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仕事の中心は静岡県内
みなさん、こんにちは。弁護士の石川です。
今日は、私の弁護士としての、地理的な意味での仕事の範囲についてお話ししたいと思います。
と言いますのも、ここ最近、静岡県外へ出向く機会が多かったためです。
地理的な意味での、私の仕事の中心は、静岡市、藤枝市、焼津市などを中心とする静岡県中部地区です。
当法律事務所が静岡市に位置していることもあり、静岡市、藤枝市、焼津市にお住まいのお客様からご依頼をいただくことがほとんどです。
静岡県中部にお住まいの方からご依頼をいただくと、多くの場合、事件を取り扱う裁判所も静岡市にある静岡地方裁判所になります。
自己破産の申立ては、申立人(破産者)の住所地を管轄する裁判所に申立てをします。
交通事故による損害賠償請求の裁判を提起する場合、依頼者(原告)の住所地を管轄する裁判所に訴訟を提起することが通常です。
私が現在扱っている事件の7割程度は、静岡市にある静岡地方裁判所で審理されています。
残りの3割が、同じ静岡県内にある静岡地方裁判所の浜松支部であったり、沼津支部であったり、県外の裁判所であったり、という感じです。
このように、弁護士としての私の仕事は、静岡市や静岡県中部地区での仕事がメインです。
静岡県外での仕事
時々ですが、静岡県外に出張をすることもあります。
県外出張をする1つ目のケースは、静岡地方裁判所(沼津支部や浜松支部を含みます)の判決に対して控訴したり、控訴されたりして、裁判が東京高等裁判所に進んだ場合です。
控訴したり、控訴されたりすることは、それほど多くはないため、東京高等裁判所に行くのは年に2、3回ほどです。
近時は、裁判手続もIT化が進んでおり、静岡地方裁判所の事件のほとんどは、Web会議を利用して行われています(裁判とWeb会議については、こちらの記事をご覧ください)。
そのため、裁判所に出向くことは稀で、ほとんどの手続は、事務所からインターネットを通じて進行されています。
これは、静岡県外の地方裁判所において審理されている事件も同様です。
現在の法制度では、裁判が尋問手続まで進行すると、裁判所に出向かなければなりませんが、そうでない限りは、Web会議で済んでしまいます。
他方で、現状、東京高等裁判所で開かれる第1回目の裁判は、裁判所へ行く必要があります。
しかし、来年の5月ころには、新しい法制度が施行され、東京高等裁判所の第1回目もWeb会議に切り替えられているかもしれません。
今後、東京高等裁判所へ出張することも無くなってしまうのでしょうか・・・。
県外出張をする2つ目のケースは、首都圏の顧問先企業のお仕事をするために、首都圏に出張するという場合です。
首都圏の顧問先企業とのお仕事は、通常、メール、電話、LINEなどで行っているため、現地に赴くことはそれほど多くありません。
年に1、2回あるかどうかという具合です。
「公示送達」のお話
先にお話しした2つのケースは、割と定型的な県外出張と言えます。
他方で、イレギュラーな県外出張もごく稀に発生します。
私が過去に行った最も遠かった出張先は、山陰地方の某所です。
だいぶ話が飛びますが、ここで、「公示送達」という制度について説明をさせてください。
原告が裁判を起こす際、原告は、裁判所に「訴状」という書類を提出します。
そして、裁判所は、相手方である被告に対して訴状を郵送します。
原則として、被告に訴状が届かないと裁判を始めることができません。
被告にも反論する機会を与える必要があるためです。
通常は、原告が把握している、被告が住んでいると思われる場所を訴状に記載して、裁判所に、当該住所宛てに訴状を送ってもらいます。
しかし、ときどき、被告が、原告が把握している場所とは別の場所に住んでいるということがあります。
そういった場合、新しい住所が分かれば、裁判所に対して、新しく分かった住所をお伝えして、訴状を送ってもらうようにします。
他方で、どれだけ調べてみても、新しい住所が分からないというケースもあります。
あるいは、そもそも被告の住所が分からないというケースもあります。
そのような場合に、被告の就業先が分かっていれば、例外的に、被告の就業先に訴状を送ってもらうということもあります。
ただし、会社に「あなた、訴えられてますよ!」ということが分かりかねない書類を送付した場合、被告の社会的(というより会社的でしょうか)信用を落とすことになりかねませんので、このような送達は、例外的です。
原則として、訴状は、被告が住んでいる所に送らなければいけないのです。
それでは、被告の住んでいる所も、就業先も分からないという場合、訴状の送達はどうしたら良いのでしょうか。
結論としては、裁判所の敷地内にある掲示板に、「あなた、訴えられてますよ!」という紙を貼って、訴状は相手方に送達された、ということにしてしまいます。
このような手続を「公示送達」といいます。
ただし、先ほどもお話ししましたように、被告には裁判で反論をする権利があり、そのためには、被告に裁判を起こされていることを知らせる=訴状を届ける必要があります。
多くの人にとって、裁判所の掲示板なんて通常見るものではありませんから、公示送達をするということは、被告が裁判において反論する機会を事実上閉ざしてしまうことになる、と言っても過言ではないでしょう。
原告の裁判を進めたいという権利と、被告の反論をする権利のバランスを取ったうえで、裁判手続を進める(公示送達をする)ということにするので、裁判所に公示送達をしてもらうことは、それなりにハードルが高いのです。
公示送達をしてもらうためには、原告は、できる限り、被告の所在を突き止める努力をする必要があります。
たとえば、現時点の住民票上の所在地に赴いて、その住所地にある家の表札であったり、アパートの郵便受けであったりに、被告の名前がないか確認をします。
また、郵便受けに郵便物が大量に投函されたままになっていたり、その家の電気のメーターが回転していなかったりして(電気が使用されていないということ)、被告の住所地とされる家に、人が住んでいる気配がないことを確認することもあります。
さらには、お隣さんにアポ無し訪問をして、「○○さんという方(被告)を最近見かけたことありますか。」、「お隣には、どなたか住んでいるのでしょうか。」などと聞き込みをすることもあります。
そして、このような調査結果をまとめた報告書を裁判所に提出し、原告としてできる限りの調査をしたけれど、被告の所在を突き止めることはできなかった、ということを裁判所に理解してもらうわけです。
公示送達の現地調査のため山陰某所への出張
私が山陰の某所に行ったのは、このような公示送達のための現地調査をするためでした。
現地に行かなければならなくなったときには、あまりに遠くて、「マジかよ、、、」と思いました。
しかし、実際には、弁護士1年そこそこであった当時、私は時間に余裕のある独身貴族でしたから、現地調査の「ついで」に、広島で野球の試合を見て一泊するなど、優雅な出張をしていました。
今はとてもそんな時間的余裕はありません。
先日、隣県某所へ行ってきたのですが、朝6時過ぎの新幹線で静岡を出て、9時半には静岡に戻っているという、まさにとんぼ返りな出張でした。
たまには、のんびりとした出張をしたいなぁと思う、今日この頃です。