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弁護士になるための最終試験~通称「二回試験」
皆さん、こんにちは。弁護士の石川です。
さて、「弁護士になるために合格する必要がある試験は何でしょう。」という質問に対しては、多くの方が「司法試験」とお答えになるでしょう。
実は、あまり知られていないかもしれませんが、弁護士になるためには、あるいは、裁判官、検察官になるためには、「司法試験」に合格した後、さらにもう一つ、「二回試験」という試験に合格しなければなりません。
「二回試験」は、文字どおり「にかいしけん」と読みます。
正式名称は、「司法修習生考試」(しほうしゅうしゅうせい こうし)というようです。
この「二回試験」は、司法修習の卒業試験とも言える試験で、司法修習の最後に行われます。
いわば、ラスボスです。
私自身のラスボスとの闘い(苦闘…)は、また別の機会にお話しするとして、今回は、ラスボス前の最後のダンジョンとも言うべき「集合修習」についてお話しします。
「集合修習」とは
集合修習とは、埼玉県和光市にある司法研修所に全国から司法修習生が集まり、講義形式の修習を受けたり、模擬裁判をやったり、二回試験の予行演習的な「即日起案」を行ったりする修習のことです。
司法修習に関する前回のブログでは、選択修習についてお話をしました。
司法修習生の中でも、選択修習をしてから集合修習を受けるというパターンの修習生と、集合修習を受けた後、選択修習を受けるというパターンの修習生がいましたが、静岡修習は前者でした。
また、現在の司法修習は、全国各地での実務修習に先だって、まず司法研修所での導入修習を経て、その後実務修習を行い、最後に再び司法研修所に戻って集合修習を受けるというスタイルです。
しかし、私が司法修習生だったときには、いきなり実務修習から始まり、その後二回試験までの間だけ司法研修所において集合修習を受けるという形式でした。
集合修習中は、70人程度の修習生が1つのクラスに属して、講義を受けたり、模擬裁判を行ったりします。
静岡修習は全体で25人程度でしたので、甲府修習、那覇修習とともに、1つのクラスを形成していました。
「集合修習」での目標は、多くの人にとっては、ただ一つで、「とにかく二回試験に落ちないこと」です。
集合修習中に行われた二回試験の予行演習たる「即日起案」は、実務修習中に行われていた形式のものとさほど変わりが無かったように記憶しています。
即日起案は、民事裁判、刑事裁判、民事弁護、刑事弁護、検察を2回ずつ行いました。
起案に対しては、毎回アルファベットでの評価が付されました。
教官において、特に優秀な起案だと評価した起案については、氏名を隠したうえで、コピーが用意されます。
「とにかく二回試験に落ちないこと」が、多くの人にとって、唯一にして絶対の目標であり、もっと勉強しないと、二回試験がまずいぞ、という起案を書いた修習生は、優秀答案をコピーして勉強します。
なお、「多くの人にとって」「とにかく二回試験に落ちないこと」が目標だと書いたのは、「多くの人」が、二回試験の合格後には弁護士になるからです。
裁判官や検察官志望の修習生(特に検察官志望の修習生)は、二回試験合格後の就職を見越して、裁判科目や、検察科目など、就職先予定の科目において、「優秀な」成績で二回試験に合格することが求められるという話を聞いたことがあります。
他方で、弁護士志望の修習生は、とにかく二回試験に合格しさえすれば良いのです。
繰り返しますが、とにかく二回試験に受かる、これが大事なのです。
いずみ寮への引越し
私が修習生であったとき、集合修習の期間は、二回試験を入れて2か月弱でした。
その期間は、司法研修所内の「いずみ寮」という寮に入って生活する人がほとんどであったと思います。
いずみ寮のキャパシティの関係で、私たちのころは、関東近郊に実家がある、あるいは関東近郊に親戚がいるという人は、入寮することができなかったようで、毎日司法研修所まで通っている友だちもいました。
いずみ寮は国の教育施設であり、持ち込める物には制限がありました。
確かテレビは持ち込み禁止だったはずです(持ち込んでいる人もいましたが)。
運び込む荷物は、せいぜい段ボール2、3個程度だったと思います。
私は9月下旬ころに、静岡市から和光市へ引越しをしました。
入寮当日は、入口付近がごった返しており、たくさんの友だちと一緒に、何か新しいことが始まるという若干ワクワクした気持ちになりました。
実際、私の場合、大学は東北大学で、ロースクールは京都大学で、実務修習は静岡だったので、いずみ寮では、大学時代の友だち、ロースクール時代の友だち、実務修習時代の友だちがみんないて、すごく不思議な感覚でした。
実務修習開始後早々、別の修習地で修習をしていた大学時代の友だちと会い、「久しぶりだね~。どこで就職するの。」などと話をしました。
3つの時代の友だちが一つの建物の中で一緒に寝起きし(いずみ寮は個室ですが)、同じカリキュラムの勉強を一緒に行っていくというのは、とても不思議な感覚でした。
後にも先にも、集合修習のときにしか経験できなかった体験だろうと思います。