離婚後の「共同親権」制度6 「共同親権」と「単独親権」の決め方 その2 

「共同親権」に関する静岡家庭裁判所との意見交換会でパネリストをしてきました

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

「共同親権」に関するブログの第6弾です。

先日、静岡家庭裁判所との間で、「共同親権」に関する意見交換会があり、静岡県弁護士会側のパネリストとして登壇して参りました。

「何とか無事乗り切った(汗)」という感じでした。

今回のブログもこれまでと同様に、離婚後の共同親権を「共同親権」あるいは「『共同親権』制度」といい、改正民法施行後の「親権者」が決定される場面についてお話ししたいと思います。

必ず単独親権となる場合~必要的単独親権事由

共同親権となるのか、単独親権となるのか、については、前回のブログでお話ししたような考慮要素によって決定されます。

しかし、改正民法上、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」には、必ず単独親権としなければならないとされています(改正民法819条7項後段)。

改正民法は、このような場合の具体例として以下の2点を挙げています。

1つ目は、「父又は母が子の心身に害悪を及ぼすと認められる場合」です。

父母のいずれかから子どもに対する虐待があったり、父母のいずれかに親権喪失事由・親権停止事由があったりするような場合が想定されています。

必ず単独親権となる2つ目の場合は、「父母の一方が他方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動を受けるおそれがある場合など、協議が調わなかった理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められる場合」です。

「暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動」の中には、身体的な暴力だけではなく、精神的、経済的、性的なDVも含まれると考えられています。

また、過去に虐待やDVがあったという事実は、今後の虐待やDVの「おそれ」を肯定させる方向で考慮される(重視される)と考えられています。

DVがある家庭では、この規定により単独親権になると考えられます。

条文上は、DVの被害者たる親を単独親権者とすべきとはされていません。

しかし、DVがあるようなケースでは、DVの加害者側の親が単独親権者となる場合は少ないと考えられる、という見解があります。

また、本項では、「協議が調わなかった理由」も考慮要素として挙げられています。

父母の一方または双方が虚言や重大な約束違反を繰り返す、他方の親の人格を否定する言動を執拗に繰り返す、濫訴的な裁判手続の申立てを繰り返すというような事情についても、共同親権が否定される事由として考慮されるようです。

必ず単独親権としなければならない事情は、上記の2つのみではなく、上記2つは、「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」の例示であると考えられています。

上記の2つ以外に、どのような場合に必ず単独親権としなければならないのか、ということについては、書籍や文献上、必ずしも明らかではなく、改正民法施行後における事例の集積を待ちたいと思います。

単独親権から「共同親権」への変更

改正民法が施行される以前には、父母が離婚した場合、そのいずれか一方が親権者になっていました。

それでは、改正民法の施行前に決定された父母の単独親権を、改正民法の施行後に、「共同親権」へ変更することを求めることは可能なのでしょうか。

結論から言うと、制度的には「共同親権」へ変更を求めることは可能です。

ただし、「共同親権」へ変更するためには、裁判所によって親権者の変更を認めてもらう必要があります。

単独親権者から非親権者へ親権者を変更する場合も、単独親権から「共同親権」へ変更する場合も、裁判所が親権者の変更を認めるのは、「子の利益のため必要があると認めるとき」です。

改正民法が施行された(法律的に「共同親権」の選択が可能となった)という事実それ自体から、従前の単独親権が当然に「共同親権」へ変更されるべきである、ということではありません。

改正民法が施行されたとしても、裁判所が当該事案について「子の利益のため必要があると認め」なければ、「共同親権」への変更は不可能です。

裁判所が「共同親権」への変更を認める場合

前回のブログでお話した親権者を決める際の考慮要素は、親権者を変更する際にも考慮されます。

親権者を変更する場面においても、父母と子の関係、父と母との関係、その他一切の事情を考慮して親権者を変更するかどうかが判断される、ということです。

今回のブログの冒頭では、親権者を指定する際に、このような事情がある場合には必ず単独親権としなければならないという事情(たとえば、父母の一方が子どもを虐待している場合など)があることをお話ししました。

親権者変更の場面においても、そのような事情がある場合には、必ず単独親権となります。

なお、単独親権から「共同親権」への変更を求める場面についてですが、法務省民事局のパンフレットでは、「別居親が本来支払うべき養育費の支払を長期間にわたって合理的な理由なく怠っていたような場合には、共同親権への変更が認められにくいと考えられます」と言われています。

養育費の支払いの有無は、親権者変更の場面において重要な考慮要素となりそうです。

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