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やってはいけない偏頗弁済(偏ぱ弁済)~その3 破産管財人による否認権行使
偏頗弁済を行ってしまった場合・・・
偏頗弁済とは、大まかに言うと、破産者が行った偏った弁済、不公平な弁済のことです。
これまでのコラムでは、偏頗弁済の概要と、偏頗弁済が免責不許可事由に該当するおそれがあることについてお話しました。
偏頗弁済に関する概要については、こちらのページをご覧ください。
偏頗弁済と免責不許可事由との関係に関する詳しいご説明については、こちらのページをご覧ください。
他方で、偏頗弁済が行われた場合、弁済を受けた債権者の側では、破産管財人から、破産者から受け取ったお金の返還を求められる可能性があります。
ここの会社にはお世話になってきたから支払いをしよう、親戚にだけは迷惑を掛けられないからこっそり返済してしまおう。
そういった弁済を受けた債権者は、後になって、破産管財人から、「受け取った物を返しなさい!」と言われてしまう可能性があります。
このような破産管財人の請求を「否認権の行使」などと言います。
今回のコラムでは、どのような場合に、債権者が、破産管財人から弁済金の返還を求められる(否認権を行使される)可能性があるのかについて、具体的にお話をしたいと思います。
なお、破産管財人に関する詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください。
破産管財人の否認権の行使とは何ぞや
破産法第1条は、破産法の目的を、「債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との権利関係を適切に調整する」こと、「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る」こと、と定めています。
つまり、自己破産手続は、利害関係人の利害を適切に調整し、債務者の財産を適正かつ公平に清算することを目的としています。
自己破産手続が開始され、破産管財人が選任されると、破産者が持っていた財産の管理処分権は破産管財人に移行します。
反対に、自己破産手続が開始されるまでは、破産者の財産の管理処分権は破産者(債務者)自身に帰属しています。
そのため、破産手続が開始されるよりも前の時点であれば、破産者(債務者)が自分の財産をどのように処分しようと自由であるように思われます。
しかし、破産者は、自分の財産が不足しているために、借金などの本来支払わなければならない負債を支払うことができず、破産を申し立ています。
破産手続の開始決定前に、破産者(債務者)が自分の財産を無償で第三者に譲渡してしまったり、あるいは、自分の財産を特別安く売却してしまったり、財産が不足しているにもかかわらず、特定の債権者に対してだけ弁済をしたりすることが自由であるとすると、債権者が本来もらえるべきであった弁済金が減少したり、他の債権者との間に不公平を生じたりすることになります。
そこで、このような不当な結果、不公平な結果を是正すべく、破産管財人には、一定の要件のもと、破産者(債務者)や第三者が行った行為の効力を否定し、破産者の財産を本来あるべき状態に戻す、という権限が与えられています。
このような破産管財人の権限を否認権と言います。
どのような弁済が破産管財人による否認権行使の対象となるのか
それでは、破産者(債務者)が行った弁済は、どのような場合に否認権の行使の対象となるのでしょうか。
具体的な要件を見ていきましょう。
実は、破産管財人による否認権行使の対象となる行為には、多くの種類があります。
今回は、破産者が、既に存在している債務(借金)に関して担保を提供したり、弁済したりした行為について、否認権が行使される場合についてお話をしたいと思います。
以下、このコラムでは、既に存在している債務(借金)について担保を提供したり、弁済をしたりする行為を総称して、「弁済等」と呼ぶことにします。
否認権行使の対象となる偏頗弁済~パターン1
破産者による弁済等が否認権行使の対象となる場合には、大きく分けて2つのパターンがあります。
1つ目のパターンは、破産者が支払不能に陥った後、または、破産手続が申し立てられた後に破産者が弁済等をする場合です。
ただし、債権者が、弁済等が支払不能または支払停止になった後にされたものであることを知っていた場合、または、破産手続開始の申立てがあったことを知っていた場合に限り、否認権行使の対象となります。
支払不能、支払い停止に関する詳しいご説明は、こちらのページ(現在執筆中)をご覧ください。
なお、以下の場合には、弁済等を受けた債権者は、弁済等が支払不能及び支払停止になった後にされたものであること、または、破産手続の申立てがあった後にされたものであることを知っていたことが推定されます。
①破産者が法人であり、弁済等を受けた債権者が、破産者の理事、取締役などの地位にあった場合
②破産者が法人であり、弁済等を受けた債権者が、総株主の議決権の過半数を有する者等であった場合
③破産者が個人である場合、弁済等を受けた債権者が、破産者の親族または同居者である場合
④破産者による弁済等が破産者の義務に属しないか、その方法若しくは時期が破産者の義務に属しないものであった場合
否認権行使の対象となる偏頗弁済~パターン2
否認権行使の対象となる2つ目のパターンは、弁済等が破産者の義務に属しない場合(2つ目のパターンA)か、弁済等の時期が破産者の義務に属しないものです(2つ目のパターンB)。
ただし、弁済等を受けた債権者が、当該弁済等が、他の債権者を害するものであることを知らなかったときは、否認権行使の対象にはなりません。
2つ目のパターンでは、支払不能になる30日前からの弁済等が対象となっており、1つ目のパターンよりも、時期的な範囲が拡大されています。
弁済等が破産者の義務に属しない場合(2つ目のパターンA)とは、担保を提供する合意が無かったにもかかわらず、担保を提供した場合などをいいます。
弁済等の時期が破産者の義務に属しない場合(2つ目のパターンB)とは、端的に言えば、弁済期が到来していないのに支払いをしてしまった場合のことです。
なお、否認権行使の対象となる弁済等についての「破産者の義務に属しない」、「時期が破産者の義務に属しない」の意味については、基本的には、偏頗弁済が免責不許可事由に該当する場合と同様の意味です。
よろしければ、免責不許可事由に関して説明したこちらのページについてもご参照ください。
偏頗弁済をするとかえって債権者に迷惑がかかる場合があります
「この会社にはお世話になったから」、「親戚にだけは迷惑を掛けられないから」という理由で、一部の債権者についてだけ弁済をしてしまうと、後になって破産管財人から、債権者に連絡が行き、受け取ったものを返さなければならなくなることがあります。
ある日突然、破産管財人から連絡が来て、その対応に追われ、弁済されていたと思っていたものを返さなければならなくなるとすれば、そのような弁済は、債権者にとって、かえって迷惑になってしまうでしょう。
自己破産をすることを決めている場合には、意識的に特定の債権者に対してだけ返済をすることは控えるべきです。
やってはいけない偏頗弁済(偏ぱ弁済)~その2 免責不許可事由との関係
偏頗弁済のリスク
別のコラムでお話したとおり、偏頗弁済とは、自己破産手続で問題となる偏った弁済、不公平な弁済のことをいいます。
偏頗弁済が行われた場合、弁済をした申立人・破産者との関係では、免責不許可事由に該当する可能性があります。
つまり、偏頗弁済をすると借金が0にならないおそれがあります。
また、弁済を受けた債権者との関係では、破産管財人によって債権者が受領した弁済金の返還を求められる可能性があります(このような場合を、破産管財人による「否認権の行使」といいます)。
今回のコラムでは、どのような弁済が、免責不許可事由としての「偏頗弁済」に該当するのかについて、具体的にお話をしたいと思います。
なお、破産管財人に関する詳しいご説明については、こちらのページをご覧ください。
また、否認権行使の対象となる偏頗弁済については、こちらのページ(現在執筆中・次々回掲載予定)をご覧ください。
免責不許可事由に該当する偏頗弁済とは、どのような弁済のことか?
偏頗弁済とは、冒頭で述べたとおり、自己破産手続で問題となる偏った弁済、不公平な弁済のことです。
しかし、全ての偏った弁済、不公平な弁済が免責不許可事由に該当するわけではありません。
また、免責不許可事由との関係では、「弁済」だけではなく、「担保」の提供も免責不許可事由に該当する可能性があります。
そこで、以下では、より正確性を期すために、「偏頗行為」という名称を用いることにします。
免責不許可事由に該当する「偏頗行為」は、①から③の全てを満たすものに限られます。
① 「当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、」
② 担保を提供したり、債務を消滅させたりする行為であり、
③ 「債務者の義務に属」しないもの、または「その方法若しくは時期が債務者の義務に属しないもの」
「特別の利益を与える目的」、「他の債権者を害する目的」で行われる偏頗行為
免責不許可事由としての偏頗行為は、当該債権者に「特別の利益を与える目的」で行われる場合に限られます。
「特別の利益」とは、他の債権者との公平性を害する偏った利益のことです。
また、「特別の」と評価されるだけの大きな利益を指します。
「特別の利益を与える『目的』」は、単にそのようなことを認識しているというだけでは足りません。
より積極的に、当該債権者に特別の利益を与えることを目指して弁済等をするという意識が必要だと解されています。
また、「他の債権者を害する目的」とは、破産手続における債権者の満足を積極的に低下させようとする害意がある場合をいうとされています。
たとえば、従前から不仲であった債権者がいて、その債権者への配当を減少させる目的で、他の一部の債権者に対してだけ弁済をしてしまうような場合が該当すると思われます。
担保を提供したり、債務を消滅させたりする行為
担保を提供する場合も、免責不許可事由としての偏頗行為に該当する場合があります。
ここで言う担保の提供には、保証人、連帯保証人といった人的な担保と、抵当権、質権といった物的な担保の両方が含まれます。
債務を消滅させる行為の典型は、弁済です。
単純な「弁済」だけではなく、本来の目的物に代えて他の物で弁済をする「代物弁済」も、免責不許可事由における偏頗行為の対象に含まれます。
代物弁済の具体例としては、1000万円の借入金に対して、現金ではなく、在庫商品を譲渡したり、不動産を譲渡したりして返済をすることが考えられます。
このほか、弁済期が到来していない相手方の債権と、こちらが相手方に対して持っている債権とを相殺するという合意をする場合も、免責不許可事由で問題となる偏頗行為に含まれます。
「債務者の義務に属」しないもの、または「その方法若しくは時期が債務者の義務に属しないもの」
まずは、弁済などの債務を消滅させる行為について考えてみましょう。
弁済などの債務を消滅させる行為について「時期が債務者の義務に属しないもの」とは、簡単に言えば、弁済期が到来していないのに、支払いをしてしまう場合です。
債権者Aへの弁済期が5月31日、債権者Bへの弁済期が5月15日であるとしましょう。
債権者Bへ払ってしまうと債権者Aへの支払いができなくなってしまう。
債権者Aにはお世話になったから債権者Aには支払いをしたい。
そうだ、5月14日に債権者Aへ支払いをしてしまおう。
このようなケースが「時期が債務者の義務に属しないもの」に該当すると考えられます。
債務の消滅行為について、「その方法」「が債務者の義務に属しないもの」に該当する場合というのは、少し想像が難しいのですが、たとえば、お金で支払いをするという約束だったものを、在庫商品を譲渡して弁済をするというような場合があり得ると思われます。
次に、担保の提供行為についてです。
担保の提供に関して「債務者の義務に属」しないものとは、担保を提供するという約束が無かったのに、担保を提供してしまう場合のことをいいます。
担保の提供が破産者の義務に属すると認められるためには、破産者と債権者との間に、担保を提供するという特約が存在する必要があります。
お金を借りている、買掛金があるというだけでは、当然に担保を提供する義務があるとは認められません。
定められた期間よりも前に担保を提供する場合は、「時期が債務者の義務に属しないもの」に該当すると考えられます。
また、連帯保証人を付けるという約束だったのに、不動産に抵当権を設定するといったような場合は、「その方法」「が債務者の義務に属しないもの」に該当すると言えるでしょう。
不公平な弁済をしてしまったと思ったら弁護士に事情を説明しましょう
これまでお話ししてきたように、不公平な弁済は、免責不許可事由に該当する可能性がありますが、全ての不公平な弁済が免責不許可事由に該当するわけではありません。
不公平な弁済はしないことが一番ですが、自己破産を申し立てるにあたって、特定の債権者にだけ迷惑を掛けないようにするために弁済をしてしまった、という心当たりがある場合には、速やかに弁護士に相談をしましょう。
そして、自己破産手続を申し立てる前に、そのような弁済が免責不許可事由に該当しないかどうか弁護士からアドバイスを受け、場合によっては、事後的な是正措置をとることが免責決定を得るうえで重要です。
絶対にしてはいけない偏頗弁済(偏ぱ弁済)
偏頗弁済(偏ぱ弁済)とは
皆さんは、偏頗弁済(偏ぱ弁済)という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
非常に読みにくい漢字ですが、「へんぱべんさい」と読みます。
「偏頗」の「偏」という漢字は、送り仮名の「り」をつけて、「偏り」(かたより)と読みます。
「偏頗」の「頗」は、「かたよる・公平でない」という意味がある漢字のようです。
私も今回、このブログを書くにあたって「頗」の意味を調べて初めて知りました。
このように、偏頗弁済(偏ぱ弁済)とは、偏った弁済、不公平な弁済という意味です。
そして、偏頗弁済という言葉は、自己破産手続の中で行われた偏った弁済、不公平な弁済に対して使われる言葉です。
偏頗弁済が、どのように偏った弁済であるのか、どのような意味で不公平な弁済のことをいうのかと言うと、大まかに言えば、自己破産手続が開始されている場合に、破産手続が開始される前から持っていた財産で、一部の債権者に対してだけ弁済をすること、あるいは、自己破産手続の開始前に、一部の債権者に対してだけ弁済をしてしまっていたことを意味します。
「偏頗弁済」は、個人の自己破産手続においても、法人(会社)の自己破産手続においても、たびたび問題となる行為です。
例えば、個人の自己破産の場合、弁護士に自己破産手続を依頼している中で、お金を貸してくれていた親戚には迷惑は掛けられない、ということで、他の債権者には弁済をすることができない状況であるのに、こっそり親戚から借りたお金だけ返してしまうといったことが考えられます。
会社の自己破産の場合には、弁護士に自己破産手続を依頼している中で、他の債権者には全般的に支払いができないものの、長年良くしてもらった取引先に支払いをしないとその取引先も破産してしまう可能性があると思い、その取引先にだけ弁済をしてしまうといったことが考えられます。
破産者の多くは、親戚や取引先に迷惑を掛けたくないから、という気持ちで、偏頗弁済を行ってしまいます。
そのような弁済行為は、心情としては理解できるのですが、自己破産を申し立てた後、大きな問題となってしまうことがあります。
偏頗弁済は、なぜいけないのか?
一般的な語感からしても、偏った弁済、不公平な弁済が、推奨されないものであることはお察しいただけるかと思いますが、偏頗弁済がなぜいけないのか、ということについて、まずは、理屈の面からご説明いたします。
自己破産手続を申し立てるに際しては、破産法の規定に則って申立てをする必要があります。
そして、破産法第1条は、破産法の目的について、「債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との権利関係を適切に調整する」こと、「債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図る」こと、と定めています。
つまり、自己破産手続は、利害関係人の利害を適切に調整し、債務者の財産を適正かつ公平に清算することを目的としています。
そのため、利害関係人の利害を適切に調整したり、債務者(申立人・破産者)の財産を公平に分配したりすることに反するような偏頗弁済は、自己破産手続(破産法)の目的に反するため、問題になるのです。
偏頗弁済をすると、どうなるのか
偏頗弁済がされた場合、弁済を行った申立人・破産者側と、弁済を受けた債権者側の双方に対して、望ましくない効果が発生する可能性があります。
まずは、偏頗弁済をした場合、申立人・破産者との関係です。
偏頗弁済をした場合、弁済をした申立人・破産者の自己破産手続において、当該偏頗弁済は免責不許可事由に該当する可能性があります。
偏頗弁済をすると、免責を受けられない(借金が0にならない)可能性があるという重大な効果が発生するおそれがあります(免責不許可事由についての詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください)。
ただし、全ての偏った弁済、不公平な弁済が免責不許可事由に該当するわけではありません。
詳しくは、こちらのページをご覧ください(現在執筆中・次々回掲載予定)。
次に、偏頗弁済を受けた場合、債権者との関係です。
偏頗弁済を受けた債権者は、弁済をした申立人・破産者の自己破産手続において選任された破産管財人から、申立人・破産者から受け取った弁済金を返還しなさい、と求められる可能性があります。
このような破産管財人の請求を「否認権の行使」といいます。
破産管財人に関する詳しいご説明はこちらのページをご覧ください。
ただし、破産管財人による「否認権の行使」も、全ての偏った弁済、不公平な弁済が対象となるわけではありません。
詳しくは、こちらのページをご覧ください(現在執筆中)。
偏頗弁済のまとめ
偏頗弁済が行われた場合、申立人・破産者との関係では、免責不許可事由に該当する可能性があり、弁済を受領した債権者においても、その返還を求められる可能性があります。
特に、破産者においては、免責不許可事由に該当するような偏頗弁済を行ってしまった場合、借金が0にならない可能性があります。
偏頗弁済は、申立人・破産者が、義理や人情などから、良かれと思って行うことが多いのですが、そのために非常に大きなしっぺ返しを受けてしまう可能性があります。
このような偏頗弁済は、絶対にしてはいけません。
仮に自己破産手続を弁護士に相談した時点で、既に不公平な弁済をしてしまっている場合には、弁護士に対して不公平な弁済をしてしまった事実をしっかりと話しておくべきです。
そして、自己破産を申し立てる前に、不公平な弁済に関して、できる限りの是正措置を行っておくべきです(弁護士とともに、債権者に事情を話し、弁済金の返還を求めることが考えられます)。
とても大事な自己破産と免責不許可事由の話3~「虚偽の説明」など
「免責不許可事由」が存在することによるデメリット
自己破産を申し立てる最大の目的は、破産の申立時までに負っていた借金を0にすることです。
借金を0にしてもらうことを裁判所に認めてもらうことを「免責」、「免責許可」、「免責決定」などと言います。
免責不許可事由とは、破産法で規定されている免責が認められない事由のことです。
免責不許可事由が存在すると、自己破産を申し立てても、借金が0にならない可能性があります。
つまり、免責不許事由の最大のデメリットは、破産を申し立てても、借金が無くならない可能性があるということです。
また、免責不許可事由が存在する場合、破産管財人が選任される可能性があり、そのために自己破産を申し立てるために必要となる費用が増えてしまう可能性もあります。
静岡地裁の場合、少なくとも20万円程度の予納金が必要となる場合が多いと考えられます。
詳しくは、こちらのページをご覧ください。
このように、免責不許可事由があるかどうかということは、自己破産の申立てに大きな影響を及ぼします。
今回の記事は、そのような免責不許可事由の具体的内容を紹介する第3弾です。
どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その4 虚偽の説明
前回の記事では、2つの免責不許可事由を紹介しました。
1つは、申立人が前回免責を得てから7年以内にもう一度自己破産(免責)を申し立てるという場合です。
詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください。
もう1つは、浪費や賭博などにより借金をしてしまったという場合です。
免責不許可事由としての「浪費」や「賭博」に関する詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください。
浪費や賭博によって借金を作り、自己破産まで至ってしまった場合、もしかすると、そのような人の中には、裁判所から、自己破産に至った原因について調査があった際、免責を得られないことを心配して、「借金をした理由については黙っておこう。」と思う人がいるかもしれません。
また、「借金は生活費が足りなかったことにしておこう。」と考え、浪費や賭博とは別の理由により、借金をしたと説明をしようと考える人もいるかもしれません。
しかし、破産法においては、「破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと」は、免責不許可事由に該当するとされています。
「虚偽の説明」とは、わざと事実と異なる説明をする場合だけでなく、当然説明すべき事項について積極的に説明しないことも含まれると解釈されています。
裁判所が行う調査の中には、破産者の財産や破産者が負った借金に関する事項、破産の申立てに至った経緯など、破産手続全般に及びます。
また、裁判所は、破産手続開始の原因となる事実については、裁判所書記官を通じて調査をすることもあります。
免責が認められなかった裁判例~賭博が原因で借金をしたことを説明しなかったケース
自己破産に関する裁判例の中には、破産申立てに至った経緯や理由の中に、賭博によって多額の借金をした事実があったにも関わらず、これを隠して、「ギャンブルは全くやらない」旨の虚偽の報告書を裁判所に提出したことが虚偽の陳述に当たるなどとして、免責が認められなかったケースもあります。
このように、浪費や賭博があり、そのために大きな借金をしてしまった場合や、浪費や賭博のために財産を消費して、そのために借金をしたり、借金が返せなくなってしまったりしたという事情がある場合には、裁判所に対して、そのことをきちんと説明する必要があります(説明しない場合、免責されない可能性があります)。
そのため、自己破産の申立てをする準備の段階から、申立てを依頼する弁護士に対して、借金をしてしまった理由を正直にお話しすることは、とても大切です。
なお、一般的な感覚からして、浪費や賭博に当たる行為があったと考えられる場合でも、必ずしも、自己破産の免責不許可事由としての「浪費」や「賭博」に該当するとは限りません。
どのような場合に免責不許可事由としての「浪費」や「賭博」に該当してしまうのかについては、こちらのページをご覧ください。
破産管財人による調査にも協力しましょう
破産手続開始決定後、裁判所によって、破産管財人という申立てを依頼した弁護士とは別の弁護士が選任されることがあります(破産管財人に関する詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください)。
裁判所は、破産管財人を通じて、調査を行うこともできます。
そのため、破産管財人が行う調査に対して、あえて虚偽の説明をしたり、説明すべき事由に対して自ら積極的に説明しなかったりした場合も、免責不許可事由に該当する可能性があります。
破産管財人から説明を求められた場合にも、きちんと対応することが大切です。
とても大事な自己破産と免責不許可事由の話2~「浪費」など
自己破産手続における「免責不許可事由」についてのおさらい
別の記事で、自己破産の最大の目的は借金を0にすること(裁判官に「免責」を許可してもらうこと)であり、免責不許可事由とは、免責が認められない場合として法律で定められている事由であることをお話ししました。
さらに別の記事では、免責不許可事由が存在すると考えられる場合には、破産管財人の選任が必要となる可能性があり、そのために、自己破産を申し立てるための費用が増大してしまう可能性があることについてお話ししました(静岡地裁への破産申立てでは、少なくとも20万円程度予納金が増額されることを念頭に置く必要があります)。
今回は、そのような免責不許可事由の具体的内容を紹介する第2弾です。
今回ご紹介する免責不許可事由は、自己破産の申立てを行う際、よく問題となる事由であり、とても重要です。
どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その2 以前破産したことがある場合に要注意の免責不許可事由
以前自己破産をしたことがある人が、前回の免責許可決定の確定日から7年以内に自己破産の申立て(免責許可の申立て)をした場合、免責不許可事由に該当します。
裁判所によって免責許可決定が出されると、裁判所から免責許可が出されたということが官報に掲載されます。
官報とは、国が発行する情報誌のことです。
官報に関する詳しいご案内は、こちらの記事をご覧ください。
債権者において、債務者の免責許可に不服がある場合、官報に、免責が許可されたことが掲載されてから2週間以内に、当該免責許可決定に対する不服申立てを行うことができます。
免責許可が官報に掲載されてから不服申立てがされずに2週間が経過すれば、免責許可は確定となります。
この免責許可の確定日から7年以内に自己破産を申し立てた場合、免責不許可事由に該当してしまいます。
また、以前自己破産をしたことがある場合だけではなく、以下の場合も免責不許可事由に該当します。
① 給与所得者等再生手続による再生計画を遂行したが、再生計画の認可確定日から7年以内に自己破産を申し立てた場合
② 民事再生法におけるいわゆるハードシップ免責を受けたが、再生計画の認可確定日から7年以内に自己破産を申し立てた場合
以前に自己破産をしたことがある場合、給与所得者等再生を行ったことがある場合、小規模個人再生でハードシップ免責を受けたことがある場合、新たに自己破産を申し立てるまでの期間については、よく注意する必要があります。
どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その3の1 浪費
収入や資産とのバランスを失した浪費によって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりして、破産に至った場合、当該「浪費」行為は免責不許可事由に該当します。
一般的に、「浪費」というと、高価なブランドもののバックなどを買うこと、あるいは、お金をかけた旅行に行くことなどを想像されるのではないでしょうか。
確かにそのような場合が「浪費」に該当することもありますが、自己破産における免責不許可事由としての「浪費」は、単に、高価なブランドもののバックを買ったことが「浪費」に該当するというわけではありません。
当該行為が「浪費」にあたるかどうかは、申立人の財産、収入、社会的地位、生活環境と対比して、浪費にあたると思われる行為が、使途、目的、動機、金額、時期、生活環境等を総合的に考慮して判断されます。
また、「浪費」が免責不許可事由に該当するかどうかの判断にあたっては、申立人の財産が著しく減少したこと、または、過大な債務を負担したことと「浪費」との間に、相当因果関係が認められる必要があるとされています。
免責不許可事由としての「浪費」に該当するかどうかは、評価を伴う法的な概念であると言えます。
どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その3の2 賭博
賭博その他の射幸行為(この記事では一括して「賭博」といいます)によって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりして、破産に至った場合、当該「浪費」行為は免責不許可事由に該当します。
「賭博」というと、競馬、競輪、賭け麻雀などを想像されると思いますが、FXや仮想通貨の取引も「その他の射幸行為」に含まれます。
「賭博」についても、単純に賭け事等をすること自体が免責不許可事由としての「賭博」に該当するわけではありません。
自分の資力(収入、資産の状況)や、判断能力を超える取引をしたことによって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりした場合に、免責不許可事由としての「賭博」に当たるとされています。
免責不許可事由としての「賭博」に該当するかどうかについても、申立人の収入、資産の状況や職業、知識などを総合的に考慮して判断されます。
また、「浪費」の場合と同様に、「賭博」が免責不許可事由に該当するかどうかの判断にあたっても、申立人の財産が著しく減少したこと、または、過大な債務を負担したことと「賭博」との間に、相当因果関係が認められる必要があるとされています。
さらに、「賭博」と、著しい財産減少や過大な債務負担との間に相当因果関係がある場合であっても、「賭博」はその一因に過ぎず、著しい財産減少や過大な債務負担について他に主要な原因がある場合には、その主要な原因をもとに免責不許可事由の有無を判断するべきであるとされています。
なお、既に弁済期にある債務について一般的、継続的に支払いができなくなっている状態(このような状態のことを「支払不能」といいます)にある者が、賭博行為を行っても、それによって新たに著しい財産減少や過大な債務負担を生じない限り、当該行為は、免責不許可事由に該当しないとされています。
浪費や賭博についてのまとめ
これまでお話ししたように、浪費や賭博などの免責不許可事由があると思われても、その行為が、直ちに免責不許可事由に該当するとは限りません。
そのような行為があると思われる場合には、自己破産の相談時に、弁護士に対して、当該行為についてしっかりと話をしておくことが大切です。
気を付けたい!!自己破産手続の費用を左右する「破産管財人」
破産管財人とは
みなさんは、「破産管財人」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
「破産管財人」とは、破産手続において、裁判所によって選任される弁護士のことです。
破産手続とは、破産した人の財産を現金化して、法律によって定められた優先順位にしたがって、債権者に現金化した財産を分配する手続です。
破産管財人は、破産した人の財産を管理し、現金化し、分配する手続を取り仕切る弁護士です。
破産管財人は、会社の自己破産の場合にはほぼ必ず選任されます。
他方で、個人(自然人)の自己破産の場合には、選任される場合と、選任されない場合があります。
破産管財人が選任されるとお金がかかります!
弁護士に自己破産手続の申立てを依頼する場合、当然のことながら、申立てを依頼するための弁護士費用がかかります。
破産管財人は、申立人が希望してようといまいと、裁判所が必要と判断をすれば、裁判所が選任します。
破産管財人は、裁判所が当該破産手続のために選任する弁護士であり、その弁護士に無料で仕事をしてもらうわけにはいきません。
そのため、破産管財人が選任される場合、破産管財人に仕事をしてもらうための費用が、申立てのための費用とは別に必要となります。
つまり、破産管財人が選任される自己破産事件では、自己破産手続の申立てを依頼する弁護士費用とは別に、破産管財人のための費用が必要になるということです。
破産管財人が選任される場合に必要となる費用の目安
静岡で、個人が自己破産をする場合、破産管財人が選任されるケースでは、破産管財人のための費用として最低でも20万円程度を見ておく必要があります。
破産管財人の選任が必要と思われる場合、自己破産をするためには、申立てを依頼する費用とは別に、破産管財人のための費用を用意する必要があります。
破産管財人の費用は法テラスの立替対象外です。
別の記事で、法テラスを利用して自己破産手続を申し立てる場合のことについてご説明申し上げました。
自己破産を申し立てるために依頼する弁護士の費用は、法テラスを利用することができます。
しかし、生活保護を受給している場合を除き、破産管財人のための費用は、申立人が自分で用意する必要があります。
法テラスを利用する場合でも、破産管財人が選ばれる可能性がある場合には、申立人が自分で破産管財人の費用を工面する必要があります。
破産管財人が選任されるケース1~免責不許可事由があると考えられる場合
これまでお話ししてきたように、破産管財人が選任される場合、申立てを依頼するための弁護士費用とは別に、破産管財人に仕事をしてもらうための費用(最低でも20万円程度)が必要となります。
それでは、どのような場合に、破産管財人が選任されることになるのでしょうか。
あくまで、私個人の経験に基づく、静岡で自己破産を申し立てる場合という前提ですが、破産管財人が必要となる場合の1つ目のパターンは、申立人に免責不許可事由が存在すると考えられる場合です(免責不許可事由についての詳しい内容は、こちらのページをご覧ください)。
免責不許可事由が存在すると考えられる場合、破産管財人は、申立人に免責不許可事由が存在するかどうかを調査したり、免責不許可事由の内容や程度を調査したり、免責不許可事由が存在したとしても、裁量的に免責を認めるべきかどうかについて意見を述べたりします。
このような手続を取るために、破産管財人が選任される場合があります。
したがって、申立人に免責不許可事由が存在すると考えられる場合には、破産管財人の報酬を用意できるかどうかについても検討する必要があります。
破産管財人が選任されるケース2~申立人が個人事業を営んでいた場合、法人代表者である場合
申立人が個人事業を営んでいた場合、申立人の財産状況を明らかにするため、管財人の調査が必要とされることがあります。
申立人が個人事業を廃止してから2年以内に破産を申し立てる場合には、破産管財人が選任される可能性があると考えられます。
また、申立人が法人の代表者である場合、法人の財産と個人の財産が混同していないかを調査するため、破産管財人が選任されます。
破産管財人が選任されるケース3~財産状況等に疑義がある場合、否認対象行為があると考えられる場合
申立人の財産状況に疑義がある場合(たとえば、通帳上不明瞭な多額の入出金がある場合など)や、破産に至る経緯に疑義がある場合(たとえば、申立人が事業を営まない個人であるにもかかわらず、あまりに多額の負債がある場合など)には、それらの疑問点を解明するため、破産管財人が選任され、破産管財人による調査が行われることがあります。
また、申立人に偏頗弁済などの否認対象行為があると考えられる場合にも、破産管財人が選任されることがあります。
自己破産の申立てにあたって注意すべきこと
自己破産の申立てにあたり、破産管財人が選任される可能性がある場合、申立てを依頼する弁護士費用とは別に費用がかかる可能性があります。
破産管財人が選任される可能性があるかどうかは、申立ての準備段階である程度予測をすることができます。
後になって、「破産管財人の費用が必要になりました!」ということの無いよう、自己破産申立てにあたっては、申立てを依頼する弁護士には、破産に至る経緯や財産状況について正直に話をするべきでしょう。
また、自己破産の申立ては、聴取りをしっかり行ってくれる弁護士に依頼するべきと言えます。
とても大事な自己破産と免責不許可事由の話1
自己破産の最大の目的は免責許可を得ること
個人が自己破産をする場合、その最大の目的は、自己破産の申立てをしたときまでに負っていた借金を支払わなくても良くすることです。
裁判所によって、自己破産の申立てをしたときまでに負っていた借金を支払わなくてもいいですよ、と認めてもらうことを「免責」あるいは「免責許可」といいます。
自己破産を申し立てる最大の目的、目標は、裁判所から免責許可を得ることです。
「免責不許可事由」をご存じでしょうか
免責不許可事由という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
免責不許可事由とは、法律によって、「こういう場合は、免責を認めることはできません」ということで定められている事由のことです。
免責不許可事由は、破産法252条に定められています。
破産法252条1項は、「裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。」と定めています。
つまり、法律上、「次の各号に掲げる事由」=免責不許可事由が存在しない場合には、「免責許可の決定をする」=借金を0にするという定め方になっています。
免責不許可事由が無ければ免責許可が降りるということです。
これからの数回のコラムでは、自己破産を申し立てるにあたって、とても大事な免責不許可事由についてお話をします。
どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その1 虚偽の債権者名簿の提出
それでは、どのような場合が、免責不許可事由とされているのでしょうか。
破産法252条1項は、免責不許可事由として、大きく分けて11個の事由を規定しています。
分かりやすいものから見ていきましょう。
第7号は、虚偽の債権者名簿を提出したことを免責不許可事由としています。
裁判所が免責を許可するかどうかを決定するためには、債権者の氏名や債権額の全てを知ることが不可欠です。
そのため、自己破産の申立てにあたり、申立人は、債権者名簿(あるいは「債権者一覧表」)を裁判所に提出する必要があります。
それでは、「虚偽の」債権者名簿とは、どのような債権者名簿のことを言うのでしょうか。
ここでいう「虚偽」とは、債権者の氏名、名称や負債の額、負債の発生原因(たとえば、借入れなのか、割賦払いなのか、損害賠償債務なのかなどといったこと)について、事実に反する記載をすることや記載すべき債権者名や負債の内容を記載しないことを言うと解釈されています。
もっとも、免責不許可事由が認められた場合、免責許可が降りない可能性があるという強い効力が生じます。
そのため、虚偽の債権者名簿を提出したかどうかということについては、限定的に判断されています。
具体的には、破産者が、破産手続の遂行を妨害したり、債権者を害する目的をもって、意図的に事実に反する記載をしたり、債権者名簿に記載すべき事項についてあえて記載しなかったりした場合に限られるものと考えられています。
たとえば、十年以上前に借入れをした債権者がいて、その債権者のことを忘れていたため、債権者名簿に記載しなかったという場合、確かに、提出された債権者名簿には、記載されるべき債権者の記載が無いということにはなりますが、免責不許可事由としての「虚偽の債権者名簿を提出したこと」には、該当しないのではないかと考えられます。
ただし、このような限定的な解釈を前提とした場合であっても、実際に、特定の債権者をことさら債権者名簿に記載しなかったということで免責不許可とされたケースもあるようですので、注意が必要です。
親戚や友人に迷惑を掛けたくないから、債権者一覧表に記載しない、は絶対ダメ
自己破産申立てのご依頼やご相談を受けた際に、あまり多くはありませんが、依頼者様や相談者様から、「実は親戚や友人からお金を借りているのですが、裁判所から通知が行くと恥ずかしいので、債権者名簿に、親戚や友人を書きたくないのですが・・・」といったお話をいただくことがあります。
また、「親戚や友人には迷惑を掛けられない。彼らにはお金を返したいので、その人たちについては、債権者名簿に書かないでもらえないでしょうか・・・」といったお話をいただくことがあります。
しかし、このようなお申し出のもと、親戚や友人を債権者として、債権者名簿に記載しないことは、これまで述べてきたように、破産法252条1項7号の免責不許可事由に該当する可能性があります。
したがって、親戚や友人からお金を借りていることを知っているのに、それらの人をあえて債権者として債権者名簿に記載しなかった場合、免責許可を受けられなくなってしまう可能性があります。
そのため、親戚や友人に迷惑を掛けたくないから、債権者一覧表に記載しない、ということは絶対にいけません。
実際、先ほどお話ししたようなお申し出を受けたケースでは、いずれの場合でも、依頼者様や相談者様に対しては、免責不許可事由について十分ご説明申し上げ、ご納得いただいた上で、親戚や友人の方についても、債権者一覧表へ記載をしております。
自己破産の一番の目的は、今ある借金を支払わなくても良くする(免責許可を得る)ことですから、この目的に反する行為は絶対にするべきではありません。
法テラスを利用した自己破産について
法テラスをご存じですか
法テラスとは、日本司法支援センターの愛称です。
日本司法支援センターは、国が総合法律支援法に基づいて設立した法人で、弁護士等による法的なサービスをより身近に受けられるようにすること等を目的としています。
法テラスは、弁護士を紹介したり、弁護士費用を依頼者に代わって立て替えて支払ったりしてくれたりするところというイメージで良いと思います。
自己破産を申し立てるという場面で言えば、自己破産をするために必要な弁護士費用を法テラスが依頼者に代わって弁護士に支払い、依頼者は、法テラスが立て替えて支払った弁護士費用を分割で法テラスに返済していくという仕組みを取っています。
法テラスは誰でも利用できますか
法テラスは誰でも利用できるわけではありません。
まず、会社や法人は法テラスを利用することはできません。
また、自然人(個人)の場合でも、法テラスを利用するためには、法テラスが定める「資力基準」を満たす必要があります。
法テラスが定める「資力基準」には、「収入基準」と「資産基準」があります。
「収入基準」については、たとえば、静岡県にお住まいの単身者の場合、月額の手取り給与額から家賃(ただし、4万1000円が上限)を控除した残金が18万2000円以下であることが必要です。
次に、「資産基準」については、単身者の場合、現金、預貯金、有価証券及び自宅不動産以外の不動産の合計金額が、原則として180万円以下であることが必要です。
以上の「収入基準」と「資産基準」の双方を満たす場合には、法テラスを利用することができます。
静岡県在住の単身者以外の資力基準については、こちらのページをご覧ください。
法テラスを利用した場合、自己破産の弁護士費用はどうなるのか
法テラスを利用して自己破産手続を行う場合、自己破産の申立てを依頼する弁護士が誰であるかを問わず、また、当該弁護士が当該弁護士の事務所においてどのような報酬基準を設定しているかにかかわらず、法テラスが設定した報酬基準が適用されます。
債権者の数が5人以下の場合、実費を含め、15万5000円となります(報酬金は発生しません)。
依頼人は、この15万5000円を、月々5000円、7000円、1万円などの分割払いにより、法テラスに弁護士費用を支払っていきます。
自己破産手続を取られる方は、通常まとまったお金がないことが多いと思いますので、法テラスを利用して自己破産手続を弁護士に依頼することは、非常に有益だと思われます。
法テラス静岡のページではありませんが、法テラスを利用して自己破産手続を申し立てる場合の弁護士費用に関しては、こちらのページが参考になります。
法テラスでは立て替えられない費用があります!! その1~官報公告費用
自己破産をするに際して、法テラスを利用する場合でも、法テラスは全ての費用を立て替えてくれるわけではありません。
自己破産をするにあたって、裁判所に予納金を納める必要がありますが、法テラスは裁判所への予納金は立て替えてくれません。
裁判所への予納金は、大きく分けて2つの場面で必要となります。
予納金が必要となる1つ目の場面は、官報公告費用です。
自己破産をすると、官報という国の広報誌に名前等を掲載しなければなりません。
官報へ名前等を掲載するための費用は、自己破産を申し立てた人が支払う必要がありますが、この費用を法テラスで立て替えて支払ってもらうことはできません。
静岡地方裁判所での自己破産事件の場合、現在では、1万2000円ほどの予納金を用意する必要があります。
官報に関する具体的な説明は、こちらの記事をご覧ください。
法テラスでは立て替えられない費用があります!! その2~管財人報酬
自己破産事件において予納金が必要となる場面のその2は、自己破産事件において、裁判所によって破産管財人という弁護士が選任される場合です。
破産管財人とは、平たく言ってしまうと、破産事件を取り仕切る立場にある弁護士で、自己破産の申立てを依頼する弁護士とは別の弁護士が選任されます(破産管財人に関する詳しいご説明は、こちらの記事をご覧ください)。
破産管財人に無料で仕事をしてもらうわけにはいかないので、破産管財人に対する報酬金を予納金として、予め裁判所に納める必要があります。
静岡地方裁判所への破産申立事件では、破産管財人に対する報酬金(予納金)としては、少なくとも20万円程度を想定しておく必要があります。
予納金としての20万円は、法テラスの立替払いの対象となりませんので、申立人は、自分で20万円を用意しなければなりません。
そのため、破産管財人の選任が必要となることが予測される場合、予納金20万円を計画的に積み立てておくことも、自己破産申立ての重要な準備の一つとなります。
裁判所への予納金が法テラスによって立て替えられる場合
原則として、自己破産事件において、裁判所への予納金は法テラスの立替払いの対象外です(自己破産の申立人が自ら用意する必要があります)。
ただし、生活保護を受給されている方の場合、裁判所への予納金を含め、自己破産手続の申立てに必要となる予納金についても、法テラスによる立替払いを受けることが可能です。
静岡の弁護士が考える「自己破産に強い弁護士」とは、どのような弁護士か?
「自己破産に強い弁護士」というキーワード
皆さん、こんにちは。静岡で自己破産案件を扱っている弁護士の石川です。
今日では、自己破産を申し立てようと思ったとき、どの弁護士に依頼するのが良いか、インターネットで検索することが多いと思います。
そして、自己破産の申立てを依頼する弁護士をインターネットで検索する場合、「自己破産に強い弁護士」というキーワードを用いて、弁護士を検索される方もいらっしゃると思います。
たとえば、「交通事故に強い弁護士」の場合、「交通事故に強い弁護士」がどういった弁護士を指すのか、これは比較的想像がつきやすいと思われます。
交通事故事件における最終目標は、相手方または相手方保険会社から賠償金を支払ってもらうことです。
そのため、「交通事故に強い弁護士」とは、基本的には、相手方または相手方保険会社から、できる限り高額な賠償金を獲得することができる弁護士ということになるでしょう。
それでは、「自己破産に強い弁護士」とはどのような弁護士でしょうか。
個人の自己破産における最終目標は「免責」を得ること
自己破産事件における最終目標は何でしょうか。
それは、借金を0にすること、負債を支払わなくても良い状態になることです。
つまり、裁判所から「免責」を得ることです。
免責を得ることが自己破産の最終目標であるとすれば、免責を得やすい弁護士が「自己破産に強い弁護士」ということになるのでしょうか。
私は、基本的には、免責を得やすい弁護士が「自己破産に強い弁護士」に当たるとは考えていません。
なぜなら、免責が認められないケースというのはそれほど多くはなく(ただし、結論として免責が認められる場合でも、免責を得るために、破産者自身が努力をしなければならない場合はもちろんあります)、免責が認められるかどうかという点について、自己破産を申し立てた弁護士の力量が関係する事態というのは、ほとんど無いのではないかと思われるからです。
つまり、多くの場合、どの弁護士に依頼をしても、その弁護士が自己破産事件を通常の業務として取り扱っている弁護士であれば、裁判所から「免責」を得ること自体は可能であると思われます。
そのため、私は、基本的には、免責を得やすい弁護士が「自己破産に強い弁護士」に当たるとは考えていません。
免責不許可事由の「浪費」に該当するかどうかの判断
ただし、以下のような場合には、「免責」に関して、弁護士の経験、知識により、結論に差が生じ得るところだと考えられます。
自己破産手続の最終目標は、「免責」=借金を支払わなくて良いことを裁判所に認めてもらうことですが、破産法には、「免責」を認めることができない場合が列挙されています。
そのような場合を「免責不許可事由」といいます。
「免責不許可事由」が存在する場合、破産管財人の選任が必要となり、裁判所へ納める予納金の金額が増加する可能性があります(静岡地裁の場合、予納金として少なくとも20万円程度が必要になると思われます。破産管財人に関する詳しい説明は、こちらの記事をご覧ください。)
免責不許可事由の一つに、「浪費」があります。
生活上必ずしも必要でないもの(たとえば高価なブランド品、服など)を、自身の支払能力を超える借金をしてまで購入していたという場合、そのような事情で作った借金を支払わなくて良いことにするというのは不適当である、というのが破産法の原則的な考え方です。
しかし、高価なブランド品を購入するために借金をしたり、クレジットカードで分割払いしたりすることの全てが免責不許可事由としての「浪費」に当たるわけではありません。
免責不許可事由としての「浪費」に該当するかどうかは、破産者が行った物品の購入行為などを、破産者の財産、収入、社会的地位、生活環境と対比し、その使途、目的、動機、金額、時期、生活環境、社会的許容性の有無等に照らして、総合的に考慮して判断されるとされています。
そのため、同じ人が同じブランド品を買ったとしても、購入した時期によっては、その人の財産状況や収入状況が異なるために、それが「浪費」とされる場合もあれば、「浪費」とされない場合もあると考えられます。
また、仮に高価な服を購入するために借金をしたり、クレジットカードを利用したりしたことがあったとしても、その人がデパートで働いており、勤め先のアパレル店舗の売上ノルマ達成のために、服を購入せざるを得なかったという事情があれば、そのような物品購入は、「浪費」とは判断されない可能性もあります。
このように、高価なブランド品や高価な服を購入するために借金をしたという場合でも、その時期や状況によっては、そのような行為が「浪費」と判断される場合もあれば、「浪費」ではないと判断される場合もあります。
借金をして高額なブランド品を購入=「浪費」と即断するのではなく、依頼者から適切な聴き取りを行い、裁判所に対して、条文の趣旨に沿った適切な説明を行うことができる弁護士は、ある意味、「免責」に関して「自己破産に強い弁護士」と言えるかもしれません。
「免責不許可事由」に関係する詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください。
「自己破産に強い弁護士」とはどのような弁護士か
先ほどもお話ししたように、私個人としては、「免責」が得られるかどうかについて、弁護士の力量が問われる事態というのは、ほとんど無いのではないかと思っています。
それでは、多くのケースに妥当するような「自己破産に強い弁護士」というのは、どのような弁護士なのでしょうか。
「自己破産に強い弁護士」というのは、自己破産手続に精通している弁護士を意味しているのだと思います。
そして、自己破産手続に精通している弁護士とそうでない弁護士との一番の差は、自己破産手続の申立てに要する時間に現れると思います。
もちろん自己破産手続もケースバイケースで、申立人における事情は千差万別ですが、特殊な事情が無いにもかかわらず、個人の自己破産手続の申立てのために6か月かかってしまう弁護士は、「自己破産に強い弁護士」とは言えないのではないでしょうか。
また、裁判所に申立てを行った後、書類の不備や説明の不足があるために裁判所から補正を求められることがあります。
補正処理を行わなければ、申立てをした後も破産手続が始められません。
自己破産手続の申立て後に、裁判所から大量の補正を求められる場合、あるいは、補正に対する回答に対して、裁判所からまた補正を求められてしまう場合、このような場合も「自己破産に強い弁護士」とは言えないと思います。
そこで、私の結論としては、「自己破産に強い弁護士」とは、できる限り迅速に自己破産手続の申立てを行い、かつ、裁判所から補正を求められることなく、スムーズに自己破産手続の開始決定を得られる弁護士であろうと考えます。
そして、そのような弁護士に依頼をすることは、借金の問題を抱えている依頼者、申立人が、一刻も早く不安な精神状態から解放されることができるという意味で、依頼者、申立人にとって大きなメリットだと思います。
私は、そのような弁護士でありたいと思い、日々自己破産手続に臨んでいます。
自己破産を検討されている方においては、ぜひ当事務所に一度ご相談ください。
自己破産をすると周りの人にバレてしまうのか?
個人情報保護委員会が「破産者マップ」運営者を刑事告発
2023年1月11日のYahoo!ニュースに、政府の個人情報保護委員会が、「破産者マップ」の運営者を刑事告発した、という記事が掲載されていました。
破産者マップとは、破産者の氏名、住所を、本人の同意なくgoogle map上に表示させて掲載しているウェブサイトのことです。
「破産者マップ」は、2018年12月ころ登場し、一旦は閉鎖されたものの、今回刑事告発の対象となった破産者マップは、2022年7月ころから公開が開始されたようです。
破産者マップの運営者に対して、同サイト上の破産者の氏名、住所などの情報を削除することを求めると、数万円以上の暗号資産の支払いを求められるようです。
「破産者マップ」は、本人の同意なく、破産者の氏名、住所を掲載するもので、本人のプライバシーを侵害するものです。また、破産という本人の社会的評価を貶める事実を公表するものですから、名誉毀損にも該当し得るもので、非常に問題のあるウェブサイトと言えます。
自己破産をすると「官報」に住所氏名が掲載されます
さて、これから自己破産をするべきかどうか悩んでいる方の中には、自分が破産したことが周りの人に知られてしまうのではないか、という不安を持つ方もいらっしゃると思います。
破産をすると、「官報」に、破産者の住所や氏名が掲載されることになっています。
「官報」とは、国が発行する新聞のようなもの(広報誌)で、新しく制定された法令を紹介したり、公務員の人事異動について記載されていたりします。
その官報の一部として、破産者の住所や氏名を掲載するページが存在します。
官報は、特定の販売所で販売されているほか、インターネットで閲覧できたり、図書館に保管されていたりします。
破産したことはバレてしまうのか?
このように記載すると、官報を見ることによって、自己破産をしたことが簡単に知られてしまうように思われるかもしれません。
しかし、思い返していただきたいのですが、これまで皆さんは、実際に官報を見たことがあったでしょうか。
家族、知人、友人と、「官報に○○さんが自己破産したって載ってたよ」などという話をしたことがあったでしょうか。
そのようなことは一度も無かったはずです。
つまり、官報は、誰でも、いつでも閲覧できる状態にある広報誌ですが、基本的には、一般の方が目にすることは無いのです。
実際の官報は、非常に細かい字で、大量の情報が記載されています。
官報は、週に何度も発行されるもので、破産者に関する情報が掲載されているページだけでも、1回あたり10ページに及ぶことがあります。
このような官報を、一般の人が、膨大な時間をかけて継続的に見ているということは通常考えられません。
官報をよく見る人というのは、信用情報機関に勤めており、破産者の情報を収集する業務に当たっている方など、ごく一部の人に限られると考えられます。
そのため、自己破産をしても、基本的には、周りにバレてしまうという心配はありません。
周りの人に自己破産したことがバレてしまうのではないかとご懸念の方も、是非一度当事務所にご相談ください。