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「自己破産に強い弁護士」というキーワード
皆さん、こんにちは。静岡で自己破産案件を扱っている弁護士の石川です。
今日では、自己破産を申し立てようと思ったとき、どの弁護士に依頼するのが良いか、インターネットで検索することが多いと思います。
そして、自己破産の申立てを依頼する弁護士をインターネットで検索する場合、「自己破産に強い弁護士」というキーワードを用いて、弁護士を検索される方もいらっしゃると思います。
たとえば、「交通事故に強い弁護士」の場合、「交通事故に強い弁護士」がどういった弁護士を指すのか、これは比較的想像がつきやすいと思われます。
交通事故事件における最終目標は、相手方または相手方保険会社から賠償金を支払ってもらうことです。
そのため、「交通事故に強い弁護士」とは、基本的には、相手方または相手方保険会社から、できる限り高額な賠償金を獲得することができる弁護士ということになるでしょう。
それでは、「自己破産に強い弁護士」とはどのような弁護士でしょうか。
個人の自己破産における最終目標は「免責」を得ること
自己破産事件における最終目標は何でしょうか。
それは、借金を0にすること、負債を支払わなくても良い状態になることです。
つまり、裁判所から「免責」を得ることです。
免責を得ることが自己破産の最終目標であるとすれば、免責を得やすい弁護士が「自己破産に強い弁護士」ということになるのでしょうか。
私は、基本的には、免責を得やすい弁護士が「自己破産に強い弁護士」に当たるとは考えていません。
なぜなら、免責が認められないケースというのはそれほど多くはなく(ただし、結論として免責が認められる場合でも、免責を得るために、破産者自身が努力をしなければならない場合はもちろんあります)、免責が認められるかどうかという点について、自己破産を申し立てた弁護士の力量が関係する事態というのは、ほとんど無いのではないかと思われるからです。
つまり、多くの場合、どの弁護士に依頼をしても、その弁護士が自己破産事件を通常の業務として取り扱っている弁護士であれば、裁判所から「免責」を得ること自体は可能であると思われます。
そのため、私は、基本的には、免責を得やすい弁護士が「自己破産に強い弁護士」に当たるとは考えていません。
免責不許可事由の「浪費」に該当するかどうかの判断
ただし、以下のような場合には、「免責」に関して、弁護士の経験、知識により、結論に差が生じ得るところだと考えられます。
自己破産手続の最終目標は、「免責」=借金を支払わなくて良いことを裁判所に認めてもらうことですが、破産法には、「免責」を認めることができない場合が列挙されています。
そのような場合を「免責不許可事由」といいます。
「免責不許可事由」が存在する場合、破産管財人の選任が必要となり、裁判所へ納める予納金の金額が増加する可能性があります(静岡地裁の場合、予納金として少なくとも20万円程度が必要になると思われます。破産管財人に関する詳しい説明は、こちらの記事をご覧ください。)
免責不許可事由の一つに、「浪費」があります。
生活上必ずしも必要でないもの(たとえば高価なブランド品、服など)を、自身の支払能力を超える借金をしてまで購入していたという場合、そのような事情で作った借金を支払わなくて良いことにするというのは不適当である、というのが破産法の原則的な考え方です。
しかし、高価なブランド品を購入するために借金をしたり、クレジットカードで分割払いしたりすることの全てが免責不許可事由としての「浪費」に当たるわけではありません。
免責不許可事由としての「浪費」に該当するかどうかは、破産者が行った物品の購入行為などを、破産者の財産、収入、社会的地位、生活環境と対比し、その使途、目的、動機、金額、時期、生活環境、社会的許容性の有無等に照らして、総合的に考慮して判断されるとされています。
そのため、同じ人が同じブランド品を買ったとしても、購入した時期によっては、その人の財産状況や収入状況が異なるために、それが「浪費」とされる場合もあれば、「浪費」とされない場合もあると考えられます。
また、仮に高価な服を購入するために借金をしたり、クレジットカードを利用したりしたことがあったとしても、その人がデパートで働いており、勤め先のアパレル店舗の売上ノルマ達成のために、服を購入せざるを得なかったという事情があれば、そのような物品購入は、「浪費」とは判断されない可能性もあります。
このように、高価なブランド品や高価な服を購入するために借金をしたという場合でも、その時期や状況によっては、そのような行為が「浪費」と判断される場合もあれば、「浪費」ではないと判断される場合もあります。
借金をして高額なブランド品を購入=「浪費」と即断するのではなく、依頼者から適切な聴き取りを行い、裁判所に対して、条文の趣旨に沿った適切な説明を行うことができる弁護士は、ある意味、「免責」に関して「自己破産に強い弁護士」と言えるかもしれません。
「免責不許可事由」に関係する詳しいご説明は、こちらのページをご覧ください。
「自己破産に強い弁護士」とはどのような弁護士か
先ほどもお話ししたように、私個人としては、「免責」が得られるかどうかについて、弁護士の力量が問われる事態というのは、ほとんど無いのではないかと思っています。
それでは、多くのケースに妥当するような「自己破産に強い弁護士」というのは、どのような弁護士なのでしょうか。
「自己破産に強い弁護士」というのは、自己破産手続に精通している弁護士を意味しているのだと思います。
そして、自己破産手続に精通している弁護士とそうでない弁護士との一番の差は、自己破産手続の申立てに要する時間に現れると思います。
もちろん自己破産手続もケースバイケースで、申立人における事情は千差万別ですが、特殊な事情が無いにもかかわらず、個人の自己破産手続の申立てのために6か月かかってしまう弁護士は、「自己破産に強い弁護士」とは言えないのではないでしょうか。
また、裁判所に申立てを行った後、書類の不備や説明の不足があるために裁判所から補正を求められることがあります。
補正処理を行わなければ、申立てをした後も破産手続が始められません。
自己破産手続の申立て後に、裁判所から大量の補正を求められる場合、あるいは、補正に対する回答に対して、裁判所からまた補正を求められてしまう場合、このような場合も「自己破産に強い弁護士」とは言えないと思います。
そこで、私の結論としては、「自己破産に強い弁護士」とは、できる限り迅速に自己破産手続の申立てを行い、かつ、裁判所から補正を求められることなく、スムーズに自己破産手続の開始決定を得られる弁護士であろうと考えます。
そして、そのような弁護士に依頼をすることは、借金の問題を抱えている依頼者、申立人が、一刻も早く不安な精神状態から解放されることができるという意味で、依頼者、申立人にとって大きなメリットだと思います。
私は、そのような弁護士でありたいと思い、日々自己破産手続に臨んでいます。
自己破産を検討されている方においては、ぜひ当事務所に一度ご相談ください。