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静岡は2人の指導担当弁護士がいる豪華修習地
皆さん、こんにちは。弁護士の石川です。
前回のブログでは、弁護士になるために必要な司法修習のうち、弁護修習についてお話をしました。
静岡での弁護修習は、伝統的に、修習生1名に対して、主任となる弁護士1名、副任となる弁護士1名が選ばれ、2名の弁護士から指導を受けることができます。
静岡県弁護士会に所属する身として手前味噌なのですが、これは本当に素晴らしい制度だと思います。
弁護士は、人によって仕事の仕方も違いますし、経営の仕方も違いますから、複数の弁護士の仕事ぶりを見ることができるというのは、それだけで有益なことなのです。
私も独立してから特にそうなのですが、他の事務所がどうやって経営しているのかなぁとか、他の弁護士がどのように仕事をしているのかなぁということに非常に興味を持っています。
三島での弁護修習~「君は自転車好きか?」
私がお世話になった副任の指導担当弁護士は、静岡県三島市で事務所を開設されている弁護士でした。
弁護修習の初日に、修習開始式という、指導担当弁護士と修習生が一堂に会する顔合わせの式典があります。
修習生は、主任の弁護士と副任の弁護士に挟まれてお昼をいただきます。
お昼をいただきつつ、指定された順番で、修習生と指導担当弁護士が、それぞれ全体に向かって、一人ずつ自己紹介をしていきます。
これを書いていて思い出したのですが、私が指名されて、自己紹介をするために椅子から立ち上がったとき、主任の先生が、「頑張れ」とそっと声を掛けてくれました。
主任弁護士のお人柄については、前回のブログでも触れたところですが、このような一言をそっと掛けてくれる主任弁護士は、やっぱりすごい人だなぁと思います。
さて、今回は副任の弁護士の話なのですが、副任の先生からは、挨拶も早々に、「君は自転車好きか?」と聞かれました。
自転車と言えば、中近距離の移動手段として以外興味が無かったのですが、社会経験が乏しかった当時の私でも、「はい」と答えることができました。
開始式のときだったか、その後のことだったか、記憶が定かではありませんが、「アトムくんの副任事務所での修習獲得目標は、ロードバイクで県弁総会に参加することだ!!」ということになりました。
県弁総会とは、静岡県弁護士会が行う年に2回あるとても重要な会議のことです。
副任の先生がおっしゃった県弁総会では、例年、次年度の静岡県弁護士会の会長が選出されたり、当年の静岡県弁護士会執行部が行いたいと考えていた事項に関する会則変更や会則新設について議決をとったりします。
とにかくすごく重要な会議なのです。
そこに、自転車を漕いで、三島から向かうということになったのです。
副任の先生は、大変豪快な方でした。
ロードバイク修習
さて、県弁総会の当日、私は、ジャージを着て、三島にある副任の先生の事務所を訪れました。
副任の先生の事務所には、ロードバイクがいくつか飾ってあったのですが、その中の一つをお貸しいただきました。
ロードバイクに乗ったのは、このときが初めてでしたが、ロードバイクは通常のバイクよりも座席の部分が高いんですね。
停止したときは、両足のつま先が地面にギリギリ触れるかどうか、というぐらいになります。
漕いでいるときは良いのですが、止まるときにバランスを崩さないか心配でした。
万が一これで事故でも起こそうものなら、絶対にニュースになってしまう(「司法修習生、弁護修習中にロードバイクで事故!!」)と思い、細心の注意を払って運転しました。
ただいまGoogle mapで検索したところによると、副任の先生の事務所から、県弁総会の会場まではおよそ63キロありました。
Google map試算では、およそ4時間で着くという計算ですが、もっとかかったような気もします。
かなりの肉体疲労を覚えながら、県弁総会へ。
後にも先にも、ジャージで県弁総会に出席した修習生は私だけでしょう。
このときのことを覚えている先輩弁護士には、今でも時々、私がジャージで県弁総会に出席していたことをいじられます(笑)
無事に三島から静岡市の県弁総会会場へたどり着き、めでたし、めでたし、かと思いきや、2日目があるんですねぇ。
当時、私は、静岡市に下宿していたのですが、その下宿先から徒歩5分と離れていないところに「アトムくんの分も取ってあるから。」と、宿泊先までご用意いただきました。
2日目は、静岡市から御前崎の灯台に向かい、その後、掛川駅へ。
Google mapで検索したところによると、2日目の行程は、初日の約1.5倍、92キロもありました。
しかも、御前崎から掛川あたりは、かなりアップダウンのある道で、当時大変しんどかったのを覚えています。
副任の先生には、「アトムくんは、体力だけじゃなく、根性もあるなぁ。」とお褒めいただいたのですが、何しろ当時は24歳だったものですから。
今、同じことをやったら、果たして完走できるかどうか・・・。
むしろ、当時から相当なご年齢だった副任の先生を筆頭に、今の私よりも年が多かったであろう他のお2人の先生におかれても、よくまぁ、こんなに大変なことを好んで行ってらっしゃると感服したものです。
掛川駅まで自転車で向かい、自転車を折りたたみ、携行して新幹線へ。
2日がかりで漕いできた距離を30分少々で戻ってきたときには、何ともあっけない物悲しさを覚えました。
そんなこんなで、私にとって弁護修習時代1番の思い出は、間違いなく「ロードバイク修習」です。