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自己破産の申立てにおいて必要となる書類~不動産をお持ちの場合
皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。
8月に入り、先日静岡市では、最高気温41.4度を記録しました。
あの日は凄まじい暑さで、エアコンを付けていても、窓際の私の席は暑さで気持ち悪くなってきそうなぐらいでした。
あの日が今夏の暑さのピークであると信じたいですが、皆様も何卒ご自愛ください。
さて、今回からまたしばらく、ブログの内容は、個人の方を対象とした自己破産申立てに関するものとなります。
今回はその第6弾、不動産に関するお話です。
不動産をお持ちの方の場合、アパートマンションなどを居住用に賃借されている方の場合と、場合を分けてお話をしていきたいと思います。
まずは不動産をお持ちの方についてです。
不動産を所有されている場合、多くの場合、その不動産は、居住用、つまり、ご自宅をお持ちだということになろうかと思います。
そして、多くの場合、ご自宅の住宅ローンは支払いが継続中で、ご自宅には金融機関の抵当権が設定されていると思われます。
このような不動産をお持ちの場合、以下のような書類をご準備いただく必要があります。
① 不動産の全部事項証明書(いわゆる「登記簿」、「不動産登記」のことです)
不動産の全部事項証明書は、法務局で取得可能です。
② 不動産の固定資産評価証明書
お持ちの不動産すべてについて取得してください。
市役所、区役所で取得が可能です。
田畑、山林などを含め、お手持ちの不動産が5つ以上あるという場合には、固定資産評価証明書とともに、市役所、区役所で「名寄帳(なよせちょう)」を取得してきてください。
③ 不動産会社による評価書、査定書
固定資産評価証明書は、一定程度、対象となる土地建物の資産価値を反映しています。
しかし、固定資産評価証明書に記載された「価値」は、市場価値とは乖離している場合があります。
また、不動産という財産自体、その価値が一義的に定まるものではなく、価値には一定の幅があります。
誰が見ても、この土地の価値は1234万5678円以外ありえない、というようには決まらないということです。
後のブログでもお話ししますが、破産をした場合、基本的に、ご自宅は売却処分をしなければなりません(そして、売却によって増えた財産は、破産手続の中で債権者へ分配していく必要があります)。
裁判所、あるいは、破産管財人としては、ご自宅がどの程度の金額で売却できるのかを予測する必要があります。
そのため、固定資産評価証明書に加え、実際の市場価格により近いと考えられる、不動産会社の評価書、あるいは査定書を提出する必要があります。
お知り合いに不動産会社にお勤めの方がいて、その人に依頼できるようであれば、その人に査定書を出してもらってください。
不動産会社にツテがない、という場合には、当職宛てご相談ください。
④ 住宅ローンの残高が分かる資料
お手持ちの不動産に抵当権が設定されている場合、当該抵当権のもととなっている負債が今いくら残っているのか分かる資料をご用意ください。
典型的には住宅ローンの月々の返済表です。
タイトルでは「住宅ローンの残高が分かる資料」と書きましたが、住宅ローン以外でも、事業の借入れのために、ご自宅を担保に入れていることがあるかもしれません。
そのような場合には、当該事業の借入れの残高がいくら残っているかが分かる資料が必要です。
山林や田畑など売却することが困難と思われる不動産をお持ちの方
ご相談者様によっては、山林や田畑など、売却が困難と思われる不動産をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
基本的には、そのようなケースでも、上記の①、②、④の資料はご用意いただく必要があります(④は担保に入っていなければご不要です)。
他方で、特に山林などでは、裁判所から、③不動産会社の評価書、査定書の提出までは強いて求められないという傾向があるように思います。
ただし、用意できた方が良いと思いますし、農地でも転用が容易と思われるものや、山林であっても途方もない大きさのものであれば、破産手続の中で売却できる可能性がありますので(相応の財産的価値もあると思いますので)、評価書、査定書の提出も必要になってくるのかな、と思います。
それほど土地の数が多いのでもなければ、ご自宅(等)の評価書を取得する際、合わせて不動産会社に山林等の査定をお願いするのがベストだと思います。
アパート、マンションなど不動産を借りていらっしゃる方
アパートやマンションなど、賃貸物件にお住まいの方は、不動産の賃貸借契約書をご持参ください。
アパートやマンションなど、賃貸物件にお住まいの方から、「破産をしたら、アパートを出て行かなければなりませんか」というご質問をいただくことがあります。
破産をしたからといって、借りているアパート、マンションから当然に出て行かなければならないということにはなりません。
ただし、破産をする際に、アパート、マンションの賃料を何か月も滞納しているという場合には、そのことを理由として出て行かなければならない、という可能性はあります。
感覚的な話で申し訳ないのですが、5か月以上賃料を滞納している場合には、大家さんからの解約が認められやすいのではないかと思っています。