民事局のパンフレットでは、「別居親が本来支払うべき養育費の支払を長期間にわたって合理的な理由なく怠っていたような場合には、共同親権への変更が認められにくいと考えられます」と言われています。

養育費の支払いの有無は、親権者変更の場面において重要な考慮要素となりそうです。

離婚後の「共同親権」制度5~「共同親権」と「単独親権」の決め方 その1 

2025-11-20

「親権」の決め方~親権者の決定において考慮される要素

皆様、こんにちは。静岡市で弁護士をしております石川アトムです。

今回のブログは、「共同親権」に関するブログの第5弾です。

「親権者」がどのような考慮要素によって定められることになるのか、ということを中心にお話しします。

今回もこれまでと同様に、この記事の中では、離婚後の共同親権を指す趣旨で、「共同親権」あるいは「『共同親権』制度」といいます。

改正前民法の世界では、離婚後の親権は、父親の単独親権と母親の単独親権のいずれかしか存在しませんでした。

改正民法が施行されますと、離婚後の親権者のバリエーションは、父母共同(共同親権)、母親単独親権、父親単独親権という3パターンになります。

改正民法下において、親権者が定まる場面は、

協議離婚の際に父母の協議によって定める場合(親権者の指定を求める家事調停を含む)

裁判所が協議に代わる審判をする場合(親権者の指定を求める家事審判)

裁判上の離婚の場合に裁判所が定める場合、という3つの場面が考えられます。

共同親権とするか、父母の単独親権とするかは、「子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮」して決められることになっています(改正民法819条7項)。

離婚後においても、「共同親権」とすることになった場合、一定の例外を除いて、子に対する身上監護、子の財産管理、子の身分行為に関する代理を、父母が共同して行うことになります(一定の例外、すなわち、父母が単独で親権を行使できる場面については、前回までのブログをご参照ください)。

改正民法において、「共同親権」とするか単独親権とするかについて、原則例外は無いとされています。

また、父母のどちらかが反対しているからといって、直ちに共同親権が度外視されるということにもなっていないようです。

「共同親権」とすべきかどうかという判断にあたっては、将来、父母間で、共同での親権行使のための協議や協力を行うことができるかということが検討されますが、協議・協力の程度は、子の養育のために最低限のやり取りができるレベルであれば、その他一切の事情を考慮したうえで「共同親権」を認める余地があると解されています。

なお、「共同親権」であるか否かによって、親子交流(これまで「面会交流」と呼ばれていた離婚後の別居親と子との交流)の方法や充実度について差が生じるという建て付けにはなっていません。

親権者を決める場面での考慮要素~「父母と子との関係」

親権者を決める際の考慮要素として、「父母と子との関係」が挙げられています。

親サイドの事情としては、子の面前で、父母間で口論を繰り返したり、子に対して他方の親の悪口を言ったりするなど、という従前の態度や、養育費を支払うなど親としての責務を果たしているかということなどが考慮されるようです。

子サイドの事情としては、父母に対する子の気持ちや、今後の親権行使に関する子の意向が考慮の対象となり得ると考えられています。

年長の子については、子の意向の重要性は高くなると考えられています。

親権者を決める場面での考慮要素~「父と母との関係」

「共同親権」とすべきか否かの際に考慮される「父と母との関係」は、具体的には、同居時における父母の親権行使の状況、別居後の親権行使の状況、子に対する身上監護のあり方、別居後の他方親と子との交流状況、父母間の連絡状況などに加え、親権者の定めの協議が調わなかった理由などを含む手続の経過についても考慮の対象とされるものと考えられます。

父母の一方が他方に対して、誹謗中傷や人格を否定するような言動を繰り返している場合には、離婚後に親権を共同行使する前提としての父母間の協力義務に違反していると評価される可能性があります。

また、父母の一方が他方に無断で、何ら理由なく子の居所を変更するなどした場合についても、事情によっては父母間の協力義務違反と評価されることがあります。

親子交流について取り決めがされたのに特段の理由無く履行されない場合、養育費に関する協議を理由無く一方的に拒否する場合も、協力義務違反と評価される可能性があります。

これらの協力義務違反は、「共同親権」とするかどうかという場面で、「共同親権」とすることに消極的な事情として考慮される可能性があります。

父母の単独親権とすべきか、共同親権とすべきかは、以上のような考慮要素を総合して決定されますが、改正民法においては、「このような事情がある場合には、絶対に共同親権にはしない」という要素もあります。次回のブログでは、この点についてお話ししたいと思います。

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