Archive for the ‘コラム 司法修習’ Category
「司法修習」のお話~その2
弁護士なるために必要な「司法修習」とは~前回のおさらい
前回のブログでは、弁護士になるために必要な「司法修習」の概略についてお話ししました。
「司法修習」とは、非常にざっくり言うと、司法試験に合格した後、弁護士、裁判官、検察官になろうとする人が受けなければいけない研修のことです。
司法修習では、「集合修習」と呼ばれる研修と、「実務修習」と呼ばれる研修の両方を受ける必要があります。
「実務修習」とは、修習生が日本全国のどこかの都道府県に配属され、その都道府県で約9か月間、弁護士、裁判官、検察官のもとで、実際の裁判や事件に触れながら研鑽を積むというものです。
静岡県でも、毎年20数名の修習生を受け入れています。
それでは、実務修習の場所は、どのように決まるのでしょうか。
「実務修習」の研修場所はどのようにして決められるのか?
司法試験に合格した後、司法修習を受けることを表明した司法試験合格者に対しては、どの都道府県で修習を受けたいですか、という希望が聴取されます。
ただし、どの都道府県でも、好きなだけ書けるというわけではありません。
私が司法試験に合格した14年前の古い情報で申し訳ないのですが、当時、全国の都道府県は3つのグループに分けられていました。
不正確な点がありますが、ざっくり言えば、大都市圏、地方中核都市、その他という3つのグループです。
修習を受けようとする人は、実務修習を受けたい都道府県を7つくらいまで、優先順位を付けて、希望を出すことができました。
ただし、大都市圏と地方中核都市は、それぞれ2つまでしか書けませんでした。
つまり、1番東京、2番横浜、3番京都、4番大阪などという希望を出すことはできません。
これらの都市は大都市圏グループでしたので、4つの都市のうち、2つまでしか記載できませんでした。
私が修習生だったころには、四国を書くと、希望順位に関わらず、四国になるという、都市伝説がありました。
私の6年後輩の弁護士が、かなり下の順位で四国の某県を記載したそうですが、彼はその修習地に配属されました。
彼によると、四国の某県での修習はとても楽しかったそうで、私も私的な旅行で四国に行ったことがありますが、とても楽しかったです。
2枚目の写真は、水曜どうでしょうファンなら一度は行きたい、山田屋さんです。
第一希望はもちろん静岡
私の第1希望は、もちろん静岡でした。
静岡での就職を希望していた都合上、第2希望は、静岡に行きやすい横浜を書いたような気がします。
ちなみに、私が修習生だったころ、静岡は大都市圏グループでした。
おそらく首都圏への就職活動に有利な地であり、そのため修習生から人気があったからでしょう。
先ほど、「不正確な点がありますが、」と申し上げたのは、大都市ではないであろう静岡が、グループ分けにおいて、大都市圏グループに組み込まれていたというようなことがあったからです。
私は、見事第1希望で静岡に配属されることになりましたが、修習地は、必ずしも本人の希望が最優先に考慮されるものではないようです。
静岡を第1希望にしたのに静岡に配属されなかった修習生がいる一方、静岡は第3希望であったのに静岡に配属されたという修習生もいました。
実務修習地毎の修習生のレベルの均一化を図る目的などから、そのような配属がされているのだと思われます。
「導入修習」や「集合修習」と、実務修習地との関係
私が修習生だった約14年前、「導入修習」はありませんでした。
司法修習は、いきなり全国各地に配属される「実務修習」から始まり、実務修習が終わると、司法研修所に集まって「集合修習」を受けるというシステムでした。
集合修習では、クラスに割り振られて、各クラスでまとまって授業を受けます。
私が司法試験に合格した2009年当時、司法試験合格者は2000人を超えていました。
当時、集合修習のクラスは、1クラス70人程度で、25クラス程度あったという記憶です。
このクラス分けは、実務修習地を基準に決定されていました。
東京や大阪などの大都市圏は、一つの実務修習地で何クラスもあったのだと思います。
他方で、人数が少ない地方都市の実務修習地では、いくつかの実務修習地が合わさって、一つのクラスとなっていました。
私が配属されていたクラスは、実務修習地が、静岡、甲府、那覇という構成でした。
静岡と甲府は地理的に近いので、この2つが1つのクラスにまとめられるのは理解できるのですが、そこに那覇が入るという何とも絶妙な組み合わせでした。
那覇修習の修習生
那覇に配属されると、地理的な条件から、他の都道府県で就職活動を行うことには大きな困難を伴うことが予想されます。
那覇を希望する修習生は、このことを承知で那覇を希望するわけですが、逆に言うと、既に就職先が決まっている修習生には、就職活動上の地理的ハンディキャップは何の問題にもなりません。
おそらく現在もそうだと思いますが、那覇を希望する修習生は、既に就職先を確保している修習生がほとんどでしょう。
私の代の那覇の修習生は、非常にはっちゃけている人が多く、大人しい静岡、甲府の修習生とは、雰囲気が違いました。
この点で、静岡、甲府に那覇が加わるというクラス分けは、まさに絶妙だったのです。
先にお話ししたように、私が修習生だったときには、いきなり全国各地の「実務修習」から始まっていたので、相互に「遠征」でもしない限り、他の修習地の同じクラスの人と会うのは、司法修習の最終盤、「集合修習」が初めてということになっていました。
しかし、静岡、甲府、那覇というクラスは、和気あいあい、とても楽しいクラスで、非常に仲が良かったという記憶です。
同じクラスの修習生だった友だちと、今年熱海で再会できるのがとても待ち遠しいです。
「司法修習」のお話~その1
弁護士になるためには~「司法修習」って聞いたことありますか?
皆さんこんにちは。静岡で弁護士をしている石川アトムです。
突然ですが、弁護士になるためにはどうしたら良いでしょうか。
多くの方が、司法試験に合格すること!!とお答えになると思います。
それでは、司法試験に合格すれば、すぐに弁護士として働くことができるのでしょうか。
答えは、Noです。
司法試験に合格した後、弁護士、裁判官、検察官になりたい人は、「司法修習」という研修を受けなければなりません。
司法試験合格者が司法修習を終え、司法修習の卒業試験に合格すれば、晴れて、弁護士、裁判官、検察官として働くことができるようになります。
司法修習は、コロナ禍のイレギュラーな年を除けば、基本的に毎年、決まった時期に行われています。
弁護士業界では(おそらく裁判官も検察官も同様だと思いますが)、「修習新63期の石川です」や「修習70期の○○です」などという自己紹介をすることがよくあります。
「修習新63期の~」というのは、司法修習を終了した年を基準として、「何期の卒業生です」というようなニュアンスです。
私は、修習新63期です。
最近弁護士になられた方から「修習75期の○○です」などと自己紹介されると、「自分もいつの間にか年を食ったもんだ」という気になります(笑)。
修習終了後10年目の会in熱海
今回のブログでは、一般の方には、あまり知られていない司法修習のことを少しだけご紹介します。
と言いますのも、今年は、修習新63期の司法修習終了後10年の会が開かれるからです。
具体的に何をするのかは全く知らないのですが、司法修習終了後10年の会は、該当する年の修習生の間で毎年行われている恒例の行事のようです。
司法修習を終了して10年、つまり、弁護士、裁判官、検察官といった実務に就いて10年の節目に、熱海で同級会をやるというものです。
私が実務に就いて10年の節目の年には、コロナの影響で、この同窓会が中止となりました。
てっきりもうやらないものかと思っていたのですが、実務について13年目の今年に開催されることになりました。
今は別の都道府県で働いている、当時一緒に司法修習を受けた友だちや、司法修習で大変お世話になった教官たち(大先輩の弁護士、裁判官、検察官ということになります)に会えるのをとても楽しみにしています。
「集合修習」とは
さて、司法修習の期間は、概ね1年1か月です。
その中で、司法修習生は、「導入修習」や「集合修習」と呼ばれる研修と、「実務修習」と呼ばれる研修の全てを受ける必要があります。
「導入修習」と「集合修習」は、司法試験の合格者が司法研修所という施設に集まって、座学で研修を受けるものです。
司法修習のスタート時に受けるものが「導入修習」、司法修習の終盤に受けるものが「集合修習」というイメージで良いと思います。
ただし、現在では、司法試験の合格者が大変多くなっています。
2022年の司法試験の合格者数は、約1400人でした。
そのため、導入修習や、集合修習については、1400人の修習生全てが同時に集まるのではなく、修習生を2グループに分け、時期をずらしながら修習を行っているようです。
「実務修習」とは
「実務修習」とは、修習生が日本全国のどこかの都道府県に配属され、その都道府県で約8か月間、弁護士、裁判官、検察官のもとで、実際の裁判や事件を通して勉強をしていくというものです。
たとえば、弁護修習の場合、弁護士と一緒に裁判所に出廷したり、依頼者と打合せをして裁判所に提出する書面を作成したり、警察署に留置されている被疑者と面会したりします。
裁判修習では、裁判官と一緒に法廷に臨んだり、今後訴訟をどのように進行させるか裁判官と議論をしたり、判決を下すとすればどういった内容の判決を出すかということについて判決書の案を作成したりします。
検察修習では、検察官と一緒に、被疑者に対する取調べを行ったり、ある事件について、当該被疑者に対してどのような処分が適当と考えるかを議論したりします。
検察修習の最後の方では、他の司法修習生とペアを組み、検察官は同じ部屋にいるものの、基本的に口を出さず、修習生だけで被疑者を取調べ、調書(被疑者が話した内容をパソコンで打った書類)を作成することもあるかもしれません。
ただし、このようにお話し実務修習の内容は、もう13年前になりますが、私が経験した静岡での実務修習の内容に基づくものです。
大都市圏での実務修習の内容は、上記のものとは異なっているかもしれません。
と言いますのも、静岡で受け入れている修習生は、1年あたり25人程度なのですが、先にお話ししたように、司法試験の合格者は1年あたり1400人を超えています。
具体的な数字は分からないのですが、東京や大阪といった大都市では、1年あたり何百人という修習生を受け入れているものと思われます。
そういった大都市の場合、何百人という修習生に見せられるだけの修習に適した内容の事件が無かったり、「修習生一人当たり~」という見地からしたときの指導側のマンパワーが、地方都市には及ばなかったりするようです。
そのため、地方都市では数件行うことができた検察修習での取調べについても、大都市では全く経験できなかったという修習生もいたという話を聞いたことがあります。
就職活動に関しては、大都市圏での修習が地理的に有利であると思いますが、修習生として実際に経験できる修習の内容という観点からすると、地方都市には大きな魅力があるのではないかと思います。
私は静岡で修習をさせていただき、大変良かったと思っていますし、おそらくこれから司法修習を受けられる司法試験合格者にとっても、静岡での司法修習は大変有意義なものになると思います。
司法試験合格者で、本ブログをお読みの方がもしいらっしゃれば、静岡での司法修習をお勧めいたします。
Newer Entries »