このページの目次
先輩弁護士からのプレゼントにより読書熱が再燃
皆さん、こんにちは。弁護士の石川アトムです。
2023年もいよいよ残り1月となりました。
皆様におかれましては、年末年始のご準備をされている時期かと思います(石川アトム法律事務所の年末年始のお休みについては、こちらの記事をご覧ください)。
今回は、弁護士石川が2023年に読んだ本について紹介したいと思います。
元々読書が趣味だったのですが、今年の年明けから春先まで、花粉症の鼻づまりもあり、スッキリ眠れない日が続き、睡眠を重視して、あまり読書をしていませんでした。
しかし、いつもお世話になっている先輩弁護士から、小説「優駿」をプレゼントしていただき、これが大変面白く、読書熱が再燃しました(先輩弁護士からのプレゼントの話は、こちらの記事をご覧ください)。
2023年 最も面白かった本 ~ジョージオーウェル「1984年」
さて、さっそくですが、「優駿」以外で、私が今年読んだ本の中で、最も面白かった本の第一位は、こちらです。
ジョージ・オーウェルの「1984年」。訳者は高橋和久さんです。
以下、なるべくネタバレはしないように気を付けてはいますが、結論の方向性はネタバレがあります。
ご注意ください。
全体主義社会、監視社会の近未来を描いたディストピアノベルの金字塔と言われている作品です。
また、イギリスのある調査では、イギリス人が読んだことのあるフリをした本の第一位にもなったことがあるようです(笑)
出版は1949年で、そのうえでの「近未来」を描いた作品なのですが、1949年出版ということを全く感じさせない、むしろ最近書かれたんじゃないかと思ってしまうような作品です。
「テレスクリーン」という一方通行の監視カメラ、監視スクリーン的な装置など、現代でもあり得そうな設備が出てきます。
出版年以降に、実際に某国で行われていたことが書かれているのではないかと思われるような迫真さと、ある意味の現実感がありました。
そして、この本は、「あーー、ダメダメ。そっち行っちゃダメ。あ~あ・・・」というような主人公の言動で、一体この先どうなっちゃうの、というハラハラ感が止まりません。
さらに、クライマックスに訪れる、突然、足下の床が無くなって垂直落下するようなフリーフォール感と絶望感。
さらに、その後の、ふわふわ感(「何も無かったことにする感」に近いかもしれません)。
読み応え抜群です。
「1984年」に登場する「ニュースピーク」
「1984年」は、とてもお薦めな本なのですが、この本にはちょっと取っつきにくいところがあります。
私も実際、最初の数ページを読んで数か月寝かせるということをこれまで2度ほどしたと思います。
先ほども若干紹介した「テレスクリーン」以外にも、この本で用いられている設定や、それを表す語彙に慣れるまでちょっと時間がかかるかもしれません。
小説中には、「オセアニア」、「ユーラシア」、「イースタシア」という国名が登場します。
しかし、小説に出てくる「オセアニア」や「ユーラシア」は、現在私たちが使っている「オセアニア」や「ユーラシア」とは異なっています。
これがまたややこしい。
小説中の「オセアニア」は、概ね南北中央アメリカ、イギリス、オーストラリア、アフリカ南部を含む地域で、本小説の主人公は、「オセアニア」で暮らしています。
「ユーラシア」はロシア+ヨーロッパ、「イースタシア」は、概ね、中国、モンゴル、チベット、日本、東南アジアの地域を意味しています。
また、私の場合、特に「ニュースピーク」という設定に混乱しました。
「ニュースピーク」は、カタカナで書かれていたこともあって、この本の相当途中まで、
「new speak」=新しい言語ではなく、「News peak」=とっておきのニュースだと思っていました。
ニュースピークというのは、この小説に登場する、いわば新しい英語のことです。
ニュースピークの目的は、言葉の数を減らしていくことです。
たとえば、現在の英語には、「寒い」を意味する「cold」という言葉があり、温かいには、
「warm」という言葉があります。
しかし、ニュースピークに「warm」という言葉は存在しません。
「寒い」=「cold」に「非」を意味する接頭語「un-」がプラスされ、「uncold」が「warm」の代わりを果たします。
このように、代替可能な語彙は、次々と一つの語にまとめられ、消滅していきます。
人は、言葉を失うと、その事実を適確に表現したり、考えたりすることができなくなります。
そのように、言葉を奪っていくことで、支配層にとって不都合な思考自体をさせないようにしていく、というのがニュースピークの目的です。
なるほど確かに、言葉を奪われてしまうと、考えること自体ができなくなってしまいます。
その思考を指し示す表現ができなくなってしまうのです。
この発想には、よくまぁそんなこと考えたなぁと感服しました。
「1984年」、とてもお薦めです。
年末年始のお休み中にいかがでしょうか。