弁護士ドラマでよく見る刑事事件~当番弁護士制度

当番弁護士制度とは

皆さん、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

早いもので、2024年も1か月と10日が過ぎようとしています。

2024年の冒頭3回は、弁護士が扱う刑事事件、特に「被疑者国選」という制度にスポットを当ててお話をしました。

今回は、同じ刑事事件なのですが、「当番弁護士」という制度についてお話をしたいと思います。

「当番弁護士」というのは、逮捕されてしまったとき、誰でも無料で1回相談をすることができる弁護士あるいは、そのような制度のことを言います。

逮捕されたとき、「『当番弁護士』を呼んでください」と言えば、その人が留置されている警察署の留置場や、拘置所で弁護士と面会をすることができます。

「当番弁護士」は、「1回だけ相談をすることができる」という点がポイントです。

基本的に、「当番弁護士」で面会した弁護士は、その面会限りの弁護人であり、そのままずっとその事件を担当するわけではありません。

稀に、英語は話せるけれど日本語は話せないという外国人の方が逮捕され、面会に出向くことがあります。

私がそのような人から当番弁護士の要請を受けた場合、最初の自己紹介で、自分=「当番弁護士」のことを「one-time lawyer」だと説明します。

「当番弁護士」というより「一回だけ弁護士」と言った方が、制度の実質を表しているように思うのですが、日本語ではあまりかっこよくありませんね。

当番弁護士が活用される場面

犯罪の嫌疑を掛けられて逮捕された人は、多くの場合、逮捕→勾留(10日間捕まったままになるという決定)という流れを辿ります。

2つ前の記事でお話ししたように、国選弁護人を選任することができるのは、勾留された時点からです。

そのため、逮捕から勾留決定が出るまでの間、国選弁護人を付けることはできません。

逮捕から勾留の請求がされるまでには最長72時間ありますが、この間に当番弁護士が要請されるケースが多いと思います。

つまり、多くの人にとって、当番弁護士は、国選弁護人が選任されるまでの「つなぎ」の役割を果たすことになります。

他方で、私選の弁護士を選任したいけれど、知っている人がいないので、「当番弁護士」を呼んでみたという場合も無いわけではありません。

その場合には、当番弁護士は「つなぎ」ではなく、実際に事件を担当する第一歩として、その人と面会をすることになるでしょう。

当番弁護士として行う活動

当番弁護士の要請があった場合、弁護士は、その人が捕まっている警察署や拘置所に赴き、面会をします。

私の場合ですが、以前の記事でお話しした2つの質問をした後、今後の流れについて話をします。

①いつ勾留決定がされる見通しであるのか、②正式な裁判にかけられそうか、罰金または不起訴で釈放されそうか(いつ出られそうか)、③正式な裁判に掛けられた場合、判決が出されるのはいつころか、といったことについてお話をします。

勾留決定がされたら国選弁護人を付けることができること、自分はこの面会限りの弁護人であって、国選弁護人は自分とは違う弁護士が就くであろうことについても説明をします。

当番弁護士が呼ばれるタイミングによっては、当番弁護士で面会をした人の国選弁護人に選任されたり、特殊な事情があれば、弁護士の方から裁判所に対して、当番弁護士として面会した人の国選弁護人に選任してくれるよう要望を出したりすることもあります。

しかし、基本的には、当番弁護士として警察署等に出向く場合、1回だけ面会をして終了となることが多いと思います。

継続的に事件を担当するわけではないため、当番弁護士として行うことができることは、上記のような説明や警察や検察からの取調べに対応する場合のアドバイスに限られることが多いと思います。

国選弁護人が行うような「示談」交渉まで当番弁護士の立場として行うことは、まず無いでしょう。

家族や会社への連絡

私が、当番弁護士として面会に行った際、誰か連絡を取って欲しい人はいますか、ということをよく聞きます。

大抵の場合、本人は、心構えや事前の準備などなく突然逮捕されてしまうものですから、ご家族であったり、交際相手であったり、会社であったり、自分が今どこにいるのか伝えて欲しい、会いに来てもらいたい、会社に仕事に行けないと伝えて欲しいと希望される方が多いと思います。

ただし、勾留されずに(逮捕から72時間以内に)釈放される可能性があると思われる場合には、会社に連絡をするかどうかは本人とよく相談する必要があります。

会社に行けないということになると、当然、会社としては、どうしてだという話になります。

また、身寄りの無い方の場合には、弁護士が会社に連絡を入れざるを得ません。

弁護士から連絡が入れば、会社を休む理由を言わなくても、察しのいい人はその人が逮捕されたことに気が付いてしまうでしょう。

また、弁護士と名乗らず連絡をすると、後に、あの電話は何だったんだということになります。

逮捕されたことが新聞に載るかどうかはケースバイケースであり、新聞に載らないこともあります。

逮捕されたことが知られてしまうと、その人の評価、名誉に関わります。

そのため、勾留されずに(逮捕から72時間以内に)釈放される可能性があると思われる場合には、会社に連絡するのは、勾留された後、国選弁護人が付いてからという選択肢もあるのではないでしょうか、というお話を差し上げることもあります。

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