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「面会交流」は、なぜ「親子交流」という名前に変わるのか
皆様、こんにちは。静岡で弁護士をしております石川アトムです。
我が国においては、令和8年4月1日より、離婚後の「共同親権」制度がスタートします。
これまで全10回にわたって「共同親権」に関するブログを掲載して参りましたが、離婚後の共同親権」制度の開始と同時に、これまで「面会交流」と呼ばれてきた別居中の父母と子との交流に関する規定についても、いくつかの改正を見ることになります。
これまで「面会交流」と呼ばれてきた制度は、今後は「親子交流」という名称で呼ばれることになると言われています。
「面会交流」は、離婚前で子と別居中、あるいは、離婚後の親子間において、(基本的には)定期的に、別居親と子が食事をしたり、出かけたりするなどして交流をする制度を言います。
親子の交流の仕方には、先に述べたような(一緒に食事をする、出かけるというような)「直接的な」交流以外にも、特に子どもが乳幼児である場合などには、直接的な交流に代えて、またはそれと並行して、写真のやり取りをするなど、「間接的な」交流が実施されることがあります。
また、近時ではビデオ通話を利用した交流なども実施されており、現在では、必ずしも親子が直接会うという「面会」のみが交流の形ではなくなっています。
このような事情を理由の一つとして、これまで「面会交流」と呼ばれてきた制度は、今後「親子交流」という呼称に変更されることになりました。
親子交流の試行的実施
改正前民法においても、実務上、親子交流(面会交流)に関する調停成立、審判前に、事実調査の一環として、試行的に親子交流が実施されていましたが、今回の民法改正により、試行的な親子交流について明文の規定が設けられました。
改正民法では、試行的な親子交流を実施する要件として、①子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がないこと、②事実の調査のため必要があると認めるときであること、という2つの要件が設定されています。
②の要件については、調停成立(父母間の合意形成)や審判(裁判官による判断)に必要かどうかという点から検討されますが、調停手続の中で明らかとなった親子交流に関する課題を解決したり、新たな課題を把握して父母間で共有したり、課題の解決に向けた父母の主体的な取組みを支援したりするためなど、広く事実の調査のために必要があると認められるときであれば、この要件を満たすものと考えられています。
具体的なケースとして、別居親と子との間で相当期間にわたって親子交流が実施されていない場合、お互いに相手方が親子交流における約束を守るか不安である場合などが考えられます。
なお、試行的面会交流の実施回数について明文上の制限はありません。
一つの調停、審判の手続内で複数回実施される場合もあると考えられます。
施行的な親子交流の実施方法
試行的な親子交流の実施にあたっては、裁判所は、交流の方法、日時、場所、家庭裁判所調査官やその他の者を立ち会わせるかどうかを決めることができることになっています。
交流の方法については、直接会うという方法だけではなく、ビデオ通話や電話による交流、写真や動画の送付、別居親から子への手紙の送付といった様々な方法が考えられるとされています。
裁判所は、試行的親子交流の実施にあたり、「子の心身に有害な影響を及ぼす言動を禁止することその他適当と認める条件」を付すことができるとされています。
たとえば、父母双方に対して、他方親やその親族に対する誹謗中傷を行わない、他方親の生活状況や居所を尋ねない、子を介した伝言をしない、といった条件が考えられます。
また、別居親に対しては、子に対して自身と生活するよう誘う行為をしない、同居親に対しては、親子交流実施後にその内容等について詳細を問うような質問をしない、などという条件が考えられます。
これらの条件について違反があった場合、違反の事実は、最終的な判断において、違反者に不利益に評価される可能性があります。
なお、離婚訴訟手続に関しても、試行的な親子交流を行う規定が新設されました。
しかし、離婚訴訟においては家庭裁判所調査官が期日に立ち会うことができず、試行的親子交流に関する調整活動が困難であると思われることから、実際上、試行的親子交流の実施を希望する場合には、離婚訴訟と並行して、別途親子交流の調停を申し立てる必要があると考えられています。
離婚前別居中の親子の交流に関する規定の明文化
改正前民法においては、離婚後の面会交流についての規定は存在したものの、離婚前別居中の親子に関する面会の規定は存在しませんでした。
今回の改正では、離婚前別居中の親子に関する面会交流の規定が新設されましたが、基本的には、従前の実務の取扱いを明文化したものです。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
趣味は旅行、英会話、競馬。
