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Microsoft Teamsと弁護士
Microsoft Teamsとは何ぞや
2023年2月9日のYahoo!ニュースに、MicrosoftがMicrosoft Teamsの無料版を廃止するという記事が掲載されていました。
Microsoft Teamsとは、マイクロソフト社が提供しているグループウェアのことです。
Microsoft Teamsを使うことによって、メッセージを送受信したり、ファイルを共有したり、ビデオ通話をしたりすることができます。
ビデオ通話については、多くの方にとって、Zoomの方がMicrosoft Teamsよりも馴染みがあるかもしれません。
他方で、弁護士においては、ZoomよりもMicrosoft Teamsの方をよく使う、あるいは、Zoomと同程度に使っているという人が多いのではないかと思います。
私も、Zoomよりも、Microsoft Teamsの方を頻繁に使用しています。
それは、Microsoft Teamsを使用して、裁判所とWeb会議による裁判を行うからです。
Web会議による裁判手続とは?
Web会議による裁判手続は、民事訴訟法に規定された「書面による準備手続」という手続により行われています。
ごく簡単に言うと、書面による準備手続では、当該訴訟の中でどのようなことが争いになっているのかを確認し、その争点について当事者が具体的にはどのような主張をしているのか、争点に関する事実を証明する証拠としてどのようなものがあるのか、今後どのように裁判を進めていくかといった点について、協議をしています。
このような協議を、ビデオ通話を通じて行うものがWeb会議であるとイメージしていただければ良いかと思います。
Microsoft Teamsを使用したWeb会議による裁判は、令和2年2月から東京地方裁判所等の一部の裁判所で運用が開始されました。
静岡市にある静岡地方裁判所(本庁)では、令和2年12月からWeb会議の利用が始まっています。
その後、令和4年7月4日に、全ての地方裁判所の本庁・支部において、Web会議を行うことができるようになりました。
Web会議のメリット
Web会議が開始される以前も、電話により、Web会議と同様の協議をするという方法が利用されていました(現在でも利用されることがあります)。
Web会議の場合は、電話と異なり、お互いの顔や表情が分かります。
そのため、Web会議の方が、今誰が発言しているのか、こちらの発言について裁判官や相手方弁護士に十分に伝わっているかが分かりやすいというメリットがあります。
相手方弁護士の顔も知らない遠方の裁判所の事件では尚更です。
また、Web会議では画面の共有ができるので、争点を一覧表化したファイルを画面上で見ながら議論をすることができ、この点は、Web会議の大きなメリットと言えます。
裁判所によるWeb会議の積極的利用
裁判所によるWeb会議が開始されたのは、令和2年2月のことでした。
奇しくもこの時期は、日本での新型コロナウイルス感染者が確認され始めた時期でした。
その後、新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増加し、令和2年4月に緊急事態宣言が発令されました。
私の主観ですが、コロナ禍以前の裁判所は、当事者が裁判所に出頭することを重視していたように思います。
事件が静岡地方裁判所に係属しており、代理人弁護士が静岡市に事務所を有する弁護士であれば、裁判所に出頭するのが当たり前で、このようなケースでは、以前から利用可能であった電話会議システムは、何かしらの事情が無ければ使えない、という雰囲気であったように感じます。
Web会議の運用開始時期と新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大の時期が重なっているので、もともとWeb会議を広めようという強い意向があったのかもしれませんし、Web会議では、お互いの顔が見えたり、画面上で書面を見ながら会議ができたりするなど、電話会議システムよりも、より対面式の裁判手続に近くなっているということもあるのかもしれませんが、コロナ禍での裁判所は、Web会議の利用にかなり積極的です。
訴訟を公開の法廷で当事者出頭のうえ進めていくか、Web会議システム等により進めていくかということは、それぞれの裁判官の訴訟指揮によるところですので、どの程度Web会議を利用するかも裁判官によって差があるとは思います。
そして、これは私の個人的な経験に基づく感覚の話ですが、少なくとも現在静岡地方裁判所に所属されている裁判官は、基本的には、争点を整理する手続ではWeb会議を利用し、当事者が裁判所に出頭することを希望している場合や、Web会議の対応ができない場合には、裁判所に出頭する形での審理を行うという運用をされている裁判官が多いように思われます。
なお、日本では、裁判のIT化が他国に比べて遅れており、裁判のIT化を推進する一貫として、Web会議システムが導入されたようです。
先に述べたように、私の経験、主観ですが、現在の裁判所は、Web会議システムの利用に非常に積極的で、Web会議システムが利用できる場合には、原則Web会議を利用するというスタンスであるように思います。
ところが、裁判のIT化先進国であるアメリカや韓国では、Web会議に相当する手続が利用可能な場合でも、ほとんどの訴訟で、弁護士が裁判所に出頭し、対面して議論しているという報告があるようで(ただしコロナ禍前の報告です)、大変興味深い報告です。
Web会議システムによる裁判も運用が始まったばかりですが、10年先の裁判手続は、一体どのようになっているのでしょうか。
今後の裁判のIT化
昨年5月には、訴状などの書類をオンラインで提出することを可能とする法改正があり、2025年度までに、段階的に、さらなる裁判のIT化が進められるようです。
また、昨年5月の法改正では、弁護士においては、オンラインで書面を提出することが義務化されることになりました。
今までは、訴状等についてオンラインで提出することは認められていなかったため、いきなりオンラインでの提出を義務化するというのは極端な感じもしますが、新しい裁判手続にもしっかりと対応していきたいと思います。