個人再生手続について ~その7 個人再生委員の話2

個人再生委員が選任されるのは提出された再生計画の履行可能性に疑問があるため

皆様こんにちは。静岡で弁護士をしている石川アトムと申します。

今回は、前回のブログ後半に引き続き、個人再生委員のお話です。

前回のブログでお話ししたように、個人再生委員とは、裁判所が選任する弁護士のことで、再生債務者(申立人)が履行可能な再生計画を作成できるよう、再生債務者をサポートする等の役割を担っています。

個人再生手続は、今ある負債を圧縮し、圧縮された負債を3年から5年かけて、分割で支払っていくという手続です。

「再生計画」とは、今ある負債をこれだけ圧縮し、それを例えば、5年間で、3か月に1回ずついくら支払っていきますよ、ということを記載して裁判所に提出する、負債の返済計画書のことです。

私は10年以上前から、裁判所の選任のもと、年に1件程度個人再生委員として、個人再生手続に関与しています。

前回のブログでお話ししたように、個人再生委員が選任されるケースとして一番多いと考えられるのは、申立人が裁判所に提出した書類から、裁判所が、再生計画を履行できるとは考えられない、あるいは、履行できるか怪しい、と考えているケースです。

このようなケースでは、個人再生委員は、提出された再生計画が履行できそうなのか、できなそうなのかを検討し、履行できなそうだと判断した場合には、どのように再生計画等を変更すれば履行が可能になると考えられるのかを検討します。

個人再生委員として見る一番のポイント~「家計収支表」がマイナスになってしまう場合

個人再生委員として選任された場合はもちろん、個人再生手続を申し立てる場合にも、私が一番大切だと思っている書類は、家計の収支表(静岡地方裁判所の書式では「家計全体の状況」というタイトルの書類です。以下「家計収支表」と呼びます)、つまり、1月単位の家計の収入と支出の状況をまとめた書類です。

別のブログにも書きましたが、静岡地方裁判所に個人再生手続を申し立てる場合、3か月分の家計収支表を提出する必要があります。

3か月分の家計収支表を見て、住宅ローン以外の今ある負債の返済を0円と仮定し、他方で、再生計画案で示された返済金額を1月単位に組み直した場合の金額を計上し、それでも収支がプラスになるのかを検討します。

この検討にあたっては、特に支出についてですが、提出されている通帳の履歴と収支表を照らし合わせ、通帳の出金記録から確認できる支出がもれなく家計収支表に記載されているかどうか確認します。

計上漏れの支出がある場合には、当該支出を加算したうえで、なお収支がプラスになるのかを検討することになります。

個人再生委員として選任されるケースの半分程度は、この検討をした場合に、収支がマイナスになってしまうというものだと思います。

家計収支表がマイナスになってしまう場合、返済期間を3年から4年、あるいは3年から5年へ延長できないかを検討します。

5年に延長してもマイナスになってしまう場合には、支出を削っていくしかありません。

収入を増やすことを検討するというのは現実的ではないように思います。

最も手っ取り早く、効果的な方法は、携帯電話のプランを変えることです。

この方法により1月あたり数千円の支出をカットできることがあります。

次に検討したいのは、水の宅配便や、使用頻度の低いサブスクです。

必要性が高くない支出を可能な限り削ることを検討します。

「家計収支表」がプラスであっても個人再生委員が選任されるケース

個人再生委員として選任されるケースの残り半分は、家計収支表上、再生計画が履行可能な数字が現れているものの、その数字が信用できるのか、というケースであると思われます。

たとえば、申立人(再生債務者)が現在と同等の収入を今後も継続して得ることができるのかということが問題になることがあります(収入の変動が大きい自営業の方や、再生計画の履行期間中に定年や役職定年を迎える方など)。

また、毎月の収入の中に、親族から相当程度の金額の援助がある場合に、今後も(特に再生計画は3年から5年という長期間にわたって履行しなければならないものであるため)、同様の援助を継続してもらうことが可能であるのか、ということが問題となります。

この問題は、援助してくれる人の主観面、客観面の双方を検討する必要があります。

主観的には、援助を継続してくれる意思があるかどうか、裁判所宛の書面で明らかにしてもらいます。

客観的には、援助の前提として、援助者が現在の仕事を3年後、5年後も継続できるかどうかを検討します。

私が個人再生委員に選任される場合、以上のような点に着目しています。

keyboard_arrow_up

0542706551 問い合わせバナー 無料相談について