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「法定養育費」制度の新設
皆様、こんにちは。 静岡で弁護士をしております石川アトムです。
いよいよ明日令和8年4月1日より、家族法に関する改正民法が施行されます。
改正民法においては、「法定養育費」と呼ばれる制度が新設されました。
今回のブログでは、同制度についてご説明いたします。
まず、とても大事なことですが、法定養育費制度の適用があるのは、改正民法の施行後、つまり、令和8年4月1日以降に離婚をした父母間の子に限られます。
法定養育費は、養育費について取り決めをすることなく父母が離婚した場合に、離婚のときから引き続き子の監護を主として行う父母から、他方の父母に対して法務省令が定める金額(子1人あたり1月あたり2万円)を請求できることとした制度です。
請求の終期は、父母が協議により養育費の分担について定めをした日、養育費の分担についての審判が確定した日、子が成年(18歳)に達した日のいずれか早い日とされています。
法定養育費を請求できる者は「父母の一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うもの」です。
ここでいう「監護」は現実的に子を監護している者をいい、その者が親権や監護権を有しているかどうかは問題とならないとされています。
子が複数おり、子が父、母のそれぞれと生活しているという場合、父母はお互いに自身が監護する子について法定養育費を請求することができます。
他方で、子が離婚直後は母と生活していたものの、後に父と暮らすようになったという場合、父は「離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うもの」とは言えないため、母に対して法定養育費を請求することはできません(父母の協議により養育費の金額を定める必要があります)。
その一方で、母は、離婚時から子が父と暮らすようになった時点までの法定養育費(過去分)を請求することができます。
法定養育費は遡って請求することが可能です
法定養育費の支払期は、毎月末日とされています。
これまで実務上、養育費の請求権は、原則として権利者が義務者に対して請求した時点で発生するものと考えられてきました。
逆に言いますと、請求時よりも前に「発生」していた養育費を、請求時にさかのぼって請求することは認められていませんでした。
これに対して、法定養育費制度の施行後は、法定養育費の発生要件を満たせば、離婚時から請求時までは法定養育費の請求が可能となりました。
また、請求時以降の養育費は、これまでと同様に、その後に調停ないし審判等により定められた金額の養育費を請求することができます。
法定養育費を請求される側になったら?
改正民法では、法定養育費の支払義務者が、支払能力を欠くためにその支払をすることができないこと、またはその支払をすることによって生活が著しく窮迫することを証明したときは、法定養育費の全部または一部の支払いを拒むことができるとされています。
また、家庭裁判所が養育費を定める審判を行う場合、養育費の変更の審判を行う場合、法定養育費の支払義務者の支払能力を考慮して、法定養育費の支払義務の全部または一部を免除することなどが可能とされています。
なお、支払義務者が法定養育費の減免や支払猶予を求めるためには、養育費を定めることを求める(あるいは、その増減を求める)調停または審判を提起し、その中で法定養育費の減免等を主張する必要があると解されています。
養育費に関する先取特権
先取特権(「サキドリトッケン」と読みます)という制度を聞いたことがあるという方は少ないと思います。
これまでは、相手方が任意に養育費を支払わない場合、調停または審判を経た後、それらを基礎として預金口座や給与債権などを差し押さえるという手続を取る必要がありました。
つまり、養育費の未払いに関して差押えをしようとした場合、強制執行認諾文言付きの公正証書によって養育費の取り決めをした場合でなければ、差押えに先立って、まず調停を成立させるか、確定した審判を得る必要がありました。
しかし、それらの手続きには少なくとも数か月を要することが通常でした。
このように、従前、養育費の支払権利者が相手方の財産を差し押さえようとしたときには、相当な手間と期間が必要となっていたのですが、「先取特権」は、このような調停、審判手続を経ることなく、直ちに相手方の資産を差し押さえることができるという権利です。
改正民法の施行後は、法定養育費には全額先取特権が付されています。
また、当事者間で作成した合意書や念書などの内容のうち養育費に関する部分は、先取特権の対象となります。
先取特権を行使して、差押え等ができる金額は、子1人につき1月あたり8万円とされています。
このように、改正民法の施行後は、養育費の請求に関して先取特権が利用できることにより、従来よりは、養育費を現実的に回収するということが容易になるものと思われます。
静岡市を拠点に活動する弁護士。実務に入り16年目。
中心的な取扱分野は、会社個人を問わず自己破産申立事件。
裁判所の選任により年に数件の破産管財人も担当している。
また、会社の顧問弁護士として会社からの相談を受けることも多い(静岡県外(首都圏)にも複数の顧問先会社がある)。
趣味は旅行、英会話、競馬。
