個人の自己破産申立てのための準備~その5 またまた通帳に関するお話3

自己破産申立ての準備における通帳の重要性~破産者の財産把握の観点から

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

明日から7月ということで、暑い季節になってきました。

今週の静岡は雨模様ですが、今年の夏は、例年より梅雨明けが早くなるかもしれないようです。

皆様、熱中症に気を付けつつ、お過ごしいただければと思います。

さて、個人の方を対象とした自己破産申立ての準備に関するブログの第5弾です。

過去2回のブログでは、いずれも預金口座の通帳に焦点を当てたお話をしてきました。

今回は、その通帳のお話の第3弾です。

自己破産手続の準備において、通帳が持つ意味は非常に大きいのです。

破産手続というのは、本来、破産者(依頼者)が持っている財産を現金化して、債権者に平等に分配する手続です。

個人の自己破産申立ての場合、多くのケースでは、分配できるほどの財産がないため、破産手続は、始まると同時に終了という形を取ります(「同時廃止」(どうじはいし)といいます)。

しかし、本来、破産手続は、破産者の財産を分ける手続であり、破産手続が始まった後に、破産者の財産が現金化され、分配されていきます。

破産手続が同時廃止により終了するかどうかは、自己破産を裁判所に申し立てる時点である程度予想が付きますが、裁判所による審査を経た後に正式決定されます。

また、個人の自己破産の場合、自己破産が可能であるのは、申立人(依頼者)が、これからも継続的に債務を弁済することができません、という状態にあることが言える場合です。

これからも継続的に債務を弁済することができない状態にあるかどうかの判断にあたっては、申立人の資産状況が重要です。

これらの観点から、裁判所に自己破産を申し立てるにあたっては、申立人の資産について、可能な限り正確な情報を裁判所に提供する必要があります。

この観点からも通帳は非常に重要です。

自己破産にあたって裁判所に報告する必要がある資産の内容

破産手続を申し立てる際には、裁判所に対して、可能な限り正確に、申立人の資産状況を報告する必要があります。

裁判所に報告すべき「資産」は、基本的には申立人が保有している資産のすべてということになりますが、もう少し具体的に言いますと、少なくとも以下のようなものについては裁判所にその存在を報告する必要があると考えられます。

  • 現金
  • 不動産(土地建物、その不動産に価値があっても無くても、です)
  • 預貯金(通帳や入出金明細を2年分ご用意いただきたいということについては以前のブログで申し上げたとおりです)
  • 保険(生命保険、医療保険(共済も含みます)、個人年金、自動車保険、火災保険・地震保険、家財保険、ペット保険など)
  • 自動車
  • 株式、仮想通貨、Fx、社債

通帳から読み取れる資産の内容

申立人(依頼者・相談者)がどのような資産をお持ちであるのかは、申立人ご自身が一番よくお分かりだと思いますので、まずは、申立人から、お持ちの資産について聴取をします。

ただ、ご自身の資産であっても、うっかり伝え忘れたり、計上漏れしたりするということは間々あります。

通帳から読み取れる資産として、最も顕著なものは、おそらく保険であろうと思います。

通帳から、「○○保険」の引落しがあれば、申立人がその保険に加入していることが強く推認できます。

また、現在はその保険に加入していないとしても、直近1年以内にその保険を解約していたとすれば、解約時に保険金の戻りがあったかどうか(解約返戻金(かいやくへんれいきん)が発生したかどうか)を裁判所に報告する必要があります。

また、最近の自己破産申立てで比較的多く見かけるのは、通帳から、ネットの証券会社の引落しや、仮想通貨やFxを取り扱う会社の名前での引落しです。

仮想通貨やFxを取り扱う会社の引落しに関しては、現在の残高は0円であること(投入した金額は全て損してしまった)が多いように思いますが、通帳上、仮想通貨やFxの入出金があれば、その残高があるのかどうか、あるのであればいくらあるのかが、破産手続上当然に問題になってきます。

仮想通貨やFxで損をした金額によっては、射幸行為として、免責不許可事由(破産を申し立てても負債を0にするべきではないとして法律上定められている事情)への該当性も問題になってきます(免責不許可事由については、こちらの記事をご覧ください)。

このように、通帳の記載は、自己破産を申し立てる際に、申立人がどのような資産をお持ちであるのかについて、裁判所に可能な限り正確な情報を提供する、という観点から非常に重要です。

当事務所では、自己破産の申立てにあたり、通帳上の記載について、かなり細かく聴き取りを行っていますが、興味本位で聴き取りをしているわけではなく、上記のような目的のため聴き取りを行っているのです。

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