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自己破産をした場合の懸念~不動産をお持ちの場合
皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。
今回は、個人の方を対象とした自己破産申立ての準備に関するブログの第7弾ですが、番外編の位置付けです。
自己破産を申し立てる際、不動産をお持ちの方、特に自宅をお持ちの方においては、破産をしたら自宅はどうなってしまうのか、いつまで住むことができるのか、ということが最大の関心事になると思います。
そこで今回は、自宅不動産を所有している場合についてお話ししていきます。
自己破産をした場合の自宅の行く末について
当事務所のブログでたびたびお話をしているように、破産手続そのものは、借金を0にする手続ではなく、破産者が所有している財産を現金化し、債権者に分配することを本質としています。
そのため、自己破産を申し立てた場合、基本的には、自宅は売却処分となります。
この場合、破産手続が始まった後、破産管財人という別の弁護士が裁判所によって選任されます(破産管財人に関するご説明はこちらのページをご覧ください)。
破産管財人は、銀行などの抵当権者と話をし合いをしながら不動産の買い手を探し、最終的には裁判所の許可と、抵当権者の同意のもと不動産を売却することになります。
抵当権者である金融機関が売却にOKを出してくれないと、不動産を第三者に売却することは事実上不可能です。
抵当権が付いている不動産は、売却して所有者が変わったとしても(名義が買主に移転したとしても)、抵当権が付いたままでは、その後に不動産が競売にかけられ、落札者が代金を支払った場合、買主は所有権を失うことになります。
このような事情があるため、買主が「安心して」不動産の所有権を取得するためには、売買時に、不動産に設定されている抵当権を金融機関に外してもらう必要があります。
そのため、不動産を誰にいくらで売るかということについては、抵当権者である金融機関の同意を得る必要があるのです。
自己破産をしても自宅を出て行かなくても良いケース
自宅不動産をお持ちの方が自己破産をする場合、もっとも気になる点が、自宅を出て行かなければならないのか、ということでしょう。
自宅を出て行かなくても済むケースとしては、ご親族、知人の方が、自宅不動産を丸々買い取ってくれるというケース、あるいは、自宅不動産に付いている抵当権によって担保されている債務を全額を弁済してくれるというケースがあります。
ごくごく稀にですが、このようなケースもあります。
ただし、このようなケースでも、いくつかの注意点があります。
前回のブログでお話をしたように、不動産の価値には幅があります。
ある不動産会社が、この土地建物は1200万円が妥当だという査定書を出したとしても、別の不動産会社は1500万円が妥当だという価値判断をするかもしれません。
不動産をお持ちの状態で自己破産をする場合には、自己破産の申立てにあたって不動産会社の査定書を添付する必要があります。
しかし、破産手続が開始された後に選任された破産管財人が、申立ての段階で取得した査定書よりも、高額な査定書を取得するということもあります。
このような場合、破産管財人は、自身が取得したより高額な査定書の金額でなければ売却しない、という判断をするかもしれません。
あるいは、申立人(破産者)の親族や知人が出せる金額以上の金額で買取りを希望する人が出てくるかもしれません。
破産管財人としては、できる限り高く不動産を売るように努めますので、これらのケースでは、申立人の親族や知人が不動産の買取りを希望したとしても、同人らへの売却は実現しない可能性があります。
また、別のケースとして、たとえば、複数の不動産会社の査定を取得したところ、最高額でも1000万円という評価であったのに、抵当権者である金融機関が(様々な事情により)どうしても1500万円でなければ売却に同意しない、ということもあり得ます。
さらにまた別のケースとしては、自宅不動産が既に競売にかけられてしまっているようなケース、つまり借入れに関する問題が発生してから、かなり長い期間が経過してしまっているようなケースでは、自宅不動産を競売以外の方法で売却することについて、金融機関が難色を示すこともあります。
当事務所では、会社、個人を問わず自己破産申立事件を多数扱っており、また、裁判所から破産管財人に選任され、破産事件を取り仕切ることも多くあります。
自宅不動産をお持ちの方で、自己破産の申立てを検討されている方は、当事務所に是非一度ご相談ください。

静岡を拠点に活動する弁護士の石川アトムと申します。静岡市に育ち、大学時代に祖母が交通事故に遭ったことをきっかけに、人の人生の大切な一歩を支えたい気持ちが芽生えました。東北大学法学部や京都大学法科大学院で学び、地元で弁護士として働きたい想いを胸に、2022年に独立開業し、石川アトム法律事務所を立ち上げました。事件の進行状況や今後の見通しをこまめに伝えるよう心がけ、ご相談者さまの安心につながればと思っています。趣味は英会話。