Archive for the ‘コラム 自己破産’ Category

個人の自己破産申立てのための準備~番外編 自己破産手続と自宅などの所有不動産について2

2025-08-30

自己破産における自宅の処分

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

来週から9月に入りますが、残暑が厳しく続いております。皆様、いかがお過ごしでしょうか。

前回のブログでは、個人の方を対象とした自己破産申立ての準備に関するブログの番外編として、自宅などの不動産をお持ちの方に関して、自己破産をした場合、お持ちの不動産がどうなるのか、というお話をしました。

前回のブログでは、自己破産をしたとしても、その不動産に住み続けることができる場合(ご親族や知人が不動産を買い取ってくれたり、残ローンを支払ってくれたりする場合)があることについてお話をしました。

今回は、親族や知人による不動産の買取りや残ローンの支払いが困難である場合についてお話をします。

自己破産をしたら、いつまでに自宅を出て行かなければならないのか

どなたかがご自宅を買い取ってくれる、あるいは、ご自宅に設定されている抵当権に関する負債を支払ってくれるということでもない限り、基本的には、ご自宅は破産手続の中で売却処分されます。

破産手続の中でご自宅が売却された場合、当然のことながら、破産者はご自宅から出て行かなければなりません。

問題となるのは、いつまで自宅にいて良いのか、ということです。

このことについて明確な答えはありません。

しかし、遅くとも破産手続が開始された時点で、申立人(破産者)が所有している財産の管理処分権限は破産管財人が有することになり、観念的には開始決定が出された時点から、破産管財人はご自宅の売却処分に向けて動き出すことになります。

そのため、私としては、遅くとも破産手続が開始された時点までにはご自宅から退去していただくべきだと考えています。

当事務所の場合、ご相談をいただいてから破産手続を申し立てるまで、概ね2月程度のお時間をいただいています。

破産手続を申し立ててから破産手続の開始決定が出るまでの期間を2週間程度と見積りますと、ご相談をいただいた時点で自己破産を申し立てることを決意されている方の場合には、ご相談のときから概ね2か月から3か月後にはご自宅を出ていただくという腹づもりでいていただきたいと思います。

もちろん、様々なご事情により、上記のような期間のうちにご自宅を出て、別の場所へ引越しをするということが困難な方もいらっしゃると思います。

ご自宅をお持ちの方で、ご自宅を去らなければならない公算が高い方については、破産申立ての準備中に、ご自宅に関する対応についてご相談させていただければと思います。

破産をしても不動産が戻ってくるケース~破産管財人による破産財団からの放棄

前回のブログでお話ししたように、お手持ちの不動産は、原則的には、破産手続の中で現金化され、その現金が破産債権者に対して分配されることになります。

しかし、不動産の中には、破産手続においても現金化できない、つまり、売れない不動産というものも存在します。

典型的には、山林、原野の類ですが、田畑についても買い手が見つからず、現金化できないということもあります。

売れない不動産については、最終的に、破産管財人が売却を断念することがあります。

この場合、売れなかった不動産は、破産手続の中で現金化して債権者に分けるべく構成されている財産の集まり(「破産財団」といいます)から、放棄され(分離され)、破産者のもとに返ってくることになります。

このようなケースは、山林、原野、田畑に限らず、居住用の不動産、つまりご自宅についても起こり得ます。

たとえば、老朽化が著しく建物の解体費用が土地の値段を上回る、崖の直下などマイナス面が大きい、共有物件で他の共有者が売却に反対している、等々の理由によって、破産手続の中で売却ができないということがあります。

このような場合、それまで住んでいた不動産が、破産手続が終わっても売られずに、また破産者のもとに返ってくるということになります。

ただし、その場合でも、ご自宅に抵当権が付いていれば、抵当権が付いたままのご自宅が返ってくるということに注意が必要です。

つまり、破産手続が終わって、ご自宅が再び破産者の管理下に置かれることになったとしても(またご自宅に住めるようになったとしても)、債権者が競売を申立て、結局競売により売却されてしまうということが考えられます。

当事務所では、法人、個人を問わず、自己破産手続の申立てを多く取り扱っております。

ご自宅などの不動産をお持ちで自己破産をお考えの場合には、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

個人の自己破産申立てのための準備~番外編 自己破産手続と自宅などの所有不動産について1

2025-08-20

自己破産をした場合の懸念~不動産をお持ちの場合

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

今回は、個人の方を対象とした自己破産申立ての準備に関するブログの第7弾ですが、番外編の位置付けです。

自己破産を申し立てる際、不動産をお持ちの方、特に自宅をお持ちの方においては、破産をしたら自宅はどうなってしまうのか、いつまで住むことができるのか、ということが最大の関心事になると思います。

そこで今回は、自宅不動産を所有している場合についてお話ししていきます。

自己破産をした場合の自宅の行く末について

当事務所のブログでたびたびお話をしているように、破産手続そのものは、借金を0にする手続ではなく、破産者が所有している財産を現金化し、債権者に分配することを本質としています。

そのため、自己破産を申し立てた場合、基本的には、自宅は売却処分となります。

この場合、破産手続が始まった後、破産管財人という別の弁護士が裁判所によって選任されます(破産管財人に関するご説明はこちらのページをご覧ください)。

破産管財人は、銀行などの抵当権者と話をし合いをしながら不動産の買い手を探し、最終的には裁判所の許可と、抵当権者の同意のもと不動産を売却することになります。

抵当権者である金融機関が売却にOKを出してくれないと、不動産を第三者に売却することは事実上不可能です。

抵当権が付いている不動産は、売却して所有者が変わったとしても(名義が買主に移転したとしても)、抵当権が付いたままでは、その後に不動産が競売にかけられ、落札者が代金を支払った場合、買主は所有権を失うことになります。

このような事情があるため、買主が「安心して」不動産の所有権を取得するためには、売買時に、不動産に設定されている抵当権を金融機関に外してもらう必要があります。

そのため、不動産を誰にいくらで売るかということについては、抵当権者である金融機関の同意を得る必要があるのです。

自己破産をしても自宅を出て行かなくても良いケース

自宅不動産をお持ちの方が自己破産をする場合、もっとも気になる点が、自宅を出て行かなければならないのか、ということでしょう。

自宅を出て行かなくても済むケースとしては、ご親族、知人の方が、自宅不動産を丸々買い取ってくれるというケース、あるいは、自宅不動産に付いている抵当権によって担保されている債務を全額を弁済してくれるというケースがあります。

ごくごく稀にですが、このようなケースもあります。

ただし、このようなケースでも、いくつかの注意点があります。

前回のブログでお話をしたように、不動産の価値には幅があります。

ある不動産会社が、この土地建物は1200万円が妥当だという査定書を出したとしても、別の不動産会社は1500万円が妥当だという価値判断をするかもしれません。

不動産をお持ちの状態で自己破産をする場合には、自己破産の申立てにあたって不動産会社の査定書を添付する必要があります。

しかし、破産手続が開始された後に選任された破産管財人が、申立ての段階で取得した査定書よりも、高額な査定書を取得するということもあります。

このような場合、破産管財人は、自身が取得したより高額な査定書の金額でなければ売却しない、という判断をするかもしれません。

あるいは、申立人(破産者)の親族や知人が出せる金額以上の金額で買取りを希望する人が出てくるかもしれません。

破産管財人としては、できる限り高く不動産を売るように努めますので、これらのケースでは、申立人の親族や知人が不動産の買取りを希望したとしても、同人らへの売却は実現しない可能性があります。

また、別のケースとして、たとえば、複数の不動産会社の査定を取得したところ、最高額でも1000万円という評価であったのに、抵当権者である金融機関が(様々な事情により)どうしても1500万円でなければ売却に同意しない、ということもあり得ます。

さらにまた別のケースとしては、自宅不動産が既に競売にかけられてしまっているようなケース、つまり借入れに関する問題が発生してから、かなり長い期間が経過してしまっているようなケースでは、自宅不動産を競売以外の方法で売却することについて、金融機関が難色を示すこともあります。

当事務所では、会社、個人を問わず自己破産申立事件を多数扱っており、また、裁判所から破産管財人に選任され、破産事件を取り仕切ることも多くあります。

自宅不動産をお持ちの方で、自己破産の申立てを検討されている方は、当事務所に是非一度ご相談ください。

個人の自己破産申立てのための準備~その6 不動産について

2025-08-09

自己破産の申立てにおいて必要となる書類~不動産をお持ちの場合

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

8月に入り、先日静岡市では、最高気温41.4度を記録しました。

あの日は凄まじい暑さで、エアコンを付けていても、窓際の私の席は暑さで気持ち悪くなってきそうなぐらいでした。

あの日が今夏の暑さのピークであると信じたいですが、皆様も何卒ご自愛ください。

さて、今回からまたしばらく、ブログの内容は、個人の方を対象とした自己破産申立てに関するものとなります。

今回はその第6弾、不動産に関するお話です。

不動産をお持ちの方の場合、アパートマンションなどを居住用に賃借されている方の場合と、場合を分けてお話をしていきたいと思います。

まずは不動産をお持ちの方についてです。

不動産を所有されている場合、多くの場合、その不動産は、居住用、つまり、ご自宅をお持ちだということになろうかと思います。

そして、多くの場合、ご自宅の住宅ローンは支払いが継続中で、ご自宅には金融機関の抵当権が設定されていると思われます。

このような不動産をお持ちの場合、以下のような書類をご準備いただく必要があります。

① 不動産の全部事項証明書(いわゆる「登記簿」、「不動産登記」のことです)

不動産の全部事項証明書は、法務局で取得可能です。

② 不動産の固定資産評価証明書

お持ちの不動産すべてについて取得してください。

市役所、区役所で取得が可能です。

田畑、山林などを含め、お手持ちの不動産が5つ以上あるという場合には、固定資産評価証明書とともに、市役所、区役所で「名寄帳(なよせちょう)」を取得してきてください。

③ 不動産会社による評価書、査定書

固定資産評価証明書は、一定程度、対象となる土地建物の資産価値を反映しています。

しかし、固定資産評価証明書に記載された「価値」は、市場価値とは乖離している場合があります。

また、不動産という財産自体、その価値が一義的に定まるものではなく、価値には一定の幅があります。

誰が見ても、この土地の価値は1234万5678円以外ありえない、というようには決まらないということです。

後のブログでもお話ししますが、破産をした場合、基本的に、ご自宅は売却処分をしなければなりません(そして、売却によって増えた財産は、破産手続の中で債権者へ分配していく必要があります)。

裁判所、あるいは、破産管財人としては、ご自宅がどの程度の金額で売却できるのかを予測する必要があります。

そのため、固定資産評価証明書に加え、実際の市場価格により近いと考えられる、不動産会社の評価書、あるいは査定書を提出する必要があります。

お知り合いに不動産会社にお勤めの方がいて、その人に依頼できるようであれば、その人に査定書を出してもらってください。

不動産会社にツテがない、という場合には、当職宛てご相談ください。

④ 住宅ローンの残高が分かる資料

お手持ちの不動産に抵当権が設定されている場合、当該抵当権のもととなっている負債が今いくら残っているのか分かる資料をご用意ください。

典型的には住宅ローンの月々の返済表です。

タイトルでは「住宅ローンの残高が分かる資料」と書きましたが、住宅ローン以外でも、事業の借入れのために、ご自宅を担保に入れていることがあるかもしれません。

そのような場合には、当該事業の借入れの残高がいくら残っているかが分かる資料が必要です。

山林や田畑など売却することが困難と思われる不動産をお持ちの方

ご相談者様によっては、山林や田畑など、売却が困難と思われる不動産をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

基本的には、そのようなケースでも、上記の①、②、④の資料はご用意いただく必要があります(④は担保に入っていなければご不要です)。

他方で、特に山林などでは、裁判所から、③不動産会社の評価書、査定書の提出までは強いて求められないという傾向があるように思います。

ただし、用意できた方が良いと思いますし、農地でも転用が容易と思われるものや、山林であっても途方もない大きさのものであれば、破産手続の中で売却できる可能性がありますので(相応の財産的価値もあると思いますので)、評価書、査定書の提出も必要になってくるのかな、と思います。

それほど土地の数が多いのでもなければ、ご自宅(等)の評価書を取得する際、合わせて不動産会社に山林等の査定をお願いするのがベストだと思います。

アパート、マンションなど不動産を借りていらっしゃる方

アパートやマンションなど、賃貸物件にお住まいの方は、不動産の賃貸借契約書をご持参ください。

アパートやマンションなど、賃貸物件にお住まいの方から、「破産をしたら、アパートを出て行かなければなりませんか」というご質問をいただくことがあります。

破産をしたからといって、借りているアパート、マンションから当然に出て行かなければならないということにはなりません。

ただし、破産をする際に、アパート、マンションの賃料を何か月も滞納しているという場合には、そのことを理由として出て行かなければならない、という可能性はあります。

感覚的な話で申し訳ないのですが、5か月以上賃料を滞納している場合には、大家さんからの解約が認められやすいのではないかと思っています。

個人の自己破産申立てのための準備~その5 またまた通帳に関するお話3

2025-06-30

自己破産申立ての準備における通帳の重要性~破産者の財産把握の観点から

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

明日から7月ということで、暑い季節になってきました。

今週の静岡は雨模様ですが、今年の夏は、例年より梅雨明けが早くなるかもしれないようです。

皆様、熱中症に気を付けつつ、お過ごしいただければと思います。

さて、個人の方を対象とした自己破産申立ての準備に関するブログの第5弾です。

過去2回のブログでは、いずれも預金口座の通帳に焦点を当てたお話をしてきました。

今回は、その通帳のお話の第3弾です。

自己破産手続の準備において、通帳が持つ意味は非常に大きいのです。

破産手続というのは、本来、破産者(依頼者)が持っている財産を現金化して、債権者に平等に分配する手続です。

個人の自己破産申立ての場合、多くのケースでは、分配できるほどの財産がないため、破産手続は、始まると同時に終了という形を取ります(「同時廃止」(どうじはいし)といいます)。

しかし、本来、破産手続は、破産者の財産を分ける手続であり、破産手続が始まった後に、破産者の財産が現金化され、分配されていきます。

破産手続が同時廃止により終了するかどうかは、自己破産を裁判所に申し立てる時点である程度予想が付きますが、裁判所による審査を経た後に正式決定されます。

また、個人の自己破産の場合、自己破産が可能であるのは、申立人(依頼者)が、これからも継続的に債務を弁済することができません、という状態にあることが言える場合です。

これからも継続的に債務を弁済することができない状態にあるかどうかの判断にあたっては、申立人の資産状況が重要です。

これらの観点から、裁判所に自己破産を申し立てるにあたっては、申立人の資産について、可能な限り正確な情報を裁判所に提供する必要があります。

この観点からも通帳は非常に重要です。

自己破産にあたって裁判所に報告する必要がある資産の内容

破産手続を申し立てる際には、裁判所に対して、可能な限り正確に、申立人の資産状況を報告する必要があります。

裁判所に報告すべき「資産」は、基本的には申立人が保有している資産のすべてということになりますが、もう少し具体的に言いますと、少なくとも以下のようなものについては裁判所にその存在を報告する必要があると考えられます。

  • 現金
  • 不動産(土地建物、その不動産に価値があっても無くても、です)
  • 預貯金(通帳や入出金明細を2年分ご用意いただきたいということについては以前のブログで申し上げたとおりです)
  • 保険(生命保険、医療保険(共済も含みます)、個人年金、自動車保険、火災保険・地震保険、家財保険、ペット保険など)
  • 自動車
  • 株式、仮想通貨、Fx、社債

通帳から読み取れる資産の内容

申立人(依頼者・相談者)がどのような資産をお持ちであるのかは、申立人ご自身が一番よくお分かりだと思いますので、まずは、申立人から、お持ちの資産について聴取をします。

ただ、ご自身の資産であっても、うっかり伝え忘れたり、計上漏れしたりするということは間々あります。

通帳から読み取れる資産として、最も顕著なものは、おそらく保険であろうと思います。

通帳から、「○○保険」の引落しがあれば、申立人がその保険に加入していることが強く推認できます。

また、現在はその保険に加入していないとしても、直近1年以内にその保険を解約していたとすれば、解約時に保険金の戻りがあったかどうか(解約返戻金(かいやくへんれいきん)が発生したかどうか)を裁判所に報告する必要があります。

また、最近の自己破産申立てで比較的多く見かけるのは、通帳から、ネットの証券会社の引落しや、仮想通貨やFxを取り扱う会社の名前での引落しです。

仮想通貨やFxを取り扱う会社の引落しに関しては、現在の残高は0円であること(投入した金額は全て損してしまった)が多いように思いますが、通帳上、仮想通貨やFxの入出金があれば、その残高があるのかどうか、あるのであればいくらあるのかが、破産手続上当然に問題になってきます。

仮想通貨やFxで損をした金額によっては、射幸行為として、免責不許可事由(破産を申し立てても負債を0にするべきではないとして法律上定められている事情)への該当性も問題になってきます(免責不許可事由については、こちらの記事をご覧ください)。

このように、通帳の記載は、自己破産を申し立てる際に、申立人がどのような資産をお持ちであるのかについて、裁判所に可能な限り正確な情報を提供する、という観点から非常に重要です。

当事務所では、自己破産の申立てにあたり、通帳上の記載について、かなり細かく聴き取りを行っていますが、興味本位で聴き取りをしているわけではなく、上記のような目的のため聴き取りを行っているのです。

個人の自己破産申立てについて~その4 通帳に関するお話2

2025-06-19

自己破産申立てのための準備~通帳の一括記帳にご注意ください

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

6月も後半に差し掛かっていますが、一昨日静岡市では最高気温37℃超えとなりました。

昨年は7月の上旬に、静岡市で40℃を記録した日がありました。

今年も同じように暑くなるのでしょうか・・・。

皆様、熱中症にお気を付けいただければと思います。

さて、今回は、個人の方を対象とした自己破産申立ての準備に関するブログの第4弾です。

前回のブログでは、冒頭で、通帳についてのお話を始めておきながら通帳レス口座のお話から裁判手続のオンライン化の話へと脱線してしまいました。

今回は再び通帳のお話です。

前回のブログで、お持ちいただきたい通帳について、2年分をお願いします、というお話をしました。

2年分の通帳をお持ちいただくに際してご注意いただきたいことがあります。

通帳を長い間記帳していないと、その期間に記帳されるはずであった個々の入出金が、「入金○件 ××円 出金○件 ××円」などというように、一括して記帳されてしまい、個々の入出金の内容が記載されないことがあります。

自己破産の申立予定日から2年以内に、通帳にこのような状態の記載がある場合(一括記帳のページがある場合)、一括記帳されている期間の入出金履歴を、銀行の窓口で発行していただく必要があります。

自己破産申立てにおける通帳の重要性

さて、これまでくどくどと、2年分の通帳を持って来てください、というお話を繰り返してきました。

これほどくどくどと、2年分の通帳を持って来てください、と言うのには、もちろんちゃんとした理由があります。

個人の方にとって、自己破産申立ての手続というのは、今抱えている借金を今後も継続的に支払っていけないこと(「支払不能」といいます)が明らかであるので、その支払いを免除してください、という申請をする手続です。

個人の場合には、会社の破産申立ての場合と異なって、「債務超過」=負債の金額が資産の金額を上回っている状態であることを理由として破産を申し立てることは認められていません。

したがって、自己破産をするためには、まず、今抱えている借金をこれからも支払っていくことは不可能です、ということを裁判所に分かってもらう必要があります。

そのために、通帳の入出金というのは非常に有用です。

もちろん、1月あたりの家計の収入と支出の状況を説明する書類(1か月単位の家計簿のようなもの)と組み合わせて、ということになりますが、通帳上、相当多額な給与が振り込まれていることが明らかである場合、そもそもこの人は、破産申立てを行うための条件である「支払不能」に当たるのか、という疑念を生じさせるでしょう。

通帳の重要性~生活実態との関係

先にもご紹介したとおり、静岡地方裁判所へ自己破産を申し立てるにあたっては、申立人(相談者)の家計全体の収入と、支出の状況を1月ごと記載した書類(私はこの書類のことを「家計収支表」と呼んでいます)を2か月分出す必要があります。

なお、またしても余談ですが、個人再生を申し立てる場合には、3か月分の家計収支表を提出する必要があります。

個人再生手続において、自己破産よりも長期間の家計収支表の提出が求められるのは、個人再生手続においては、3年から5年という長期間にわたって、認可された再生計画を履行することができるかどうか、という判断を行うためと考えられます。

話を元に戻しますが、破産手続を申し立てるに当たっては、裁判所に2か月分の家計収支表を提出する必要があります。

その家計収支表には、1月単位で、世帯構成員の各収入金額と、世帯全体の支出を記載します。

支出には、住居費(住宅ローン、アパート賃料等)、水道光熱費、食費、電話料金などなど、様々な項目があります。

当事務所では、家計収支表は、まず依頼者に記載してもらいますが、裁判所に提出する際には、必ず弁護士(私)が内容をチェックします。

ここで大変役に立つのが通帳です。

家計収支表のお給料の金額や住宅ローンの金額が、実際の収支と異なっていたり(その多くは、家計収支表では数字が丸められている場合です)、通帳上出金が確認できるウォーターサーバーや有料テレビ契約の支出が家計収支表に記載されていなかったり、そういったことを通帳から確認することができます。

このように、通帳は、より正確な家計収支表を作成するうえでかかせないアイテムです。

個人的な感覚ですが、ウォーターサーバーの支出記入漏れというのは、結構多いように思います。

また、私は現時点では飲料水に特段のこだわりは無いのですが、意外と多くの方がウォーターサーバーをレンタルされているんだなぁと驚いています。

またまた余談で恐縮なのですが、私が弁護士を始めたころ(15年前)は、依頼者の通帳に、WOWOWやスカパーの引落しが記載されているということがそれなりの頻度でありました。

しかし最近は、そういった有料放送の引落しを見る頻度が減り、他方で、Netflixであったり、Amazonプライムであったり、そういったインターネットを利用した配信サービスの契約を見ることが多くなりました。

破産手続にも、時代の移り変わりが現れているんだなぁと思いました。

当事務所では、お借り入れ、負債に関するご相談は初回無料で承っております。

また、法テラスを利用して自己破産を申し立てることも可能です。 借金の支払いでお困りの方、ぜひ一度当事務所にご相談ください。

個人の自己破産申立てについて~その3 通帳に関するお話1

2025-06-09

自己破産申立てのための準備~預金通帳、入出金履歴

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申立てなど、借金の問題に対する法的な解決を注力分野の一つとしております。

今回も自己破産申立ての準備についてお話ししています。

以前のブログで、自己破産申立ての際にご用意いただきたい書類についてお話をしました。

その中で「預貯金の通帳」が必要です、というご案内をいたしました。

今回は、その通帳、または、預金口座の入出金の履歴についてお話しをします。

静岡地方裁判所において、自己破産申立てを行う際、お持ちの預金口座の通帳のコピーを1年分以上提出する必要があります。

通帳は、残高が0でも、長年使っていなくても、お持ちの預金口座に関するものは、すべてご提出いただきます。

また、自己破産の申し立てをする日から1年以内に通帳を更新している場合には、更新前の古い通帳についても提出が必要となります。

ただ、近時、私が代理人として、静岡地方裁判所に申し立てた破産事件では、1年分以上の通帳の写しを提出していたのですが、1年ちょっと前に通帳が繰り越されており、繰越前の(1年以上前の)通帳についても提出することを求められたことがありました。

そのため、当事務所のブログでは、2年分の通帳をお持ちください、ということでご案内を差し上げています。

自己破産申立ての準備~通帳レス口座をお持ちの方の場合

最近では、楽天銀行やPayPay銀行などのインターネットバンキングを利用されている方も多いと思います。

インターネットバンキングでは通帳が無いことが通常だと思います。

また、銀行の窓口で口座を開設された方でも、通帳レスの口座を利用されている方もいらっしゃると思います。

そのような方の場合には、銀行口座のスマートフォンアプリなどで、残高が分かるページと入出金履歴のページのスクリーンショットをお撮りいただき、私のメールアドレス宛にスクリーンショットを添付してお送りいただきます。

お送りいただく入出金履歴の期間は2年間ですが、銀行によっては、6か月程度しか入出金履歴が表示されないこともあります。

そのような場合には、ひとまずは可能な限りの期間分をお送りいただければと思います。

さて、以下の情報は、全くの余談ですが、通帳レスの口座では、1枚のスクリーンショットに表示される入出金は、3~4つ程度だと思います。

紙の通帳では、見開き1ページに20個を超える入出金が表示されます。

仮に同じ期間に同じ数だけ入出金があるとすると、紙の通帳に比べて、通帳レス口座のスクリーンショットは、その5倍以上の枚数が必要となります。

しかも、完全に私の主観なのですが、通帳レス口座を利用されている方は、キャッシュレス決済の利用率が高いと感じています。

キャッシュレス決済は数百円単位で気軽に行うことができるため、同じ期間であっても、入出金の数自体がかなり多いと感じています(他方で、数百円単位で頻繁に現金を出金するという方は見たことがありません)。

このように、通帳レス口座では、同じ期間の入出金履歴を提出するとしても、紙の通帳に比べて枚数が多く、かつ、同じ期間であっても入出金回数が多いため、2年分の入出金履歴のスクリーンショットを印刷すると、一つの口座だけで厚さが1センチメートルほどになったりします。

通帳を作るかどうかという場面では、通帳レスはエコなのかもしれませんが、破産申立ての場面では、環境に優しくないなと感じます。

ただし、2028年までには、破産手続の申立てもオンラインで申請できるようになります。

早くそのような時代が到来してもらいたいと思っています。

余談の余談~裁判手続のオンライン化について

先ほど、2028年までに破産手続をオンラインで申し立てることができるようになるというお話をしました。

これに先だって、2026年には、オンラインで訴訟を提起することが可能となり、その前段階(?)として、裁判所への提出書類(準備書面や証拠など)をオンラインで提出できるようになりました。

裁判所の公式HPでは、2023年6月には、静岡地方裁判所(本庁)などのすべての地方裁判所で、そのような取扱いの運用が始まるという予定だったようですが、私が関わっている事件では、そのようなお話は全く伺っていません。

民事裁判書類電子提出システム(mints)について | 裁判所

事件の種類、内容によっては、資料(書類の枚数)が膨大な数に上ることもあります。

それこそ1回の裁判の準備のために、厚さ3~4センチの書類を提出するということも間々あります。

これを裁判所と相手方の数の分だけ印刷しなければならないというのは、結構大変です。

以前、静岡地方裁判所ではない、他県の裁判所の手続で、書面のオンライン提出を利用させていただき、大変便利だった記憶があります。

書類提出のオンライン化についても、裁判所(特に静岡地方裁判所)には、積極的に進めていただいたいと思っています。

話が横道の横道に逸れましたが、当事務所では、借金に関するご相談は、初回無料となっております。

自己破産の申立てなどを検討されていらっしゃる方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

個人の自己破産申立てについて~その2

2025-05-30

自己破産申立てのための準備~弁護士から債権者に対する「受任通知」

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

当事務所では、自己破産の申立てなど、借金の問題を注力分野の一つとしております。

前回のブログでは、自己破産申立ての際にご用意いただきたい書類についてお話をしました。

その中の①として、「債権者からの請求書や督促状」をご用意いただきたいと申し上げました。

個人の自己破産の申立ての場合、その準備は、弁護士が依頼人の代理人として、債権者に対して、○○さんは自己破産をすることにしました、今後、○○さんへの請求は止めてください、という通知を出すことから始まることが多いと思われます。

弁護士が債権者に発送するこのような通知のことを「受任通知」といいます。

受任通知が債権者に届くと、当該債権者から相談者、依頼者に対する請求はストップします。

弁護士から債権者に対してこのような通知を出す必要があるため、どこの債権者からお金を借りているのか、あるいは、どこの債権者に未払いがあるのか、ということを知る必要があり、債権者からの請求書や督促状のご持参をお願いしています。

自己破産申立てのための準備~債権者一覧表の作成

弁護士が受任通知を出しますと、債権者から弁護士に対して、○○さんは、うちの会社にこれだけ借入れがあります、という返答があります。

弁護士は、すべての債権者に受任通知を発送し、債権者の名称や連絡先とともに、債権者から連絡のあった借入額、負債額を「債権者一覧表」という書類に書き込んでいきます。

以前のブログで、破産手続は、厳密には借金を0にする手続そのものではない(借金を0にする手続は、免責手続です)ということをお話したように思いますが、「債権者一覧表」は、この「借金を0にする」ことと密接に関係しています。

たとえば、相談者のAさんが、仲の良かった友だちBさんからお金を借りていたとします。

Aさんはお金を借り始めたころは、Bさんからの借入れをある程度返すことができていたものの、次第に返済が滞るようになり、Bさんとの友人関係にもヒビが入りました。

Aさんは、自分が破産をして、裁判所からBさんのところに破産の通知が行くと、Bさんからまた文句を言われるようになるなど、面倒なことになると思い、弁護士にはBさんからお金を借りていたことを黙っていたとします。

この場合、Aさんが自己破産を申し立てて、免責決定を受けることができたとしても、その後、BさんからAさんに対して借入金の返済請求があったとき、Aさんは、免責を受けていると言ってBさんからの請求を拒否することはできません。

破産法上、AさんがBさんからお金を借りているということを認識しながら、債権者一覧表にBさんの名前や借入金額などを記載しなかった場合、Bさんに対する借入れは、免責の対象外になるとされているからです。

破産手続では、すべての債権者を平等に取り扱う必要があります。

友人や親戚からお金を借りており、そのことを弁護士に秘密にしたまま破産手続を進めてしまうと、後々さらに大きなトラブルを招きかねません。

お金を借りていたり、未払いのものがあったりする場合は、必ず弁護士にそのことを話し、債権者一覧表へ掲載してもらいましょう。

法テラスを利用するためにも必要となる住民票、課税証明書

前回のブログで、自己破産申立てのために、住民票と課税証明書をご用意ください、というお話をしました。

この2つの書類は、法テラスを利用して自己破産を申し立てる際、法テラスにその写しを提出する必要があります。

そのため、法テラスを利用して自己破産を申し立てることをご希望の方においては、早期にご用意いただく必要がある書類と言えます(法テラスを利用した自己破産申立てについては、こちらの記事もご参照ください)。

他方で、自己破産申立てを行う際に裁判所に提出する住民票は、発行から3か月以内のものが必要とされています。

当事務所では、自己破産のご依頼をいただいてから、裁判所への申立てまでを概ね2か月で行います。

そのため、通常のケースであれば、法テラス利用のため、最初にご提出いただいた住民票を使用して、自己破産の申立てが可能です。

ご用意いただきたい住民票については、重要なポイントがあるので、こちらで再度述べさせていただきます。

破産申立ての際に提出する住民票は、以下の記載要件を満たすものが必要です。

①世帯全員

②本籍、続柄、世帯主が記載されているもの

③マイナンバーが記載されていないもの

当事務所で自己破産申立てを行うことを検討されていらっしゃる方は、ぜひこの①から③の要件を満たした住民票をお取りいただきますようお願い申し上げます。

当事務所では、借金に関するご相談は、初回無料となっております。

自己破産の申立てなどを検討されていらっしゃる方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

個人の自己破産申立てについて~その1 必要書類など

2025-05-20

当事務所では、個人の方の自己破産、会社の破産申立てに関するお問い合わせをよくいただきます

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

私が静岡法律事務所から独立して当事務所を開設し、2年半が経過しました。

当事務所では、毎月3回、基本的には0のつく日に、ブログの更新を行なっています。

様々な日常業務を行いながら、月に3回ブログを更新するというのは、かなりハードです。

それこそ新しい弁護士が入ってくれた場合には、月3回のうちの1回は負担してもらいたいと思っています。

事務員さんの助けを借りつつ、これまで2年半(その数90回!)何とかブログの更新を続けることができています。

我ながらよく2年半もブログの更新が続いているものだと思っています。

↑ 事務員さんからいただいたタイ旅行のお土産(コーヒー豆)です。

  事務員さんに書いていただいたタイ旅行ブログはこちらです。

 

ブログ更新の甲斐もあってか、最近、当事務所のホームページをご覧いただいた方からのご相談が増えています。

特にご相談をいただくことが多い分野は、やはり当事務所が注力している自己破産の申立てです。

自己破産の申立てについては、個人のお客様からも、法人(会社)のお客様からもご相談、ご依頼をいただいています。

当事務所においては、個人の自己破産についても、会社の破産申立てについても対応可能ですが、今回からのブログでは、個人の自己破産申立てに関する事柄を書いていきたいと思います。

既に事務所のホームページに掲載されている内容と重複する箇所もあるかと思いますが、ご容赦ください。

自己破産の申立てにあたってご用意いただきたい書類

当事務所では、自己破産のご相談をいただいてから裁判所へ自己破産を申し立てるまでの期間を概ね2か月と見積っております。

ご相談の時点では、自己破産をしようか、個人再生をしようか、と迷われている方もいらっしゃると思いますが、ご相談の時点で自己破産を申し立てることを既に決めていらっしゃる方については、破産申立てに必要となる書類を初回のご相談時からお持ちいただけますと非常にスムースです。

以下、自己破産の申立てにあたって通常必要となる書類をご案内いたします。

① 債権者からの請求書や督促状

  借入れの残高が分かるもの、債権者の住所が書かれているものをご持参ください。

  多少古くても大丈夫です。

② 住民票(世帯全員のもので、本籍、筆頭者、続柄が記載されているものをお願いします)

  ※ マイナンバーが記載されていないものをお願いします

③ 直近2年分の課税証明書、または、直近2年分の源泉徴収票

  課税証明書は、市役所・区役所で取得することができます

④ 預貯金の通帳

  直近2年分の通帳が必要となります。

  2年以内に繰越しをしている場合には、繰越前の通帳もご持参ください。

  ※ ご持参いただく直前にATMで記帳をしていただけますと大変助かります。

  ※ 現在使っていなくても、残高0でも、全ての通帳をご持参ください

  ※ 最近は通帳レスの口座も増えています。

    通帳レス、ネット銀行の場合

    →残高と2年分の入出金明細のページのスクリーンショットをご作成ください。

⑤ 保険にご加入の方

  保険証券をお持ちください。

  自動車保険、医療保険、生命保険、個人年金などのほか、県民共済などの共済も含みます。

  ※ 1年以内に保険を解約している場合

    →解約した保険の証券や保険の内容が分かる資料もご持参ください。

⑥ 自動車、バイクをお持ちの方

  車検証、検査証、登録証をお持ちください。

  合わせて、自賠責保険及び自動車保険(いわゆる任意保険)の保険証券もご持参ください。

⑦ 不動産をお持ちの方

  土地建物全部事項証明書(いわゆる登記簿)と固定資産評価証明書をお持ちください。

  全部事項証明書は法務局で、固定資産評価証明書は市役所・区役所で取得できます。

  ※ 土地建物の数が合計5つ以上となる場合

    →市役所・区役所で「名寄せ帳」を取得してください。

  ※ ご自宅に住宅ローンなどの担保(抵当権)が付いている場合

    →住宅ローンや借入れの残高が分かる資料をお持ちください。

⑧ お住まいが借家である場合

  賃貸借契約書をお持ちください。

自己破産をすることを既に決めたうえでのご相談の場合、初回からこれらの資料をご持参いただけますと、後の手続がスムースです。

ただし、初回のご相談に間に合わない資料があっても大丈夫です。

自己破産にあたって法テラスをご利用されたい方は、法テラスへの申込みの関係で、①から④までの資料を初回相談の際にお持ちいただけますと大変助かります。

自己破産申立ての初回ご相談の時間目安

初回のご相談にかかる時間ですが、自己破産するかどうか迷われている方については30分程度が想定されます(さらに時間を延長されたいという場合は、後のスケジュールの都合が合えば延長も可能です)。

既に自己破産をすることを決められている方については、初回から書類の作成に入りますので、1時間程度のお時間を見ていただきたいと思います。

当事務所では、借金に関するご相談は、初回無料となっております。

自己破産の申立てなどを検討されていらっしゃる方は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。

借金でお困りの方へ~借金の法的解決方法その3 自己破産

2025-03-01

自己破産とは

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

以前のブログで、借金の問題を解決する方法として、任意整理、個人再生、自己破産という3つの方法を挙げました。

今回は、この中の自己破産についてお話しします。

「自己破産」、あるいは、破産手続は、今抱えている借金、負債を0にすることを目的とした手続です。

厳密には、破産手続=借金を0にする手続ではないのですが(借金を0にする手続は、法的には、破産手続と同時に申立てをする「免責」という手続です)、一般的には破産=借金を0にするということで良いと思います。

弁護士に自己破産の相談をしてから借金が0になる(免責許可を受ける)までの流れ

自己破産をする場合、まずは弁護士などの専門家に相談をするところから始まります。

弁護士が相談者の破産事件を引き受けるということになった場合、弁護士は、金融業者などの債権者に、弁護士が相談者(この時点で「依頼者」と呼ぶ方が正確でしょうか)の代理人に就きましたよ、という通知を発送します。

一般的に「受任通知」(じゅにんつうち)と呼ばれるものです。

弁護士が受任通知を発送しますと、債権者から依頼者に対する督促等は止まります。

ただし、受任通知を発送してから、その通知が債権者の督促担当部署に届くまでには多少時間がかかりますので、通知の発送から督促が止まるまでには数日間を要すると考えられます。

その後、弁護士が依頼者から聴き取りをしたり、依頼者に自己破産の申立てのために必要な資料を用意していただいたりして、自己破産申立ての準備をします。

当事務所では、自己破産申立ての準備のため、ご相談から申立てまで概ね2か月程度のお時間をいただいております。

申立ての準備が整い次第、裁判所に破産の申立てを行います。

裁判所において、申立時に提出された資料を確認し、特に問題が無いという場合には、破産手続の開始決定が出されます。

不動産等売却するべき資産をお持ちでない方や、免責不許可事由が無い方などは、破産の開始決定が出された後、概ね3か月後に行われる裁判官との面接を経て、破産手続は終了(免責許可決定を受けて借金が0になる)という流れです。

自己破産の手続は、概ね以上のような流れで進んでいきます。

依頼者において、破産申立てに必要となる資料をスムースにご用意いただける場合、依頼者が破産を申し立てた経緯について問題が無い、あるいは、少ないと考えられる場合、依頼者が売却するべき資産をお持ちでない場合、当事務所においては、ご相談から免責許可が出るまでに要する期間を概ね6か月弱と想定しています。

自己破産の手続に時間がかかる場合

当事務所では、破産のご相談をいただいてから、借金が0になるまでの期間を概ね6か月弱と考えています。

しかし、手続に時間がかかる場合もございます。

手続に時間がかかるケースの中には、必要な書類のご提供が滞り、自己破産を申し立てるまでに時間がかかるケースもありますが、破産手続が開始された後に時間を要するというケースもあります。

たとえば、依頼者において、不動産をお持ちである場合が挙げられます。

このブログの冒頭、破産手続そのものは、厳密には、借金を0にする手続ではない、と申し上げました。

破産手続は、今ある資産を現金化し、現金化したものを債権者に「平等」に分配する手続です。

そのため、現金化できる不動産があれば、破産手続の中で不動産を現金化し、現金化されたものを債権者に分配する必要があります。

破産手続の中で不動産を現金化する役割を担うのは、破産管財人という弁護士です(破産管財人に関するご説明はこちらのページをご参照ください)。

破産管財人は、可能な限り債権者に対する配当金を増やすべく、不動産を売却します。

買い手が多数いそうな不動産についてはできる限り高く売れるように、広く売出しを掛けます。

最初に手を挙げた人に売るというのではなく、より高く買ってくれそうな人が出るまで、それなりの時間を掛けて売出しをするということです。

また、破産管財人は、売却が困難な不動産についても、少しでも売れるように時間をかけて買い手が現れるのを待つことが通常だと思われます。

そのため、不動産をお持ちの場合、破産手続を裁判所に申し立ててから約3か月後にある、最初の裁判官との面談で手続が終わることは少なく、さらに時間をかけて手続が進められることが多いように思います。

静岡地方裁判所では、3か月に1回程度、債権者への報告と裁判官と面談をする場が設けられていますので、申立後、手続が終わるまでに6か月、9か月、1年という期間を要する場合もあります。

なお、住宅ローン付きの不動産をお持ちで、借金の問題を抱えていらっしゃる場合には、自宅を維持することができる個人再生という手続についても検討の余地があると思われます。

個人再生手続についてはこちらのページもご覧ください。

やってはいけない偏頗弁済(偏ぱ弁済)~その3 破産管財人による否認権行使

2023-06-20

偏頗弁済を行ってしまった場合・・・

偏頗弁済とは、大まかに言うと、破産者が行った偏った弁済、不公平な弁済のことです。

これまでのコラムでは、偏頗弁済の概要と、偏頗弁済が免責不許可事由に該当するおそれがあることについてお話しました。

偏頗弁済に関する概要については、こちらのページをご覧ください。

偏頗弁済と免責不許可事由との関係に関する詳しいご説明については、こちらのページをご覧ください。

他方で、偏頗弁済が行われた場合、弁済を受けた債権者の側では、破産管財人から、破産者から受け取ったお金の返還を求められる可能性があります。

ここの会社にはお世話になってきたから支払いをしよう、親戚にだけは迷惑を掛けられないからこっそり返済してしまおう。

そういった弁済を受けた債権者は、後になって、破産管財人から、「受け取った物を返しなさい!」と言われてしまう可能性があります。

このような破産管財人の請求を「否認権の行使」などと言います。

今回のコラムでは、どのような場合に、債権者が、破産管財人から弁済金の返還を求められる(否認権を行使される)可能性があるのかについて、具体的にお話をしたいと思います。

なお、破産管財人に関する詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください。

破産管財人の否認権の行使とは何ぞや

破産法第1条は、破産法の目的を、「債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との権利関係を適切に調整する」こと、「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る」こと、と定めています。

つまり、自己破産手続は、利害関係人の利害を適切に調整し、債務者の財産を適正かつ公平に清算することを目的としています。

自己破産手続が開始され、破産管財人が選任されると、破産者が持っていた財産の管理処分権は破産管財人に移行します。

反対に、自己破産手続が開始されるまでは、破産者の財産の管理処分権は破産者(債務者)自身に帰属しています。

そのため、破産手続が開始されるよりも前の時点であれば、破産者(債務者)が自分の財産をどのように処分しようと自由であるように思われます。

しかし、破産者は、自分の財産が不足しているために、借金などの本来支払わなければならない負債を支払うことができず、破産を申し立ています。

破産手続の開始決定前に、破産者(債務者)が自分の財産を無償で第三者に譲渡してしまったり、あるいは、自分の財産を特別安く売却してしまったり、財産が不足しているにもかかわらず、特定の債権者に対してだけ弁済をしたりすることが自由であるとすると、債権者が本来もらえるべきであった弁済金が減少したり、他の債権者との間に不公平を生じたりすることになります。

そこで、このような不当な結果、不公平な結果を是正すべく、破産管財人には、一定の要件のもと、破産者(債務者)や第三者が行った行為の効力を否定し、破産者の財産を本来あるべき状態に戻す、という権限が与えられています。

このような破産管財人の権限を否認権と言います。

どのような弁済が破産管財人による否認権行使の対象となるのか

それでは、破産者(債務者)が行った弁済は、どのような場合に否認権の行使の対象となるのでしょうか。

具体的な要件を見ていきましょう。

実は、破産管財人による否認権行使の対象となる行為には、多くの種類があります。

今回は、破産者が、既に存在している債務(借金)に関して担保を提供したり、弁済したりした行為について、否認権が行使される場合についてお話をしたいと思います。

以下、このコラムでは、既に存在している債務(借金)について担保を提供したり、弁済をしたりする行為を総称して、「弁済等」と呼ぶことにします。

否認権行使の対象となる偏頗弁済~パターン1

破産者による弁済等が否認権行使の対象となる場合には、大きく分けて2つのパターンがあります。

1つ目のパターンは、破産者が支払不能に陥った後、または、破産手続が申し立てられた後に破産者が弁済等をする場合です。

ただし、債権者が、弁済等が支払不能または支払停止になった後にされたものであることを知っていた場合、または、破産手続開始の申立てがあったことを知っていた場合に限り、否認権行使の対象となります。

支払不能、支払い停止に関する詳しいご説明は、こちらのページ(現在執筆中)をご覧ください。

なお、以下の場合には、弁済等を受けた債権者は、弁済等が支払不能及び支払停止になった後にされたものであること、または、破産手続の申立てがあった後にされたものであることを知っていたことが推定されます。

①破産者が法人であり、弁済等を受けた債権者が、破産者の理事、取締役などの地位にあった場合

②破産者が法人であり、弁済等を受けた債権者が、総株主の議決権の過半数を有する者等であった場合

③破産者が個人である場合、弁済等を受けた債権者が、破産者の親族または同居者である場合

④破産者による弁済等が破産者の義務に属しないか、その方法若しくは時期が破産者の義務に属しないものであった場合

否認権行使の対象となる偏頗弁済~パターン2

否認権行使の対象となる2つ目のパターンは、弁済等が破産者の義務に属しない場合(2つ目のパターンA)か、弁済等の時期が破産者の義務に属しないものです(2つ目のパターンB)。

ただし、弁済等を受けた債権者が、当該弁済等が、他の債権者を害するものであることを知らなかったときは、否認権行使の対象にはなりません。

2つ目のパターンでは、支払不能になる30日前からの弁済等が対象となっており、1つ目のパターンよりも、時期的な範囲が拡大されています。

弁済等が破産者の義務に属しない場合(2つ目のパターンA)とは、担保を提供する合意が無かったにもかかわらず、担保を提供した場合などをいいます。

弁済等の時期が破産者の義務に属しない場合(2つ目のパターンB)とは、端的に言えば、弁済期が到来していないのに支払いをしてしまった場合のことです。

なお、否認権行使の対象となる弁済等についての「破産者の義務に属しない」、「時期が破産者の義務に属しない」の意味については、基本的には、偏頗弁済が免責不許可事由に該当する場合と同様の意味です。

よろしければ、免責不許可事由に関して説明したこちらのページについてもご参照ください。

偏頗弁済をするとかえって債権者に迷惑がかかる場合があります

「この会社にはお世話になったから」、「親戚にだけは迷惑を掛けられないから」という理由で、一部の債権者についてだけ弁済をしてしまうと、後になって破産管財人から、債権者に連絡が行き、受け取ったものを返さなければならなくなることがあります。

ある日突然、破産管財人から連絡が来て、その対応に追われ、弁済されていたと思っていたものを返さなければならなくなるとすれば、そのような弁済は、債権者にとって、かえって迷惑になってしまうでしょう。

自己破産をすることを決めている場合には、意識的に特定の債権者に対してだけ返済をすることは控えるべきです。

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