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個人再生(小規模個人再生)とは
皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。
前回のブログで、借金の問題を解決する方法として、任意整理、個人再生、自己破産という3つの方法を挙げました。
今回は、この中の個人再生についてお話しします。
「個人再生」という手続をごく簡単に説明しますと、今ある借金すべてについて、裁判所の手続を通じて、借金の金額自体を圧縮し、数年間かけてその圧縮された金額を分割で返済していくというものです。
たとえば、500万円の借金を100万円まで圧縮し、月々1万7000円程度を5年間かけて支払っていくというイメージです。
前回お話しした任意整理との大きな違いは、借金の金額自体を大きく減らすことができる可能性が高いということです。
他方で、個人再生手続では、すべての借金、負債を平等に取り扱う(減額させる)必要があります。
ご親戚やご友人から借りたお金も、他の金融業者と同様に裁判所に申し出て、一律の圧縮を行う必要があります。
金融業者からの借金は圧縮したいけれど、ご友人からの借金は全額返したい、というようなことは、個人再生手続ではできません。
また、個人再生は、裁判所を通した手続です。
個人再生のご依頼をいただいてから、圧縮された借金の分割払いが実際に始まるまで、9か月から1年程度の期間がかかります。
任意整理が1月から1月半程度で終わることからすると、個人再生は長期的な手続だと言えます。
また、個人再生手続の申立てそのものにかかる費用は、任意整理と比べても相当高額になります(法テラスを利用したとしても25万円程度はかかります)。
個人再生を行うべき場面~住宅ローンを抱えている方
借金の問題について、任意整理、個人再生、自己破産という解決方法がある中で、個人再生を第一に検討すべきと考えられるのは、住宅ローン付きのお住まいをお持ちの方です。
自己破産をすると、基本的に、ご自宅は手放さなければならなくなります。
個人再生手続は、先ほどお話ししたように、すべての借金、負債を一律に圧縮して、圧縮した借金を分割で支払っていくものですが、住宅ローンだけは特別扱いができます。
個人再生手続で、他の借金を圧縮して分割払いとし、それと同時に、今までと同じように住宅ローンを支払い続けることで、住宅を維持することができます(このような申立てを、住宅ローン特別条項と呼びます)。
そのため、住宅ローン付きのお住まいをお持ちの方においては、個人再生手続を取るメリットは大きいと考えられます。
このほか、個人再生を行うべき場合としては、任意整理と同様に、自己破産してしまうと、就労に支障が生じてしまう場合が考えられます(警備員さんや保険の外交員さんなど)。
個人再生の場合には、手続を行っても、職業制限がないため、現在のお仕事を継続して行うことができます。
なお、インターネット上では、そのほか個人再生手続を行うべき場面として、免責不許可事由があり、自己破産することに懸念がある場合という記事を見ることがあります。
免責不許可事由があるために、個人再生を行うべきであるのかどうかについて気になる方は、お電話等にて、当事務所に直接ご相談ください。
弁護士から回答させていただきます。
債務が5000万円を超えて個人再生が使えない場面~通常の民事再生手続で住宅ローン特別条項を使うべきか?
個人再生手続を申し立てることができる要件の中に、住宅ローンを除いた借金等の総額が5000万円以下であることという要件があります。
住宅を持っているものの、負債の総額が住宅ローン以外で5000万円を超える場合、個人再生手続を使うことができません。
その場合、通常の民事再生手続を取ったうえで、住宅ローン特別条項を使うことが、理屈上は考えられます。
しかし、借金等の金額が5000万円を超える場合、民事再生手続を利用したとしても相当額の負債を、住宅ローンとは別に長期間かけて支払う必要があります。
また、通常の民事再生手続において、裁判所への申立ての際に裁判所に納めなければならない予納金の金額は極めて高額です(先日静岡地方裁判所に伺ったところ、申立人が個人であっても最低250万円が必要であるということでした)。
再生計画で定めた返済が可能であるということは、仮に破産をしたとした場合、同額の貯金を作ることができるということになります。
このようなことを前提にしますと、住宅を守るために通常の民事再生手続を申し立てるかどうかについては、相当に慎重な検討が必要と思われます。
その他個人再生手続について
当事務所のホームページには、個人再生手続の流れや、個人再生手続に関するデメリットを紹介したページもございます。
個人再生をご検討中の方は、ぜひご覧ください。