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自己破産手続における「免責不許可事由」についてのおさらい
別の記事で、自己破産の最大の目的は借金を0にすること(裁判官に「免責」を許可してもらうこと)であり、免責不許可事由とは、免責が認められない場合として法律で定められている事由であることをお話ししました。
さらに別の記事では、免責不許可事由が存在すると考えられる場合には、破産管財人の選任が必要となる可能性があり、そのために、自己破産を申し立てるための費用が増大してしまう可能性があることについてお話ししました(静岡地裁への破産申立てでは、少なくとも20万円程度予納金が増額されることを念頭に置く必要があります)。
今回は、そのような免責不許可事由の具体的内容を紹介する第2弾です。
今回ご紹介する免責不許可事由は、自己破産の申立てを行う際、よく問題となる事由であり、とても重要です。
どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その2 以前破産したことがある場合に要注意の免責不許可事由
以前自己破産をしたことがある人が、前回の免責許可決定の確定日から7年以内に自己破産の申立て(免責許可の申立て)をした場合、免責不許可事由に該当します。
裁判所によって免責許可決定が出されると、裁判所から免責許可が出されたということが官報に掲載されます。
官報とは、国が発行する情報誌のことです。
官報に関する詳しいご案内は、こちらの記事をご覧ください。
債権者において、債務者の免責許可に不服がある場合、官報に、免責が許可されたことが掲載されてから2週間以内に、当該免責許可決定に対する不服申立てを行うことができます。
免責許可が官報に掲載されてから不服申立てがされずに2週間が経過すれば、免責許可は確定となります。
この免責許可の確定日から7年以内に自己破産を申し立てた場合、免責不許可事由に該当してしまいます。
また、以前自己破産をしたことがある場合だけではなく、以下の場合も免責不許可事由に該当します。
① 給与所得者等再生手続による再生計画を遂行したが、再生計画の認可確定日から7年以内に自己破産を申し立てた場合
② 民事再生法におけるいわゆるハードシップ免責を受けたが、再生計画の認可確定日から7年以内に自己破産を申し立てた場合
以前に自己破産をしたことがある場合、給与所得者等再生を行ったことがある場合、小規模個人再生でハードシップ免責を受けたことがある場合、新たに自己破産を申し立てるまでの期間については、よく注意する必要があります。
どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その3の1 浪費
収入や資産とのバランスを失した浪費によって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりして、破産に至った場合、当該「浪費」行為は免責不許可事由に該当します。
一般的に、「浪費」というと、高価なブランドもののバックなどを買うこと、あるいは、お金をかけた旅行に行くことなどを想像されるのではないでしょうか。
確かにそのような場合が「浪費」に該当することもありますが、自己破産における免責不許可事由としての「浪費」は、単に、高価なブランドもののバックを買ったことが「浪費」に該当するというわけではありません。
当該行為が「浪費」にあたるかどうかは、申立人の財産、収入、社会的地位、生活環境と対比して、浪費にあたると思われる行為が、使途、目的、動機、金額、時期、生活環境等を総合的に考慮して判断されます。
また、「浪費」が免責不許可事由に該当するかどうかの判断にあたっては、申立人の財産が著しく減少したこと、または、過大な債務を負担したことと「浪費」との間に、相当因果関係が認められる必要があるとされています。
免責不許可事由としての「浪費」に該当するかどうかは、評価を伴う法的な概念であると言えます。
どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その3の2 賭博
賭博その他の射幸行為(この記事では一括して「賭博」といいます)によって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりして、破産に至った場合、当該「浪費」行為は免責不許可事由に該当します。
「賭博」というと、競馬、競輪、賭け麻雀などを想像されると思いますが、FXや仮想通貨の取引も「その他の射幸行為」に含まれます。
「賭博」についても、単純に賭け事等をすること自体が免責不許可事由としての「賭博」に該当するわけではありません。
自分の資力(収入、資産の状況)や、判断能力を超える取引をしたことによって、著しく財産を減少させたり、過大な債務を負担したりした場合に、免責不許可事由としての「賭博」に当たるとされています。
免責不許可事由としての「賭博」に該当するかどうかについても、申立人の収入、資産の状況や職業、知識などを総合的に考慮して判断されます。
また、「浪費」の場合と同様に、「賭博」が免責不許可事由に該当するかどうかの判断にあたっても、申立人の財産が著しく減少したこと、または、過大な債務を負担したことと「賭博」との間に、相当因果関係が認められる必要があるとされています。
さらに、「賭博」と、著しい財産減少や過大な債務負担との間に相当因果関係がある場合であっても、「賭博」はその一因に過ぎず、著しい財産減少や過大な債務負担について他に主要な原因がある場合には、その主要な原因をもとに免責不許可事由の有無を判断するべきであるとされています。
なお、既に弁済期にある債務について一般的、継続的に支払いができなくなっている状態(このような状態のことを「支払不能」といいます)にある者が、賭博行為を行っても、それによって新たに著しい財産減少や過大な債務負担を生じない限り、当該行為は、免責不許可事由に該当しないとされています。
浪費や賭博についてのまとめ
これまでお話ししたように、浪費や賭博などの免責不許可事由があると思われても、その行為が、直ちに免責不許可事由に該当するとは限りません。
そのような行為があると思われる場合には、自己破産の相談時に、弁護士に対して、当該行為についてしっかりと話をしておくことが大切です。