Archive for the ‘弁護士石川が読んだ本’ Category

2024年弁護士石川が読んだ本~その2

2024-11-29

夢枕漠さんの「陰陽師」シリーズ

みなさん、こんにちは。弁護士の石川です。

2024年も残り1月余りとなりました。

弁護士石川が2024年に読んだ本のご紹介、第2弾です。

歴史系の本として、最後のご紹介は、夢枕獏さんの「陰陽師」シリーズです。

クールな安倍晴明と、実直な源博雅のテンポの良い掛け合いが心地よい作品です。

こちらの本も、私が初めて読んだのは、高校生のときです。

私が高校生だったころ、安倍晴明を野村萬斎さん、源博雅を伊藤英明さんが演じた映画が公開されました。

そちらももちろん見に行きましたし、岡野玲子さんが描かれた漫画も読んでいました。

また、詳細は書きませんが、「陰陽師」は、私のスーパー黒歴史に深く関わる作品でもあります。

今年の夏ころになって、ふらっともう一度読んでみたいなぁと思い、フリマアプリで、全巻セットを買いました。

夢枕獏さん、中古の購入で申し訳ありません。

約25年ぶりに読み直したのですが、やはり面白いです。

1冊目の冒頭で、平安貴族が「あなや!」と叫ぶシーンが出てくるのですが、高校時代の古文の授業が懐かしく思い起こされました。

10月中、1週間に1冊ほどのペースで読み進めていました。

25年ぶりに読み直して、私が新たに気が付いたことは、「濡縁」(ぬれえん)です。

「陰陽師」シリーズでは、晴明と博政が、清明宅の濡縁で、庭を眺めながら酒を酌み交わすシーンが多々現れます。

「陰陽師」シリーズを最後に読んだのは、高校生のときでしたが、私の記憶と心の中には、きっとそのイメージへの憧れが強く残っていたのでしょう。

うちにウッドデッキが作られ、私が、夜、庭を眺めて酒を飲みたくなるのは、間違いなく「陰陽師」の影響でしょう。

「陰陽師」を読み始めた頃は、夜外で酒を飲むことができたのですが、さすがに最近は、寒くて夜外で酒を飲むことは難しくなってきました。

春は春で花粉が大変辛いのですが、早く暖かい季節にならないかと思っています。

「百舌」シリーズ

「陰陽師」シリーズを4冊一気に読んだあと、ふと書棚にある本に目が留まりました。

逢坂剛さんの「百舌の叫ぶ夜」です。

こちらの本は、10年前にTBSとWOWOWの共同制作でドラマ化された作品です。

ドラマが放送される前、TBSオールスター感謝祭で、香川照之さんが、「百舌です!」と連呼していた場面が印象的でしたが、とにかくドラマがめちゃくちゃ面白かったのです。

出演者の中でも、私は、長谷川博己さんの東和夫がツボでした。

当時、長谷川さんのことはあまり存じ上げなかったのですが、「チャオ~、倉木!」などと言って、ヘリコプターから降りてくる(去って行く?私の記憶に基づくものですので、間違ってたら申し訳ありません)シーンが非常に印象的で、「なにこの人、めちゃくちゃかっこいい!」と、ドハマリしたのでした。

さて、我が家の書棚に置かれていた「百舌の叫ぶ夜」は、実は購入後3年程度経過した本でした。

購入直後に数ページ読んだのですが、そのときは何か興が乗らず読むのを中断し、その後様々な本を買い込んだこともあってかなり寝かせてしまっていました(そういえば、昨年の今頃、年末に読むと宣言していた加賀恭一郎シリーズの最新作も結局まだ読んでいません・・・)。

このたび、何年かぶりに手に取って読み始めたのですが、まぁ何と面白いこと!

でも、何だろう、「あれ、この人物って死ななかったっけ?」みたいな、脳が混乱することが何回かありました。

「酒飲みながら読んでるからボケてたのかな」と思い、読み直すのですが、どう考えてもその人亡くなってる人なんですよね。

そういう混乱はありましたが、最後にはそういうことかと得心いたしました。

とても面白い本でした。

早速続編を購入。

こちらは、次項の「スカイ・クロラ」シリーズを読破した後、寝かせずに読み始めています。

「スカイ・クロラ」シリーズ

こちらは、キルドレ(killerとchildrenの合成語の趣旨と思われます)と呼ばれる、成長しない、戦争以外では決して死なない子どもを主人公としたお話です。

私がロースクールに通っていたころ、つまり17年ほど前に映画化もされた小説です。

私が当時この小説を読み始めたのは、いわゆるジャケ買いに近いもので、映画のポスターか何かで、主人公である草薙水素(くさなぎ すいと)を見たことがきっかけだったと思います。

草薙水素は、令和で言うところの地雷系とでも言うのでしょうか。

見た目はかわいらしいのですが、心に深い闇を持っています。

百舌の続編を購入しておきながら、記憶の彼方にあった「スカイ・クロラ」を引っ張りだし、またもや全6冊(中古)をネットで購入しました。

装丁が美しい本です。

11月は本を読むための時間がたくさん確保できたという事情もあるのですが、1か月のうちに全6冊を読破しました。

大変面白かったのですが、雰囲気は全体的に暗いですかね(いや、しかし、最後はハッピーエンドなのか・・・?)。

主人公が地雷系ですので。

ただ、私は好きです。

また、1回通読しただけでは、うまく物語がつながりませんでした(それでも面白かったのですが)。

1通り読んだうえで、もう一度最初から通読したら、なるほどそれはそういう関係だったのかと、作品がより楽しめるのではないかと思っています。

基本的に長編シリーズであるのに、最後の短編集で結末的なところが分かるというパターンの本は初めて読みました。

時間があれば、また読み直してみたいです。

今年の秋は、読書の秋でした。

10月中旬から11月末までの間に、「陰陽師」シリーズ、「スカイ・クロラ」シリーズ、「百舌」シリーズで、実に11冊も本を読みました。

これだけ読書の時間が取れるというのは、本当に幸せなことです。

逆に、10月中旬まではめちゃくちゃ忙しかったのですが、弁護士として、忙しいというのも、また有り難いことです。

2024年弁護士石川が読んだ本~その1

2024-11-20

司馬遼太郎さんの「城塞」

みなさん、こんにちは。弁護士の石川です。

年末が近づいてきましたので、今年も、私が読んだ本の中で、オススメ作品を紹介したいと思います。

もともと私は、歴史系の本が好きなのですが、今年の10月中盤までは、歴史物の本を多く読んでいました。

まずは、司馬遼太郎さんの「城塞」。

この本は、関ヶ原の合戦以降大阪夏の陣までの歴史について書かれた本です。

関ヶ原の合戦後、小幡勘兵衛という後の軍学の祖が、徳川方の間者として大阪場内へ侵入し、同人の視点を中心に、大阪夏の陣に至るまでの徳川と豊臣の攻防(?・外交という意味では豊臣が一方的にやられているように見えますが・・・)が描かれています。

今年、仕事で大阪に行った際、大阪でぽっかりと時間が空いてしまったことがあり、たまたま近くに司馬遼太郎記念館があるということで、同記念館を訪ねてみました。

記念館はとても素敵で、司馬遼太郎さんの作品を一堂に展示した書棚は圧巻でした。

その記念館のシアターで上映されていた映像に出てきたのが、こちらの「城塞」です。

その場で全三巻を購入しました。

司馬遼太郎記念館で本を購入すると、記念館のカバーを付けてくれます。

そして、どうして君はそうなるの!?、そんなうまく行くわけないでしょ!?という大野治長らを始めとする豊臣方の面々。

喜劇ならば良いのでしょうが、命と家の存亡がかかった時期にこの感覚ではまるでダメでしょうな、という方々でした。

そこがまた真田幸村、後藤又兵衛を引き立てるのですが。

かなりの長編小説ですが、登場人物それぞれキャラが立っており、すいすいと読めてしまいます。

とても面白い本でした。

また、こちらの本は、マレーシアにも持って行った本です(マレーシア旅行のブログはこちらからご覧ください)。

ルーフトップバーでお酒を飲みながら「城塞」を読んでたところ、店員さんに、「あなたは本が好きなんですね~」と言われました。

そういう思い出のある本でもあります。

これまで司馬遼太郎さんの作品はそれほど読んだことがありませんでした。

「城塞」以外に読んだことがある司馬遼太郎さんの作品は、「燃えよ剣」と「最後の将軍」くらいです。

いつもお世話になっている先輩弁護士からは、「峠」をオススメいただきました。

「燃えよ剣」と「最後の将軍」はいずれも幕末ものですが、「峠」も幕末を舞台とした作品のようです。

今度読んでみたいと思います。

陳舜臣さんの「小説十八史略」

続いても歴史物です。

「小説十八史略」は、中国の歴史について書かれた本で、文庫本で全6巻あります。

堯舜の伝説時代から始まり、元(モンゴル帝国)が南宋を滅ぼすところまで物語は続きます。

私は既にこの本を5、6回読んでいますが、1巻あたり500ページを超える全6巻の超大作なので、一旦読み始めても、読んだり休んだりを繰り返して、2、3年かけて全6巻を読み切るという感じで読んでいます。

私がこの本を初めて読んだのは、高校生のときでした。

高校3年生のとき、私は、項羽と劉邦が登場する鴻門之会(こうもんのかい)の話を読んでいました。

すると、その直後に行われたある全国模試の「漢文」科目で、鴻門之会が小説十八史略とほぼ同じ形で出てきたのです。

この試験では、本文をほとんど読まず、問題文だけを読んで問題が解けてしまったという(たとえば、「本文の『・・・』というのは、次の選択肢のうちどの意味か」といった問題など)、非常にラッキーなことがありました。

台湾で偶然発見した陳舜臣さんの記念コーナー

私が、弁護士になって5年ほどしたころ、当時、私は、静岡法律事務所という法律事務所に所属していました。

そのころ、同事務所で創立30周年を記念した台湾旅行が開催されました。

同旅行は、台北市を中心としたものでしたが、旅程の中に、「淡水」という地域が含まれていました。

淡水は、台北市の北東にある港町でして、当時、私は、同地域のことを全く知りませんでした。

旅程では、淡水では自由行動で、散策して昼ご飯を食べるというものでしたが、山の方をぶらぶら歩いていたところ、偶然にもある記念館の一画に陳舜臣さんのコーナーがあり、とても驚きました。

しかも、この台湾旅行に携行していた本は、なんと陳舜臣さんの「阿片戦争」でした!

写真に写っているスターバックスでの”苦い経験”については、いずれまたご紹介しましょう。

陳舜臣さんの作品は、「小説十八史略」や「阿片戦争」以外にも、「中国の歴史~近現代編」など面白い作品がたくさんあります。

中国史に興味をお持ちの方にはオススメの作家さんです。

浅田次郎さんの「蒼穹の昴」シリーズで、清朝に興味を持ちましたので、今後、陳舜臣さんの作品では、「太平天国」を読んでみたいなぁと思っています。

2023年 弁護士石川が今年読んだ本の話2

2023-12-10

隆慶一郎さんの「一夢庵風流記」

皆さん、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

2023年もいよいよ残り20日余りとなりました。

私自身も、非常に重たい書類を何とか締め切りまでに書き上げ、今年の仕事の峠は越えたかなという感覚でおります(石川アトム法律事務所の年末年始のお休みについては、こちらの記事をご覧ください)。

さて今回は、弁護士石川が2023年に読んだ本の第2弾です。

早速ですが、私が今年読んだ本の中で、2番目に面白かった本は、こちらです。

隆慶一郎さんの「一夢庵風流記」です。

タイトルだけをぱっと見ると、一体どこで区切って読めばいいのだろうと思われるかもしれません。

「一夢庵風流記」は、戦国時代末期に存在した前田慶次(あるいは前田慶次郎)という男性の人生を描いた歴史長編小説です。

男性には、「花の慶次」の原作です、とご紹介差し上げるのが最も分かりやすいでしょう。

インターネットを検索してみたところ、どうやら「花の慶次」には、「花の慶次」単体の公式サイトがあるようでして、そのリンクを貼らせていただきます。

花の慶次公式サイト (hananokeiji.jp)

加賀百万石で有名な前田利家は、前田慶次の義理の叔父という関係にあたります。

前田慶次のやることなすこと、とんちが効いた天晴れな所業に胸がすーっとします。

まさに、痛快な小説です。

元々、この本の作者である隆慶一郎さんの「影武者徳川家康」を読んだことがあり、隆慶一郎さんの本で、面白そうなものはないかなと思っていたところ、「一夢庵風流記」という本があることを知りました。

歴史ものが好きで、痛快な小説をお読みになりたい方には、是非おすすめの一冊です。

隆慶一郎さんの「影武者徳川家康」

「影武者徳川家康」は、関ヶ原の合戦で、家康は死んでおり、以後の家康は、家康の影武者あった世良田二郎三郎が家康に成り代わっているという物語です。

関ヶ原前には、「ただの影武者」に過ぎなかった世良田二郎三郎が、家康の子である秀忠や、一部の徳川家重臣に、家康の死を伝えつつ、対外的には自身が家康であるとして振る舞い、用済みとなった自身を亡き者にしようとする秀忠とどのように対峙していくかというストーリーです。

文庫版は、上中下3巻で1800ページを超える大作ですが、「一夢庵風流記」と同様に、さらっとした口当たりの本で、サクサク読めてしまいます。

「影武者徳川家康」は、同名のテレビドラマを見たのがきっかけで、中学のころに読みました。

それから24年経って、昨年何となくもう一度読んでみたいと思い、1800ページを一気読みしました。

こちらも是非お薦めしたい一冊(三冊)です。

東野圭吾さんの「ラプラスの魔女」

言わずと知れた東野圭吾さんですが、今年私が読んだのは、「ラプラスの魔女」とその前日譚にあたる「魔力の胎動」です。

これらの2冊は、羽原円華という少女が主人公となっている小説です。

羽原円華には、気候状況や物や人の動き方について膨大なデータを学習し、今後の天気を物理法則に基づいて極めて正確に、かつ、緻密に予測したり、気体を含む物や人の動き方を予測したりすることができるという特殊能力を有しています。

「魔力の胎動」で出てくる例で言えば、天候を予測していつのタイミングで飛ぶのがスキージャンパーにとって最も良い風であるかといったことや、ナックルボールの軌道を計算して適確に捕球したりすることができる、ということです。

同じ東野圭吾さんの作品でも、ガリレオシリーズでは、湯川博士が色々と試行錯誤を重ねて実験をしていると思うのですが、羽原円華は、いわば、「秒で」答えを出してしまいます。

スーパーコンピューター富岳のような感じでしょうか。

先に小説の帯を見てしまったからかもしれませんが、小説を読んでいる最中の羽原円華のビジュアルイメージは、そのまんま、広瀬すずさんでした。

このシリーズでは、今年の3月に「魔女と過ごした七日間」という新作が公刊されています。

「ラプラスの魔女」も「魔力の胎動」も文庫本を買ったので、できれば文庫本が出るまで待ちたいのですが、多分我慢できずにハードカバーを買ってしまうでしょう。

その良い例が、東野圭吾さんの加賀恭一郎シリーズです。

加賀恭一郎シリーズは、司法修習生のときにドラマ「新参者」を見て、そのシリーズを知り、第一作の「卒業」から第七作の「赤い指」までは文庫本を購入していました。

しかし、「新参者」以降は、中古ですが、ハードカバーを購入しています。

「新参者」が文庫本化されたのは、ハードカバーの発売から4年後で、その後も文庫本化には概ね3年がかかっています。

そんなに待てません!!

というわけで、今年の9月発売の加賀恭一郎シリーズ最新作「あなたが誰かを殺した」を楽天ラクマで購入してしまいました。

年末年始のお休みに読もうと、今からとてもワクワクしています。

2023年 弁護士石川が今年読んだ本の話1

2023-12-01

先輩弁護士からのプレゼントにより読書熱が再燃

皆さん、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

2023年もいよいよ残り1月となりました。

皆様におかれましては、年末年始のご準備をされている時期かと思います(石川アトム法律事務所の年末年始のお休みについては、こちらの記事をご覧ください)。

今回は、弁護士石川が2023年に読んだ本について紹介したいと思います。

元々読書が趣味だったのですが、今年の年明けから春先まで、花粉症の鼻づまりもあり、スッキリ眠れない日が続き、睡眠を重視して、あまり読書をしていませんでした。

しかし、いつもお世話になっている先輩弁護士から、小説「優駿」をプレゼントしていただき、これが大変面白く、読書熱が再燃しました(先輩弁護士からのプレゼントの話は、こちらの記事をご覧ください)。

2023年 最も面白かった本 ~ジョージオーウェル「1984年」

さて、さっそくですが、「優駿」以外で、私が今年読んだ本の中で、最も面白かった本の第一位は、こちらです。

ジョージ・オーウェルの「1984年」。訳者は高橋和久さんです。

以下、なるべくネタバレはしないように気を付けてはいますが、結論の方向性はネタバレがあります。

ご注意ください。

全体主義社会、監視社会の近未来を描いたディストピアノベルの金字塔と言われている作品です。

また、イギリスのある調査では、イギリス人が読んだことのあるフリをした本の第一位にもなったことがあるようです(笑)

出版は1949年で、そのうえでの「近未来」を描いた作品なのですが、1949年出版ということを全く感じさせない、むしろ最近書かれたんじゃないかと思ってしまうような作品です。

「テレスクリーン」という一方通行の監視カメラ、監視スクリーン的な装置など、現代でもあり得そうな設備が出てきます。

出版年以降に、実際に某国で行われていたことが書かれているのではないかと思われるような迫真さと、ある意味の現実感がありました。

そして、この本は、「あーー、ダメダメ。そっち行っちゃダメ。あ~あ・・・」というような主人公の言動で、一体この先どうなっちゃうの、というハラハラ感が止まりません。

さらに、クライマックスに訪れる、突然、足下の床が無くなって垂直落下するようなフリーフォール感と絶望感。

さらに、その後の、ふわふわ感(「何も無かったことにする感」に近いかもしれません)。

読み応え抜群です。

「1984年」に登場する「ニュースピーク」

「1984年」は、とてもお薦めな本なのですが、この本にはちょっと取っつきにくいところがあります。

私も実際、最初の数ページを読んで数か月寝かせるということをこれまで2度ほどしたと思います。

先ほども若干紹介した「テレスクリーン」以外にも、この本で用いられている設定や、それを表す語彙に慣れるまでちょっと時間がかかるかもしれません。

小説中には、「オセアニア」、「ユーラシア」、「イースタシア」という国名が登場します。

しかし、小説に出てくる「オセアニア」や「ユーラシア」は、現在私たちが使っている「オセアニア」や「ユーラシア」とは異なっています。

これがまたややこしい。

小説中の「オセアニア」は、概ね南北中央アメリカ、イギリス、オーストラリア、アフリカ南部を含む地域で、本小説の主人公は、「オセアニア」で暮らしています。

「ユーラシア」はロシア+ヨーロッパ、「イースタシア」は、概ね、中国、モンゴル、チベット、日本、東南アジアの地域を意味しています。

また、私の場合、特に「ニュースピーク」という設定に混乱しました。

「ニュースピーク」は、カタカナで書かれていたこともあって、この本の相当途中まで、
「new speak」=新しい言語ではなく、「News peak」=とっておきのニュースだと思っていました。

ニュースピークというのは、この小説に登場する、いわば新しい英語のことです。

ニュースピークの目的は、言葉の数を減らしていくことです。

たとえば、現在の英語には、「寒い」を意味する「cold」という言葉があり、温かいには、
「warm」という言葉があります。

しかし、ニュースピークに「warm」という言葉は存在しません。

「寒い」=「cold」に「非」を意味する接頭語「un-」がプラスされ、「uncold」が「warm」の代わりを果たします。

このように、代替可能な語彙は、次々と一つの語にまとめられ、消滅していきます。

人は、言葉を失うと、その事実を適確に表現したり、考えたりすることができなくなります。

そのように、言葉を奪っていくことで、支配層にとって不都合な思考自体をさせないようにしていく、というのがニュースピークの目的です。

なるほど確かに、言葉を奪われてしまうと、考えること自体ができなくなってしまいます。

その思考を指し示す表現ができなくなってしまうのです。

この発想には、よくまぁそんなこと考えたなぁと感服しました。

「1984年」、とてもお薦めです。

年末年始のお休み中にいかがでしょうか。

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