任意整理の流れと注意点

1 任意整理とは

任意整理というのは、簡単に言うと、全部または一部の債権者と交渉をして、今ある借金について、毎月の支払額を減らしてもらったり、利息や遅延損害金をカットして元金のみの支払いとさせてもらったりして借金を整理する手続のことです。

任意整理手続は、裁判所を介さない手続で、債権者と債務者(ないしは代理人弁護士)の直接交渉となります。

2 自己破産、個人再生と比べた場合の任意整理のメリット

(1)早期に解決できる可能性がある

自己破産手続及び個人再生手続は、いずれも裁判所が関与する手続です。

自己破産手続の場合、ご相談から裁判所による免責許可決定(借金を0にすることを裁判所が認める決定)が出るまで、早くとも5か月程度かかります。

また、個人再生手続の場合、ご相談から裁判所による再生計画の認可決定(減額された債務額を分割して弁済していくことを裁判所が認める決定)が出るまで、早くとも1年程度の期間を要し、その後債務者において、3年から5年の期間をかけて減額された債務を分割弁済していくことになります。

これに対して、任意整理の場合は、1か月程度で、債権者との間で支払いに関する合意が成立する可能性があります。

そのため、一般論として言えば、任意整理は、他の債務整理手続に比べて、早期に手続が終わる可能性がある手続であると言えます。

(2)整理する負債を選ぶことができる

自己破産手続及び個人再生手続の場合、債務者は裁判所に対して、現在負っている負債の全てを明らかにする必要があります。

そして、自己破産手続の場合には税金等の負債を除き、原則として全ての債務を支払わないことになり、個人再生手続の場合には住宅ローンを除き、全ての債権を平等の割合で圧縮し、原則として全ての債権を定められた弁済期に同時に支払っていく必要があります。

他方で、任意整理の場合には、整理する借金や負債(債権者)を選ぶことができます。

A社、B社、C社に借入れがある場合、A社とB社だけ任意整理をするということもできます。

また、A社には月々1万円、B社には月々5000円というように、債権者によって支払う金額を変えるということも、A社とB社がそれぞれ納得すれば可能です。

このように、任意整理の場合には、整理する債権者を限定し、各債権者に対する支払い方法も債権者と合意できる限り自由であるなど、借金を柔軟に整理することができます。

ただし、各債権者に対して必ずしも平等でない支払いを続けた後、最終的に支払いができずに自己破産に至った場合、各債権者への不平等な取扱いが破産手続上問題となる可能性はあります。

そのため、弁護士と相談のうえ、全ての債権者に対して支払いを完了することができる十分な見込みを立てたうえで、弁済金額や弁済期間について、債権者と交渉をしていくことが有益です。

3 任意整理のデメリットと注意点

(1)基本的には借金は減らない

任意整理に関して、債権者と交渉をする際には、利息や遅延損害金のカットを求めることがあり、債権者によっては、利息や遅延損害金のカットに応じてくれることもあります。

しかし、残債務の一括払いというような特殊な支払い方法を取る場合でもなければ、債権者が元金の減額に応じてくれる可能性は極めて乏しく、また、利息や遅延損害金についても減額に応じてくれない(分割払いの金額や期間についてのみ変更に同意してくれる)債権者もいます。

「借りたものは返す」というのは、法律上も道徳上も肯定されるべき事柄だと思われますが、任意整理を行う場合、基本的には、借金は減りません。

任意整理では、借りた金額は全額返す可能性がある、ということを前提に返済計画を考える必要があります。

任意整理や個人再生のご相談を受けた際、私は、よく次のようなことを申し上げます。

「今100万円強の借金があります。この借金について、債権者との間で、毎月3万円、3年間弁済するという約束をするとします。

あなたは、一生懸命頑張って3年後に借金を完済することができました。

しかし、もしあなたが破産をしていたら、そして債権者に弁済をするのと同じくらい一生懸命頑張ったのなら、破産をした3年後に100万円強の貯金ができているということになりますよね。

借りたものを返すというのは、法律的には当たり前のことで、道徳的にも肯定されるべきことですが、あなたにとってより良い再スタートはどちらでしょうか。」

(2)任意整理の頓挫~自己破産手続への移行

何度も繰り返すようですが、「借りたものは返す」というのは、法律上も道徳上も肯定されるべき事柄だと思われます。

しかし、任意整理手続を始め、実際に返済を続けていたものの、どこかの時点で分割弁済を続けられなくなってしまった場合、その状態を放置するという以外には、基本的には自己破産をするしかありません。

その場合、それまで頑張って返済を続けてきたことは、全く意味が無くなってしまいます。

この点が、任意整理の最大のデメリットだと思われます。

任意整理が途中で頓挫してしまった場合、もしも最初から自己破産をしていれば、より早期に経済的な再スタートを切ることができ、返済に充てた金額と同額の貯金ができていたはずだ、ということになりかねません。

任意整理をする場合、整理の対象となる借金が一部の借金か全部の借金かということを問わず、全ての借金について返済することができる確実な見込みがあることが非常に重要です。

(3)ブラックリスト

任意整理をした場合も、いわゆるブラックリストに載ってしまう可能性があります。

そのため、任意整理を始めると、一定期間、新たに借入れをしたり、クレジットカードを作ったり、更新したりすることができなくなる可能性があります。

4 任意整理の流れ

(1)ご相談~無料法律相談

当事務所では借金に関するご相談は無料です。

借金の悩みはもちろん重大な悩みですが、多くの場合は解決することができる問題です。

最初の一歩を踏み出すことには勇気がいるかもしれませんが、是非一度ご相談ください。

ご相談の際には、どの金融会社から、いつから、いくらくらい借りているのか、というメモをお持ちいただけますと大変助かります。

細かい金額や具体的な日付けが分からない場合には、「100万円くらい」「令和2年夏ころ」といったものでも結構です。

(2)債務整理の方法の選択~任意整理、自己破産、個人再生

ご相談の際、借金をされた経緯、借金をした目的や借金の使途、残債務の金額、現在のご収入や支出の状況、お手持ちの財産の内容などを伺います。

そのうえで、任意整理、自己破産、個人再生という3つの方法のうち、どれを選択するべきかということについてご説明いたします。

(3)任意整理を選択した場合

任意整理では、任意整理を行う債権者と任意整理を行わない債権者を含めた、借金全体について、毎月いくらくらいであれば、分割弁済が可能かということについてシミュレーションをする必要があります。

分割弁済が途中で頓挫してしまった場合、それまでの努力が水の泡となってしまうことについては、先ほどお話ししたとおりです。

そのため、毎月の収入と支出を洗い出していただき、他に突発的な支出が生じないかどうかを考慮したうえ、毎月どれくらいの金額を借金の返済に充てることができるのか検討する必要があります。

借金の返済に充てることができる金額を計算したうえで、各債権者の債権額を見ながら、A社については毎月1万円、B社については毎月1万5000円、C社については毎月5000円というように、弁済金額を割り振っていきます。

その後、各債権者と個別に、月々の支払金額や借金の支払期間について交渉します。

交渉がまとまるまでに要する期間は、債権者の数や、どの程度の返済ができるのかということによって異なります。スムーズに交渉が進めば1か月程度で、分割払いの合意に達することができる場合もあります。

ご依頼いただいた範囲の債権者との合意が成立した時点で、ご依頼は終了となります。

その後は、債務者ご本人において、債権者が指定した口座に、債権者と合意した金額を継続的にお支払いいただくことになります。

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