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離婚後の「共同親権」制度10~「共同親権」と再婚相手との養子縁組
離婚後の「共同親権」下にある子を養子縁組するためには、原則として元配偶者(別居親)の承諾が必要です
皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。
今回は離婚後の「共同親権」に関するブログの第10弾で、「共同親権」に関するブログとしては最終回となります。
来月からいよいよ離婚後の「共同親権」の制度がスタートし、18歳未満の子がいる父母が離婚する場合、父母は、離婚後も「共同親権」とするのか、父母いずれかの単独親権とするのかという選択を迫られることになります。
離婚後も子が父母双方との関わりを持ちつつ成長していくということは、子の成長にとってプラスの側面があるでしょう(もちろんDVなどの事情により、すべてのケースがそうでないことは、改正法においても想定しているところです(必要的単独親権事由))。
他方で、離婚後においても「共同親権」とすることを選択した場合、15歳未満の子を再婚相手と養子縁組させようとした場合、大きな困難を伴うことが予想されます。
ここでは例として、離婚後も「共同親権」となっており、子と同居している親を母親、別居している親を父親とし、母親が再婚するという場面を考えてみます。
「共同親権」下の子を再婚相手と養子縁組させようとした場合、子が15歳未満である場合、親権者が子に代わって養子縁組を承諾する必要があります。
このような親権者による承諾を「代諾」(だいだく)と呼びます。
改正民法施行前は、離婚後は父母いずれかの単独親権のみでしたので、離婚後に単独親権者となった母親が単独で養子縁組を代諾すれば足りました。
しかし、「共同親権」下の子(15歳未満)について、子が再婚相手と養子縁組をするためには、母親は父親と「共同」で再婚相手との養子縁組を代諾する必要があります。
つまり、再婚相手との養子縁組を成立させるためには、子の父親(元配偶者で、別居親である共同親権者)に、再婚相手と自身の子が養子縁組することに同意してもらう必要があります。
私としては、この時点で、主として感情的な問題から、養子縁組に同意してくれる元配偶者がどれだけいるのか、という懸念を有していますが、さらに深刻な問題として、次に述べるような事情があります。
離婚後「共同親権」状態で養子縁組をすると、他方親(元配偶者)は親権を失います
改正民法818条3項は、子が養子であるときの親権者を、養親及び養親の配偶者たる子の父母であると定めています。
これは、離婚後に「共同親権」の状態で養子縁組をした場合、養親となった者(再婚相手が想定される)の配偶者でない親(つまり、元配偶者ないし別居親たる親権者)は、共同親権者でなくなる=親権を失うということを意味しています。
先にお話ししたように、15歳未満の「共同親権」下の子について、再婚相手と養子縁組を行うためには、元配偶者の承諾が必要となります。
しかし、元配偶者が、再婚相手との養子縁組を承諾した場合、元配偶者は、自身が有していた共同親権を失ってしまうことになります。
このような場面で、どれほどの元配偶者が、再婚相手との養子縁組を行うことに同意してくれるのでしょうか。
養子縁組の代諾に関する親権行使者の指定は極めてハードルが高い
離婚後の「共同親権」下において、父母の意見が対立した場合の解決方法として、どちらの親が、その事柄について親権を行使するのかを裁判所に決めてもらう親権行使者の指定という制度があることは以前のブログでご説明申し上げました。
養子縁組に関する代諾についても、他方親(元配偶者)が養子縁組に同意してくれない場合、「親権行使者の指定」という手続を使うことができます。
ただし、養子縁組の代諾について「親権行使者の指定」を求める場合、その他の「親権行使者の指定」の場合よりも要件が加重されています。
一般的な「親権行使者の指定」の場合は「子の利益のため必要がある」ことが要件ですが、養子縁組の代諾に関する「親権行使者の指定」の場合は、「子の利益のため特に必要である」ことが要件とされています。
これは、子の利益のため、他方親の親権を失わせてもなお、養子縁組を成立させる必要があるのか、という観点から、別居親の親権を維持することについて子の利益の観点から問題があると言えない場合には、養子縁組の代諾に関する親権行使者を指定することは認められないと考えられているためです。
このように、養子縁組の代諾に関する「親権行使者の指定」は極めてハードルが高いといえます。
一般的に、共同親権を有している他方親(元配偶者)が自身の親権を喪失するとしてもなお、再婚相手と子との養子縁組に同意してくれるケースは僅少と思われます。
そうしますと、離婚時に「共同親権」となった場合、その後同居親が再婚して、再婚相手と子(15歳未満)とを養子縁組させることはかなり難しいのではないかと考えられます。
特にお子さんの年齢が低い場合、「共同親権」とするかどうかを決める際、この点の考慮は不可欠であろうと思います。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
趣味は旅行、英会話、競馬。
離婚後の「共同親権」制度9~「監護」の分掌について
監護の分掌~父母間で子に対する「監護」を分けること
皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。
我が国においては、令和8年4月1日より、離婚後の「共同親権」制度がスタートします。
以前「共同親権」に関するブログを第8弾まで掲載してきましたが、今回はその第9弾となります。
第8弾のブログでは、親権の一部を構成する「監護権」についてお話をしました。
監護権は、親権の一部である子に対する「身上監護」を行う権限と言えます。
第8弾のブログでお話ししたように、「監護権」は父母のいずれか一方に帰属させることもできますが、本ブログで紹介するように、「監護権」を父母の間で分担させるということもできるようになりました。
「監護権」を分担する方法には2種類あり、期間的な分担と、事項的な分担があります。
期間的な「監護」の分掌(ぶんしょう)
期間的な監護の分掌は、父母が一定の期間ごとに子を交替交替で監護するというものです。
たとえば、奇数月は父親が子どもと暮らし、子どもの面倒を看る、偶数月は母親が子どもと暮らし、子どもの面倒を看るというような場合が考えられます。
このような期間の分掌が実現した場合、対象期間中は父母の一方が監護教育に関する日常的な行為を単独で行うことができます。他方で、対象期間後にも影響を及ぼすような重大な行為(たとえば、子どもの心身に重大な影響を及ぼす医療行為の実施など)については、対象期間中であっても他方親と共同で行う必要があります。
なお、期間の分掌を行った場合には、養育費や婚姻費用を支払う側の父母も子の監護をすることになります。そのため、期間の分掌を行うことにより、支払われるべき養育費や婚姻費用の金額が影響を受ける(金額が下がる)場合もあると考えられています。
期間的な監護の分掌の考慮要素
このような期間的な「監護」の分掌が認められるためには、父母のいずれにおいても監護能力や監護者としての適格性が認められる必要があります。さらに、現実問題として交替監護を行うことが可能かどうか、父母において緊密に、かつ、継続的に協力し合うことが可能かどうか、交替監護が子どもに大きな負担とならないかどうかといったことも検討されます。
より具体的には、父母間の住居の距離、移動時間、子の年齢、心身の状況、子の学校や習い事の状況、子の年齢、発達に応じた子の意向、父母の協力可能性、父母と子の関係性、現在の監護状況などの事情が考慮されて判断されます。
期間的な「監護」の分掌が認められるためには、父母が子の監護について緊密に協力し合える関係を安定して継続できることが不可欠です。父母間の協力のレベルは、「共同親権」が認められるレベルよりも高いものが必要となると考えられています。
事項的な「監護」の分掌
事項的な「監護」の分掌は、子の教育に関する監護は父親、子の医療に関する監護は母親、というように、一定の事項に関する「監護」を父母のいずれか一方に委ねるものです。
事項的な「監護」の分掌が行われると、当該事項については、監護権を有する親が単独で監護を実施することができ、他方親はこれを妨げてはならないと考えられます。
事項的な「監護」の分掌は、特定の事項に関する親権行使者の指定と重なる部分がありますが、一般的には、特定の事項に関する「監護」の分掌の方が、特定の事項に関する親権行使者の指定よりも広く、抽象的な内容を対象としていると思われます。
たとえば、「子の教育」に関する監護の分掌と、子の中学進学に関する親権行使者の指定では、監護の分掌の方が広い事項を対象としています。
他方で、監護の分掌が認められた場合、当該事項について分掌を認められた親の監護を、他方親は妨げてはならないと解され、分掌を認められた親に強い権限が付されることになります。
そのため、監護の分掌が申し立てられた場合、裁判所においては、当該事項全般について監護の分掌を認める必要があるのか、特定の事項に関する親権行使者の指定では足りないのか、という点を検討することになり、場合によっては、後者の申立てへの変更を促される場合もあると考えられます。
事項的な監護の分掌の考慮要素
事項的な監護の分掌が認められるかどうかについては、当該事項についての父母間における従前の役割分担の状況、父母間の協議の状況、子の年齢、発達特性、心身の状況、父母と子との関係、子の意向を総合考慮して、父母のどちらの方が子の利益にかなう監護権の行使ができるか、という観点から判断がされるようです。
事項的な監護の分掌の場合には、期間の分掌ほどの父母間における緊密な協力関係は必要とされないものの、少なくとも共同親権とする際に求められるのと同程度以上の協力関係が必要となると考えられています。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
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離婚後の「共同親権」制度8~「監護者」について
「共同親権」施行後の「監護者」について
皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。
「共同親権」に関するブログの第8弾です。
今回は「監護者」、「監護権」についてお話しします。
親権の中には、子の財産を管理する財産管理権(民法824条)と、子の日常的な世話や教育に関する身上監護権(民法820条)があります。
「監護権」は、親権の一部を構成する「身上監護」を行う単独で行う権限と言えます。
改正民法において、「監護者」は、単独で、子の監護教育、居所の指定・変更などを行うことができ、監護者の行為について、監護者でない親権者は、その監護行為を妨げてはならないと規定されています(改正民法824条の3)。
改正前民法においても、監護権の具体的な内容として、子の居所指定権(民法822条)と職業許可権(民法823条)が定められており、実務上「監護者」という概念は存在していました。
また、家事事件としても、「子の監護者を定める審判」などという手続がありました。
しかし、改正前民法の世界では、「監護者」は、今後離婚をすることになる夫婦間において、離婚が成立するまでの間、父母のうちのどちらが子どもと生活し、どちらが子どもの面倒を看るか、というような場面で用いられることが多かったと思います。
改正民法施行後は、離婚後における「監護者」という立場がより問題となるように思われます。
監護者の指定
先ほどお話ししたように、監護者となった父母の一方は、単独で子の監護教育、居所の指定・変更などができます。
平たく言えば、「共同親権」下であっても、単独で、子どもとどこで暮らすかということを決められるなど、かなり強い権限を持つことになります(他方で、日常的な身上監護に属する行為については、共同親権者がそれぞれ単独で行うことができます)。
改正前民法下においても、親権者は母でもいいが、監護権は父が欲しい、その意味で子の監護権を獲得したいというご相談を父側からいただくことがありました。
このようなご相談に対しては、監護権者と(単独)親権者が分かれるということは通常想定しがたい(そのため、親権者は母で、監護権者は父ということは、基本的には認められないと考えられる)と説明してきました。
改正民法においては、「共同親権」が認められており、「共同親権」は、父母が子に対する親権行使を行うに際して協力していくことが可能だと判断される場合であり、そのような状況下で、父母(共同親権者)の一方が「監護者」と指定される事案は多くないと考えられます。
「子の居所」に関する「親権行使者の指定」と「監護者の指定」
本シリーズの前半の方で「親権行使者の指定」という制度を紹介しました。
改正前民法の世界では、親権者が定まれば、子どもがどちらの親とどこで暮らすかということは自動的に決めることができました(単独親権者となった親が決めることができるためです)。
しかし、改正民法施行後は、離婚後においても「共同親権」という状況が生まれますので、「共同親権」となった場合で、子どもがどちらの親と暮らすか、どこで暮らすか、ということについて父母間に意見の対立がある場合、別途、子の居所について、「親権行使者の指定」を行う場面が増えるのではないか、とお話ししました。
ところで、子の居所を父母のどちらが決めるのか、という問題については、「親権行使者の指定」だけでなく、「監護者の指定」によっても解決が可能です。
しかしながら、「監護者の指定」は、子の居所の指定だけなく、監護全般について、父母の一方に、他の父母に優先する権限が与える制度です。
そのため、「監護者の指定」が認められる場合というのは、「親権行使者の指定」が認められる場合よりも相当ハードルは高いと考えられています。
そうなりますと、やはり、子の居所について父母間で対立がある場合には、子の居所を定めることについての「親権行使者の指定」が多用されることになるのではないか、と個人的には考えています。
監護者の指定の考慮要素
父母のいずれを監護者として指定するか、ということについては、改正前民法における「監護者の指定」事件と同様の考慮要素に基づいて判断されるようです。
つまり、①これまでの監護の状況、②父母における監護体制、③父母と子の関係性、④他方の親と子との関係に対する姿勢、などの要素に基づいて判断されると考えられます。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
趣味は旅行、英会話、競馬。
離婚後の「共同親権」制度7 ~親権者の変更
親権者の変更に関して「子の利益のために必要がある場合」
皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。
今回は「共同親権」に関するブログの第7弾です。
今回もこれまでと同様に、離婚後における共同親権を「共同親権」あるいは「『共同親権』制度」といい、改正民法施行後における親権者の変更についてお話ししたいと思います。
前回のブログでは、「親権者の変更」が認められるのは、裁判所が、親権者を変更することが「子の利益のために必要がある」と認めた場合であることをお話しました。
それでは具体的にどういった場合が「子の利益のために必要がある」と認められるのでしょうか。
改正法案の策定過程では、同居親が子育てに無関心、同居親が親権行使に支障を来たすほどの精神疾患がある場合などが挙げられていました。
また、書籍によっては、同居親と子との関係が必ずしも良好でないために、別居親が親権者としてその養育に関与することによって子の精神的な安定が得られるケースや、同居親による子の養育に不安があるが、児童相談所の一時保護の対象となるまではいえないケースなどが「子の利益のために必要がある場合」として挙げられていました。
しかし、同居親が「子育てに無関心」、「親権行使に支障を来たすほどの精神疾患がある場合」、「子との関係が必ずしも良好でない」という状況であったにもかかわらず、当該同居親が親権者になったのだとすれば、(特に改正民法の施行後に当該同居親が単独親権者となった場合)他方親に共同親権を得させるべきケースが現実的にどれほどあるのか、個人的にはかなり疑問です。
どのような場合に「子の利益のために必要がある」と認められるのかについても、改正民法施行後の事例の集積を待つしかないと思います。
親権者の変更~変更前の親権者が当事者の協議により定められた場合
変更前の親権者が、当事者間の協議により決定されたものである場合(協議離婚の場合)には、親権変更の場面において、「協議の経過」、「その後の事情の変更」、「その他の事情」を考慮して、親権の変更が「子の利益のために必要がある」と言えるかどうかが検討されます。
考慮要素としての「協議の経過」と「その後の事情の変更」は、検討順序や軽重に決まりがあるわけではなく、事案によってということになります。
たとえば、DV被害者が離婚を急ぐあまり、真意に反して共同親権に同意してしまった場合には、事後的に親権者変更の申立てを行うことが考えられます。
この場合には、どうして共同親権とすることになったのか、という「協議の経過」が考慮されます。
「協議の経過」において、DV等により当事者間の対当性を欠く状態において、「協議」により親権者が決定されたと認められる場合には、「その後の事情の変更」の有無はあまり重視されず、親権者を定める際の判断枠組に即して親権者の変更について判断をすると考える見解もあります。
他方で、「協議の経過」に特に問題がない事案では、「その後の事情の変更」が考慮要素として重要になってきます。
親権者の変更は父母間の協議のみでは行えません
父母の双方が共同親権へ変更することについて合意をしているとしても、父母間の協議のみで共同親権へ変更することはできず、家庭裁判所の調停を経る必要があります(改正民法819条6項)。
父母と子の関係、父母相互の関係、そのような合意に至った経緯などについて、調停を通じて裁判所が父母の考え方などを聴き取り、子の利益のため親権者を変更する必要があるかどうかを検討します。
子の利益に反する事情があると裁判所が認めた場合、合意は不相当として、親権者を変更する調停は不成立により終了となります。
改正民法施行後に「共同親権」とする旨の合意は有効か?
令和8年4月には「共同親権」制度がスタートします。
制度開始前に、制度開始後には「共同親権」とすることを父母間で合意し、改正民法の施行を待たずに離婚をするという方もいるかもしれません。
しかし、「共同親権」について、上記のような合意をしたとしても、改正民法の施行後当然に「共同親権」に変更できるものではありません。
この場合でも、改めて親権者の変更を求める調停手続を行い、その中で、父母が「共同親権」について合意をするか、家庭裁判所の審判により「共同親権」を定めてもらう必要があります。
制度開始前に離婚をされる場合には、この点に注意が必要です。
制度開始後に、他方親が「共同親権」とする合意を撤回した場合には、従前「共同親権」とする旨の合意があったという事実よりも、離婚後の父母と子の関係、父母間の関係から、従前の単独親権を「共同親権」とすることが「子の利益のために必要がある」と言えるか、という観点が重視されるべきであると考えられています。
また、仮に離婚時において改正民法が適用されていれば「共同親権」が選択されたか、という観点ではなく、離婚後の父母と子の関係、父母間の関係から、従前の単独親権を「共同親権」とすることが子の利益のために必要と言えるか、という観点が重要であるようです。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
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離婚後の「共同親権」制度6 「共同親権」と「単独親権」の決め方 その2
「共同親権」に関する静岡家庭裁判所との意見交換会でパネリストをしてきました
皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。
「共同親権」に関するブログの第6弾です。
先日、静岡家庭裁判所との間で、「共同親権」に関する意見交換会があり、静岡県弁護士会側のパネリストとして登壇して参りました。
「何とか無事乗り切った(汗)」という感じでした。
今回のブログもこれまでと同様に、離婚後の共同親権を「共同親権」あるいは「『共同親権』制度」といい、改正民法施行後の「親権者」が決定される場面についてお話ししたいと思います。
必ず単独親権となる場合~必要的単独親権事由
共同親権となるのか、単独親権となるのか、については、前回のブログでお話ししたような考慮要素によって決定されます。
しかし、改正民法上、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」には、必ず単独親権としなければならないとされています(改正民法819条7項後段)。
改正民法は、このような場合の具体例として以下の2点を挙げています。
1つ目は、「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすと認められる場合」です。
父母のいずれかから子どもに対する虐待があったり、父母のいずれかに親権喪失事由・親権停止事由があったりするような場合が想定されています。
必ず単独親権となる2つ目の場合は、「父母の一方が他方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがある場合など、協議が調わなかった理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められる場合」です。
「暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動」の中には、身体的な暴力だけではなく、精神的、経済的、性的なDVも含まれると考えられています。
また、過去に虐待やDVがあったという事実は、今後の虐待やDVの「おそれ」を肯定させる方向で考慮される(重視される)と考えられています。
DVがある家庭では、この規定により単独親権になると考えられます。
条文上は、DVの被害者たる親を単独親権者とすべきとはされていません。
しかし、DVがあるようなケースでは、DVの加害者側の親が単独親権者となる場合は少ないと考えられる、という見解があります。
また、本項では、「協議が調わなかった理由」も考慮要素として挙げられています。
父母の一方または双方が虚言や重大な約束違反を繰り返す、他方の親の人格を否定する言動を執拗に繰り返す、濫訴的な裁判手続の申立てを繰り返すというような事情についても、共同親権が否定される事由として考慮されるようです。
必ず単独親権としなければならない事情は、上記の2つのみではなく、上記2つは、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」の例示であると考えられています。
上記の2つ以外に、どのような場合に必ず単独親権としなければならないのか、ということについては、書籍や文献上、必ずしも明らかではなく、改正民法施行後における事例の集積を待ちたいと思います。
単独親権から「共同親権」への変更
改正民法が施行される以前には、父母が離婚した場合、そのいずれか一方が親権者になっていました。
それでは、改正民法の施行前に決定された父母の単独親権を、改正民法の施行後に、「共同親権」へ変更することを求めることは可能なのでしょうか。
結論から言うと、制度的には「共同親権」へ変更を求めることは可能です。
ただし、「共同親権」へ変更するためには、裁判所によって親権者の変更を認めてもらう必要があります。
単独親権者から非親権者へ親権者を変更する場合も、単独親権から「共同親権」へ変更する場合も、裁判所が親権者の変更を認めるのは、「子の利益のため必要があると認めるとき」です。
改正民法が施行された(法律的に「共同親権」の選択が可能となった)という事実それ自体から、従前の単独親権が当然に「共同親権」へ変更されるべきである、ということではありません。
改正民法が施行されたとしても、裁判所が当該事案について「子の利益のため必要があると認め」なければ、「共同親権」への変更は不可能です。
裁判所が「共同親権」への変更を認める場合
前回のブログでお話した親権者を決める際の考慮要素は、親権者を変更する際にも考慮されます。
親権者を変更する場面においても、父母と子の関係、父と母との関係、その他一切の事情を考慮して親権者を変更するかどうかが判断される、ということです。
今回のブログの冒頭では、親権者を指定する際に、このような事情がある場合には必ず単独親権としなければならないという事情(たとえば、父母の一方が子どもを虐待している場合など)があることをお話ししました。
親権者変更の場面においても、そのような事情がある場合には、必ず単独親権となります。
なお、単独親権から「共同親権」への変更を求める場面についてですが、法務省民事局のパンフレットでは、「別居親が本来支払うべき養育費の支払を長期間にわたって合理的な理由なく怠っていたような場合には、共同親権への変更が認められにくいと考えられます」と言われています。
養育費の支払いの有無は、親権者変更の場面において重要な考慮要素となりそうです。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
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また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
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離婚後の「共同親権」制度5~「共同親権」と「単独親権」の決め方 その1
「親権」の決め方~親権者の決定において考慮される要素
皆様、こんにちは。静岡市で弁護士をしております石川アトムです。
今回のブログは、「共同親権」に関するブログの第5弾です。
「親権者」がどのような考慮要素によって定められることになるのか、ということを中心にお話しします。
今回もこれまでと同様に、この記事の中では、離婚後の共同親権を指す趣旨で、「共同親権」あるいは「『共同親権』制度」といいます。
改正前民法の世界では、離婚後の親権は、父親の単独親権と母親の単独親権のいずれかしか存在しませんでした。
改正民法が施行されますと、離婚後の親権者のバリエーションは、父母共同(共同親権)、母親単独親権、父親単独親権という3パターンになります。
改正民法下において、親権者が定まる場面は、
協議離婚の際に父母の協議によって定める場合(親権者の指定を求める家事調停を含む)
裁判所が協議に代わる審判をする場合(親権者の指定を求める家事審判)
裁判上の離婚の場合に裁判所が定める場合、という3つの場面が考えられます。
共同親権とするか、父母の単独親権とするかは、「子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮」して決められることになっています(改正民法819条7項)。
離婚後においても、「共同親権」とすることになった場合、一定の例外を除いて、子に対する身上監護、子の財産管理、子の身分行為に関する代理を、父母が共同して行うことになります(一定の例外、すなわち、父母が単独で親権を行使できる場面については、前回までのブログをご参照ください)。
改正民法において、「共同親権」とするか単独親権とするかについて、原則例外は無いとされています。
また、父母のどちらかが反対しているからといって、直ちに共同親権が度外視されるということにもなっていないようです。
「共同親権」とすべきかどうかという判断にあたっては、将来、父母間で、共同での親権行使のための協議や協力を行うことができるかということが検討されますが、協議・協力の程度は、子の養育のために最低限のやり取りができるレベルであれば、その他一切の事情を考慮したうえで「共同親権」を認める余地があると解されています。
なお、「共同親権」であるか否かによって、親子交流(これまで「面会交流」と呼ばれていた離婚後の別居親と子との交流)の方法や充実度について差が生じるという建て付けにはなっていません。
親権者を決める場面での考慮要素~「父母と子との関係」
親権者を決める際の考慮要素として、「父母と子との関係」が挙げられています。
親サイドの事情としては、子の面前で、父母間で口論を繰り返したり、子に対して他方の親の悪口を言ったりするなど、という従前の態度や、養育費を支払うなど親としての責務を果たしているかということなどが考慮されるようです。
子サイドの事情としては、父母に対する子の気持ちや、今後の親権行使に関する子の意向が考慮の対象となり得ると考えられています。
年長の子については、子の意向の重要性は高くなると考えられています。
親権者を決める場面での考慮要素~「父と母との関係」
「共同親権」とすべきか否かの際に考慮される「父と母との関係」は、具体的には、同居時における父母の親権行使の状況、別居後の親権行使の状況、子に対する身上監護のあり方、別居後の他方親と子との交流状況、父母間の連絡状況などに加え、親権者の定めの協議が調わなかった理由などを含む手続の経過についても考慮の対象とされるものと考えられます。
父母の一方が他方に対して、誹謗中傷や人格を否定するような言動を繰り返している場合には、離婚後に親権を共同行使する前提としての父母間の協力義務に違反していると評価される可能性があります。
また、父母の一方が他方に無断で、何ら理由なく子の居所を変更するなどした場合についても、事情によっては父母間の協力義務違反と評価されることがあります。
親子交流について取り決めがされたのに特段の理由無く履行されない場合、養育費に関する協議を理由無く一方的に拒否する場合も、協力義務違反と評価される可能性があります。
これらの協力義務違反は、「共同親権」とするかどうかという場面で、「共同親権」とすることに消極的な事情として考慮される可能性があります。
父母の単独親権とすべきか、共同親権とすべきかは、以上のような考慮要素を総合して決定されますが、改正民法においては、「このような事情がある場合には、絶対に共同親権にはしない」という要素もあります。次回のブログでは、この点についてお話ししたいと思います。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
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離婚後の「共同親権」制度4~「共同親権」下で親権の単独行使が可能な場合 その3
離婚後の「共同親権」制度の開始日が令和8年4月1日となりました
皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。
「共同親権」ブログの第4弾です。
前回のブログで触れましたが、閣議決定により、我が国における離婚後の選択的「共同親権」制度の開始日が令和8年4月1日となりました。
もちろん制度が全く同じというわけではありませんが、既に「共同親権」の制度を有しているアメリカで実施されたある統計によれば、1994年から2010年において、共同親権は25%、母親の単独親権が65%、残りの10%が父親の単独親権という統計結果だったようです。
他方で、日本の「人口動態統計」によると、日本では、2010年の時点で、母親の単独親権は83.3%、父親の単独親権は12.9%、兄弟で親権者が異なるという場合が3.7%だったそうです。
来年4月1日から選択的「共同親権」制度がスタートし、親権の比率がどのように変化していくのか、今後注目していきたいと思います。
親権行使者の指定~子の居所の指定
前回のブログで、「共同」親権下においても、親権の単独行使が可能な場面の一つとして、特定の事項について親権の行使者が指定される場合を紹介しました。
私は、改正民法が施行された後、親権行使者の指定について争われることが最も多い場面は、子の居所の指定になるのではないかと考えています。
と言いますのも、前々回のブログでお話ししたように、「親権」の中には、子どもに関する「身上監護」というものが含まれています。
日常的に子どもと一緒に生活をして、ご飯を食べさせるなどをすることは、親権の中の「身上監護」の一内容です。
改正前民法のもとでは、未成年の子をもつ父母が離婚した場合、父母のいずれか一方だけが子の親権を有するということになっていました。
そのため、改正前民法の世界では、離婚後に親権を持つことになった親が、いわば自動的に、子の住む場所を決めることができていました。
しかし、改正民法が施行された後には、離婚後の父母が「共同親権」を持つケースが出てきます。
先にお話ししたように、親権の内容には、子がどこでどのように暮らすのか、ということを決める権利が含まれています。
そのため、離婚後に「共同親権」となった場合、父母は原則として、子がどこに住むのかを「共同で」決めなければなりません。
共同親権となった場合、どちらか一方の親が当然に子の居所を決めるということはできないのです。
「共同親権」状態の父母において、子の居所について協議がまとまらない場合(父母の双方が、子どもと一緒に暮らしたいと言って譲らない場合など)には、子の居所を指定することについて、親権行使者の指定を求めることが選択肢の一つとなります(ただし、後のブログでお話しするように、どちらか一方が子の居所を定めることをできるようにする手段は、他にも「監護者の指定」や「監護の分掌」という手続もあります)。
このように、「共同親権」と言っても、当然に、父母双方が子と暮らすことができるわけではありません。
今後は、子の「居所」を決める親権行使者の指定が、従前の「親権」争いの一部に取って代わるのではないかと思っています。
子の居所の指定に関する親権行使者指定の概要
子の居所を決める親権者行使者を指定する場面では、父母のいずれが日常的に子を監護することが適切か、ということを子の利益の観点から判断するものとされています。
具体的には、従前の監護状況、現在の監護状況、父母の監護能力、子の年齢、発達状況、父母との関係性、子の意向、兄妹に関する事情について、総合的に評価し、父母のいずれが子の監護をすることが子の最善の利益になるかが判断されます。
子の居所をどこに定めるべきか、ということを直接判断するのではなく、どちらの親に親権を行使してもらうことが子の利益になるのか、という判断の方法が取られます。
この点、前回の子の進学の決定に関する親権行使者の指定に関して述べたことと同様です。
なお、「親権行使者の指定」の制度は、離婚後の「共同親権」下だけではなく、婚姻中の夫婦間においても使用することができます。
今後は、婚姻中の夫婦間においても、子の進学先を決めたり、子どもをその学校から転校させるか否か、退学させるか否かを決めたりする場面で意見がまとまらない場合、親権行使者の指定を求めて家庭裁判所で話し合いを行う(調停を行う)ということが増えてくるかもしれません。
婚姻中の夫婦にとって、この制度が「雨降って地固まる」制度として利用されることになるのか、「覆水盆に返らず」制度となってしまうのか、制度の作用が非常に気になるところです。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
趣味は旅行、英会話、競馬。
離婚後の「共同親権」制度3 ~「共同親権」下で親権の単独行使が可能な場合 その2
共同親権下で父母間に意見の対立があった場合 ~「親権行使者の指定」制度
皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。
今回も「共同親権」に関するブログで、今回はその第3弾です。
つい先ほど、政府の閣議により、「共同親権」のスタート時期が令和8年4月1日と決定されました。
いよいよ「共同親権」制度が迫ってきたという感じがします。
さて、前回のブログでは、「共同親権」下においても、父母のいずれか一方が単独で「親権」を行使することができる場面について、3つの場合を説明しました。
今回のブログは、「共同親権」下においても、父母のいずれか一方が単独で「親権」を行使することができる4つ目の場面の説明から始めます。
その4つ目の場面は、ある「特定の事項に係る親権の行使」について父母間に協議が調わず、その「特定の事項に係る親権」を父母のいずれか一方に単独で行使させることが「子の利益のため必要がある」と言える場合です。
前回のブログで紹介した父母が単独で親権を行使することができる3つ目の場面、「子の利益のために急迫の事情があるとき」は、父母の意見が対立した際にも使用され得る規定だと思いますが、特定の事項に係る親権行使者が定められる場合というのは、まさに、親権行使について父母の対立があった際に使用されることが想定された規定です。
「特定の事項に係る親権の行使」
この規定は、ある「特定の事項」に関する親権の行使について父母間で協議が調わず、子の利益のためにその「特定の事項」について、父母のいずれか一方が単独で親権を行使する必要があると家庭裁判所が認めたときに、父母の一方による単独親権行使を認める規定です。
この制度は、ある「特定の事項について」という点が大きなポイントです。
特定の、限定された事柄についてのみ親権の単独行使を認める、という制度です。
この規定において想定されている「特定の事項」とは、子の進学先の選択、子の心身に重大な影響を与える医療行為の決定、子の居所の指定や転居、子の財産管理などです。
たとえば、私立中学校へ進学させるか、公立の中学校へ進学させるかについて、父母の意見がまとまらない、といった場面で使用されることが想定されています。
他方で、「親権行使者の指定」制度は、現実に紛争が発生している状態でなければ利用することができません。
近い将来、父母間で子の進学のことで揉めるだろうと思って予め申立てを行う、ということはできないのです。
受験や入学手続にはタイムリミットがありますから、家庭裁判所において実際にどのように調停等を運用していくのか、非常に難しい制度だと思います。
「親権行使者の指定」制度は、先にお話ししたとおり、「特定の事項」について親権を行使する者を決めてもらう制度です。
そうしますと、どの程度の「特定」が必要なのか、ということが実務家(弁護士)としては気になるところです。
この「特定」の程度については、「○○高校との在学契約の締結及びこれに付随する事項」というレベルまで特定する必要はないと考えられています。
親権行使者の指定の申立てをする時点では、子がどの高校に進学するかは確定していないと考えられます。
「○○高校との在学契約の締結」という申立てをしてしますと、仮に申立てが認められたとしても、子が「○○高校」に不合格となってしまった場合、父母のいずれか一方が、当然に、併願していた「××高校」との在学契約を単独で結ぶことができる、ということにはならないためです。
在学契約に関する親権行使者の指定については、「高校との在学契約の締結及び~」というレベルで特定をすれば良いようです。
「親権行使者」の決め方
「特定の事項」について、父母のいずれに単独で親権を行使させるかについては、どのように決められるのでしょうか。
たとえば、高校への進学が問題となっている場面では、①いずれの親が親権を行使する(進学先を決定する)ことが子の利益にかなうのか、及び、②子の意思、意向はどうか、ということが総合的に考慮されて決定されます。
より具体的には、同居期間中における父母の役割分担、子の進学をめぐる父母間や兄弟間でのやり取り、子の年齢、成績、特性等、父母の経済状況、他の兄弟の進学状況、進学先の学校の状況等が考慮されるようです。
進学先の決定に関する親権行使者を決めるにあたって、「どちらの高校がより子どものために良いのか」という観点から検討されるわけではありません。
なお、子の意思、意向はどうか、という点とも関連しますが、子が15歳以上の場合で、裁判所が親権行使者を審判によって決定する場合には、家事事件手続法により、子の陳述を聴かなければならないとされています。
今後のどこかのブログで、子の「居所」に決定に関する事項についても触れたいと思いますが、個人的には、改正民法が施行された後、「親権行使者の指定」制度は爆発的に利用されることになるのではないかと思っています。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
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離婚後の「共同親権」制度2 ~「共同親権」下でも親権の単独行使が可能な場合 その1
「親権」の内容
皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。
10月も後半に入り、秋めいた空気になってきましたね。
さて、我が国でも、令和7年5月までに離婚後の子どもに対する「共同親権」制度がスタートします。
今回は、「共同親権」に関するブログの第2弾です。
今回も、前回のブログと同様に、「離婚後の」という趣旨で「『共同親権』制度」や「『共同親権』」という用語を用います。
「共同親権」シリーズのブログをお送りしていますが、そもそも「親権」の内容とは何でしょうか。
「親権」というと、子どもと一緒に生活をして、子どもの面倒を看て、教育をして、というイメージがあると思います。
そういった行為をする親の権利義務も「親権」の一部です(「身上監護」といいます)。
しかし、「親権」には、子に対する身上監護だけではなく、子の財産を管理する権利義務(「財産管理」)も含まれます。
このほか、「親権」には、子の身分行為を代理することも含まれます。
身分行為としては、子の氏の変更などがあります。
改正民法では、このような「親権」について、親の権利という性質だけではなく、親の子に対する義務としての側面もあるということが明記されています。
「共同親権」でも「親権」の単独行使が可能である場合
「親権」は、夫婦が婚姻中であれば、共同して行うことになります。
また、来年の5月以降は、夫婦が離婚した後も「共同親権」ということになれば、父母が共同して「親権」を行使することになります。
しかし、常に、父母が親権を共同で行使しなければならないとすると、子の利益を害するような場面も出てきます。
そこで、改正民法上、以下の場合には、「共同親権」の状態にあっても、父母のどちらか一方が単独で「親権」を行使することができると定められました。
①父母の一方が親権を行うことができないとき
②監護教育に関する日常の行為をするとき
③子の利益のために急迫の事情があるとき
④特定の事項について家庭裁判所の許可により親権行使者が定められた場合
以上の4つのうち、②から④は改正民法によって新設された規定です。
今後特にポイントになってきそうな規定は、③と④だと思います。
①から④を順に見ていきましょう。
まず、①「父母の一方が親権を行うことができないとき」です。
これは、父母のいずれか一方が長期の旅行に行ってしまった場合、行方不明になってしまった場合、受刑者になってしまった場合、成年後見の開始を受けた場合、親権喪失の宣告がされた場合などが当てはまります。
「監護教育に関する日常の行為をするとき」
次に、②「監護教育に関する日常の行為をするとき」です。
「監護教育に関する日常の行為」については、単独での親権行使が認められます。
ただし、あくまでも、親権のうちの日常的な「身上監護」に関するものについての親権行使です。
後に述べる別の例外ケースに該当しない限り、子の財産管理や身分行為の代理をするためには、共同での親権行使が必要です。
どのような行為が「監護教育に関する日常の行為をするとき」に当たるのか、ということについては、法務省民事局のパンフレットに言及があります。
具体的には以下のような例が挙げられています。
・食事や服装の決定
・期間の観光目的での旅行
・心身に重大な影響を与えない医療行為の決定
・通常のワクチン接種
・習い事
・高校生の放課後のアルバイトの許可
他方で、「日常の行為」に該当しない例としては、以下のような事由が挙げられています。
・こどもの転居
・進路に影響する進学先の決定(高校に進学せず就職するなどの判断を含む)
・私立小中学校への入学、高校への進学・退学など
・心身に重大な影響を与える医療行為の決定
・財産の管理(預金口座の開設など)
「子の利益のために急迫の事情があるとき」
共同親権下において、単独での親権行使が可能な場面の3つ目は、「子の利益のために急迫の事情があるとき」です。
こちらは、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時の親権行使をすることができず、その結果として子の利益を害するおそれがあるようなケースを指すと言われています。
法制審議会では、入学試験の合格発表後に行われる入学手続、緊急で医療行為を受ける必要がある場合の診療契約、DVや虐待から逃れる必要がある場合などが検討されたようです。
他方で、手術日まで2、3か月程度の余裕があるときには直ちに「急迫の事情があるとき」には当たらないとの法務大臣の答弁もあったようです。
どのような場合が「子の利益のために急迫の事情があるとき」に当たると判断されるのかは、個別具体的なケースごとに異なると考えられ、改正法施行後の事例の集積を待ちたいと思います。
④の特定の事項について家庭裁判所の許可により親権行使者が定められた場合については、次回のブログでご説明いたします。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
趣味は旅行、英会話、競馬。
離婚後の「共同親権」制度1
日本でも離婚後の「共同親権」制度がスタートします
皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。
10月に入り、だいぶ秋めいて参りました。
今朝は少し肌寒いくらいの気候です。
さて、来年の5月から、我が国においても離婚後の子どもに対する「共同親権」の制度がスタートします。
私は、普段は会社や個人の自己破産事件を扱うことが多いのですが、静岡県内の弁護士にとって、離婚事件、親権や面会交流に関する事件は、いわば日常的な業務です。
私も離婚事件や親権に関するご相談、ご依頼をよくいただきます。
離婚後の「共同親権」制度がスタートするのは、改正された民法が来年の5月までに施行されるためですが、改正前の民法においても共同親権という制度自体は、婚姻中の夫婦と子との関係において存在していました。
以下では、「離婚後の」という趣旨で「『共同親権』制度」や「共同親権」という用語を用いることとします。
来年5月から「共同親権」制度が始まるということで、静岡県弁護士会においても、「共同親権」制度について既に2回の研修が行われています。
また、来月以降、静岡家庭裁判所の裁判官との3度のパネルディスカッションが開催される予定となっています。
そして、私は、その第1回のパネルディスカッションにおけるパネリストを仰せつかりまして、同役をお受けすることになりました。
しかし、私も、「共同親権」制度について2回の研修を受けただけでして、その程度の知識でパネルディスカッションに臨むことなど恐ろしくてできません。
そこで、「共同親権」に関する書籍などを入手して勉強し、私の知識の定着を兼ねて、ブログで「共同親権」制度についてまとめを作成することとしました。
このような事情から、今回のブログから5回にわたり、今後施行される「共同親権」制度や親権に関連する事項について、シリーズでお話をしたいと思います。
「離婚」の方法には3種類あります
そもそも親権者を決めなければならない場面というのは、子を持つ夫婦が離婚をする場面です。
そこで、まず、日本における「離婚」の方法についてお話をします。
日本では、夫婦が離婚をするための方法は3種類あります。
1つ目は、夫婦が話し合いをして、離婚届を作成し、市役所や区役所などに提出する方法です。
一般に「協議離婚」と呼ばれます。
離婚届には、子の親権者が誰であるのかということを記載する欄があります。
現時点では、未成年の子を持つ夫婦が協議離婚をするためには、夫婦のどちらが子の親権者となるのかを離婚届に記載する必要があります。
2つ目は、夫婦の話し合いの場が裁判所に移り、裁判所の中で話し合いをして、離婚をするという方法です。
裁判所での離婚についての話合いは、正式には「夫婦関係調整調停」と呼ばれますが、より簡単に「離婚調停」とも呼ばれます。
離婚調停を行い、夫婦間で離婚についての合意ができた場合、裁判所が夫婦間での話合いの結果を「調停調書」という書類にまとめてくれます。
当事者が「調停調書」を市役所や区役所に持って行くことにより、戸籍に離婚した事実が反映されます(夫婦間において、別途離婚届を作成する必要はありません)。
このような離婚の方法を「調停離婚」と呼びます。
3つ目は、離婚調停をしても離婚についての話がまとまらない場合、裁判をして離婚をすることになります。
いわゆる「離婚裁判」ですが、日本の法律では、いきなり離婚裁判を起こすということはできません。
離婚裁判を起こすためには、必ず離婚調停を経なければいけないことになっています。
離婚裁判においては、当事者の一方または双方が離婚の原因となる事実を主張し、その事実を証拠によって証明しなければなりません。
離婚の原因となる事実の典型例としては、不貞、不倫が挙げられます。
裁判官が、当事者双方の主張を聴いて、離婚の原因となる事実が認められるかどうかを証拠によって認定し、当該夫婦を離婚させるか、離婚させないかを判決により決定します。
このような離婚の方法を「裁判離婚」と呼びます。
親権者の決定が協議離婚の要件ではなくなります
先ほどもお話ししたように、現在の(改正前の)民法の下では、未成年の子どもがいる夫婦が離婚をするためには、父母のいずれが子の親権者となるかということを離婚時までに必ず決めなければなりませんでした。
逆に言うと、父母のいずれも絶対に親権者になりたいというような場合、協議離婚はできませんでした。
しかし改正民法においては、協議離婚の届けの際に、親権者の定めがされているか、親権者の定めを求める家事審判または家事調停の申立てがされているかのいずれかの条件が満たされていれば、離婚の受付けがされることになりました。
従前、夫婦間で離婚をしたいということについては意見が一致しているものの、夫婦のどちらが子の親権者となるかについて協議がまとまらないために、離婚ができないというケースが相当あったと思いますが、今後は、父母のいずれが親権者となるかという問題を一旦保留にして、離婚した後に親権者を決めるということができるようになりました。
これは、現実問題、かなり大きな改正だと思います。
ただし、離婚調停や離婚裁判においては、改正前と同様に、親権者を決めずに離婚するということはできません。
次回のブログでは、そもそも「親権」とは、どういった権利義務であるのか、という点を中心にお話をしていきたいと思います。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
趣味は旅行、英会話、競馬。
