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相手方の財産が分からないと適切な財産分与はできません
皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。
我が国においては、本年4月1日より、家族法に関する改正民法が施行され、その中の一つとして、財産分与、婚姻費用、養育費等に関連する情報開示命令制度が設けられました。
今回のブログでは、同制度についてご説明いたします。
財産分与は、基本的に婚姻中の夫婦が婚姻後に積み上げてきた財産を、離婚時において半分ずつに分けるという制度です。
もっとざっくり言ってしまえば、夫婦が婚姻後に取得し、現在も残っている財産を足して2で割るという制度です。
財産分与を行うためには、大前提として、夫婦それぞれがどのような財産を持っているのかを明らかにする必要があります。
しかしながら、現実には、配偶者の持っている財産が不明であったり、○○銀行の預金口座を持っているということは知っていても支店が不明であったり、具体的な預金残高が不明であったりすることがあります。
このような場合、夫婦全体の正確な財産の金額を算定することができず、本来もらえるはずの分与額よりも財産分与の金額が少なくなってしまうということが起こり得ます。
相手方の収入が分からないと適切な婚姻費用、養育費の支払いを受けられません
婚姻費用や養育費の月額を決める場面では、裁判所の公式ホームページに掲載されている婚姻費用算定表、養育費算定表に基づいて金額が決定されることが多いといえます。
そして、これらの表に基づいて婚姻費用や養育費の月額を決める場合、金額算定の基礎となるのは、当事者(夫婦、あるいは父母)の収入です。
この場面でも、相手方当事者の収入を知らない、あるいは、その収入を証明できる資料(源泉徴収票、課税証明書、給与明細など)が無いために、相手方に関して適切な収入金額を把握、証明できず、その結果、適切な婚姻費用や養育費の支払いを受けられないということが起こり得ました。
改正民法により新設された情報開示制度
令和8年4月1日施行の改正民法により、財産分与、婚姻費用、養育費に関する調停、審判、あるいは離婚訴訟において、当事者からの申立てまたは裁判所による職権に基づき、当事者に対し、収入ないし資産に関する情報を開示するよう命じることができるという制度が始まります(以下「情報開示命令」といいます)。
同命令に対し、正当な理由なく情報を開示しなかったり、虚偽の情報を開示したりした当事者は、10万円以下の過料に処せられる可能性があります。
なお、情報開示命令では、第三者についての情報を当事者に開示するよう求めることができるようです。
たとえば、養育費の支払いを求める調停において、支払義務者が再婚していたような場合、再婚相手の収入資料についても開示を求めることができると、ある種の解説書には記載があります。
しかし、当該再婚相手の同意なく同人の収入資料を提出することには抵抗があるでしょうし、当該再婚相手が資料の提出に同意しなかったような場合には、やはり本制度によっても開示はできないという結論になってしまうのではないと思います。
情報開示命令の有用性について
改正民法施行前においても、文書送付嘱託、文書提出命令といった制度によって、当事者の収入あるいは財産に関する資料の開示を求めるという方法は存在しました。
しかし、これらの制度を使って、たとえば金融機関に相手方の預金口座の残高や入出金履歴の開示を求めても、金融機関が、相手方の同意が存在しないことを理由として開示を拒否するということが通例であったように思います。
そもそも論として、紛争の相手方に財産資料等の開示を求めても開示されないので、金融機関等の第三者に、預金残高等の開示を求めていたというのが実情であったと思います。
今回の民法改正で、紛争の相手方に対して、過料の制裁をもって財産開示を迫るという制度ができましたが、過料というのは、罰金とは異なり、処せられても前科はつきません。
たとえば財産分与の場面で、相手方が知らない資産が1000万円存在したとした場合、開示すれば財産分与額が500万円増え、開示しなければ10万円の過料の制裁を受ける可能性があるとします。
そういった場面で、果たして情報開示命令によってどれほどの当事者が当該情報を開示しようという気になるのか、疑問なしとは言えませんが、このような制度ができた以上、必要な場面では活用したいと思います。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
趣味は旅行、英会話、競馬。
