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1 会社(法人)の破産を考えるときの注意点
(1)代表者個人の自己破産
事業の再生を図ったものの、残念ながら会社(法人)が破産をするという場合、会社の代表者や経営者(社長)が、会社の借入れについて連帯保証をしており、会社と同時に、代表者個人についても自己破産手続を申し立てることが多いと思われます。
代表者個人が自己破産をするということになれば、代表者個人が有している不動産や預貯金も破産に伴って手放さなければならなくなる可能性があります。
(2)代表者の親戚への影響
会社の負債については、会社の代表者以外に、代表者の親戚にも連帯保証人になってもらっているというケースがあります。
会社や会社の代表者が破産をするということになれば、会社の負債を連帯保証している代表者の親戚にも多大な影響が及びます。
このような場合、専門家である弁護士から、代表者の親戚に対して、直接今後の手続や予測される見通しについて話をすることが有用だと思われます。
会社の破産について検討している場合、可能な限り早い段階から弁護士に相談し、予め代表者の親戚等へ説明をしたうえで破産手続の準備をすることが有益です。
(3)従業員への影響~特に給与の未払いが存在する場合
会社が破産する場合、従業員は解雇せざるを得ません。
会社の代表者、経営者からすれば、従業員に対しては、可能な限り給与や退職金を支払ったうえで会社を辞めてもらいたいと考えるのが心情ではないかと思います。
しかし、破産手続においては、不公平な弁済をすることは禁止されており、従業員への給与の支払いが後の破産手続において問題とされないよう注意する必要があります。
他方で、従業員に対して給与の未払いが残ってしまった場合でも、速やかに破産手続を申し立てることにより、「未払賃金立替払制度」を利用して、未払分全額ではありませんが、従業員は給与の一部に相当する金額を得ることができます。
従業員を解雇してから、破産を申し立てるまでに6か月を超える期間がかかってしまうと、未払賃金立替払制度が利用できなくなる恐れがあります。
そのため、従業員を解雇した後には速やかに破産申立てができるよう準備を進める必要があります。
(4)資金繰りの関係~Xデーはいつか
会社の破産を考える場合、資金繰りがいつショートするのかという観点は非常に重要です。
資金繰りがショートすることにより、債権者が店舗に押しかけてくるなどの混乱が生じる可能性があります。そのような状態に陥った際の従業員への影響も計り知れません。
そのため、会社の破産について検討している場合、可能な限り早い段階から弁護士に相談し、いつの時点で資金繰りがショートしそうであるかを検討し、資金繰りがショートする以前に、破産申立ての準備をしておくことが有益です。
(5)破産申立てに協力してもらう従業員の範囲
会社の破産を考える場合、特に経理を担当していた従業員や会社の事情に精通している幹部従業員に破産手続に協力してもらうことが不可欠だと思われます。
会社の規模にもよりますが、どの範囲の従業員に会社が破産をする予定であることを打ち明け、手続に協力してもらうか、ということを検討する必要があります。
無用な混乱を招かないように秘密裏に破産手続の準備を進める必要性と、どの範囲の従業員に協力をしてもらうかということのバランスが重要です。
2 法人(会社)が破産する場合の流れ
(1)初回のご相談
初回のご相談では、現在会社が抱えている負債の内容、現在定まっている負債の弁済期とその金額、会社が有している弁済原資、今後の事業の見通しについて伺い、債務を整理する手段を決定していきます。
メインバンクを始めとする債権者とのリスケジューリングにより会社を維持していくか、法人の破産手続を取るか、民事再生手続を取るかということの方向性を検討します。
(2)破産手続を申し立てるまでに行わなければならないこと
法人が破産手続を申し立てるに当たっては、様々なことを検討しなければなりません。
事業を継続している会社の場合にはいつ事業を停止するか、従業員にはいつの時点で破産手続を取ることを説明し、いつ解雇手続を取るか、法人が借りている事務所、倉庫、駐車場がある場合、それらをいつ明け渡すのか、それらの原状回復を行うだけの現金、預貯金は存在しているのかという点などです。
たとえば、会社の倉庫に大量の在庫があり、在庫を処分しなければ倉庫の明渡しができないというような場合、在庫処分にかかる時間、破産申立にかかる時間、在庫処分により得られると考えられる金額または在庫処分のためにかかると考えられる金額を考慮します。
これらを考慮した結果、破産手続の申立て前に在庫を処分して倉庫を明け渡す場合もあれば、破産手続が始まった後に、破産管財人という破産手続を取り仕切る弁護士に処分をお願いすることを選択する場合もあります。どちらの方法を選択するかは、事案によって異なります。
破産手続開始前に在庫を処分し、倉庫の明渡しをする場合、破産手続が始まった後に、在庫処分が不当に廉価で行われたという指摘を受けないよう、弁護士に相談をしながら注意して進める必要があります。
(3)裁判所へ提出する資料のご提出
破産手続を申し立てるに当たっては、裁判所に対して様々な書類を提出する必要があります。
会社において収集していただく書類もあれば、弁護士において用意する書類もあります。
代表者個人も自己破産手続を取るという場合、会社の破産申立と並行して、代表者個人の自己破産手続についても準備する必要があります。
(4)裁判所への破産手続申立後
裁判所に対して、破産手続を申し立てた後、裁判所において、提出書類に不備や不足が無いかどうかを確認します。
その後、破産手続の開始決定が下され、「破産管財人」という、破産手続を取り仕切る弁護士(破産申立てを依頼した弁護士とは別の弁護士)が裁判所によって選任されます。
破産管財人は、申立人が裁判所に提出した記録を検討し、破産手続を進めていきます。
破産管財人は、破産手続の開始決定時に在庫の処分が未了であれば在庫を処分したり、会社が借りていた事務所の明渡しが未了であれば事務所の明渡しを行ったりします。
従業員の給与に未払いがあり、未払賃金立替制度の利用が可能であれば、破産管財人は同制度を利用して、未払い賃金の一部が従業員に支払われるよう手続を取ります。
破産管財人がこれらの手続をスムーズに行うことができれば、その分破産手続も早期に終了し、また、賃金が未払いになっている従業員には、より早期に支払いがされることになります。
このような観点からも、法人破産の申立てを、破産手続に精通した弁護士に依頼することは重要であると言えます。