弁護士14年目で振り返る弁護士1年目の“アレ”

弁護士の「考える力」

皆様、こんにちは。弁護士の石川アトムです。

当事務所のブログは概ね0の付く日に更新されています。

本当は、2024年1月1日に、書き貯めている記事のうちの1つをアップしていいにしようかと思っていたのですが、予定を変更して、2023年最後の1本を書くことにしました。

きっかけは、静岡法律事務所の忘年会にお招きいただいたことです。

静岡法律事務所は、私が約12年在籍していた静岡市にある法律事務所で、多数の弁護士が在籍しています。

独立後も、忘年会にお声掛けいただき、大変有り難く思っています。

さて、その忘年会の中で、ベテランの弁護士がルーキーイヤーを終えたばかりの弁護士に対して、「何でもかんでも質問してこないで、まずは自分でちゃんと調べなさい。」と教え諭す一幕がありました。

このご意見については、全く同感です。

そもそも弁護士は、分からないことが多いのです。

裁判官だって判断に迷うことがあるのです(これらに関する詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください)。

以前の記事は、交通事故の過失割合に関するお話でした。

交通事故の過失割合に限らず、弁護士は分からないことに行き当たったとき、文献に当たる、裁判例を検索するなどして、まずは自分で調べます。

「全く一緒」の事例があったとしても、その事例が本件で使えるかどうかについて検討が必要です。

果たして本件をその事例と同様に考えて良いかどうかを考えるわけです。

全く一緒の事例がなければ、似たような事例から、問題となっている事件の結論を推論することになります。

共通点は何か、違う点は何か、共通点は本件で有利に働くのか不利に働くのか、違う点は本件で有利に働くのか、不利に働くのかを考えます。

似たような事例すら無ければ、自らの“常識”、感覚に従って結論を推論します。

ここでいう“常識”は、法的な結論を導くための“常識”です。

こういう場合にはこういう結論になることが法的なバランス感覚からして妥当なのではないか、というものです。

繰り返しになってしまいますが、弁護士でも、裁判官でも、答えが分からないことも多いのです。

唯一の答えなど無いことの方が多いのです(三審制という制度を考えても、そのことは明らかでしょう)。

弁護士として成長するためには、まずは、自分で調べて、考えてみるということが必要であろうと思います。

そして、その積み重ねが、考える力を磨き、弁護士としての実力を養っていくものだと思います。

弁護士1年目の“アレ”とは

静岡法律事務所の忘年会での一幕を妻に話したところ、「OJTは無いの?」という話が出ました。

静岡法律事務所では、私が弁護士として入所した頃から、私が独立するまでの間、1年目の弁護士は、先輩の弁護士とともに事件を共同で受任し、先輩の弁護士とともに事件を進めていくというやり方をしていました。

おそらく現在も、同様の手法が採られているのでしょう。

このように、弁護士1年目は、基本的には先輩弁護士とともに事件に取り組みます。

しかし、先輩弁護士が、その事件についてアレコレと教えてくれることは基本的にはありませんでした。

概要として、この事件は交通事故で後遺障害が認められてね、とか、この事件の依頼者は不貞の相手方でね、とか、その程度のアナウンスはあったように思います。

しかし、あとは、自分でどう事件を進めていくか考えて、依頼者と打合せをしながら進めていく、付け足しや訂正があれば、先輩弁護士が依頼者に聴き取り等をして修正していくというような感じであったと思います。

習うより慣れろ、というわけです。

さて、先輩弁護士の中に特徴的な指導をされる方がいらっしゃいまして、忘年会の最中にそのことを思い出しました。

その先輩弁護士の指導方法は、「先に打合せ進めといて」というものでした。

1年目で(というか、弁護士登録数日で)右も左も分からない状態で、依頼者とも初対面。

「先に打合せ進めといて」は、なかなかの恐怖でした。

新人の飼育員が、先輩から、「君、トラの体温計っといて」といきなり言われるような感覚でしょうか。

仮に私が弁護士を雇う立場になってもそういう指導はしませんが(依頼者は、「弁護士石川」に事件を依頼してくださっていると思いますので)、新人教育としては、ある意味、一番実践的だったかもしれません。

ただ、それも、自分で考えたり、調べたりすることを当然の前提として理解している新人に当てはまることだと思いますが。

旧所属先の忘年会に参加し、弁護士1年目の「先に打合せ進めといて」=私にとっての“アレ”を久しぶりに思い出しました。

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