とても大事な自己破産と免責不許可事由の話1

自己破産の最大の目的は免責許可を得ること

個人が自己破産をする場合、その最大の目的は、自己破産の申立てをしたときまでに負っていた借金を支払わなくても良くすることです。

裁判所によって、自己破産の申立てをしたときまでに負っていた借金を支払わなくてもいいですよ、と認めてもらうことを「免責」あるいは「免責許可」といいます。

自己破産を申し立てる最大の目的、目標は、裁判所から免責許可を得ることです。

「免責不許可事由」をご存じでしょうか

免責不許可事由という言葉を聞いたことがあるでしょうか。

免責不許可事由とは、法律によって、「こういう場合は、免責を認めることはできません」ということで定められている事由のことです。

免責不許可事由は、破産法252条に定められています。

破産法252条1項は、「裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。」と定めています。

つまり、法律上、「次の各号に掲げる事由」=免責不許可事由が存在しない場合には、「免責許可の決定をする」=借金を0にするという定め方になっています。

免責不許可事由が無ければ免責許可が降りるということです。

これからの数回のコラムでは、自己破産を申し立てるにあたって、とても大事な免責不許可事由についてお話をします。

どのような場合が免責不許可事由にあたるのか?~その1 虚偽の債権者名簿の提出

それでは、どのような場合が、免責不許可事由とされているのでしょうか。

破産法252条1項は、免責不許可事由として、大きく分けて11個の事由を規定しています。

分かりやすいものから見ていきましょう。

第7号は、虚偽の債権者名簿を提出したことを免責不許可事由としています。

裁判所が免責を許可するかどうかを決定するためには、債権者の氏名や債権額の全てを知ることが不可欠です。

そのため、自己破産の申立てにあたり、申立人は、債権者名簿(あるいは「債権者一覧表」)を裁判所に提出する必要があります。

それでは、「虚偽の」債権者名簿とは、どのような債権者名簿のことを言うのでしょうか。

ここでいう「虚偽」とは、債権者の氏名、名称や負債の額、負債の発生原因(たとえば、借入れなのか、割賦払いなのか、損害賠償債務なのかなどといったこと)について、事実に反する記載をすることや記載すべき債権者名や負債の内容を記載しないことを言うと解釈されています。

もっとも、免責不許可事由が認められた場合、免責許可が降りない可能性があるという強い効力が生じます。

そのため、虚偽の債権者名簿を提出したかどうかということについては、限定的に判断されています。

具体的には、破産者が、破産手続の遂行を妨害したり、債権者を害する目的をもって、意図的に事実に反する記載をしたり、債権者名簿に記載すべき事項についてあえて記載しなかったりした場合に限られるものと考えられています。

たとえば、十年以上前に借入れをした債権者がいて、その債権者のことを忘れていたため、債権者名簿に記載しなかったという場合、確かに、提出された債権者名簿には、記載されるべき債権者の記載が無いということにはなりますが、免責不許可事由としての「虚偽の債権者名簿を提出したこと」には、該当しないのではないかと考えられます。

ただし、このような限定的な解釈を前提とした場合であっても、実際に、特定の債権者をことさら債権者名簿に記載しなかったということで免責不許可とされたケースもあるようですので、注意が必要です。

親戚や友人に迷惑を掛けたくないから、債権者一覧表に記載しない、は絶対ダメ

自己破産申立てのご依頼やご相談を受けた際に、あまり多くはありませんが、依頼者様や相談者様から、「実は親戚や友人からお金を借りているのですが、裁判所から通知が行くと恥ずかしいので、債権者名簿に、親戚や友人を書きたくないのですが・・・」といったお話をいただくことがあります。

また、「親戚や友人には迷惑を掛けられない。彼らにはお金を返したいので、その人たちについては、債権者名簿に書かないでもらえないでしょうか・・・」といったお話をいただくことがあります。

しかし、このようなお申し出のもと、親戚や友人を債権者として、債権者名簿に記載しないことは、これまで述べてきたように、破産法252条1項7号の免責不許可事由に該当する可能性があります。

したがって、親戚や友人からお金を借りていることを知っているのに、それらの人をあえて債権者として債権者名簿に記載しなかった場合、免責許可を受けられなくなってしまう可能性があります。

そのため、親戚や友人に迷惑を掛けたくないから、債権者一覧表に記載しない、ということは絶対にいけません。

実際、先ほどお話ししたようなお申し出を受けたケースでは、いずれの場合でも、依頼者様や相談者様に対しては、免責不許可事由について十分ご説明申し上げ、ご納得いただいた上で、親戚や友人の方についても、債権者一覧表へ記載をしております。

自己破産の一番の目的は、今ある借金を支払わなくても良くする(免責許可を得る)ことですから、この目的に反する行為は絶対にするべきではありません。

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