Archive for the ‘コラム 任意整理、個人再生’ Category

借金でお困りの方へ~借金の法的解決方法その2 個人再生

2025-02-20

個人再生(小規模個人再生)とは

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

前回のブログで、借金の問題を解決する方法として、任意整理、個人再生、自己破産という3つの方法を挙げました。

今回は、この中の個人再生についてお話しします。

「個人再生」という手続をごく簡単に説明しますと、今ある借金すべてについて、裁判所の手続を通じて、借金の金額自体を圧縮し、数年間かけてその圧縮された金額を分割で返済していくというものです。

たとえば、500万円の借金を100万円まで圧縮し、月々1万7000円程度を5年間かけて支払っていくというイメージです。

前回お話しした任意整理との大きな違いは、借金の金額自体を大きく減らすことができる可能性が高いということです。

他方で、個人再生手続では、すべての借金、負債を平等に取り扱う(減額させる)必要があります。

ご親戚やご友人から借りたお金も、他の金融業者と同様に裁判所に申し出て、一律の圧縮を行う必要があります。

金融業者からの借金は圧縮したいけれど、ご友人からの借金は全額返したい、というようなことは、個人再生手続ではできません。

また、個人再生は、裁判所を通した手続です。

個人再生のご依頼をいただいてから、圧縮された借金の分割払いが実際に始まるまで、9か月から1年程度の期間がかかります。

任意整理が1月から1月半程度で終わることからすると、個人再生は長期的な手続だと言えます。

また、個人再生手続の申立てそのものにかかる費用は、任意整理と比べても相当高額になります(法テラスを利用したとしても25万円程度はかかります)。

個人再生を行うべき場面~住宅ローンを抱えている方

借金の問題について、任意整理、個人再生、自己破産という解決方法がある中で、個人再生を第一に検討すべきと考えられるのは、住宅ローン付きのお住まいをお持ちの方です。

自己破産をすると、基本的に、ご自宅は手放さなければならなくなります。

個人再生手続は、先ほどお話ししたように、すべての借金、負債を一律に圧縮して、圧縮した借金を分割で支払っていくものですが、住宅ローンだけは特別扱いができます。

個人再生手続で、他の借金を圧縮して分割払いとし、それと同時に、今までと同じように住宅ローンを支払い続けることで、住宅を維持することができます(このような申立てを、住宅ローン特別条項と呼びます)。

そのため、住宅ローン付きのお住まいをお持ちの方においては、個人再生手続を取るメリットは大きいと考えられます。

このほか、個人再生を行うべき場合としては、任意整理と同様に、自己破産してしまうと、就労に支障が生じてしまう場合が考えられます(警備員さんや保険の外交員さんなど)。

個人再生の場合には、手続を行っても、職業制限がないため、現在のお仕事を継続して行うことができます。

なお、インターネット上では、そのほか個人再生手続を行うべき場面として、免責不許可事由があり、自己破産することに懸念がある場合という記事を見ることがあります。

免責不許可事由があるために、個人再生を行うべきであるのかどうかについて気になる方は、お電話等にて、当事務所に直接ご相談ください。

弁護士から回答させていただきます。

債務が5000万円を超えて個人再生が使えない場面~通常の民事再生手続で住宅ローン特別条項を使うべきか?

個人再生手続を申し立てることができる要件の中に、住宅ローンを除いた借金等の総額が5000万円以下であることという要件があります。

住宅を持っているものの、負債の総額が住宅ローン以外で5000万円を超える場合、個人再生手続を使うことができません。

その場合、通常の民事再生手続を取ったうえで、住宅ローン特別条項を使うことが、理屈上は考えられます。

しかし、借金等の金額が5000万円を超える場合、民事再生手続を利用したとしても相当額の負債を、住宅ローンとは別に長期間かけて支払う必要があります。

また、通常の民事再生手続において、裁判所への申立ての際に裁判所に納めなければならない予納金の金額は極めて高額です(先日静岡地方裁判所に伺ったところ、申立人が個人であっても最低250万円が必要であるということでした)。

再生計画で定めた返済が可能であるということは、仮に破産をしたとした場合、同額の貯金を作ることができるということになります。

このようなことを前提にしますと、住宅を守るために通常の民事再生手続を申し立てるかどうかについては、相当に慎重な検討が必要と思われます。

その他個人再生手続について

当事務所のホームページには、個人再生手続の流れや、個人再生手続に関するデメリットを紹介したページもございます。

個人再生をご検討中の方は、ぜひご覧ください。

借金でお困りの方へ~借金の法的解決方法その1 任意整理

2025-02-09

今年は自己破産の申立てなど借金に関するご相談をよくいただきます

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

2025年の業務を始めてまだ1月ほどですが、今年は、借金や負債に関するご相談の件数が非常に増えているように思います。

あらゆる商品の急激な値上がり(物価高)、コロナ融資の返済など、近年の社会情勢のため、借金返済のために生活が立ち行かなくなったり、会社や事業に行き詰まったりしてしまった方が増えているように思います。

そこで、今回のブログでは、最近ご相談をいただくことが特に増えている、借金の問題について、個人の場合にどのような解決方法があるのか、ということについてお話ししたいと思います。

借金の問題を解決する方法(いわゆる「債務整理」の方法)としては、基本的には、任意整理、個人再生、自己破産という3つの方法が考えられます。

任意整理とは

任意整理という方法についてごく簡単に申しますと、今ある借金について、弁護士が債権者(金融業者)との間で話をし、毎月支払う金額を下げてもらい、数年間かけてその全額を返済するというものです。

たとえば、これまでは月々1万円返済していたけれど、今後は月々5000円の返済にしてもらう、というようなイメージです。

任意整理では、基本的に、現在存在している借金の元金を全額返済する必要があります。

また、今後は月々いくらを支払うということについて、債権者(金融業者)との間で合意が成立するまでの間に発生した利息についても支払いを求められることが多いと思います。

さらに、業者によっては、合意成立後、借金を完済するまでの利息(将来利息)についても支払いを求められることがあります。

債権者(金融業者)との間で交渉する、新しい分割払いの内容は、私が弁護士を始めたころ(15年前)と比べて、かなりシビアになっているという実感があります。

任意整理は、裁判所を介さず、弁護士が直接債権者(金融業者)と交渉して行います。

また、任意整理では、A社、B社、C社という複数の会社から借入れをしている場合に、A社だけ行う、あるいは、A社とC社だけ行う(それ以外の会社は、これまでどおりの約束で支払いをする)ということが可能です。

任意整理の流れ

任意整理を行う場合、ご相談の段階で、現在支払っている借金の月額合計額と総額を伺います。

そして、弁護士と依頼人との間で、月々の支払金額を下げるとした場合、合計いくらまでだったら毎月支払っていくことができるかを確認します。

その後、弁護士から債権者(金融業者)に対して、代理人として弁護士が入りましたよ、という通知を出します。

この通知により、一旦、債権者から依頼人に対する督促等は止まります。

弁護士が通知を出した後、債権者から、現在、依頼人には、これだけ借入れ(あるいは、カードの利用金額やリボ払いの残りなど)がありますよ、という連絡が来ます。

業者にもよりますが、業者からこのような連絡が来るまでには概ね一月ほどの時間がかかります。

事前に伺っていた負債の金額と大きな差が無ければ、依頼人に再度確認をしたうえで、債権者に対して新しい支払月額を提案します。

債権者が、新しい支払月額に同意してくれれば、合意書を取り交します。

以後、依頼人において、新しい支払月額に基づいて分割弁済をしていっていただきます。

債権者との間で合意が成立するまでの期間(任意整理にかかる期間)は、早ければご依頼から1月から1月半程度となります。

任意整理が可能な場合、難しい場合

任意整理は、基本的には、今ある借金全額について、毎月の支払金額を下げ、これまでよりも長い期間で返済していくという手続です。

私の感覚ですが、金融業者は、5年を超える分割弁済には消極的です。

特に借入期間が短い方の場合、新しい分割返済額に対するハードルは高まります。

仮に100万円の借金を、将来利息なしで5年間で返済するとした場合、月々の返済金額は1万7000円弱です。

200万円の借金を、将来利息なしで5年間で返済するとした場合、月々の返済金額は3万4000円弱となります。

任意整理という手段を取ることができるのは、ご自身の収入で(あるいはご家族の収入を含めて)通常の生活を送りつつ、なおかつ、借金を返していくことができるという場合です。

先の例で言えば、100万円の借金がある場合、家賃、水道光熱費、食費などを支払って通常の生活を送りつつ、月々1万7000円を5年間支払い続けることができるか、ということになります。

ご自身やご家族の生活で精一杯で、月々の返済額を減らしても借金を返していくことが難しいという場合には、任意整理ではなく、自己破産を申し立てざるを得ません。

収入と支出の状況はもちろん人それぞれですが、借金負債の金額が300万円を超える場合(月々の支払いが5万円を超える場合)、任意整理を行うことは難しいように思います。

また、借金の金額はそれほど多くないものの、ご相談の時点で月々の支払額が1社あたり数千円であるという場合、任意整理によって月々の支払金額をさらに数千円下げるということは難しいことが多いように思います。

任意整理が適当と思われる場合

自己破産ではなく任意整理を行うべき場合としては、借金の金額が比較的少額である場合が考えられます。

自己破産により、職業を失うおそれがある方(保険の外交員さんや警備員さん)も任意整理を検討するべきだと思います。

また、自己破産や個人再生の場合には、裁判所を入れて、すべての債権者を平等に扱う必要があります。

すべての債権者について、自己破産の場合は1円も払わない、個人再生の場合は債権の何割かをカットしてもらうということです。

ご親族や友人等、仲の良い人からの借入れがあり、その人たちにはどうしても借入金全額を支払わなければならない、というような事情がある場合には、任意整理を検討しても良いかもしれません。

keyboard_arrow_up

0542706551 問い合わせバナー 無料相談について