司法修習のお話~その17 恐怖の二回試験2

弁護士になるための最終関門「二回試験」~大失敗した検察科目

皆さん、こんにちは。弁護士の石川です。

前回のブログから、弁護士になるために、最後に合格しなければならない通称「二回試験」(にかいしけん)についてお話をしています。

前回お話ししたとおり、私の場合、検察→刑事裁判→・・・・という順番で二回試験を受けたのですが、初っ端の検察で大失敗しました。

詳しい内容は守秘義務に触れる可能性があるので言及できませんが、この年、修習生が起案した回答は、基本的には3つの罪名に分かれており、それぞれ3分の1ずつくらいの割合だったと聞いたことがあります。

罪名Aが正解で、B、Cの順番に評価が良いのですが、私が書いたのはCでした。

よもや検察起案でAが正解なわけがないという勝手な思い込みと、これ書いとけば落ちないだろ、という打算的な考えで、罪名Cを書きました。

しかし、完全にやっちまいましたね。

同じ静岡修習の検察官志望の修習生も、やっちまったようで、かなりしんどそうな顔をしていました。

試験終了の日に、何故かその修習生と飲みに行くことになり、お互いに、検察で何を書いたのか、という話をしたのですが、その修習生が書いた起案はBだったと記憶しています。

お互いにきっと大丈夫だよ!という根拠のない励まし合いをした飲み会でした。

弁護士の場合、二回試験は受かりさえすれば良いのです。

しかし、検察官志望者や裁判官志望者は、「一定の優秀な成績」で合格しなければいけないそうで、弁護士志望以上に、プレッシャーがかかっていたのでしょう。

ただ、その修習生も、めでたく二回試験に合格し、検察官になりました。

検察科目に続く刑事裁判科目でも大失敗

初日の検察で大失敗し、次の科目は刑事裁判でした。

私は、刑事裁判の起案をものすごく得意としており、所要時間の半分にも満たない時間で模範答案となったこともありました。

そのため、刑事裁判科目には自信がありました。

ところが、私が得意としていたのは、起案の本体の方で、小問に関する勉強はほとんどしていなかったのです。

当時、小問で最低ラインに達しないとそれだけで不合格というような話を聞いていたのですが、検察に続いて、刑事裁判科目の小問でも大失敗しました。

しかも、大問の方も、人生で初めて刑事裁判科目で○○を書こうかと迷った問題でした。

自分自身に、○○を書いたら絶対ダメ!と言い続け、●●前提の起案を作成しました。

9割5分以上が合格する二回試験の刑事裁判で、受験生に○○起案を求めることはあり得ないという打算的思考がまたもや働いたのですが、おそらくこれは正しかったでしょう。

このようなわけで、検察、刑事裁判と2科目連続で大失敗。

もうダメなんじゃないかと思いましたが、「あきらめたら そこで試合終了ですよ」の精神で、何とかその後の試験も完走しました。

でも、残りの3科目のことは、全然覚えていません。

検察と刑事裁判の内容が本当にショックだったのでしょう。

そして、検察と刑事裁判のトラウマは、その後も長く尾を引くことになります(詳しくは次回のブログで!)。

本当にあった恐い話~解答用紙を綴れず不合格

「綴れず不合格」と聞いても、二回試験に縁が無い人にとっては、全くちんぷんかんぷんでしょう。

そもそも「二回試験」というのは、厚さ1センチくらいの問題文(もはや薄い本です)を渡されて、朝9時ころから夕方4時ころまで、それに対する解答をひたすら作成するという試験です。

そして、「綴れず」というのは、解答を記載する用紙に関するお話です。

解答用紙は、横罫線付きのA4用紙で(確かA3・1枚にA4・2ページが印刷されていたと思うのですが)、用紙の左端に、ファイルに綴じるような2つの穴が空いています。

これが1人あたり何十枚も配布されます。

「何十枚」というのは、1枚1枚×何十枚という意味です。

解答用紙は、1枚1枚バラバラの状態で渡されるのです。

受験生は、この解答用紙に解答を書いていくのですが、最後に、自分が書いた解答用紙の束をそろえて、用紙に空いた2つの穴に黒いひもを通して束ねて綴るのです。

そして、制限時間内に解答用紙の束を適切な方法で綴れないと、それだけで不合格になります。

「綴れなかったら、そこで試合終了ですよ」状態になります。

えっ!?って思いません?

一生懸命頑張って司法試験に合格して、その後も1年間の研修を受けて、やっと弁護士なれると思ったら、紙をひもで綴れなかっただけで不合格!?

何言ってんの?って感じだと思うのですが、本当にそれだけで不合格になるのです。

毎年ごくわずかながら解答用紙を綴れなかったがために不合格になってしまった人が実際にいたようなのです。

そのため、私たち、当時の受験生は、とにかく綴る、ということを意識していました。

綴れずに不合格になってしまうなど、悔やんでも悔やみ切れません・・・。

「本当にあった恐い話」とはこういう話を言うのだと思います。

しかし、綴れないから不合格というのは、あまりに不合理であると最高裁判所も思ったのではないでしょうか。

近年では、答案を作成する時間が終了した後に、解答用紙をひもで綴る時間が設けられたようです。

2026年から司法試験でもパソコンによる答案作成が一般的に可能となるようで、近い将来、こんな話も過去の遺物になることでしょう。

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