司法修習のお話~その11 静岡での検察修習2

私たちの指導担当検察官

皆さん、こんにちは。弁護士の石川です。

前回は、実務修習の中の検察修習についてお話をしました。今回は、検察修習の2回目です。

私たちが検察修習を受けたときには、学習塾の教室のような、全ての席に座れば最大30人ほどが入れるような部屋があり、その部屋に、修習生6人と指導担当検察官が対面で座るような感じでした。

私たちを指導してくれた担当検察官は、一旦会社にお勤めされた後、司法試験に合格されて検察官になった方でした。

私自身、検察修習というか、検察官、検察庁には、バリバリの体育会系のイメージがあり、修習開始前は、すごく恐いところというイメージがあったのですが、指導担当検察官は、いつもニコニコ朗らかな方で、安心して修習を受けることができました。

前回のブログで、検察官と被疑者、被告人が対立当事者にあるというお話をしましたが、被疑者、被告人とともに、弁護人(弁護士)も、検察官との関係では対立当事者です。

そのため、弁護士になって以降は、なかなか検察庁にお邪魔する、特に、検察官に個人的に会いに、検察庁内に立ち入るということは無いのですが(0ではありません)、お目にかかる機会があれば、また指導担当検察官にお会いしたいなぁと思っています。

弁護士になっても使える「簿記3級」

さて、指導担当検察官に関する思い出をもう一つご紹介します。

静岡修習は4班制で、各裁判修習、弁護修習、検察修習を班ごとに廻っていきます(詳しくは、こちらの記事をご覧ください)。

あまり記憶が定かでないのですが、確か、私たちの班が検察修習を受ける前の時点で、静岡の修習生全員を対象にした検察修習の事前案内か、指導担当検察官との懇談会というものがあったように思います。

その際、「修習期間中に何をやったら良いでしょうか。」という質問をした修習生がいて、その質問に対するご回答だったと思いますが、「簿記3級を取りなさい。」というのが、担当検察官のお答えでした。

検察官として、会社の不正が絡むような事件を扱う際、決算書や帳簿類を見るのに、簿記の知識があると大変役に立つ、のみならず、弁護士の業務を行ううえでも大変役立つであろう、というお話であったように記憶しています。

その後、私は、簿記3級を取ろうと思って、テキストを買ってみたのですが、最初の数ページで早くも挫折してしまいました。

しかしながら、簿記を持っているというのは、やはり弁護士にとっても有用であると思われます。

特に、会社の破産事件では、会社の決算書や帳簿類を見る機会が多く、その際、簿記の資格は非常に役立つと思います。

もう一度簿記3級にチャレンジしてみるという気概は今は無いのですが、もしこのブログを読んでいる奇特な修習生がいらっしゃるとすれば、私も、私の指導担当検察官と同様に、修習中に時間があれば(法律の勉強をしてもなお余裕があれば)、簿記の勉強をされることをお勧めします。

検事正のお話~「共感する力」

検察修習中、当時の検事正(地方検察庁のトップ)と修習生がお話をさせていただく機会がありました。

本ブログの冒頭、私にとって、検察修習はバリバリの体育会系で、恐いイメージがあったというお話をしたのですが、私が修習を受けていた当時の検事正は、お日様のような、ポカポカとした温かい人柄の方で、修習生はみんな検事正のことが好きであったと思います。

キリッとした次席検事と、温かな検事正と、僭越ながら、あのときの静岡地方検察庁の検事正、次席検事は、非常に良いコンビであったと思っています。

修習生との懇談の場で、検事正は、検察官と被疑者、被告人は対立する立場にあるけれど、被疑者、被告人の立場になって考えてみる、共感する力が大事である、というお話をされました。

私の検察修習の中で、このお話は大変印象に残りました。

「共感」というワードは、検事正に限ったことではなく、刑事裁判官からも聞いたことがありました。

私が弁護士となって数年後、小学生を対象とした刑事裁判の傍聴ツアーに、弁護士会側の担当者として同行したことがありました。

この際、同見学を担当していた刑事裁判官も、もし自分が被告人の立場であったら、どういう行動をしたであろうか、どう思ったであろうかということを考えて判決を下しています、というお話をされていました。

弁護士という仕事は、基本的には、依頼者である個人や会社から相談や依頼を受け、依頼者の立場に立って、仕事を進めていきます。

その意味では、弁護士業務において、依頼者に共感する力が求められる場面は多いと思います。

しかし、弁護士だけではなく、被疑者、被告人と対立する立場にある検察官や、双方の主張を聞いて判断を下す立場にある裁判官においても、被疑者、被告人の立場に立って考えてみる、という視点をお持ちであるということはとても新鮮に感じられました。

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