弁護士ドラマでよく見る刑事事件~「保釈」について

「保釈」とは

皆さん、こんにちは。弁護士の石川です。

当事務所の「推し」は、自己破産、交通事故、顧問業務(顧問弁護士)だと言いながら、刑事事件に関するブログを書き始めて、早や2か月、6回目となりました。

前回のブログでは、「勾留」という手続についてお話ししました。

逮捕後、10日間(場合によってプラス10日間)、警察署や拘置所で捕まったままとなり、公判請求された場合には、基本的には、裁判が終わるまで捕まったままとなる被告人勾留という手続が始まるということをご説明いたしました。

上記の「基本的には、」というのは、「保釈」されなければ、という意味で使っています。

今回は、この「保釈」という手続についてお話しましょう。

先ほどもお話ししたように、逮捕、(被疑者)勾留という流れから、公判請求されてしまうと、裁判が終わるまで、警察署や拘置所で捕まったままとなる状態が続きます。

しかし、「裁判が終わるまで」には、少なくとも1か月(肌感覚で言えば、むしろ通常2ヶ月弱)はかかります。

そのような場合に、裁判手続は続くものの、裁判所に一定額のお金を納めることによって、一時的に拘置所や警察署から出てくることを認めてもらう手続があります。

これが「保釈」です。

保釈保証金は戻ってきます

保釈を認めてもらうためには、裁判所に一定額のお金を納める必要があります。

裁判所に納める、このお金のことを「保釈保証金」といいます。

保釈保証金を用意することができない場合、そもそも保釈は不可能です。

他方で、保釈保証金は、被告人が、きちんと裁判所に出頭して、判決まで刑事裁判手続を受ければ、その判決が有罪でも無罪でも、執行猶予付きでも、実刑(刑務所行き)でも、保釈保証金は全額返還されます。

裁判をきちんと受けさえすれば、裁判所に納めた保釈保証金は戻ってくるのです。

つまり、保釈保証金というのは、刑事裁判手続が終了する前に被告人を一旦釈放するけれど、被告人に裁判にきちんと出てもらうための「担保」としてのお金なのです。

裁判所に納める保釈保証金はいくら必要?

それでは、裁判所には、いくらくらいの保釈保証金を納める必要があるのでしょうか。

こちらも、弁護士石川の感覚的な話で申し訳ないのですが、初めて公判請求された万引事案や、初めての覚せい剤の自己使用事案など、ほぼ確実に執行猶予が見込まれるような事案である場合、静岡地方裁判所(本庁)では、概ね150~180万円程度を納めることが多いと思います。

保釈保証金の最低ラインは、このあたりです。

私が弁護士になったばかりの14年前には、同じような事案でも、もう少し高かった記憶があるのですが(170~200万円程度)、不景気な時代が続いているせいか、保釈保証金の金額も下がったのでしょうか。

当該ケースにおいて保釈保証金がいくらになるのか、ということは、裁判官が事件毎に判断して決定します。

先ほどもお話したように、保釈保証金は、その人にきちんと刑事裁判を受けてもらうための担保の目的があります。

そのため、どの程度のお金が担保としてふさわしいのか、ということは、その人(被告人毎)、その事件毎に異なります。

一般的な傾向としては、実刑(刑務所行き)が見込まれるようなケースでは、そうでないケースと比べて、保釈保証金の金額は高くなると言われています(実刑判決をおそれて裁判から逃げてしまうおそれがあるため、という理屈です)。

ちなみに、2019年の年末、保釈中に国外へ逃亡したカルロスゴーン氏の保釈保証金は、合計15億円でした。

カルロスゴーン氏が国外逃亡したため、同氏が納めた15億円は全額没収となりました。

保釈保証金を貸してくれるところもあります

さて、このブログの最初の方で、保釈保証金が用意できなければ、そもそも保釈はできません、という話をしました。

保釈保証金があれば、いつでも誰でも保釈が認められるというものではありませんが、そもそもお金が用意できないと、保釈される見込みはありません。

保釈保証金は、先ほどもお話ししたように、最低でも150万円を超える金額が想定されます。

そのようなお金を用意すること自体が難しいという場合も多いと思われます。

そのような場合、保釈保証金専用のお金を貸してくれる機関に借入れをお願いするということも考えられます。

弁護士の思想信条的に、そういった機関からお金を借りることはしないという人もいますが、私の場合は、被告人やご家族が希望されるのであれば、そういった機関からお金を借りるということについて特に抵抗はありません。

しかし、いくつかの注意点があります。

近時は、そういったところからお金を借りる場合でも、保釈保証金の全額を貸してくれるということは無いようです。

想定される保釈保証金の1割から2割程度は、自分たちで用意する必要があります。

これも、私が弁護士になりたての頃と状況が変わったのではないかと思います(昔は全額貸してくれたこともありました)。

また、お金を借りる場合には一定の手数料を支払う必要があります。

150~180万円の保釈保証金という場合でも、先にお話した1割から2割の頭金と、手数料を合わせると、20~30万円程度の現金は必要となります。

このようなお金も用意することが難しいという場合には、残念ながら保釈は諦めなければなりません。

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