弁護士ドラマでよく見る刑事事件~被疑者国選1

「容疑者」は法律用語ではありません

皆さん、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

今回も前回の記事に引き続き、刑事事件について、弁護士ってこういう仕事をしているんだよ、という観点からお話をしたいと思います。

前回の記事では、主として、私選弁護人と国選弁護人についてお話をしました。

今回の記事では、国選弁護人に関連する「被疑者国選」という制度についてお話をします。

なお、今回の記事は、基本的に、弁護士石川が所属する静岡県弁護士会の静岡支部での取扱いを前提としたものです。

他支部、他県での取扱いは異なる場合がありますので、ご了承ください。

さて、「被疑者」国選という制度を紹介する前に、まず、「被疑者」とは何かということについてお話します。

「被疑者」というのは、警察や検察から、何か犯罪行為を行ったのではないかということで、捜査の対象となっている人のことを言います。

ただし、捜査の対象となっている人が刑事裁判にかけられると、その人は「被告人」と呼ばれることになります。

警察や検察で捜査の対象となっていて、刑事裁判になる前の人が「被疑者」、刑事裁判に掛けられた人が「被告人」ということです。

テレビのニュースなどでは、よく「容疑者」という言葉が使われますが、「容疑者」は、いわゆる法律用語ではありません。

私が聞いたところによると、マスコミが、「被疑者」と「被害者」の音が似ていて混同しやすいため、「容疑者」と「被害者」という呼び方をするようになったとかならなかったとか・・・。

被疑者国選って何ですか

警察や検察で捜査の対象となっていて、刑事裁判になっていない人のことを「被疑者」と呼びます。

そうしますと、「被疑者国選」というのは、警察や検察から捜査の対象とされている人に付く、国が選んだ弁護人ということになりそうです。

しかし、捜査の対象となっている人に「被疑者国選」が選ばれるためには、もう少し別の要件も必要です。

その要件の一つが、裁判所によって「勾留」の裁判を受けていることです。

「勾留」というのは、警察署の留置場や拘置所に捕まえたままにしておく、という裁判所の決定のことです。

裁判に掛けられる前の「勾留」、つまり、被疑者段階での「勾留」の期間は、最長10日間(1回に限り10日間の延長あり)です。

たとえば、Aさんが、万引きをして逮捕されたとします。

検察官は、Aさんについて、逮捕のときから最長でも72時間以内に「勾留」の請求をするかどうかを決めなければいけません。

「勾留」の請求が裁判所によって認められると、「勾留」の決定があった日を含め、最長10日間

(1回に限り10日間の延長あり)捕まったままの状態になります。

国選弁護人を選任することができるのは、この「勾留」が認められた時点からです。

逆に言うと、私選弁護人を選任しない限り、「勾留」決定がされる前には、弁護人は付かないということです。

被疑者国選が選ばれるまでの流れ

本項目については、弁護士石川が実際の業務内容を見たわけではないため、石川の想像が入るところで、ここに書かれている内容が全て正しいかどうかは保証できません。

先ほどお話したように、検察官が「勾留」の請求を行い、裁判所が「勾留」の決定を出すと(裁判所が「勾留」の決定を出さないこともあり、その場合、被疑者はその時点で釈放されます)、「勾留」されてしまった「被疑者」は、その他の一定の要件をクリアしたうえで、国選弁護人(被疑者国選)を付けることができます。

国選弁護人の希望があると、おそらく裁判所から法テラスという機関に、被疑者の氏名、生年月日、行ったと疑われている犯罪の内容等とともに、国選弁護人の選任を希望しているという連絡が行きます。

そのような連絡を受けた法テラスは、その日に、国選弁護事件を担当することが予定されている弁護士に連絡を取り、その弁護士が国選弁護事件を受けられるかどうかの確認をします。

「国選弁護事件を担当することが予定されている弁護士」が誰なのかということについて、静岡県弁護士会の静岡支部では、1日ごとに予め担当者が定められています。

1月21日はX弁護士、1月22日はY弁護士、1月23日はZ弁護士といった具合です。

私の記憶が正しければ、少なくとも静岡支部では、法テラスから連絡を受けた弁護士は、当該被疑者との利益相反などがない限り、基本的に、被疑者国選を受けられるかという打診を受けた事件については受任しなければいけないというルールになっていたはずです。

国選弁護事件の場合、被疑者側に弁護人を選ぶ権利がないことは、前回の記事で申し上げましたが、事件を受ける弁護士の側でも、基本的に拒否権は無かったはずです。

事件の配点を受ける弁護士の側でも(少なくとも静岡では)、性犯罪の事件はやりたくないから受けないとか、遠い警察署は大変だから受けないとか、そういったことは許されなかったはずです。

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